本編
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充実した毎日の中、そういえば迅は元気だろうかと連絡をとった。既読無視が1時間続いたあと、「会えるかな」と返事が来たので「いいよ」と答えた。着替えて、外を出歩く。今日はいい天気だ。大通りに出る歩道の曲がり角、迅が建物に寄りかかるようにして立っていた。近寄って、顔を覗き込む。白い顔をしていた。
「大丈夫?」
「ん……」
肯定にしては頼りない、掠れた声。迅が戸惑いながら手を差し出すので、両手で包む。しっかりと握れば、やんわり握り返される。
「ちょっと歩こう」
迅の手を引き、駅に向かって歩く。途中、迅が辛そうに目を閉じる。目を閉じたまま、私と繋ぐ手を頼りに歩く。ちょっと危ないよな、と思ったので、途中の公園でベンチに座った。迅がなにを飲みたいのか正直分からないけど、いつも炭酸飲料を飲んでる気がするのでサイダーを買って渡した。迅は封も開けずに、ペットボトルを眺めていた。
「俺が『迅悠一』をやめたら、莉子ちゃんはどうする?」
「迅の新しい名前、私がつけていいの?」
「……それもいいなぁ」
迅が空を見上げるので、つられて見る。空は高く、青く澄んでいる。鳩が一羽、青を横切っていく。
「辛いなら開店休業でもいいじゃない。極端なこと、しなくてもいいよ」
「そうだね」
しばらく、静かな時間が流れた。迅はペットボトルの封を切ると、サイダーを仰いで飲んだ。私は、家から持ってきた烏龍茶を飲む。今日は比較的暖かいが、風が吹き抜けると冷たかった。マフラーを持ってくればよかった。いつもなら忘れないんだけど。
「前にも聞いたけどさ。神様っていると思う?」
神様になりたくない誰かさんがそう訊ねる。
「私は最近、神様はいる気がしてんだ。上手くいきすぎてて」
それが迅のおかげなのか、神様のせいなのかは知らないけれど。迅は目を丸くしていた。なにかおかしなこと、言ったかな。
「莉子ちゃんは、現実に満足してるの?」
「不満はあるけど、不足はないよ。自分の受け取り方次第だろ」
「神様って不平等だと思うんだけど」
「でも、意外とハッピーエンド主義じゃない?ハッピーエンドになるなら、その手前でどんなに苦しめてもいいとは思ってそうだけど」
夜明けのオタクというか?神様を俗っぽい例えに当てはめて笑う。迅も、少しだけど笑ってくれた。
「結局、ハッピーエンドかどうかを決めるのは自分自身だよ」
どんな状況でも、どんな状態でも。誰かが不幸だと指差しても。自分が幸せと思うなら、それが全てじゃないか。
「迅は幸せ?」
「……どうだろう。でも、可哀想ではないと思う」
迅は私に向き直ると、おもむろに私の頬に触れた。摘んだり、撫でたり。好きなようにさせた。
「もう少し、続けようと思う」
「10年でも20年でも、続けようよ」
私はきっと、隣にいるよ。君が望んでくれるなら。頬に触れている手を取って、揉んで。手を合わせた。私より随分大きい手は、すがるように私のを握り込んだ。
「大丈夫だよ」
いつも私が迅に言われること、今日は私が言ってあげるんだ。迅は涙は流さずに泣いていた。まだ太陽は高く、全てを照らし出していた。
「大丈夫?」
「ん……」
肯定にしては頼りない、掠れた声。迅が戸惑いながら手を差し出すので、両手で包む。しっかりと握れば、やんわり握り返される。
「ちょっと歩こう」
迅の手を引き、駅に向かって歩く。途中、迅が辛そうに目を閉じる。目を閉じたまま、私と繋ぐ手を頼りに歩く。ちょっと危ないよな、と思ったので、途中の公園でベンチに座った。迅がなにを飲みたいのか正直分からないけど、いつも炭酸飲料を飲んでる気がするのでサイダーを買って渡した。迅は封も開けずに、ペットボトルを眺めていた。
「俺が『迅悠一』をやめたら、莉子ちゃんはどうする?」
「迅の新しい名前、私がつけていいの?」
「……それもいいなぁ」
迅が空を見上げるので、つられて見る。空は高く、青く澄んでいる。鳩が一羽、青を横切っていく。
「辛いなら開店休業でもいいじゃない。極端なこと、しなくてもいいよ」
「そうだね」
しばらく、静かな時間が流れた。迅はペットボトルの封を切ると、サイダーを仰いで飲んだ。私は、家から持ってきた烏龍茶を飲む。今日は比較的暖かいが、風が吹き抜けると冷たかった。マフラーを持ってくればよかった。いつもなら忘れないんだけど。
「前にも聞いたけどさ。神様っていると思う?」
神様になりたくない誰かさんがそう訊ねる。
「私は最近、神様はいる気がしてんだ。上手くいきすぎてて」
それが迅のおかげなのか、神様のせいなのかは知らないけれど。迅は目を丸くしていた。なにかおかしなこと、言ったかな。
「莉子ちゃんは、現実に満足してるの?」
「不満はあるけど、不足はないよ。自分の受け取り方次第だろ」
「神様って不平等だと思うんだけど」
「でも、意外とハッピーエンド主義じゃない?ハッピーエンドになるなら、その手前でどんなに苦しめてもいいとは思ってそうだけど」
夜明けのオタクというか?神様を俗っぽい例えに当てはめて笑う。迅も、少しだけど笑ってくれた。
「結局、ハッピーエンドかどうかを決めるのは自分自身だよ」
どんな状況でも、どんな状態でも。誰かが不幸だと指差しても。自分が幸せと思うなら、それが全てじゃないか。
「迅は幸せ?」
「……どうだろう。でも、可哀想ではないと思う」
迅は私に向き直ると、おもむろに私の頬に触れた。摘んだり、撫でたり。好きなようにさせた。
「もう少し、続けようと思う」
「10年でも20年でも、続けようよ」
私はきっと、隣にいるよ。君が望んでくれるなら。頬に触れている手を取って、揉んで。手を合わせた。私より随分大きい手は、すがるように私のを握り込んだ。
「大丈夫だよ」
いつも私が迅に言われること、今日は私が言ってあげるんだ。迅は涙は流さずに泣いていた。まだ太陽は高く、全てを照らし出していた。