可能性の話
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明日、17歳になる。
今日は午後から任務で、学校はないのでゆっくり寝ていた。朝目が覚めると必ず会いたくなるが、毎日連絡するなんて鬱陶しいだろうし。君に煙たがられたくない。けれど、今日は任務の時間が被っていて、顔を見れて安心する。帰りに、駅前で一緒に夕飯を食べようと約束していた。それが楽しみで浮かれていたようで、王子にバレて揶揄われた。でも、楽しみなのには変わりなく、任務はあっという間に過ぎた。換装を解くと、春の風が吹いて心地よかった。
「お疲れ様!」
莉子がてちてちと、効果音がつきそうな歩き方で駆け寄ってくる。自然と頭に手が伸びて、撫でていた。莉子は慣れっこで俺に頭を委ねる。愛しくて仕方ないのを、誤魔化すようにメガネをあげて。なにも言わず背を向けて歩き出す。莉子はちゃんとついてくる。
「今日ね、太刀川さんに褒められた!」
「よかったなァ」
「出水のサポートも上手く出来た〜」
莉子は俺になんでも話してくれる。弾んだ声が可愛らしくて、耳に心地よい。どんなに聞いても飽きなかった。たまに、声を聞くことに集中し過ぎて、話の内容がぼける。上手いこと相槌を打って誤魔化していた。
「今、聞いてなかったでしょ?」
莉子がむくれる。それすら可愛くて、頷いて白状する。もぉ〜とは言うが、莉子は怒らない。一からまた話を繰り返してくれる。俺に話を聞いて欲しくて仕方がないようで、繰り返し。話題は尽きない。莉子がなにも気にせず、元気に話すのは、俺の隣でだけ。多分絶対そう。
「なに食べるの?」
駅前に着いて、莉子がきょろきょろと辺りを見渡す。通りいっぺんのものは食べられるが。
「莉子の好きなもんでいい」
「うーん、じゃあパスタ食べたい」
パスタ率、高けぇなァ。別に構わないが。よく行く店に足を運ぶ。
「こんばんは〜」
チェーン店で店員も出迎えたりしないのに、莉子はいつも店に入る時挨拶をする。なんだか可笑しくて、可愛らしくて。いつも笑ってしまうが、莉子はそんなこと知らないだろう。バレてないと思う。席について、莉子がメニューを広げる。
「これにする」
莉子は注文を決めるのが早い。予想通り、いつものトマトソースのパスタ。オリーブが入ってて美味しいと毎度言う。俺は別に慌てず、ゆっくりメニューを眺めた。莉子が足をぶらつかせている。機嫌がいいんだろう。
「決めたぞ」
「はーい」
店員を呼んで、オーダーを告げる。莉子は大盛りにした。俺は迷って、まぁ食えるだろうと大盛りを頼んだ。ドリンクバーを取ったので、交互にドリンクを取りに行く。莉子がいつも通りウーロン茶を取ってきたのを見て、分かってるんだったら俺だけ行って取ってきてやればよかったと後悔する。気遣いの出来る男になりたいが、莉子相手だとどうにも気が抜ける。
「4月も終わるね〜」
能天気に莉子がそう溢す。分かってんのかな。前にすっぽかされたので、不安になる。
「俺、明日誕生日なんだが」
「あっ」
忘れてたな。忘れてただろ。いつものことだが、少しショックだ。じとっと睨むと、決まり悪そうに縮こまる。そんな様子に絆されて、すぐ許してしまうんだ。
「忘れてないよ、覚えてる」
「嘘つけ」
「本当、覚えてるけど、明日がその日だって自覚がなかっただけ」
「忘れてんじゃねぇか」
毎年、同じ言い訳を聞いてる。莉子の毎日が、充実してるってことなんだろう。それは嬉しいことだが。日にちと曜日くらい、意識した方がいいと思う。
「プレゼントは、ちゃんと買ってあるよ」
「楽しみだなァ」
莉子はもう許されたとばかりに、平然とお茶を飲んでいる。まだ約束出来てない。ちょっとばかり、緊張する。俺もお茶をひと口飲んだ。
「……明日、一緒にいてぇんだが」
莉子と目が合う。莉子は小さく笑った。それだけで胸が締め付けられて甘い。
「いいよ」
「ん」
礼も言えない。恥ずかしくて、目を逸らして。心臓がうるさいのを、落ち着けるために深呼吸した。俺が莉子のこと好きなのなんて、バレバレだろうに。莉子は、付き合おうとは言ってくれない。俺から告げる資格はない。でも、好きでいるので精一杯で、このままでもいいかななんて思う。幼馴染でも充分なんだ。君の1番側にいられれば。
「プッタネスカとカルボナーラ、お持ちしました」
店員が丁寧に料理を置いて、去っていく。莉子はフォークを俺の分も手に取り、渡してくれる。
「いただきます」
ちゃんと手を合わせて、いただきますを忘れずするとこも好きだ。食べてる時はあまり話さず、料理が冷めないうちにしっかり食べるとこも、大盛りをぺろっとたいらげるとこも好きだ。好きで溢れてる。見惚れてしまう。
「冷めるよ」
怒られて、渋々カルボナーラを口に運ぶ。肘をついた莉子が俺を見ていて、鼓動が早鐘を打つ。莉子にも、俺を好きになってほしい。情けないところばっか、見られるわけにはいかない。かっこつけたい。
「口、ついてる」
