可能性の話
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ランク戦にて
ぼふん、とベッドの上に落下する。久々の感覚。あまり好きではない。普通に背中痛いし。
「やられた〜マジあれは無理だわ」
「お疲れ様〜」
モニター室では、まだ忙しく柚宇さんが機械を操作していて、画面の中では太刀川さんが戦っている。莉子さんはぼんやり画面を見つめていて、そんな莉子さんを唯我が伺い見ている。試合見ろ。
「唯我、お茶淹れて」
「いや僕今試合見てますが」
「いいから淹れろ」
圧をかければ、唯我は涙目で給湯室に引っ込んだ。さて。莉子さんの隣に立つ。予想通り、どこか元気がない。唯我がいたら、この人は弱音を吐かない。
「……莉子さん、落ち込んでる?」
莉子さんは今日の試合、誰よりも先に落とされた。当真さんの狙撃だから、狙われたら誰だってああなると思う。でも、開幕早々になにも出来ずに落とされたのは、気にするだろう。
「……なんも出来なかった」
「仕方ないですよ」
「やっぱ私にこの隊は、相応しくないんじゃないかな」
「それは絶対ない」
俺が今日落とされたのは、莉子さんの援護がなかったからだ。いるのといないじゃ、状況が全然違う。今日は上手くいかなかっただけで、それで莉子さんがいらないということにはならない。
「俺と莉子さんが組んだら、抑えられない相手なんていない。前にも言ったっしょ」
「それは出水が強いだけで、組む相手は誰だって……シールド張るのは誰でも出来るでしょ」
思った以上に、凹んでるな。こぼれ落ちそうな涙を、なんとか引っ込ませたい。
「俺はあんたと組みたいんだよ」
ちょっと嘘吐きかな、と自分を省みる。別に組む相手にこだわりなんて、本当のところはない。莉子さんじゃない誰か適任がいれば、普通に組むと思う。俺はそこまでこの人にこだわっていない。けれど。
「莉子さんじゃなきゃ、嫌だ」
この人が泣かないで済むなら、嘘だってなんだっていいじゃないか。それくらいは、思ったっていいだろう。太刀川さんがたまたま選んで、たまたま一緒に隊を組んでいる。そんな偶然を、俺は愛している。偶然が選んだのが莉子さんで、よかったなと思ってるから。貴方の心を守れるなら、ちょっとした嘘も吐くよ。
「……もうちょっと、頑張る」
「おう、無理すんな」
「出水の相棒名乗れるように、頑張る」
瞳に少し力が戻った。ほっとする。画面に目を移すと、結局太刀川さんが孤軍で生き残っていた。ギリギリだけど。
「勝っちゃったね」
「な。太刀川さんすげー」
隊長がこれほど強いと、引け目を感じる時だってあるだろう。俺はちょっとサボっても大丈夫だな、ラッキーくらいにしか思わないけど。莉子さんが真面目に仕事をするから、俺も頑張らなくちゃと真面目なフリが出来る。
「次は俺もフルアタックしたいっす」
要望を添えれば、莉子さんは困ったように笑った。そうだよ、あんたがいないと俺が暴れらんないでしょ。
「努力するよ」
「楽しみにしてる」
次のランク戦も楽しみだ。次は1位らしく、余裕で勝ちたいな。
廊下にて
ランク戦で、真っ先に落とされた。なにも抵抗出来ず、なにも残せずに。落ち込んでいる暇はない。落ち込んで甘えていたいけど、そんなのは時間の無駄だから。気持ちを切り替えて、個人ランク戦ブースに向かう。少しでも強くなりたい、少しでも理想に近づくために。
「おっ莉子ちゃんじゃん。さっきはご馳走さん」
「……当真くん」
