弓場と迅の話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『散歩行きたい』
22時を過ぎてから、そう連絡が来てため息を吐いた。呆れたような態度は出るけども、内心は浮かれているので俺は馬鹿だと思う。一日の終わりに好きな女に会えるんだから、仕方ねぇだろ。コートを羽織って、表に出る。
「こんばんは」
「おう」
莉子が歩く方へ、ついていく。今日は駅の方へ行くらしい。途中、自販機で止まって、莉子はジュースを買った。桃の甘いやつ。右手に缶を持って、ちまちま飲んでいる。
「飲む?」
「……いや、いい」
意識されてねぇなぁとか、本当に親しいからこう訊くんだろとか。莉子のちょっとした行動ひとつで、あれこれ考えて意識を乱されているのが、自分でも笑える。
「あのさぁ」
少し訊き辛そうに話しかけられる。
「なんだ」
努めて優しい声を出す。自分でも気持ち悪いくらい。莉子が口ごもるから、身体を倒して耳を近づける。ちゃんと聞くから、話して欲しい。
「昔、みんなで行った大きい水族館あるじゃん」
莉子が昔話をするのは珍しい。俺のせいだけど。大きい水族館っていうと、隣県のあれか。
「あぁ、行ったな」
「今度、リニューアルするらしくて……また行きたい」
「うん」
ひょっとして、デートに誘われている?平然を装うので精一杯で、莉子の顔が見れない。気の利いたことも言えない。思い出のある場所に、もう一度行こうと言われたことが、嬉しくて仕方がない。
「ちょっと遠いから、拓磨しか誘えなくて」
「うん、分かった」
消去法なんだな、とは思ったけど。遠いから俺くらい気の許せる奴じゃないと、気を遣うって話だろ。俺はお前の面倒みる係じゃないぞ。まぁ、そんなこと言ったって嬉しいもんは嬉しいし、説得力ないだろうが。
「いつでもいいんだけど」
「今度の休み、な」
「うん!」
莉子の声が明るくなったのに、胸が詰まるほどときめいてしまう。次、休みいつだったか。明日にでも連れ出したい気分だが、気持ちを悟られないように、散歩を続けた。
結局、休みを合わせるのに10日ほどかかった。前日、なにを着ていくか小一時間悩み、乙女かと自分にツッコミをいれた。莉子は数秒で決めてんだろうなぁ。想像出来る。ちょっと気合い入れてくれないかな。ほんの少しでも特別な日だと思ってくれないだろうか。いや、乙女か。再度ツッコミをいれてさっさと寝る。結構電車に乗るので明日は朝早い。楽しみすぎて寝れん。ガキか!本当に俺をめちゃくちゃにしてる自覚と責任をとってくんねぇかな。まだ俺が不甲斐ねぇから無理。堂々巡りの思考を抱えて、眠りにつく。
『寝坊したけど、時間通りで大丈夫』
朝、起きて支度をしていたらそう連絡が来た。約束の時間まで30分もないが。本当に身支度に時間がかからない女……『別に慌てなくていいぞ』そう返信して、トーストをかじる。寝癖がないか鏡を見て、忘れ物がないか確認して、外に出る。今日は気持ちよく晴れている。
「おはよ」
「はよ……!?」
え、莉子がスカート履いてる。は?万年ズボンしか履かない莉子が。別にスカートだからオシャレだとか言わないけれど。けど、ちょっと意識してるってことなのか。どうなんだよ。莉子は何事もなく、いつも通りに歩き出した。待ってくれ、調子が狂う。
「晴れてよかったな〜暑くもないし」
「あ、あぁ」
