本編
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遠く頭痛がする。悩み事などないけれど。嘘、いくつになっても悩み事は尽きないが、深刻に悩むことは少なくなっただけ。
『現在、おいくつですか?』
アンケート用紙に、19歳です、と書く。全て手書きで書き込むものなので、時間がかかりそうだ。
「これ、どれくらい詳しく書けばいいのかなぁ?」
佐鳥が首を傾げる。嵐山隊隊室に、赤い隊服に混じって黒いロングコートの私がいる。今書いているアンケートは、広報のイベントで使用するもの。基本的なプロフィールから、市民の気になる質問まで、ずらっと並んでいる。
「これ自体を読み上げるわけじゃないから、簡単にでいいんじゃない?」
とっきーが佐鳥にそう返すと、そっかなぁと佐鳥はちょっとめんどくさそうに、記入を再開した。私も、続きを記入するために質問を読む。
『ボーダーにはどれくらいいますか?』
3年半とちょっと、と記入する。多分。数字の計算弱いけど、そんなもんだと思う。
『趣味はありますか?』
小説を書くことと歌うこと、それから人とおしゃべりすること。シーリングスタンプは、書かなくてもいいか。
『好きな人はいますか?』
「随分プライベートなこと聞くなぁ」
思わず、独り言を漏らす。
「そうですね。答えたくないところは、未記入でいいと思います」
藍ちゃんが目線は寄こさずに、そうフォローしてくれた。好きな人が多すぎて、見離されてしまいそうです。好きな曲の歌詞になぞらえて、そう答えた。伝わるかは、分からないけれど。
『ボーダーでは、どんな役割ですか?』
ポジションで言えば、万能手。組織内の役職で言えば、何でも屋?とにかく顔が広い自覚はある。いなくなったら困るだろうと、自信があるわけではないが、私なんかいなくてもと、悲観することはまったくない。
『好きなものを、なんでも教えてください』
生き物全般、特にリクガメとフクロウ。恐竜も幼い頃から大好き。好きな小説はフランツ・カフカの変身。音楽は邦楽をなんでも聴く。画家ならレッサー・ユリイとパブロ・ピカソ、伊藤若冲に岡本太郎。あとポケモンも好き。好きなものはたくさんあるが、書き込みきれないのでこの辺にしておく。
『学校ではどんな生活をしていますか?』
不登校です。大学進学していません、と。
『コンプレックスはありますか?』
特に思い当たらないが、適当に身長が低いこと、と書いておいた。
『大切なものはなんですか?』
家族と仲間、友達。迷わず記入して、これ物理的な品物の話だっただろうかと筆を止める。そうだったとしても、そこまで思い入れの強い物も思い出せないし、この文面だとどちらとも取れるし、いいかと次に進む。
『ボーダーに入って、よかったことはなんですか?』
自分の世界が広がったこと。街のため、誰かのために戦えること、と書いた。のびのびと自分のやりたいことをしながら、社会貢献が出来るこの組織に感謝している。自分の居場所は間違いなくここだ、と胸を張って言える。
『最後に、ボーダー入隊を考えている皆さんに一言お願いします』
顔を上げて、隣の准くんの方を見た。准くんもちょうど書き終わるところのようで、視線に気づいてくれて目が合う。
「どうした?」
「最後、なんて書いた?」
「一緒に戦えるのを楽しみにしていますって」
あぁ、准くんらしいなと思う。准くんがそう言うなら、戦おうと思う子は多いだろう。私もその1人だし。4年前、准くんとザキが真っ先にボーダーに入隊して、あの会見があったから、私はここにいる。何か出来ないかと彷徨っていた。会見を見なくても、同じ答えには辿り着いたと思うけど、ここに導いてくれたのは准くんだと思っている。だから、彼には感謝しているし、大事な仲間の1人であることを嬉しく思う。
『迷うことは普通です。でもなにか変えたいと思うのなら、自分の行動でしか解決はしません。勇気ある決断をお待ちしてます』
そう、なるべく丁寧に字を書いて、アンケートを終えた。あくびをしながら伸びをする。
「莉子、疲れてないか?大丈夫?」
准くんが声をかけてくる。私のメンタルを気遣ってのことだろう。私が精神面で繊細なのは、事実なので。
「嫌な質問もあっただろ?」
「いやぁ、あれくらいなんともないよ。隠してもいないし」
そう答えれば、そうか、と笑ってくれた。全員アンケートの記入が終わり、藍ちゃんがお茶を淹れると言うので手伝いについていく。私は自分を隠さない。自分が自分でいることで、苦しい思いもするけれど。自分らしさを大切に、三門市で生きている。
