序章/プロトタイプ
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「じしん打てばいいのでは?」
「バカ唯我相手ひこう2体もいんだぞ」
「通りがよさそうなのはアイアンヘッドだよね〜」
1つのテレビを4人で囲んで、ポケモン対戦をしている。コントローラーは私が握り、戦っているポケモンも私が育てたものだ。私はポケモン廃人一歩手前なくらい、ポケモン対戦が好き。みんなとも対戦はするのだが、使うポケモンも技構成もバレているので、飽きがきてしまう。育成する時間もみんなにはあまりないので、私が対戦をしているのをみんなが観戦することが多い。
「ここ悩むな〜突っ張ってくると思う?」
「倒す算段があるから出してきたんじゃね?」
「釣り出しかもしれないよね〜」
あれこれみんなと相談しながら対戦をするのは楽しい。出水の意見を採用して、ここはポケモンを交換してみる。
「お、読み勝った」
「いいじゃんいいじゃん。押してけ」
試合はこの一手で有利に進んだ。読みを通して、順当に勝つことが出来た。
「やったあ3連勝〜」
「調子いいっすね」
「まぁこっち4人がかりだしね。考える頭多けりゃ強いでしょ」
「でも最終判断は莉子さんじゃん。莉子さんが強いんだよ」
「そーそー。莉子ちゃん読み強いよね〜」
2人に褒められると、嬉しくなる。気分は上がり調子。ポケモンを入れ替えながら、返す言葉を選ぶ。
「……まー私の数少ない特技のひとつだし」
「いや莉子さん多才でしょ」
「いやまぁ……そうか」
歌だったり小説だったり、自信のあるものはいくつかある。けどポケモンに関しては、好きだけどあまり自信はなかった。自信のないものを褒められた時、どう答えればいいのか悩んでしまう。
「ポケモンは自信はないんだよね〜好きだけど」
「えー十分強いよ」
「そうかなぁ」
ゲーマーの柚宇ちゃんが言うのだから、そうなのかもしれない。ちょっと自己評価あげていこ。
「そろそろ任務だからその辺にしておけよ〜」
「はーい」
太刀川さんに呼ばれたので、ゲームのレポートを書いて終了する。今日は16時から防衛任務に入っている。自分のトリガーの調整の為、立ち上がりモニタールームへ移動する。柚宇ちゃんがついてきてくれる。
「今日はなに装備していくの〜?」
「あっ今日は普通にいこうかなと思って」
「アタッカー中心?」
「うん」
私がやればいいことなのに、柚宇ちゃんはわざわざ操作を代わってくれる。柚宇ちゃんがやった方が数段早いので、助かっている。
「スコーピオン2本と、一応メインにハウンドだけいれといたよ〜」
「ありがとう」
トリオン兵の討伐は、攻撃手トリガーのがやりやすい。ランク戦の時は、射手トリガーと銃手トリガーの両立。たまーに狙撃手トリガーも扱う。私はボーダーの何でも屋だ。ポジションの登録は、万能手ということになっている。
「じゃ、柚宇ちゃんいってくるね。今日もオペよろしくね」
「任せろ〜。いってらっしゃーい」
太刀川さん、出水の後ろをついて歩く。私の後ろから唯我くんがついてくる。普段通り防衛任務に出発した。
廊下に出たら、任務終わりの諏訪隊と鉢合わせた。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ。今朝の配信見てたぞふくろう」
「あ、ありがとうございまーす!」
諏訪さんが声をかけてくれる。私は「ふくろう」というハンドルネームでボーダーの広報も担当する。ボーダーとは関係がないが、ライブ配信アプリで歌のラジオ配信もよくしている。それをみんな知ってるので、配信にはよく遊びに来てもらっている。
「また上手くなったんじゃねぇか?」
「まぁ俺、歌は上手いので」
「自分で言うかよ」
諏訪さんがハッと軽く笑って、私の頭を撫でる。そうして、通り過ぎていく。煙草の香りが、鼻をくすぐった。
「じゃあな、任務頑張れよ」
「はーい!またね諏訪さん」
堤さん、日佐人くんも続いて通り過ぎる。
「俺も聴いてた。よかったよ」
「ありがとうございます!」
堤さんが一言くれて、日佐人くんは会釈をして去っていった。
「調子良さそうだな」
太刀川さんが私に声をかける。この人はいつも、私の体調を気遣ってくれる。太刀川さんには頭が上がらない。どうしようもないところもあるけれど。