言葉が出ない。どういうつもりでスカート履いてきたのか、めちゃくちゃ訊きたいけど絶対そんなの訊いたら変だ。じゃあせめて褒めるとかしろ俺。いやいやいや、無理。言ったら最後、全部ダダ漏れになる気がする。いや、でも。なにも言えないまま、駅に着いて電車に乗る。隣り合って座る。莉子の様子は本当に普段と変わらない。上機嫌なくらい。上機嫌な莉子は世界一可愛い。そろそろ脳内のバグが深刻だ。こっから丸一日、保つのか俺。
「3つ先で乗り換え?」
「いや、5つ先……」
道案内全部丸投げなところ、本当に昔から変わんねぇな。はぁー好き。全部好きなんだから始末に負えない。うっかり口滑らせて、告白してしまったらどうしよう。今日はそれでもいいかとすら思えてしまう。ダメだ、落ち着こう。ダセェ告白はしたくないし、するならきっちり結ばれたい。莉子は気まぐれだし、誰にでも優しいし。勘違いしない方がいい。
「お茶忘れたから、乗り換え駅で買う」
「分かった」
スカートの衝撃から、ようやく落ち着いてきた。乗り換え駅なので降りる。ここから隣県まで一時間乗って、また乗り換える。運良く、次の電車でも並んで座れた。座った瞬間、莉子が寄りかかってくる。
「降りるとこまで寝る〜」
「…………」
勘違いしても仕方ないと思う。するだろ普通。でも、莉子のこれは幼馴染だからであって、恋愛感情があるなら逆に出来ないと思う。やっぱりどこまで行っても幼馴染か。距離が近すぎて、遠い。ひとつ、深呼吸をした。電車は時刻通りに進む。長くも短くも感じた。
「次、降りるぞ」
肘で突いて、起こす。莉子は大きく伸びをした。電車を降りて、乗り換え。4駅乗って、ようやく水族館の最寄駅に着いた。
「着いた〜!!」
莉子は両手を挙げて、跳ねる勢いで進んでいく。喜び方が子供っぽいんだよな。昔から変わらないから、可愛くて安心してしまうけど。チケットを買って、入場ゲートへ。潮臭い、海の匂いがする。莉子は最初の水槽から立ち止まる。しゃがみ込んで、じっと泳ぐ魚を見ている。莉子はスマホを取り出して写真を撮る。莉子は人物を撮ることがほとんどない。
「かわい〜」
「そうだな」
正直なところ、まったく分からんが。可愛いか?莉子は感動しているようなので、それを見るのは楽しいが。亀の歩みで、水族館をまわっていく。莉子は魚を見てもイルカを見てもアザラシを見ても、みんな可愛いらしい。夢中で写真を撮っていた。俺もスマホのカメラを起動する。パシャ、と一枚莉子の横顔を撮る。莉子は気付く気配すらない。
「…………」
罪悪感が、ないわけではない。でも、消したりはしない。どうにか正面から、カメラ目線の写真撮れないだろうか。無理かな〜……莉子は写真に写るのは嫌いだ。ツーショットって言っても多分嫌がる。もう一枚、莉子の背中を撮る。とりあえず全身写ってるのを撮りたかったので。莉子が急に振り向くから、ドキッとする。
「ごめん、好きなように動いてるけど大丈夫?」
「気にすんな。大丈夫だ」
「よかった」
安心したように笑うと、またフラフラどこかへ行ってしまう。ずっと見てるから見失うようなことはないけれど、ちょっとだけ寂しく感じる。思わず、手を伸ばして莉子の手と繋いでいた。びっくりしたように、莉子が俺を見上げる。
「迷子になる、から。な」
目も合わせられず、苦し紛れの言い訳をする。繋いだ手も、顔も熱い。
「うん!」
莉子は嬉しそうな声を出すと、ぐいぐい俺を引っ張った。どさくさに紛れて、繋いだ手の写真を撮った。馬鹿なんじゃねぇのか、俺。莉子と手を繋いだまま、水族館を進む。途中、莉子があれこれ海のうんちくを語るが、内容なんて入ってこなくて。ただただ、夢見心地で頷いていた。
「やっぱリニューアルでだいぶ変わったっぽいけど、いい水族館だな〜」
「変わったか?」