『現在、おいくつですか?』
アンケート用紙に、19歳です、と書く。全て手書きで書き込むものなので、時間がかかりそうだ。
「これ、どれくらい詳しく書けばいいのかなぁ?」
佐鳥が首を傾げる。嵐山隊隊室に、赤い隊服に混じって黒いロングコートの私がいる。今書いているアンケートは、広報のイベントで使用するもの。基本的なプロフィールから、市民の気になる質問まで、ずらっと並んでいる。
「これ自体を読み上げるわけじゃないから、簡単にでいいんじゃない?」
とっきーが佐鳥にそう返すと、そっかなぁと佐鳥はちょっとめんどくさそうに、記入を再開した。私も、続きを記入するために質問を読む。
『ボーダーにはどれくらいいますか?』
3年半とちょっと、と記入する。多分。数字の計算弱いけど、そんなもんだと思う。
『趣味はありますか?』
小説を書くことと歌うこと、それから人とおしゃべりすること。シーリングスタンプは、書かなくてもいいか。
『好きな人はいますか?』
「随分プライベートなこと聞くなぁ」
思わず、独り言を漏らす。
「そうですね。答えたくないところは、未記入でいいと思います」
藍ちゃんが目線は寄こさずに、そうフォローしてくれた。好きな人が多すぎて、見離されてしまいそうです。好きな曲の歌詞になぞらえて、そう答えた。伝わるかは、分からないけれど。
『ボーダーでは、どんな役割ですか?』
ポジションで言えば、万能手。組織内の役職で言えば、何でも屋?とにかく顔が広い自覚はある。いなくなったら困るだろうと、自信があるわけではないが、私なんかいなくてもと、悲観することはまったくない。
『好きなものを、なんでも教えてください』
生き物全般、特にリクガメとフクロウ。恐竜も幼い頃から大好き。好きな小説はフランツ・カフカの変身。音楽は邦楽をなんでも聴く。画家ならレッサー・ユリイとパブロ・ピカソ、伊藤若冲に岡本太郎。あとポケモンも好き。好きなものはたくさんあるが、書き込みきれないのでこの辺にしておく。
『学校ではどんな生活をしていますか?』
不登校です。大学進学していません、と。
『コンプレックスはありますか?』
特に思い当たらないが、適当に身長が低いこと、と書いておいた。
『大切なものはなんですか?』
家族と仲間、友達。迷わず記入して、これ物理的な品物の話だっただろうかと筆を止める。そうだったとしても、そこまで思い入れの強い物も思い出せないし、この文面だとどちらとも取れるし、いいかと次に進む。
『ボーダーに入って、よかったことはなんですか?』
自分の世界が広がったこと。街のため、誰かのために戦えること、と書いた。のびのびと自分のやりたいことをしながら、社会貢献が出来るこの組織に感謝している。自分の居場所は間違いなくここだ、と胸を張って言える。
『最後に、ボーダー入隊を考えている皆さんに一言お願いします』
顔を上げて、隣の准くんの方を見た。准くんもちょうど書き終わるところのようで、視線に気づいてくれて目が合う。
「どうした?」
「最後、なんて書いた?」
「一緒に戦えるのを楽しみにしていますって」
あぁ、准くんらしいなと思う。准くんがそう言うなら、戦おうと思う子は多いだろう。私もその1人だし。4年前、准くんとザキが真っ先にボーダーに入隊して、あの会見があったから、私はここにいる。何か出来ないかと彷徨っていた。会見を見なくても、同じ答えには辿り着いたと思うけど、ここに導いてくれたのは准くんだと思っている。だから、彼には感謝しているし、大事な仲間の1人であることを嬉しく思う。
『迷うことは普通です。でもなにか変えたいと思うのなら、自分の行動でしか解決はしません。勇気ある決断をお待ちしてます』
そう、なるべく丁寧に字を書いて、アンケートを終えた。あくびをしながら伸びをする。
「莉子、疲れてないか?大丈夫?」
准くんが声をかけてくる。私のメンタルを気遣ってのことだろう。私が精神面で繊細なのは、事実なので。
「嫌な質問もあっただろ?」
「いやぁ、あれくらいなんともないよ。隠してもいないし」
そう答えれば、そうか、と笑ってくれた。全員アンケートの記入が終わり、藍ちゃんがお茶を淹れると言うので手伝いについていく。私は自分を隠さない。自分が自分でいることで、苦しい思いもするけれど。自分らしさを大切に、三門市で生きている。