弓場と迅の話
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莉子ちゃんがえらく塞ぎ込んで、寝室から出てこない絵が視えた。すぐに連絡をしたけれど、返事がない。電話も効果がなく、出てもらえない。弓場ちゃんにも話を聞いてみたが、はぐらかされた。どうしたものか。気にかかって仕方がない。通常の業務に支障が出るので、一か八か会いにいくことにした。表札に名字が書いてない、マンションの101号室。ここから出てくる絵が視えるから、ここで合っているはず。恐る恐るインターホンを押した。応答もなく、いきなりドアが開いたので肩を揺らす。「不用心でしょ、ちゃんと確認して」叱ろうと思った言葉は飲み込んだ。莉子ちゃんがあまりにもどんよりしてたから。
「大丈夫……?」
慎重に肩に触れる。ふるふると莉子ちゃんが頭を横に振る。どうしよう、どうしてあげたらいい。放っておいてもいずれはいつもの莉子ちゃんに戻る、そんなのは視えている。けれど、いち早く苦しみから解放してあげるには、なんて声をかけたらいい。誰かを救う言葉までは、未来視は教えてくれない。
「なにかあった?」
こくん、と莉子ちゃんが頷く。聞かせてくれる?と言えばまた頷く。そっと中へ入れてもらえるよう誘導した。物が多い散らかった部屋の、奥のソファーに案内される。ちょこんと、莉子ちゃんが座った。L字型のソファーの、手前に俺も座る。莉子ちゃんは話さない。あやすように背中を撫でた。
「どうしたの、話してみて」
「う……」
莉子ちゃんの口は重たそうで、表情はどこまでも暗い。ほぐしてあげたくて、頬に触れる。親指で撫でてあげれば、安心したように目を細めた。
「大丈夫だよ」
「…………拓磨に、怒られた」
「弓場ちゃんに?」
意外な返答に、目を見開く。読み逃してたな。でも、弓場ちゃんが莉子ちゃんを凹むほど怒るなんて、あまり考えられない。
「なんで?」
「…………男といすぎ、って」
瞬間的に弓場ちゃんに苛立ちが湧いた。好きな女の子こんなに追い詰めて言うことかよ。妬きもちを妬くなとは言わないが、行き過ぎてないか。自分にも責任の一端があることは忘れて、弓場ちゃんを責めてしまいそうになる。俺がイライラしても仕方がない。莉子ちゃんのケアが先。言い聞かせて、先を促す。
「喧嘩に、なった」
「うん、辛かったね」
「私、迅といたらダメ……?」
「ダメなわけないじゃん」
即答したら、莉子ちゃんは声をあげて泣き出した。涙を手で擦るので、やめさせる。声を押し殺そうと無理をするので、しゃっくりが出る。背中をさすってやる。ちょっと戸惑ったけど、胸に抱き寄せた。莉子ちゃんは縋り付く。こんなにボロボロにしたあいつが憎い。
「莉子ちゃんが俺から離れたいなら、俺は止めないけど。弓場ちゃんに気を遣う必要、ないでしょ」
「うん」
「付き合ってるわけじゃないんだし」
「……うん」
「莉子ちゃんの好きなようにしたらいいよ」
落ち着くまで、黙って背中を撫でていた。徐々にしゃっくりは治まって、鼻をすする音がする。ティッシュを取ってあげて、鼻をかませた。目尻も鼻も赤い。可哀想に。けれど、少し気持ちが浄化されたのか、さっきよりすっきりとした顔になった。溜め込んでしまうんだな、自分の正直な気持ち。解放出来るように、俺が上手く立ち回らなきゃ。
「なんも心配することないよ」
俺がそう言えば、莉子ちゃんは安心したように頷いた。頭に触れて、髪を指に通す。もしかしたら、お風呂に入れてないのかも。こんなになるまで、1人でいないでよ。
「今度からこうなる前に、俺に連絡して」
「う……」
「うん?」
「約束、辛い」