「いや、だいぶちっちゃかったから、正直細かいところは覚えてなかったんだよね。楽しかったことしか」
「まぁ、俺も似たようなもんだな」
「ね。拓磨は楽しかった?」
無邪気な眼が俺を見つめる。グッと胸になにか込み上げる思いがする。
「…………楽しかった」
噓は吐いてないけど、後ろめたさは残る。どこ行ったってお前となら楽しいし、お前しか見てない。ちょっと申し訳ないくらいに。
「よかった!また来ようねぇ」
簡単に騙されてくれて安心する。また次も約束されて浮き足立つ。土産屋に入ると、自然に手は解けていった。物寂しくて、感触を思い出すように手を開いたり閉じたり。莉子はお土産をどれも物欲しそうに見ながら、俺に買わない言い訳をする。
「いや〜買っても使わないと思うんですよねこれは」
「……一個くらい、買えばいいんじゃないか。買ってやる」
「え、え。悪いよ付き合ってもらったのに」
そんなこと全然思ってないから買え!とは言えず。
「いいから」
「うーんじゃあ……」
莉子はオシャレなイラストが描かれたキーホルダーを、2個持ってきた。ひとつはペンギン、もうひとつはサメ。
「これ、お揃いでつけよ」
「〜っ、あぁ」
人の気も知らないで、人の気も知らないで!頭の中で文句を言いながら会計をする。莉子に渡すと、すぐに鞄につけた。嬉しそうに笑うので、もうどうでもよくなる。
「ありがとう!」
「おう」
「このあと、どうする?」
莉子の性格上、俺がその気なら延々と遊ぶのが目に見えている。いつまでこの時間を延長してもいいだろうか。夜には、帰さなきゃだし。
「とりあえず、休憩するか」
結論を先送りにして、お茶にすることにした。デートがずっと続けばいいのに。乙女か、とまたツッコむ。一緒にいればいるほど、嫌というくらい好きなのを自覚してしまう。歯止めが効かない想いを抱えて、いつまで莉子の隣にいれるかを考える。願わくば、永遠になればいいのに。
22時を過ぎてから、そう連絡が来てため息を吐いた。呆れたような態度は出るけども、内心は浮かれているので俺は馬鹿だと思う。一日の終わりに好きな女に会えるんだから、仕方ねぇだろ。コートを羽織って、表に出る。
「こんばんは」
「おう」
莉子が歩く方へ、ついていく。今日は駅の方へ行くらしい。途中、自販機で止まって、莉子はジュースを買った。桃の甘いやつ。右手に缶を持って、ちまちま飲んでいる。
「飲む?」
「……いや、いい」
意識されてねぇなぁとか、本当に親しいからこう訊くんだろとか。莉子のちょっとした行動ひとつで、あれこれ考えて意識を乱されているのが、自分でも笑える。
「あのさぁ」
少し訊き辛そうに話しかけられる。
「なんだ」
努めて優しい声を出す。自分でも気持ち悪いくらい。莉子が口ごもるから、身体を倒して耳を近づける。ちゃんと聞くから、話して欲しい。
「昔、みんなで行った大きい水族館あるじゃん」
莉子が昔話をするのは珍しい。俺のせいだけど。大きい水族館っていうと、隣県のあれか。
「あぁ、行ったな」
「今度、リニューアルするらしくて……また行きたい」
「うん」
ひょっとして、デートに誘われている?平然を装うので精一杯で、莉子の顔が見れない。気の利いたことも言えない。思い出のある場所に、もう一度行こうと言われたことが、嬉しくて仕方がない。
「ちょっと遠いから、拓磨しか誘えなくて」
「うん、分かった」
消去法なんだな、とは思ったけど。遠いから俺くらい気の許せる奴じゃないと、気を遣うって話だろ。俺はお前の面倒みる係じゃないぞ。まぁ、そんなこと言ったって嬉しいもんは嬉しいし、説得力ないだろうが。
「いつでもいいんだけど」
「今度の休み、な」