「うん、わりかし調子いいよ」
「よし。今日も頼んだぞ」
太刀川さんの背中は大きく見える。隊長がいれば、怖いことなんてほとんどない。ただ、自分が体調を崩して迷惑をかけることだけが怖かった。自分のせいで、みんなに負担をかけることは怖かった。
今日の防衛任務は、思った以上に忙しかった。倒しても倒しても、トリオン兵が湧いてくる。稼ぎ時だからいいけれども。私は少し下がり気味で、太刀川さんが無視したトリオン兵を捌いていた。後ろにトリオン兵の反応があったが、唯我くんがいるので大丈夫だろうと、黙って目の前の敵を倒していた。
『トリオン供給機関破損、緊急脱出』
「!?」
急なアナウンスに、少し混乱する。唯我くんが緊急脱出したと把握するのに、数秒要する。その一瞬の隙に片腕を持っていかれて、体勢を崩してしまう。咄嗟に出したハウンドで、目の前のモールモッドは対処出来た。後ろから来る2体目に間に合わない。
「アステロイド!」
「!!出水、」
出水のアステロイドで、モールモッドは粉々になる。なんとか緊急脱出せずに済んだ。
「大丈夫っすか?莉子さん」
「大丈夫。ありがとう出水」
出水に引っ張り起こされて、立ち上がる。太刀川さんはどんどん前に行ってしまう。ついて行かなければ。太刀川さんも、いけると思って進んでるのだろうから。
「……唯我くん、ごめん!私の警告 不足だ」
私が後ろから来るモールモッドについて、唯我くんと情報共有していれば、唯我くんは緊急脱出せずに済んだはずだ。確認していれば。見えてると思って、なにも言わなかった私のせいである。
「いやどう考えても唯我のミスだから。甘やかさなくていいっすよ」
出水はそれだけ言って、太刀川さんの後を追っていってしまった。唯我くんから返事はない。足が止まっていると、
「莉子ちゃんは今任務に集中しよ〜」
と、柚宇ちゃんが声をかける。私は太刀川さんの背中を追った。頭では、唯我くんのことを気にかけながら。くそ、気持ちの切り替えは苦手だ。
粗方トリオン兵が片付いて、任務時間も終わりを迎えようとしていた。次の隊に引き継がないでよくて、よかったと思う。
「はぁ〜斬った斬った。お疲れ〜」
「お疲れ様です」
太刀川さんの横を歩く。太刀川さんはストレッチをしながら、なんともなしに呟いた。
「今日のあれ、お前は気にしなくていいと思うぞ」
「!、唯我くんのことですか」
「そう。なんでもかんでも、自分のせいにするな。お前が周りのこと考えてるように、俺たちだって考えてる。お前1人で全部をカバーするのは無理だ」
「……はい」
それはその通りだ。私が全部をカバー出来るわけない。烏滸がましい。
「けど、「こうしたらよかったかも」って、発見が出来るのはいいことだ。まだまだ成長出来るってことだからな。だから、落ち込むなんてしないで次に繋げろよ」
「はい!!」
そっか、落ち込まなくていいのか。太刀川さんは、落ち込みやすい私を心配してくれたんだろう。本当にありがたい。私はくよくよ気にしないことにした。気分は少し晴れて、やり切った達成感に包まれた。それでも、少し引っかかっていたのは、唯我くんが落ち込んでないだろうかということだった。私は、携帯を出して唯我くんとのトークを開き、一言メッセージを送った。
『唯我くん、大丈夫?』
すぐに既読がつき、返信が返ってくる。
『莉子さんを危険に曝してすみませんでした』
『いいよ、大丈夫。仕方ないよ』
『……僕は本当にダメですね』
落ち込んでいる人を、励ます時にはとても気を使う。明るい言葉で励ませばいいとは限らない。落ち込んでいる時の、繊細な気持ちには敏感な方だと思う。下手な嘘は、かえって相手を傷つける。本当の気持ちを、いかに上手に伝えるか。
『今日のことでね、私も反省したり発見があったよ。失敗しても大丈夫。一緒に強くなっていこ』
既読がついた後、しばらく返信がなかった。怖かったけど、せっついてメッセージを送るのは絶対違うと、しばらく放置していた。唯我くんから返信が来たのは、帰宅してシャワーも浴びた頃。
『ありがとうございます。強くなりたいです』
その返信に、ほっとした。強くなろうと思えるなら、きっとまだ進んでいける。
『よかった!一緒に頑張ろうね』
