本編/清書
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「冴くんはなんで私が好きなのよ?」
「ん?理由がいるのか?」
「素敵な返事だけど、女はなにかと理由を求めるもんね」
ふーん、よく分からないけど。瑠璃さんが必要だと言うなら、少し考える。ジローさんに車を運転してもらって、ホテルに移動中。東京の街はどこも明るい。瑠璃さんの顔に街灯の明かりがクラゲのように揺蕩って、綺麗。
瑠璃さんに出会ったのは、凛と決別して少し経った頃だ。よく覚えてないが、その時俺は元気がなかったらしい。ジローさんがそう言うんだから、そうなんだろう。でも俺はそのことに自覚はなかったから、毎日同じように戦場に立って。擦り減っては、いたと思う。でもやめることなど出来なかった。
「冴ちゃん、この子に会ってみない?」
SNSで俺が描かれた絵がバズった。ジローさんが教えてくれるまで、気づきもしなかったが。話したいことも聞きたいことも特に思いつかなかったが、ジローさんが勧めることなのでとりあえず会うだけ会うことにした。会ってみて、つまらなかったらすぐに帰ればいい話だ。そう思っていた。それで、瑠璃さんの部屋に招かれた。瑠璃さんはオンボロアパートの306号室に住んでいた。部屋に上げてもらったのは俺だけで、ジローさんは下で待っていた。
「なにもお構いできないけど」
瑠璃さんはそう言って、俺をソファーに座らせて。自分は俺の向かいを陣取って、キャンバスに目を落としていた。俺に興味がないみたいだった。戸惑う、この人は俺が好きで俺を描いたわけじゃないのか。話題性のため?冷え込むように悲しくなって、世界にひとりぼっちのような気持ちになる。それを悟られないように、真っ直ぐ瑠璃さんを見据えた。瑠璃さんは、少し色黒の肌に金色の瞳が覗いて、なんか野生猫みたいな印象だった。彼女の周りだけ時間が遅くなっているような優雅さも感じた。
「私、好きなものしか描けないの」
遠回しに、告白をされたんだろうか。黙っていると、瑠璃さんは立ち上がって。俺の前に、SNSに載せた絵を持ってきた。実物に息を呑んだ。絵に描かれているのが自分だと認識するのに、相当時間を食った。この絵を描くのに、どれくらい時間がかかるのだろう。この人はどんな思いで、俺を描いてくれたんだろう。ワクワクした。顔にも出てたと思う。瑠璃さんはそんな俺を見て、つまらなそうにした。たまらなく、欲しくなった。この人のワクワクとかドキドキとか、キラキラしてるすべて。知りたいと思ってしまった。つまらないのなら、どこへだって連れて行くし。この人が楽しそうにしたら、きっと俺も楽しい。そう思った。あの瞬間だけ、俺はサッカーのことを忘れていた。
「私が興味あるのは、糸師冴なのよね」
「??」
「女の子の前でなんにも喋らない、冴えない男じゃないの」
「え、っと」
なんでだか知らないが、非難されてるのは分かる。俺が口を開こうとすると、瑠璃さんは玄関の方へ行ってしまって。俺は素直に追いかけた。瑠璃さんが玄関のドアを開けて、外を指し示す。
「今日は、もう帰ってもらえる?私、忙しいの」
「あの、まだ話したいことが」
「連絡先はここ。まだ私に興味があるなら、改めて誘って?」
瑠璃さんはLINEのQRコードが書かれた名刺を寄越した。カラフルで細かく絵が描かれていて、紙切れなのにすごく大事なものに見えた。見惚れていたら、さっさと追い出されてドアを閉められてしまった。俺は呆気に取られた。こんなに人に冷たくされたのは初めてだった。何故だか嬉しかった。本当はちっぽけな自分を、見つめてくれるような気がしたんだ。俺の背負うなにもかもを、取っ払ってくれるんじゃないかと期待した。俺はあの日から、瑠璃さんの虜になった。
「……好きなところがたくさんあって、どれから言葉にしていいのか分からない」
思ったままのことを瑠璃さんに白状すると、瑠璃さんはくすくす笑った。
「素直すぎて、笑っちゃうわ」
「本当のことだから、仕方ない」
瑠璃さんに出会った日から、思い出が増えて積み重なっていく。いつだって、新鮮な気持ちで出会った日のことは思い出せる。サッカーがなんで好きだったのかは、忘れていくのに。サッカーと瑠璃さんを天秤にかけるのが怖い。だから、見ないフリをして貴方の側を選んだ。まだ決めなくてもいいと、自分を誤魔化した。
「1番に好きなところか、1番最初に好きになったとこ。教えて?」
「…………全部、好き」
貴方にまた、子供っぽいと馬鹿にされてしまった。ちょっと恥ずかしくて勇気出したのに。窓の外を眺める。街灯が減って真っ暗な海が見える。明日の朝になったら、窓の外に海が見える。瑠璃さんと見たい。それが叶うと思うと、今からドキドキする。もう置いていかれたくないし、置いていかない。瑠璃さんのことは、手放したりしない。いらなくなる日なんて来ない。ずっと一緒にいて、と願うように手を握った。少し力を込めてくれたのに、酷く安心して嬉しかった。