廊下で当真くんにばったり会った。今日私がランク戦で落ちた原因張本人。当真くんは飄々とした顔で、私の顔を覗き込むと、ハッと軽く笑った。
「落ち込んでやんの」
「落ち込んでない!」
「嘘つけ。あんた顔に出やすいもんな」
「〜っ!だって、なんも出来なかったもん!」
「そう怒んなよ〜」
当真くんに怒っても、仕方ないのだけど。当真くんが私を狙わなければ落ちなかったので、文句の一つも言いたくなる。けど、なにを言おうが睨みつけようが、当真くんはのらりくらりと躱すだけ。悔しい。
「むしろ俺に撃たれたんだから、もうちょい自信持ってもいいんじゃねーの?」
「なにそれ」
「無駄な弾は撃たねーよ」
「??」
意味がよく分からず首を傾げると、当真くんは遠慮なく大笑いした。分からないのが恥ずかしくなってきたが、分からないものは分からない。
「ちょっと!どういう意味!」
「あんたを評価してるから、最優先で撃ったってことだよ」
「!!」
「撃ちやすいのも勿論あるけど?莉子ちゃんほっといて太刀川隊に勝てるとも思わないねぇ」
当真くんは首の後ろで手を組んで、ちょっとだけ私を気遣うような目配せをした。当真くんの言葉を頭で反復して、噛み砕く。私の中にそんな視点はなかった。弱くて浮いた駒だから、適当に落とされたとばかり思っていた。弱いからダメなんだと。
「ちょっと無理してでも落としときたい駒なのよ、莉子ちゃんは」
「弱いからじゃなくて?」
「弱いけどあんた仕事はするだろ。厄介」
弱いは弱いのか……考え込んでいたら、デコピンが飛んできた。
「あ痛」
「もっとシンプルに考えりゃいいだろ。悪い方にばかり考えるの、悪いクセだぜ」
「……はい、それはごもっとも」
どっちが歳上なのか、分かったもんじゃない。当真くんはヒラヒラ手を振りながら、私の横を通り過ぎる。
「じゃあな。莉子ちゃんはちゃんと働いてると思うぜ?自信がついたら怖いくらいだね」
ひょろっと長い背中を見送る。彼なりに励ましてくれたのだろうか。私が撃たれたのは、弱いからだけじゃない。警戒してくれたから。確かにそう思えれば、少し気が楽になった。
「……個人ランク戦行こ」
私は本来の目的に戻った。やるべきことは変わらない。少しでも強くなって、太刀川さんや出水の負担を減らす。相手に圧をかける。気を引き締めて、個人ランク戦ブースに向かった。
ブースにて
学校の帰り、いつもの通り個人ランク戦のブースに来る。夜の部隊ランク戦まで、まだ時間がある。時間ギリギリまで、戦闘をしていたかった。片っ端からランク戦を申し込み、相手をしてもらう。勝っても負けても、勝負は楽しい。
「おっ」
珍しい名前を見つけて、早速声をかける。莉子さんがここに来るのは久しぶりだ。音声を繋ぐ。
「莉子さん、なんか悩んでんの?」
莉子さんがここに来る時は、大抵なにか悩んでいる時だ。なにかに躓くと、ここに来る。
「強くなりたくて。米屋くん、勝負して!」
「いいっすよー」
強くなりたいと、莉子さんはいつも言う。今日のは大丈夫なやつだ。大丈夫じゃない時は、悲痛で辛そうな声になる。そういう時は、相手をしない。仮想空間に転送される。莉子さんが身構えたのを確認し、俺も構える。
『5本勝負、開始』
アナウンスと共に、動き始める。莉子さんは下がり気味にアステロイドを撃つ。読めていたので、横に回って左側から槍を薙ぐ。シールドでガードされる。一歩下がって、もう一度突く。シールドは割れない。
「相変わらず、ガード固いな〜」
もう一度突けば割れるだろ。踏み込もうとしたが、莉子さんがシールドを解除して射撃動作に入ったのが見えた。
「おっと」