おやすみのスタンプを押して、ベッドに潜る。今日も良い一日だった。思考は徐々にぼやけて、すんなりと私は眠りについた。
「バカ唯我相手ひこう2体もいんだぞ」
「通りがよさそうなのはアイアンヘッドだよね〜」
1つのテレビを4人で囲んで、ポケモン対戦をしている。コントローラーは私が握り、戦っているポケモンも私が育てたものだ。私はポケモン廃人一歩手前なくらい、ポケモン対戦が好き。みんなとも対戦はするのだが、使うポケモンも技構成もバレているので、飽きがきてしまう。育成する時間もみんなにはあまりないので、私が対戦をしているのをみんなが観戦することが多い。
「ここ悩むな〜突っ張ってくると思う?」
「倒す算段があるから出してきたんじゃね?」
「釣り出しかもしれないよね〜」
あれこれみんなと相談しながら対戦をするのは楽しい。出水の意見を採用して、ここはポケモンを交換してみる。
「お、読み勝った」
「いいじゃんいいじゃん。押してけ」
試合はこの一手で有利に進んだ。読みを通して、順当に勝つことが出来た。
「やったあ3連勝〜」
「調子いいっすね」
「まぁこっち4人がかりだしね。考える頭多けりゃ強いでしょ」
「でも最終判断は莉子さんじゃん。莉子さんが強いんだよ」
「そーそー。莉子ちゃん読み強いよね〜」
2人に褒められると、嬉しくなる。気分は上がり調子。ポケモンを入れ替えながら、返す言葉を選ぶ。
「……まー私の数少ない特技のひとつだし」
「いや莉子さん多才でしょ」
「いやまぁ……そうか」
歌だったり小説だったり、自信のあるものはいくつかある。けどポケモンに関しては、好きだけどあまり自信はなかった。自信のないものを褒められた時、どう答えればいいのか悩んでしまう。
「ポケモンは自信はないんだよね〜好きだけど」
「えー十分強いよ」
「そうかなぁ」
ゲーマーの柚宇ちゃんが言うのだから、そうなのかもしれない。ちょっと自己評価あげていこ。
「そろそろ任務だからその辺にしておけよ〜」
「はーい」
太刀川さんに呼ばれたので、ゲームのレポートを書いて終了する。今日は16時から防衛任務に入っている。自分のトリガーの調整の為、立ち上がりモニタールームへ移動する。柚宇ちゃんがついてきてくれる。
「今日はなに装備していくの〜?」
「あっ今日は普通にいこうかなと思って」
「アタッカー中心?」
「うん」
私がやればいいことなのに、柚宇ちゃんはわざわざ操作を代わってくれる。柚宇ちゃんがやった方が数段早いので、助かっている。
「スコーピオン2本と、一応メインにハウンドだけいれといたよ〜」
「ありがとう」
トリオン兵の討伐は、攻撃手トリガーのがやりやすい。ランク戦の時は、射手トリガーと銃手トリガーの両立。たまーに狙撃手トリガーも扱う。私はボーダーの何でも屋だ。ポジションの登録は、万能手ということになっている。
「じゃ、柚宇ちゃんいってくるね。今日もオペよろしくね」
「任せろ〜。いってらっしゃーい」
太刀川さん、出水の後ろをついて歩く。私の後ろから唯我くんがついてくる。普段通り防衛任務に出発した。
廊下に出たら、任務終わりの諏訪隊と鉢合わせた。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ。今朝の配信見てたぞふくろう」
「あ、ありがとうございまーす!」
諏訪さんが声をかけてくれる。私は「ふくろう」というハンドルネームでボーダーの広報も担当する。ボーダーとは関係がないが、ライブ配信アプリで歌のラジオ配信もよくしている。それをみんな知ってるので、配信にはよく遊びに来てもらっている。
「また上手くなったんじゃねぇか?」
「まぁ俺、歌は上手いので」
「自分で言うかよ」
諏訪さんがハッと軽く笑って、私の頭を撫でる。そうして、通り過ぎていく。煙草の香りが、鼻をくすぐった。
「じゃあな、任務頑張れよ」
「はーい!またね諏訪さん」
堤さん、日佐人くんも続いて通り過ぎる。
「俺も聴いてた。よかったよ」
「ありがとうございます!」
堤さんが一言くれて、日佐人くんは会釈をして去っていった。
「調子良さそうだな」
太刀川さんが私に声をかける。この人はいつも、私の体調を気遣ってくれる。太刀川さんには頭が上がらない。どうしようもないところもあるけれど。
「うん、わりかし調子いいよ」
