プロトタイプ/落書き
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瑠璃さんが寂しい時に隣を陣取りたいと思っていたが、この人はいつだって寂しいのだと知ってから、とにかく一緒にいたくて仕方がなかった。出会ってから1年ほど、前よりは甘えてもくるようになった。あと一歩、なにが足りないのか皆目見当がつかなくて。俺の要求は恋人にして欲しいだけなんだけど。8月に別れて11月に迎えに来て、なし崩しに一緒に住んで。それでも、恋人だと言うと否定されて断られるのだ。意味不明。キスしたら恋人じゃないのか。あの人にとってはそのくらい挨拶なのか。じゃあその先までと思うが、いつまで経っても子供扱いをやめてくれない。野蛮な男は嫌われてしまう。八方塞がりで、どうしようもなく寂しさが押し寄せた。あんたのせいで、俺まで寂しがり屋だ。
「ただいま」
自己鍛錬を終えて、家に帰ってきた。日本に帰ってからも5年間で身につけた習慣はすぐには抜けず、15時には家に帰ってきてしまう。瑠璃さんは日当たりのいい窓際の床に、身を投げ出して昼寝をしていた。あまりにも無防備。猫みたいだな。頭側にしゃがみ込んで、窓の外の海を眺めた。静かだ。音は瑠璃さんの寝息だけ。なんでもない幸せだ。瑠璃さんに目を落とす。大きな胸が呼吸で上下する。貴方が生きていることを実感して、感謝する。また海を眺めた。この時間がいつまでも続けばいいと思うのは、欲深いのか謙虚なのか。自分のことは欲深い人間だと思うし、今だって夢を諦めちゃいない。でも、夢をがむしゃらに追いかけるのには少し疲れた。メリハリってもんが、あったっていいだろ。夢を追うのに、誰かを必要としたっていいんじゃないか。そんなことを思う。練習以外の時間、どう過ごすかは人それぞれだし。なんて、あれこれ理由をつけては貴方の横にいることを肯定しようとしている。そんなかっこ悪いのは糸師冴じゃないと、また言われてしまうかな。
「ん……」
「ただいま、瑠璃さん」
瑠璃さんが目を開けたので、もう一度ただいまを言う。瑠璃さんはしぱしぱ瞬きをしたあと、胡座をかく俺の足の付け根に頭を乗せてきた。猫みたい。長くてふわふわのボリュームある髪を、指でもて遊ぶ。瑠璃さんは俺の脚に頬を擦り付けている。
「まだ寝るのか?」
「んー」
「ここでいいのか?」
「冴くんの膝がいい」
素直に甘えてくるようになった。頬を指でくすぐって。なにも言えなくなる、満たされているから。恋人じゃなくても、側に置いてくれるならいいかな、なんてぬるいことを思う。自分が自分でなくなることが、側にいれば別段怖くない。はぐれてしまうと、途端に不安になるが。糸師冴って、誰なんだ。どういう定義で、証明されるんだ。
「瑠璃さん」
「なあに」
「抱っこしたい」
俺がそう言えば、起き上がり黙って身体を差し出してくれる。膝の上に乗せて、ぴったりと身体を密着させる。寂しさを埋めるように、首筋に顔を沈めて、めいっぱい香りを吸い込む。眩暈がする、今だって変わらず。この幸せも、変わっていってしまうのかな。
「なあ」
「うん?」
「恋人が嫌なら、結婚はどうだ?」
「もっと困る」
「もっと困るのか……」
いつすり抜けていくのか、不安で仕方ない。不安を掻き消したくて、腕に力を込めた。瑠璃さんは俺の胸板に頬を擦り寄せる。頬ずりが好きなんだ。貴方が好きなこと、だいぶ知ったと思うが。なにが足りないんだろう。
「どうしたら諦めて、俺の恋人になってくれる?」
「冴くんが諦めた時」
「そんな日は来ない。禅問答やってんじゃないんだぞ」
瑠璃さんはくすくす笑う。どうでもよくなって、絆されてしまいそうになる。でも。どんな手を使ってでも、貴方の恋人になりたい。そうじゃなきゃ安心出来ない。
「もう勝手に自称していいか?」
「あらあら、それじゃストーカーと同じよ?」
「ストーカーと思われても恋人になりたいんだって」