後ろに退いて、さらにそこから背後に回る。莉子さんが俺に向き直る。思い切り首を狙って突く。莉子さんはシールドを再度展開したが、俺の方が速い。
『小林、緊急脱出。1-0、米屋リード』
「速……」
「どんどんいくっすよー」
莉子さんにとって、俺は苦手な相手だ。莉子さんは素早い相手を捕まえるのが得意じゃない。そもそも、莉子さんは相手を倒すことが上手くない。じゃあなにが出来るかっていうと、莉子さんは戦場に立ち続けることが上手い。
(今のは獲れただろ)
幻踊を起動したのだが、それを見越してシールドを張られた。絶対獲ったと思ったので悔しい。勝負を重ねるごとに、莉子さんが粘る時間は伸びる。ポイントや戦績では評価出来ない強さが、この人にはある。
(瞳が綺麗なんだよなぁ)
勝てない勝負に挑み続けることは、苦痛なはずだ。俺が勝負を好きなのは、勝つことも負けることもあるから。莉子さんにとっては、勝負なんて負けるだけのはずなのに。それでも辞めずに、真剣に勝負を続けるこの人を尊敬する。ただ負けを引き延ばすだけの勝負は、俺には出来ない。
『小林、緊急脱出。5-0、勝者米屋陽介』
30分もかかっちまったか。向こう側からため息が聞こえる。
「一本も獲れなかったか〜……」
「でも30分もかかったっすよ。手強かったっす」
俺がこの人を尊敬するのは、こうやって普通に落ち込む弱い人だからだ。莉子さんは別に、自分の戦い方を割り切ってない。だからこそ、俺はすごいと思う。
「いつになったら米屋くんに勝てるのかな」
もう勝ってるよ、とは口に出来ず。俺の気持ちを知られるのは小っ恥ずかしいし、なにより理解はしてもらえなさそうだ。
「じゃあもっかい戦ります?」
「お願いしていい?」
「もちろん」
勝つのが分かりきった勝負なんて、この人としかしない。莉子さんが弱くたって、俺は莉子さんとの勝負が好きだ。
ぼふん、とベッドの上に落下する。久々の感覚。あまり好きではない。普通に背中痛いし。
「やられた〜マジあれは無理だわ」
「お疲れ様〜」
モニター室では、まだ忙しく柚宇さんが機械を操作していて、画面の中では太刀川さんが戦っている。莉子さんはぼんやり画面を見つめていて、そんな莉子さんを唯我が伺い見ている。試合見ろ。
「唯我、お茶淹れて」
「いや僕今試合見てますが」
「いいから淹れろ」
圧をかければ、唯我は涙目で給湯室に引っ込んだ。さて。莉子さんの隣に立つ。予想通り、どこか元気がない。唯我がいたら、この人は弱音を吐かない。
「……莉子さん、落ち込んでる?」
莉子さんは今日の試合、誰よりも先に落とされた。当真さんの狙撃だから、狙われたら誰だってああなると思う。でも、開幕早々になにも出来ずに落とされたのは、気にするだろう。
「……なんも出来なかった」
「仕方ないですよ」
「やっぱ私にこの隊は、相応しくないんじゃないかな」
「それは絶対ない」
俺が今日落とされたのは、莉子さんの援護がなかったからだ。いるのといないじゃ、状況が全然違う。今日は上手くいかなかっただけで、それで莉子さんがいらないということにはならない。
「俺と莉子さんが組んだら、抑えられない相手なんていない。前にも言ったっしょ」
「それは出水が強いだけで、組む相手は誰だって……シールド張るのは誰でも出来るでしょ」
思った以上に、凹んでるな。こぼれ落ちそうな涙を、なんとか引っ込ませたい。
「俺はあんたと組みたいんだよ」
ちょっと嘘吐きかな、と自分を省みる。別に組む相手にこだわりなんて、本当のところはない。莉子さんじゃない誰か適任がいれば、普通に組むと思う。俺はそこまでこの人にこだわっていない。けれど。