「うん!」
莉子の声が明るくなったのに、胸が詰まるほどときめいてしまう。次、休みいつだったか。明日にでも連れ出したい気分だが、気持ちを悟られないように、散歩を続けた。
結局、休みを合わせるのに10日ほどかかった。前日、なにを着ていくか小一時間悩み、乙女かと自分にツッコミをいれた。莉子は数秒で決めてんだろうなぁ。想像出来る。ちょっと気合い入れてくれないかな。ほんの少しでも特別な日だと思ってくれないだろうか。いや、乙女か。再度ツッコミをいれてさっさと寝る。結構電車に乗るので明日は朝早い。楽しみすぎて寝れん。ガキか!本当に俺をめちゃくちゃにしてる自覚と責任をとってくんねぇかな。まだ俺が不甲斐ねぇから無理。堂々巡りの思考を抱えて、眠りにつく。
『寝坊したけど、時間通りで大丈夫』
朝、起きて支度をしていたらそう連絡が来た。約束の時間まで30分もないが。本当に身支度に時間がかからない女……『別に慌てなくていいぞ』そう返信して、トーストをかじる。寝癖がないか鏡を見て、忘れ物がないか確認して、外に出る。今日は気持ちよく晴れている。
「おはよ」
「はよ……!?」
え、莉子がスカート履いてる。は?万年ズボンしか履かない莉子が。別にスカートだからオシャレだとか言わないけれど。けど、ちょっと意識してるってことなのか。どうなんだよ。莉子は何事もなく、いつも通りに歩き出した。待ってくれ、調子が狂う。
「晴れてよかったな〜暑くもないし」
「あ、あぁ」
言葉が出ない。どういうつもりでスカート履いてきたのか、めちゃくちゃ訊きたいけど絶対そんなの訊いたら変だ。じゃあせめて褒めるとかしろ俺。いやいやいや、無理。言ったら最後、全部ダダ漏れになる気がする。いや、でも。なにも言えないまま、駅に着いて電車に乗る。隣り合って座る。莉子の様子は本当に普段と変わらない。上機嫌なくらい。上機嫌な莉子は世界一可愛い。そろそろ脳内のバグが深刻だ。こっから丸一日、保つのか俺。
「3つ先で乗り換え?」
「いや、5つ先……」
道案内全部丸投げなところ、本当に昔から変わんねぇな。はぁー好き。全部好きなんだから始末に負えない。うっかり口滑らせて、告白してしまったらどうしよう。今日はそれでもいいかとすら思えてしまう。ダメだ、落ち着こう。ダセェ告白はしたくないし、するならきっちり結ばれたい。莉子は気まぐれだし、誰にでも優しいし。勘違いしない方がいい。
「お茶忘れたから、乗り換え駅で買う」
「分かった」
スカートの衝撃から、ようやく落ち着いてきた。乗り換え駅なので降りる。ここから隣県まで一時間乗って、また乗り換える。運良く、次の電車でも並んで座れた。座った瞬間、莉子が寄りかかってくる。
「降りるとこまで寝る〜」
「…………」
勘違いしても仕方ないと思う。するだろ普通。でも、莉子のこれは幼馴染だからであって、恋愛感情があるなら逆に出来ないと思う。やっぱりどこまで行っても幼馴染か。距離が近すぎて、遠い。ひとつ、深呼吸をした。電車は時刻通りに進む。長くも短くも感じた。
「次、降りるぞ」
肘で突いて、起こす。莉子は大きく伸びをした。電車を降りて、乗り換え。4駅乗って、ようやく水族館の最寄駅に着いた。
「着いた〜!!」
莉子は両手を挙げて、跳ねる勢いで進んでいく。喜び方が子供っぽいんだよな。昔から変わらないから、可愛くて安心してしまうけど。チケットを買って、入場ゲートへ。潮臭い、海の匂いがする。莉子は最初の水槽から立ち止まる。しゃがみ込んで、じっと泳ぐ魚を見ている。莉子はスマホを取り出して写真を撮る。莉子は人物を撮ることがほとんどない。