弱々しい君の視線に、俺があいつと同じことをしていることに気付く。莉子ちゃんを楽にしたいのに、馬鹿みたいだ。慌てて謝る。
「ごめん、どっちでもいい。どっちでもいいけど、出来たら連絡が欲しいよ」
「うん、分かった」
莉子ちゃんは無理に笑った。莉子ちゃんの好きな奴は誰。莉子ちゃんがありのままでいれるのは、誰の隣。必死で未来を視る。彼女の気持ちを浄化に導けるのは、俺であってほしい。
「大丈夫……?」
慎重に肩に触れる。ふるふると莉子ちゃんが頭を横に振る。どうしよう、どうしてあげたらいい。放っておいてもいずれはいつもの莉子ちゃんに戻る、そんなのは視えている。けれど、いち早く苦しみから解放してあげるには、なんて声をかけたらいい。誰かを救う言葉までは、未来視は教えてくれない。
「なにかあった?」
こくん、と莉子ちゃんが頷く。聞かせてくれる?と言えばまた頷く。そっと中へ入れてもらえるよう誘導した。物が多い散らかった部屋の、奥のソファーに案内される。ちょこんと、莉子ちゃんが座った。L字型のソファーの、手前に俺も座る。莉子ちゃんは話さない。あやすように背中を撫でた。
「どうしたの、話してみて」
「う……」
莉子ちゃんの口は重たそうで、表情はどこまでも暗い。ほぐしてあげたくて、頬に触れる。親指で撫でてあげれば、安心したように目を細めた。
「大丈夫だよ」
「…………拓磨に、怒られた」
「弓場ちゃんに?」
意外な返答に、目を見開く。読み逃してたな。でも、弓場ちゃんが莉子ちゃんを凹むほど怒るなんて、あまり考えられない。
「なんで?」
「…………男といすぎ、って」
瞬間的に弓場ちゃんに苛立ちが湧いた。好きな女の子こんなに追い詰めて言うことかよ。妬きもちを妬くなとは言わないが、行き過ぎてないか。自分にも責任の一端があることは忘れて、弓場ちゃんを責めてしまいそうになる。俺がイライラしても仕方がない。莉子ちゃんのケアが先。言い聞かせて、先を促す。
「喧嘩に、なった」
「うん、辛かったね」
「私、迅といたらダメ……?」
「ダメなわけないじゃん」
即答したら、莉子ちゃんは声をあげて泣き出した。涙を手で擦るので、やめさせる。声を押し殺そうと無理をするので、しゃっくりが出る。背中をさすってやる。ちょっと戸惑ったけど、胸に抱き寄せた。莉子ちゃんは縋り付く。こんなにボロボロにしたあいつが憎い。
「莉子ちゃんが俺から離れたいなら、俺は止めないけど。弓場ちゃんに気を遣う必要、ないでしょ」
「うん」
「付き合ってるわけじゃないんだし」
「……うん」
「莉子ちゃんの好きなようにしたらいいよ」
落ち着くまで、黙って背中を撫でていた。徐々にしゃっくりは治まって、鼻をすする音がする。ティッシュを取ってあげて、鼻をかませた。目尻も鼻も赤い。可哀想に。けれど、少し気持ちが浄化されたのか、さっきよりすっきりとした顔になった。溜め込んでしまうんだな、自分の正直な気持ち。解放出来るように、俺が上手く立ち回らなきゃ。
「なんも心配することないよ」
俺がそう言えば、莉子ちゃんは安心したように頷いた。頭に触れて、髪を指に通す。もしかしたら、お風呂に入れてないのかも。こんなになるまで、1人でいないでよ。
「今度からこうなる前に、俺に連絡して」
「う……」
「うん?」
「約束、辛い」
弱々しい君の視線に、俺があいつと同じことをしていることに気付く。莉子ちゃんを楽にしたいのに、馬鹿みたいだ。慌てて謝る。
「ごめん、どっちでもいい。どっちでもいいけど、出来たら連絡が欲しいよ」
「うん、分かった」
莉子ちゃんは無理に笑った。莉子ちゃんの好きな奴は誰。莉子ちゃんがありのままでいれるのは、誰の隣。必死で未来を視る。彼女の気持ちを浄化に導けるのは、俺であってほしい。