「莉子さんじゃなきゃ、嫌だ」
この人が泣かないで済むなら、嘘だってなんだっていいじゃないか。それくらいは、思ったっていいだろう。太刀川さんがたまたま選んで、たまたま一緒に隊を組んでいる。そんな偶然を、俺は愛している。偶然が選んだのが莉子さんで、よかったなと思ってるから。貴方の心を守れるなら、ちょっとした嘘も吐くよ。
「……もうちょっと、頑張る」
「おう、無理すんな」
「出水の相棒名乗れるように、頑張る」
瞳に少し力が戻った。ほっとする。画面に目を移すと、結局太刀川さんが孤軍で生き残っていた。ギリギリだけど。
「勝っちゃったね」
「な。太刀川さんすげー」
隊長がこれほど強いと、引け目を感じる時だってあるだろう。俺はちょっとサボっても大丈夫だな、ラッキーくらいにしか思わないけど。莉子さんが真面目に仕事をするから、俺も頑張らなくちゃと真面目なフリが出来る。
「次は俺もフルアタックしたいっす」
要望を添えれば、莉子さんは困ったように笑った。そうだよ、あんたがいないと俺が暴れらんないでしょ。
「努力するよ」
「楽しみにしてる」
次のランク戦も楽しみだ。次は1位らしく、余裕で勝ちたいな。
廊下にて
ランク戦で、真っ先に落とされた。なにも抵抗出来ず、なにも残せずに。落ち込んでいる暇はない。落ち込んで甘えていたいけど、そんなのは時間の無駄だから。気持ちを切り替えて、個人ランク戦ブースに向かう。少しでも強くなりたい、少しでも理想に近づくために。
「おっ莉子ちゃんじゃん。さっきはご馳走さん」
「……当真くん」
廊下で当真くんにばったり会った。今日私がランク戦で落ちた原因張本人。当真くんは飄々とした顔で、私の顔を覗き込むと、ハッと軽く笑った。
「落ち込んでやんの」
「落ち込んでない!」
「嘘つけ。あんた顔に出やすいもんな」
「〜っ!だって、なんも出来なかったもん!」
「そう怒んなよ〜」
当真くんに怒っても、仕方ないのだけど。当真くんが私を狙わなければ落ちなかったので、文句の一つも言いたくなる。けど、なにを言おうが睨みつけようが、当真くんはのらりくらりと躱すだけ。悔しい。
「むしろ俺に撃たれたんだから、もうちょい自信持ってもいいんじゃねーの?」
「なにそれ」
「無駄な弾は撃たねーよ」
「??」
意味がよく分からず首を傾げると、当真くんは遠慮なく大笑いした。分からないのが恥ずかしくなってきたが、分からないものは分からない。
「ちょっと!どういう意味!」
「あんたを評価してるから、最優先で撃ったってことだよ」
「!!」
「撃ちやすいのも勿論あるけど?莉子ちゃんほっといて太刀川隊に勝てるとも思わないねぇ」
当真くんは首の後ろで手を組んで、ちょっとだけ私を気遣うような目配せをした。当真くんの言葉を頭で反復して、噛み砕く。私の中にそんな視点はなかった。弱くて浮いた駒だから、適当に落とされたとばかり思っていた。弱いからダメなんだと。
「ちょっと無理してでも落としときたい駒なのよ、莉子ちゃんは」
「弱いからじゃなくて?」
「弱いけどあんた仕事はするだろ。厄介」
弱いは弱いのか……考え込んでいたら、デコピンが飛んできた。
「あ痛」
「もっとシンプルに考えりゃいいだろ。悪い方にばかり考えるの、悪いクセだぜ」
「……はい、それはごもっとも」
どっちが歳上なのか、分かったもんじゃない。当真くんはヒラヒラ手を振りながら、私の横を通り過ぎる。
「じゃあな。莉子ちゃんはちゃんと働いてると思うぜ?自信がついたら怖いくらいだね」