「……冴くんにそんなレッテル、貼られたくないわ」
「じゃあ、素直に恋人になれ」
瑠璃さんが黙った。怖くなって、そろーっと顔色を伺う。満更でもない表情なんだけどなぁ。
「考えとく」
「いっつもそれじゃねぇか」
呆れてそんな口をきくが、俺の声は柔らかくて口角は上がっている。早く。早く糸師冴を証明してくれ。恋人になってくれたら、それだけで側にいる理由にも戦う理由にもなるんだから。お願い、早く。
「ただいま」
自己鍛錬を終えて、家に帰ってきた。日本に帰ってからも5年間で身につけた習慣はすぐには抜けず、15時には家に帰ってきてしまう。瑠璃さんは日当たりのいい窓際の床に、身を投げ出して昼寝をしていた。あまりにも無防備。猫みたいだな。頭側にしゃがみ込んで、窓の外の海を眺めた。静かだ。音は瑠璃さんの寝息だけ。なんでもない幸せだ。瑠璃さんに目を落とす。大きな胸が呼吸で上下する。貴方が生きていることを実感して、感謝する。また海を眺めた。この時間がいつまでも続けばいいと思うのは、欲深いのか謙虚なのか。自分のことは欲深い人間だと思うし、今だって夢を諦めちゃいない。でも、夢をがむしゃらに追いかけるのには少し疲れた。メリハリってもんが、あったっていいだろ。夢を追うのに、誰かを必要としたっていいんじゃないか。そんなことを思う。練習以外の時間、どう過ごすかは人それぞれだし。なんて、あれこれ理由をつけては貴方の横にいることを肯定しようとしている。そんなかっこ悪いのは糸師冴じゃないと、また言われてしまうかな。
「ん……」
「ただいま、瑠璃さん」
瑠璃さんが目を開けたので、もう一度ただいまを言う。瑠璃さんはしぱしぱ瞬きをしたあと、胡座をかく俺の足の付け根に頭を乗せてきた。猫みたい。長くてふわふわのボリュームある髪を、指でもて遊ぶ。瑠璃さんは俺の脚に頬を擦り付けている。
「まだ寝るのか?」
「んー」
「ここでいいのか?」
「冴くんの膝がいい」
素直に甘えてくるようになった。頬を指でくすぐって。なにも言えなくなる、満たされているから。恋人じゃなくても、側に置いてくれるならいいかな、なんてぬるいことを思う。自分が自分でなくなることが、側にいれば別段怖くない。はぐれてしまうと、途端に不安になるが。糸師冴って、誰なんだ。どういう定義で、証明されるんだ。
「瑠璃さん」
「なあに」
「抱っこしたい」
俺がそう言えば、起き上がり黙って身体を差し出してくれる。膝の上に乗せて、ぴったりと身体を密着させる。寂しさを埋めるように、首筋に顔を沈めて、めいっぱい香りを吸い込む。眩暈がする、今だって変わらず。この幸せも、変わっていってしまうのかな。
「なあ」
「うん?」
「恋人が嫌なら、結婚はどうだ?」
「もっと困る」
「もっと困るのか……」
いつすり抜けていくのか、不安で仕方ない。不安を掻き消したくて、腕に力を込めた。瑠璃さんは俺の胸板に頬を擦り寄せる。頬ずりが好きなんだ。貴方が好きなこと、だいぶ知ったと思うが。なにが足りないんだろう。
「どうしたら諦めて、俺の恋人になってくれる?」
「冴くんが諦めた時」
「そんな日は来ない。禅問答やってんじゃないんだぞ」
瑠璃さんはくすくす笑う。どうでもよくなって、絆されてしまいそうになる。でも。どんな手を使ってでも、貴方の恋人になりたい。そうじゃなきゃ安心出来ない。
「もう勝手に自称していいか?」
「あらあら、それじゃストーカーと同じよ?」
「ストーカーと思われても恋人になりたいんだって」
「……冴くんにそんなレッテル、貼られたくないわ」
「じゃあ、素直に恋人になれ」
瑠璃さんが黙った。怖くなって、そろーっと顔色を伺う。満更でもない表情なんだけどなぁ。
「考えとく」
「いっつもそれじゃねぇか」
呆れてそんな口をきくが、俺の声は柔らかくて口角は上がっている。早く。早く糸師冴を証明してくれ。恋人になってくれたら、それだけで側にいる理由にも戦う理由にもなるんだから。お願い、早く。