「ん?理由がいるのか?」
「素敵な返事だけど、女はなにかと理由を求めるもんね」
ふーん、よく分からないけど。瑠璃さんが必要だと言うなら、少し考える。ジローさんに車を運転してもらって、ホテルに移動中。東京の街はどこも明るい。瑠璃さんの顔に街灯の明かりがクラゲのように揺蕩って、綺麗。
瑠璃さんに出会ったのは、凛と決別して少し経った頃だ。よく覚えてないが、その時俺は元気がなかったらしい。ジローさんがそう言うんだから、そうなんだろう。でも俺はそのことに自覚はなかったから、毎日同じように戦場に立って。擦り減っては、いたと思う。でもやめることなど出来なかった。
「冴ちゃん、この子に会ってみない?」
SNSで俺が描かれた絵がバズった。ジローさんが教えてくれるまで、気づきもしなかったが。話したいことも聞きたいことも特に思いつかなかったが、ジローさんが勧めることなのでとりあえず会うだけ会うことにした。会ってみて、つまらなかったらすぐに帰ればいい話だ。そう思っていた。それで、瑠璃さんの部屋に招かれた。瑠璃さんはオンボロアパートの306号室に住んでいた。部屋に上げてもらったのは俺だけで、ジローさんは下で待っていた。
「なにもお構いできないけど」
瑠璃さんはそう言って、俺をソファーに座らせて。自分は俺の向かいを陣取って、キャンバスに目を落としていた。俺に興味がないみたいだった。戸惑う、この人は俺が好きで俺を描いたわけじゃないのか。話題性のため?冷え込むように悲しくなって、世界にひとりぼっちのような気持ちになる。それを悟られないように、真っ直ぐ瑠璃さんを見据えた。瑠璃さんは、少し色黒の肌に金色の瞳が覗いて、なんか野生猫みたいな印象だった。彼女の周りだけ時間が遅くなっているような優雅さも感じた。
「私、好きなものしか描けないの」
遠回しに、告白をされたんだろうか。黙っていると、瑠璃さんは立ち上がって。俺の前に、SNSに載せた絵を持ってきた。実物に息を呑んだ。絵に描かれているのが自分だと認識するのに、相当時間を食った。この絵を描くのに、どれくらい時間がかかるのだろう。この人はどんな思いで、俺を描いてくれたんだろう。ワクワクした。顔にも出てたと思う。瑠璃さんはそんな俺を見て、つまらなそうにした。たまらなく、欲しくなった。この人のワクワクとかドキドキとか、キラキラしてるすべて。知りたいと思ってしまった。つまらないのなら、どこへだって連れて行くし。この人が楽しそうにしたら、きっと俺も楽しい。そう思った。あの瞬間だけ、俺はサッカーのことを忘れていた。
「私が興味あるのは、糸師冴なのよね」
「??」
「女の子の前でなんにも喋らない、冴えない男じゃないの」
「え、っと」
なんでだか知らないが、非難されてるのは分かる。俺が口を開こうとすると、瑠璃さんは玄関の方へ行ってしまって。俺は素直に追いかけた。瑠璃さんが玄関のドアを開けて、外を指し示す。
「今日は、もう帰ってもらえる?私、忙しいの」
「あの、まだ話したいことが」
「連絡先はここ。まだ私に興味があるなら、改めて誘って?」
瑠璃さんはLINEのQRコードが書かれた名刺を寄越した。カラフルで細かく絵が描かれていて、紙切れなのにすごく大事なものに見えた。見惚れていたら、さっさと追い出されてドアを閉められてしまった。俺は呆気に取られた。こんなに人に冷たくされたのは初めてだった。何故だか嬉しかった。本当はちっぽけな自分を、見つめてくれるような気がしたんだ。俺の背負うなにもかもを、取っ払ってくれるんじゃないかと期待した。俺はあの日から、瑠璃さんの虜になった。
「……好きなところがたくさんあって、どれから言葉にしていいのか分からない」
思ったままのことを瑠璃さんに白状すると、瑠璃さんはくすくす笑った。
「素直すぎて、笑っちゃうわ」
「本当のことだから、仕方ない」
瑠璃さんに出会った日から、思い出が増えて積み重なっていく。いつだって、新鮮な気持ちで出会った日のことは思い出せる。サッカーがなんで好きだったのかは、忘れていくのに。サッカーと瑠璃さんを天秤にかけるのが怖い。だから、見ないフリをして貴方の側を選んだ。まだ決めなくてもいいと、自分を誤魔化した。
「1番に好きなところか、1番最初に好きになったとこ。教えて?」
「…………全部、好き」
貴方にまた、子供っぽいと馬鹿にされてしまった。ちょっと恥ずかしくて勇気出したのに。窓の外を眺める。街灯が減って真っ暗な海が見える。明日の朝になったら、窓の外に海が見える。瑠璃さんと見たい。それが叶うと思うと、今からドキドキする。もう置いていかれたくないし、置いていかない。瑠璃さんのことは、手放したりしない。いらなくなる日なんて来ない。ずっと一緒にいて、と願うように手を握った。少し力を込めてくれたのに、酷く安心して嬉しかった。