「かわい〜」
「そうだな」
正直なところ、まったく分からんが。可愛いか?莉子は感動しているようなので、それを見るのは楽しいが。亀の歩みで、水族館をまわっていく。莉子は魚を見てもイルカを見てもアザラシを見ても、みんな可愛いらしい。夢中で写真を撮っていた。俺もスマホのカメラを起動する。パシャ、と一枚莉子の横顔を撮る。莉子は気付く気配すらない。
「…………」
罪悪感が、ないわけではない。でも、消したりはしない。どうにか正面から、カメラ目線の写真撮れないだろうか。無理かな〜……莉子は写真に写るのは嫌いだ。ツーショットって言っても多分嫌がる。もう一枚、莉子の背中を撮る。とりあえず全身写ってるのを撮りたかったので。莉子が急に振り向くから、ドキッとする。
「ごめん、好きなように動いてるけど大丈夫?」
「気にすんな。大丈夫だ」
「よかった」
安心したように笑うと、またフラフラどこかへ行ってしまう。ずっと見てるから見失うようなことはないけれど、ちょっとだけ寂しく感じる。思わず、手を伸ばして莉子の手と繋いでいた。びっくりしたように、莉子が俺を見上げる。
「迷子になる、から。な」
目も合わせられず、苦し紛れの言い訳をする。繋いだ手も、顔も熱い。
「うん!」
莉子は嬉しそうな声を出すと、ぐいぐい俺を引っ張った。どさくさに紛れて、繋いだ手の写真を撮った。馬鹿なんじゃねぇのか、俺。莉子と手を繋いだまま、水族館を進む。途中、莉子があれこれ海のうんちくを語るが、内容なんて入ってこなくて。ただただ、夢見心地で頷いていた。
「やっぱリニューアルでだいぶ変わったっぽいけど、いい水族館だな〜」
「変わったか?」
「いや、だいぶちっちゃかったから、正直細かいところは覚えてなかったんだよね。楽しかったことしか」
「まぁ、俺も似たようなもんだな」
「ね。拓磨は楽しかった?」
無邪気な眼が俺を見つめる。グッと胸になにか込み上げる思いがする。
「…………楽しかった」
噓は吐いてないけど、後ろめたさは残る。どこ行ったってお前となら楽しいし、お前しか見てない。ちょっと申し訳ないくらいに。
「よかった!また来ようねぇ」
簡単に騙されてくれて安心する。また次も約束されて浮き足立つ。土産屋に入ると、自然に手は解けていった。物寂しくて、感触を思い出すように手を開いたり閉じたり。莉子はお土産をどれも物欲しそうに見ながら、俺に買わない言い訳をする。
「いや〜買っても使わないと思うんですよねこれは」
「……一個くらい、買えばいいんじゃないか。買ってやる」
「え、え。悪いよ付き合ってもらったのに」
そんなこと全然思ってないから買え!とは言えず。
「いいから」
「うーんじゃあ……」
莉子はオシャレなイラストが描かれたキーホルダーを、2個持ってきた。ひとつはペンギン、もうひとつはサメ。
「これ、お揃いでつけよ」
「〜っ、あぁ」
人の気も知らないで、人の気も知らないで!頭の中で文句を言いながら会計をする。莉子に渡すと、すぐに鞄につけた。嬉しそうに笑うので、もうどうでもよくなる。
「ありがとう!」
「おう」
「このあと、どうする?」
莉子の性格上、俺がその気なら延々と遊ぶのが目に見えている。いつまでこの時間を延長してもいいだろうか。夜には、帰さなきゃだし。
「とりあえず、休憩するか」
結論を先送りにして、お茶にすることにした。デートがずっと続けばいいのに。乙女か、とまたツッコむ。一緒にいればいるほど、嫌というくらい好きなのを自覚してしまう。歯止めが効かない想いを抱えて、いつまで莉子の隣にいれるかを考える。願わくば、永遠になればいいのに。