弓場と迅の話
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取水塔の上に独り座り込んで、月の光を反射する流れを見ている。川は静かで穏やかで、今日のことをそっと閉じるかのように、水は流れていく。サングラスを通して見る景色は、より鮮明で、厳かに見える。見落としたくないものを、拾ってくれるような気がする。
(今日の夜は静かだな)
未来視も特に慌ただしい景色は映さず、耳に警報音も届かない。月の光と、星明かりが粛々と降り注ぐ夜。遠くに街明かりもぼやけて見える。優しい光に包まれて、心は穏やかな時間に還る。
(じゃあ、またね)
黄昏時に別れたあの子の、声を思い出す。少し掠れた、低めの声。俺の視た未来に、色と温度をつけてくれる声。何気ない場面のひとつひとつが愛おしくて、明日も明後日も似たような場面が繰り返されることを、静かに願っている。きっと、誰しもがそうなんだろうけど。
(明日は、女子会なのかな?)
君が笑顔でいられる未来が一番だ。どう足掻いたって流れてくる未来に、自分がいなくとも然程気にはしない。覗いてしまって、ごめんねと小さく謝るけど、大して悪いとも思っていない。これが俺だし。俺は俺に出来るやり方で、莉子ちゃんを守りたいだけ。月の光は青白く綺麗に、水面を照らす。ぼんやりと追憶を遡って、優しい気持ちを思い起こす。こんな時間があるうちは、自分をまだ人間と名付けられる。
(明日は会えるかな)
未来の隙間に、君と会える時間がないかを探す。無理に会おうとは思わない。それはきっと、君の負担になるし。でも、俺の暇な時間と、君の寂しい時間が、重なったら良い日になるから。見逃さないように、頭の中のスクリーンにかじりついている。他のことも、たくさんたくさん、考えなきゃだけど。一欠片くらい、君のことを気にしていても、バチは当たらないはずだ。上手くやるよ、実力派エリートですから。ひとつ伸びをして、取水塔から飛び降りる。高いところから飛び降りるのが、未だに怖いと言っていた君を思い出して、ちょっと笑った。
(風向きが変わった)
風の吹く方向へ歩く。月も雲に隠れた。薄暗い警戒区域の道を、一人歩く。怖いという感情はどこかに置き忘れた。怖かった日も、あったはずだけど。トリオン体だから、手の温度も感じない。急に、君の頬の温度が恋しくなった。触って、確かめたい。忘れたりなんかしないけど、何度も、何度も。君に触れるたびに、生きているって実感するんだ。実感が欲しい。
「ゲート発生、ゲート発生……」
警報音が鳴り響く。夢みたいな現実を切り抜ける。白昼夢を見ている気分で、敵を倒す。月の光が降り注ぐ。早く眠りたいな。夢で会えるかな、なんてロマンチストみたい。未来視に君が映っても、声はない。夢で会っても、多分ないだろう。やっぱり、直接会いたいな。君の声と温度で、悪夢みたいな現実から目を覚まさせて。俺に出来ることは、なんでもするから。月が綺麗な夜だった。願いをそっと照らすような、優しい夜だった。
(今日の夜は静かだな)
未来視も特に慌ただしい景色は映さず、耳に警報音も届かない。月の光と、星明かりが粛々と降り注ぐ夜。遠くに街明かりもぼやけて見える。優しい光に包まれて、心は穏やかな時間に還る。
(じゃあ、またね)
黄昏時に別れたあの子の、声を思い出す。少し掠れた、低めの声。俺の視た未来に、色と温度をつけてくれる声。何気ない場面のひとつひとつが愛おしくて、明日も明後日も似たような場面が繰り返されることを、静かに願っている。きっと、誰しもがそうなんだろうけど。
(明日は、女子会なのかな?)
君が笑顔でいられる未来が一番だ。どう足掻いたって流れてくる未来に、自分がいなくとも然程気にはしない。覗いてしまって、ごめんねと小さく謝るけど、大して悪いとも思っていない。これが俺だし。俺は俺に出来るやり方で、莉子ちゃんを守りたいだけ。月の光は青白く綺麗に、水面を照らす。ぼんやりと追憶を遡って、優しい気持ちを思い起こす。こんな時間があるうちは、自分をまだ人間と名付けられる。
(明日は会えるかな)
未来の隙間に、君と会える時間がないかを探す。無理に会おうとは思わない。それはきっと、君の負担になるし。でも、俺の暇な時間と、君の寂しい時間が、重なったら良い日になるから。見逃さないように、頭の中のスクリーンにかじりついている。他のことも、たくさんたくさん、考えなきゃだけど。一欠片くらい、君のことを気にしていても、バチは当たらないはずだ。上手くやるよ、実力派エリートですから。ひとつ伸びをして、取水塔から飛び降りる。高いところから飛び降りるのが、未だに怖いと言っていた君を思い出して、ちょっと笑った。
(風向きが変わった)
風の吹く方向へ歩く。月も雲に隠れた。薄暗い警戒区域の道を、一人歩く。怖いという感情はどこかに置き忘れた。怖かった日も、あったはずだけど。トリオン体だから、手の温度も感じない。急に、君の頬の温度が恋しくなった。触って、確かめたい。忘れたりなんかしないけど、何度も、何度も。君に触れるたびに、生きているって実感するんだ。実感が欲しい。
「ゲート発生、ゲート発生……」
警報音が鳴り響く。夢みたいな現実を切り抜ける。白昼夢を見ている気分で、敵を倒す。月の光が降り注ぐ。早く眠りたいな。夢で会えるかな、なんてロマンチストみたい。未来視に君が映っても、声はない。夢で会っても、多分ないだろう。やっぱり、直接会いたいな。君の声と温度で、悪夢みたいな現実から目を覚まさせて。俺に出来ることは、なんでもするから。月が綺麗な夜だった。願いをそっと照らすような、優しい夜だった。