莉子が紙ナプキンを俺の口に添える。どうでもよくなってしまう。情けなくても、俺を好きになってほしい。それに多分、君は俺を好き。
今日は午後から任務で、学校はないのでゆっくり寝ていた。朝目が覚めると必ず会いたくなるが、毎日連絡するなんて鬱陶しいだろうし。君に煙たがられたくない。けれど、今日は任務の時間が被っていて、顔を見れて安心する。帰りに、駅前で一緒に夕飯を食べようと約束していた。それが楽しみで浮かれていたようで、王子にバレて揶揄われた。でも、楽しみなのには変わりなく、任務はあっという間に過ぎた。換装を解くと、春の風が吹いて心地よかった。
「お疲れ様!」
莉子がてちてちと、効果音がつきそうな歩き方で駆け寄ってくる。自然と頭に手が伸びて、撫でていた。莉子は慣れっこで俺に頭を委ねる。愛しくて仕方ないのを、誤魔化すようにメガネをあげて。なにも言わず背を向けて歩き出す。莉子はちゃんとついてくる。
「今日ね、太刀川さんに褒められた!」
「よかったなァ」
「出水のサポートも上手く出来た〜」
莉子は俺になんでも話してくれる。弾んだ声が可愛らしくて、耳に心地よい。どんなに聞いても飽きなかった。たまに、声を聞くことに集中し過ぎて、話の内容がぼける。上手いこと相槌を打って誤魔化していた。
「今、聞いてなかったでしょ?」
莉子がむくれる。それすら可愛くて、頷いて白状する。もぉ〜とは言うが、莉子は怒らない。一からまた話を繰り返してくれる。俺に話を聞いて欲しくて仕方がないようで、繰り返し。話題は尽きない。莉子がなにも気にせず、元気に話すのは、俺の隣でだけ。多分絶対そう。
「なに食べるの?」
駅前に着いて、莉子がきょろきょろと辺りを見渡す。通りいっぺんのものは食べられるが。
「莉子の好きなもんでいい」
「うーん、じゃあパスタ食べたい」
パスタ率、高けぇなァ。別に構わないが。よく行く店に足を運ぶ。
「こんばんは〜」
チェーン店で店員も出迎えたりしないのに、莉子はいつも店に入る時挨拶をする。なんだか可笑しくて、可愛らしくて。いつも笑ってしまうが、莉子はそんなこと知らないだろう。バレてないと思う。席について、莉子がメニューを広げる。
「これにする」
莉子は注文を決めるのが早い。予想通り、いつものトマトソースのパスタ。オリーブが入ってて美味しいと毎度言う。俺は別に慌てず、ゆっくりメニューを眺めた。莉子が足をぶらつかせている。機嫌がいいんだろう。
「決めたぞ」
「はーい」
店員を呼んで、オーダーを告げる。莉子は大盛りにした。俺は迷って、まぁ食えるだろうと大盛りを頼んだ。ドリンクバーを取ったので、交互にドリンクを取りに行く。莉子がいつも通りウーロン茶を取ってきたのを見て、分かってるんだったら俺だけ行って取ってきてやればよかったと後悔する。気遣いの出来る男になりたいが、莉子相手だとどうにも気が抜ける。
「4月も終わるね〜」
能天気に莉子がそう溢す。分かってんのかな。前にすっぽかされたので、不安になる。
「俺、明日誕生日なんだが」
「あっ」
忘れてたな。忘れてただろ。いつものことだが、少しショックだ。じとっと睨むと、決まり悪そうに縮こまる。そんな様子に絆されて、すぐ許してしまうんだ。
「忘れてないよ、覚えてる」
「嘘つけ」
「本当、覚えてるけど、明日がその日だって自覚がなかっただけ」
「忘れてんじゃねぇか」
毎年、同じ言い訳を聞いてる。莉子の毎日が、充実してるってことなんだろう。それは嬉しいことだが。日にちと曜日くらい、意識した方がいいと思う。
「プレゼントは、ちゃんと買ってあるよ」
「楽しみだなァ」
莉子はもう許されたとばかりに、平然とお茶を飲んでいる。まだ約束出来てない。ちょっとばかり、緊張する。俺もお茶をひと口飲んだ。
「……明日、一緒にいてぇんだが」
莉子と目が合う。莉子は小さく笑った。それだけで胸が締め付けられて甘い。
「いいよ」
「ん」
礼も言えない。恥ずかしくて、目を逸らして。心臓がうるさいのを、落ち着けるために深呼吸した。俺が莉子のこと好きなのなんて、バレバレだろうに。莉子は、付き合おうとは言ってくれない。俺から告げる資格はない。でも、好きでいるので精一杯で、このままでもいいかななんて思う。幼馴染でも充分なんだ。君の1番側にいられれば。
「プッタネスカとカルボナーラ、お持ちしました」
店員が丁寧に料理を置いて、去っていく。莉子はフォークを俺の分も手に取り、渡してくれる。
「いただきます」
ちゃんと手を合わせて、いただきますを忘れずするとこも好きだ。食べてる時はあまり話さず、料理が冷めないうちにしっかり食べるとこも、大盛りをぺろっとたいらげるとこも好きだ。好きで溢れてる。見惚れてしまう。
「冷めるよ」
怒られて、渋々カルボナーラを口に運ぶ。肘をついた莉子が俺を見ていて、鼓動が早鐘を打つ。莉子にも、俺を好きになってほしい。情けないところばっか、見られるわけにはいかない。かっこつけたい。
「口、ついてる」
莉子が紙ナプキンを俺の口に添える。どうでもよくなってしまう。情けなくても、俺を好きになってほしい。それに多分、君は俺を好き。