プロトタイプ/落書き
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
誰も見てないのに流れているテレビショー。太平洋に沈む夕陽が絵画のようにはめ込まれた、大きな窓。ベランダの縁で、冴くんは海を眺めている。風が迷うように入り込んできて、鳥肌が立った。
「寒くないの?」
「いや……」
冴くんはぼんやり返した後、思い出したように私をゆっくりと振り返った。私の顔を見て、少し目を見張る。冴くんは立ち上がると、窓を閉めて室内に戻ってきた。
「瑠璃さんが寒かったんだな。ごめん」
「うーんと。まぁ、そうね」
冴くんは寝室から毛布を持ってくると私の肩にかけ、私の膝の上のスケッチブックを覗く。
「絵描きのスケッチブックは許可なく覗いちゃダメって、最初に教えたはずだけど?」
「ん……あぁ。ごめんなさい」
冴くんは視線を外し、私の隣に座った。しばらく、2人共目線を水平線の向こうへやる。私は時折視線を手元に落として絵を描き進める。日は沈んでいくが、目に焼き付けた光景を忘れてしまうことはなかった。だから私は絵が描ける。
「退屈じゃないの?」
隣の冴くんが、なにもせずにいるから声をかける。
「あんたの隣にいることを、退屈だと思ったことがない」
「んー75点」
「厳しいな。最近ますますじゃないか?」
「そうかも。冴くんへの期待値があがってるから?」
「上等だな」
そうは言いつつ、冴くんは寂しそうな視線を寄越したから、一度だけ目を合わせる。冴くんの瞳は宝石のようで綺麗だと思う。チャームポイントの下まつ毛も、色気があって好き。
「……上手い言い回しとか、本当は苦手だ」
「知ってるよ」
「瑠璃さんが手本を見せてくれ」
「今忙しいの」
そう返せば、少しムッとした顔をして、それでも私の作業の邪魔はせずにそっと立ち上がった。シャワーでも浴びるのだろう。日没を迎えて、水平線は闇に溶けてしまった。途端に、部屋はうら寂しくなる。自分であしらった癖に、冴くんが戻ってくるのが待ち遠しい。絵はこれで完成ということにしよう。ラフスケッチだ。今日もたくさん、いい絵も悪い絵も描きあげた。出来には満足出来ないが、1日としては満たされている。スマホを見ようとしてやめる。廻から連絡は来ないだろうから。彼の1日も、満たされたものだったろうか。楽しくボールを蹴れただろうか。
「退屈じゃないのか?」
ぼんやりソファーに座っていたら、冴くんが後ろから腕を回してきてドキリとする。シャワーを浴びたばかりだから湿っぽくて温かい。しばし、固まって言葉を探す。誤魔化すように柔く腕に触れた。
「少し、休憩してただけ」
「寂しかったんだろ?瑠璃さんはいつもそう」
「そんなにやわな女じゃないわ」
冴くんは右手で私の左頬に触れて。きゅ、と少しだけ腕に力を込めた。いい返答が思いつかなかったらしい。私は、広げていたスケッチブックを手を伸ばして閉じた。冴くんはスケッチブックの縁に指をかけ、めくる仕草をする。
「今日はなに描いてたの、知りたい」
私は黙ってスケッチブックをめくった。朝のコーヒーを淹れたマグカップ、マンションの下を通る車たち、窓からの夕暮れ。それから、冴くんの横顔。自分が描かれていることに気づいて、冴くんは嬉しそうににんまりとした。言葉なく、私に頭を押しつける。私はなにも言わずに撫でた。しばらく、そうしてくっつきあっていた。
「寒くないの?」
「いや……」
冴くんはぼんやり返した後、思い出したように私をゆっくりと振り返った。私の顔を見て、少し目を見張る。冴くんは立ち上がると、窓を閉めて室内に戻ってきた。
「瑠璃さんが寒かったんだな。ごめん」
「うーんと。まぁ、そうね」
冴くんは寝室から毛布を持ってくると私の肩にかけ、私の膝の上のスケッチブックを覗く。
「絵描きのスケッチブックは許可なく覗いちゃダメって、最初に教えたはずだけど?」
「ん……あぁ。ごめんなさい」
冴くんは視線を外し、私の隣に座った。しばらく、2人共目線を水平線の向こうへやる。私は時折視線を手元に落として絵を描き進める。日は沈んでいくが、目に焼き付けた光景を忘れてしまうことはなかった。だから私は絵が描ける。
「退屈じゃないの?」
隣の冴くんが、なにもせずにいるから声をかける。
「あんたの隣にいることを、退屈だと思ったことがない」
「んー75点」
「厳しいな。最近ますますじゃないか?」
「そうかも。冴くんへの期待値があがってるから?」
「上等だな」
そうは言いつつ、冴くんは寂しそうな視線を寄越したから、一度だけ目を合わせる。冴くんの瞳は宝石のようで綺麗だと思う。チャームポイントの下まつ毛も、色気があって好き。
「……上手い言い回しとか、本当は苦手だ」
「知ってるよ」
「瑠璃さんが手本を見せてくれ」
「今忙しいの」
そう返せば、少しムッとした顔をして、それでも私の作業の邪魔はせずにそっと立ち上がった。シャワーでも浴びるのだろう。日没を迎えて、水平線は闇に溶けてしまった。途端に、部屋はうら寂しくなる。自分であしらった癖に、冴くんが戻ってくるのが待ち遠しい。絵はこれで完成ということにしよう。ラフスケッチだ。今日もたくさん、いい絵も悪い絵も描きあげた。出来には満足出来ないが、1日としては満たされている。スマホを見ようとしてやめる。廻から連絡は来ないだろうから。彼の1日も、満たされたものだったろうか。楽しくボールを蹴れただろうか。
「退屈じゃないのか?」
ぼんやりソファーに座っていたら、冴くんが後ろから腕を回してきてドキリとする。シャワーを浴びたばかりだから湿っぽくて温かい。しばし、固まって言葉を探す。誤魔化すように柔く腕に触れた。
「少し、休憩してただけ」
「寂しかったんだろ?瑠璃さんはいつもそう」
「そんなにやわな女じゃないわ」
冴くんは右手で私の左頬に触れて。きゅ、と少しだけ腕に力を込めた。いい返答が思いつかなかったらしい。私は、広げていたスケッチブックを手を伸ばして閉じた。冴くんはスケッチブックの縁に指をかけ、めくる仕草をする。
「今日はなに描いてたの、知りたい」
私は黙ってスケッチブックをめくった。朝のコーヒーを淹れたマグカップ、マンションの下を通る車たち、窓からの夕暮れ。それから、冴くんの横顔。自分が描かれていることに気づいて、冴くんは嬉しそうににんまりとした。言葉なく、私に頭を押しつける。私はなにも言わずに撫でた。しばらく、そうしてくっつきあっていた。