「よし。今日も頼んだぞ」
太刀川さんの背中は大きく見える。隊長がいれば、怖いことなんてほとんどない。ただ、自分が体調を崩して迷惑をかけることだけが怖かった。自分のせいで、みんなに負担をかけることは怖かった。
今日の防衛任務は、思った以上に忙しかった。倒しても倒しても、トリオン兵が湧いてくる。稼ぎ時だからいいけれども。私は少し下がり気味で、太刀川さんが無視したトリオン兵を捌いていた。後ろにトリオン兵の反応があったが、唯我くんがいるので大丈夫だろうと、黙って目の前の敵を倒していた。
『トリオン供給機関破損、緊急脱出』
「!?」
急なアナウンスに、少し混乱する。唯我くんが緊急脱出したと把握するのに、数秒要する。その一瞬の隙に片腕を持っていかれて、体勢を崩してしまう。咄嗟に出したハウンドで、目の前のモールモッドは対処出来た。後ろから来る2体目に間に合わない。
「アステロイド!」
「!!出水、」
出水のアステロイドで、モールモッドは粉々になる。なんとか緊急脱出せずに済んだ。
「大丈夫っすか?莉子さん」
「大丈夫。ありがとう出水」
出水に引っ張り起こされて、立ち上がる。太刀川さんはどんどん前に行ってしまう。ついて行かなければ。太刀川さんも、いけると思って進んでるのだろうから。
「……唯我くん、ごめん!私の
私が後ろから来るモールモッドについて、唯我くんと情報共有していれば、唯我くんは緊急脱出せずに済んだはずだ。確認していれば。見えてると思って、なにも言わなかった私のせいである。
「いやどう考えても唯我のミスだから。甘やかさなくていいっすよ」
出水はそれだけ言って、太刀川さんの後を追っていってしまった。唯我くんから返事はない。足が止まっていると、
「莉子ちゃんは今任務に集中しよ〜」
と、柚宇ちゃんが声をかける。私は太刀川さんの背中を追った。頭では、唯我くんのことを気にかけながら。くそ、気持ちの切り替えは苦手だ。
粗方トリオン兵が片付いて、任務時間も終わりを迎えようとしていた。次の隊に引き継がないでよくて、よかったと思う。
「はぁ〜斬った斬った。お疲れ〜」
「お疲れ様です」
太刀川さんの横を歩く。太刀川さんはストレッチをしながら、なんともなしに呟いた。
「今日のあれ、お前は気にしなくていいと思うぞ」
「!、唯我くんのことですか」
「そう。なんでもかんでも、自分のせいにするな。お前が周りのこと考えてるように、俺たちだって考えてる。お前1人で全部をカバーするのは無理だ」
「……はい」
それはその通りだ。私が全部をカバー出来るわけない。烏滸がましい。
「けど、「こうしたらよかったかも」って、発見が出来るのはいいことだ。まだまだ成長出来るってことだからな。だから、落ち込むなんてしないで次に繋げろよ」
「はい!!」
そっか、落ち込まなくていいのか。太刀川さんは、落ち込みやすい私を心配してくれたんだろう。本当にありがたい。私はくよくよ気にしないことにした。気分は少し晴れて、やり切った達成感に包まれた。それでも、少し引っかかっていたのは、唯我くんが落ち込んでないだろうかということだった。私は、携帯を出して唯我くんとのトークを開き、一言メッセージを送った。
『唯我くん、大丈夫?』
すぐに既読がつき、返信が返ってくる。
『莉子さんを危険に曝してすみませんでした』
『いいよ、大丈夫。仕方ないよ』
『……僕は本当にダメですね』
落ち込んでいる人を、励ます時にはとても気を使う。明るい言葉で励ませばいいとは限らない。落ち込んでいる時の、繊細な気持ちには敏感な方だと思う。下手な嘘は、かえって相手を傷つける。本当の気持ちを、いかに上手に伝えるか。
『今日のことでね、私も反省したり発見があったよ。失敗しても大丈夫。一緒に強くなっていこ』
既読がついた後、しばらく返信がなかった。怖かったけど、せっついてメッセージを送るのは絶対違うと、しばらく放置していた。唯我くんから返信が来たのは、帰宅してシャワーも浴びた頃。
『ありがとうございます。強くなりたいです』
その返信に、ほっとした。強くなろうと思えるなら、きっとまだ進んでいける。
『よかった!一緒に頑張ろうね』
おやすみのスタンプを押して、ベッドに潜る。今日も良い一日だった。思考は徐々にぼやけて、すんなりと私は眠りについた。