ひょろっと長い背中を見送る。彼なりに励ましてくれたのだろうか。私が撃たれたのは、弱いからだけじゃない。警戒してくれたから。確かにそう思えれば、少し気が楽になった。
「……個人ランク戦行こ」
私は本来の目的に戻った。やるべきことは変わらない。少しでも強くなって、太刀川さんや出水の負担を減らす。相手に圧をかける。気を引き締めて、個人ランク戦ブースに向かった。
ブースにて
学校の帰り、いつもの通り個人ランク戦のブースに来る。夜の部隊ランク戦まで、まだ時間がある。時間ギリギリまで、戦闘をしていたかった。片っ端からランク戦を申し込み、相手をしてもらう。勝っても負けても、勝負は楽しい。
「おっ」
珍しい名前を見つけて、早速声をかける。莉子さんがここに来るのは久しぶりだ。音声を繋ぐ。
「莉子さん、なんか悩んでんの?」
莉子さんがここに来る時は、大抵なにか悩んでいる時だ。なにかに躓くと、ここに来る。
「強くなりたくて。米屋くん、勝負して!」
「いいっすよー」
強くなりたいと、莉子さんはいつも言う。今日のは大丈夫なやつだ。大丈夫じゃない時は、悲痛で辛そうな声になる。そういう時は、相手をしない。仮想空間に転送される。莉子さんが身構えたのを確認し、俺も構える。
『5本勝負、開始』
アナウンスと共に、動き始める。莉子さんは下がり気味にアステロイドを撃つ。読めていたので、横に回って左側から槍を薙ぐ。シールドでガードされる。一歩下がって、もう一度突く。シールドは割れない。
「相変わらず、ガード固いな〜」
もう一度突けば割れるだろ。踏み込もうとしたが、莉子さんがシールドを解除して射撃動作に入ったのが見えた。
「おっと」
後ろに退いて、さらにそこから背後に回る。莉子さんが俺に向き直る。思い切り首を狙って突く。莉子さんはシールドを再度展開したが、俺の方が速い。
『小林、緊急脱出。1-0、米屋リード』
「速……」
「どんどんいくっすよー」
莉子さんにとって、俺は苦手な相手だ。莉子さんは素早い相手を捕まえるのが得意じゃない。そもそも、莉子さんは相手を倒すことが上手くない。じゃあなにが出来るかっていうと、莉子さんは戦場に立ち続けることが上手い。
(今のは獲れただろ)
幻踊を起動したのだが、それを見越してシールドを張られた。絶対獲ったと思ったので悔しい。勝負を重ねるごとに、莉子さんが粘る時間は伸びる。ポイントや戦績では評価出来ない強さが、この人にはある。
(瞳が綺麗なんだよなぁ)
勝てない勝負に挑み続けることは、苦痛なはずだ。俺が勝負を好きなのは、勝つことも負けることもあるから。莉子さんにとっては、勝負なんて負けるだけのはずなのに。それでも辞めずに、真剣に勝負を続けるこの人を尊敬する。ただ負けを引き延ばすだけの勝負は、俺には出来ない。
『小林、緊急脱出。5-0、勝者米屋陽介』
30分もかかっちまったか。向こう側からため息が聞こえる。
「一本も獲れなかったか〜……」
「でも30分もかかったっすよ。手強かったっす」
俺がこの人を尊敬するのは、こうやって普通に落ち込む弱い人だからだ。莉子さんは別に、自分の戦い方を割り切ってない。だからこそ、俺はすごいと思う。
「いつになったら米屋くんに勝てるのかな」
もう勝ってるよ、とは口に出来ず。俺の気持ちを知られるのは小っ恥ずかしいし、なにより理解はしてもらえなさそうだ。
「じゃあもっかい戦ります?」
「お願いしていい?」
「もちろん」
勝つのが分かりきった勝負なんて、この人としかしない。莉子さんが弱くたって、俺は莉子さんとの勝負が好きだ。