掌編/ネオプロトタイプ
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「声が出ない?」
ボーダーの廊下で鉢合わせて、声をかけたら。莉子はどこか申し訳なさそうに、寂しく頷いた。慰めるために思わず手が出て、頬を撫でる。莉子は手に頬を押しつけて、満足すると俺の手首に触れて下ろした。
「風邪か?インフルエンザとかではない?」
「かぜ」
掠れたガサガサの声で、そう発声した。本当に声、出ねぇんだな。珍しい。風邪ひいても熱出て終わることが多かったように思う。喉を痛めているのは、記憶にない。
「あんましゃべんないで、大人しくしてろよ」
「んー……」
莉子は分かったとは言わずに、スタスタどこかへ歩いていく。後ろ、ついていきたくなる。それよりも、こちらへ手を引いて、連れ歩きたくなる。今日も自分の恋心に呆れて、ため息をひとつ。ま、なんとかやるだろ。俺いなくたって、頼れる先はたくさんあるし。はい、またため息。莉子の頼る先が俺しかなかったのなんて、何年も昔の話で。莉子はちゃんと踏み出したのに、俺だけまだその場で叫んで、連れ戻そうとしてる。情けなくて、カッコ悪りぃ。3度目のため息。俺は莉子とは反対方向の廊下を歩いた。
ボーダーの仕事をあらかた片付けて、売店による。焼き菓子とか、ひと息いれるための缶コーヒーとか。飴が目に入り、あ、と立ち止まる。
(のど飴、いるんじゃないか)
莉子は個包装のパッケージが好きだ。ミントは舐めない。はちみつが濃すぎるのもダメ、のどがかえってイガイガするって。あんまり種類がねぇな。別の売店、行くか?……まぁ、桃の味なら満足するだろ。はちみつレモンがほんとは1番好きなんだよな。なんだか、1人で勝手に莉子に話しかけてるみたいで、それだけで胸の炉心がじんわり熱い。コンビニで会計して、スマホを取り出して。このまま、適当にふらふらしてて会えたら、ちゃんと小指の糸が繋がってるって、勝手に納得もできるだろうけど。そんなもの、莉子は信じないのは知ってるから、当たり前のように連絡。迅との間には、必要のないやり取り。心の中で舌打ち。売店の前で待ってる、と。
「たくま」
「……お前、しゃべるなって言ったのに、あちこちでしゃべってきただろ」
莉子は唇を尖らせて、こくんと頷いた。まったく、もう。約束破っても、可愛いのってずるくないか。俺はせっかく、心配で忠告したってのに。
「のど飴、買ってきた。舐めるか?」
コクコクと頷く。桃味ののど飴を俺の手のひらに出して。……あー、と口開けさせて、放り込んだ。あんまりに無防備で、指先が麻痺したみたいに本数を認識しない。ぐっと握り込んで、広げて。心音に耳澄ませて、バレないよう深呼吸して。莉子は、鼻唄を歌って飴を舐めている。
「…………帰るか」
莉子は頷いて、軽く俺の腰に身体寄せてなにか確かめて、勝手に歩き出す。帰り道が一緒。それだけは、俺の独占領域。なにも出来やしないけど、この時間がないと俺は俺を見失うかもしれない。そんなわけないでしょ、って莉子か呆れて笑うのまで見えてる。でも、それでも縋らせてくれよ。
ボーダーの廊下で鉢合わせて、声をかけたら。莉子はどこか申し訳なさそうに、寂しく頷いた。慰めるために思わず手が出て、頬を撫でる。莉子は手に頬を押しつけて、満足すると俺の手首に触れて下ろした。
「風邪か?インフルエンザとかではない?」
「かぜ」
掠れたガサガサの声で、そう発声した。本当に声、出ねぇんだな。珍しい。風邪ひいても熱出て終わることが多かったように思う。喉を痛めているのは、記憶にない。
「あんましゃべんないで、大人しくしてろよ」
「んー……」
莉子は分かったとは言わずに、スタスタどこかへ歩いていく。後ろ、ついていきたくなる。それよりも、こちらへ手を引いて、連れ歩きたくなる。今日も自分の恋心に呆れて、ため息をひとつ。ま、なんとかやるだろ。俺いなくたって、頼れる先はたくさんあるし。はい、またため息。莉子の頼る先が俺しかなかったのなんて、何年も昔の話で。莉子はちゃんと踏み出したのに、俺だけまだその場で叫んで、連れ戻そうとしてる。情けなくて、カッコ悪りぃ。3度目のため息。俺は莉子とは反対方向の廊下を歩いた。
ボーダーの仕事をあらかた片付けて、売店による。焼き菓子とか、ひと息いれるための缶コーヒーとか。飴が目に入り、あ、と立ち止まる。
(のど飴、いるんじゃないか)
莉子は個包装のパッケージが好きだ。ミントは舐めない。はちみつが濃すぎるのもダメ、のどがかえってイガイガするって。あんまり種類がねぇな。別の売店、行くか?……まぁ、桃の味なら満足するだろ。はちみつレモンがほんとは1番好きなんだよな。なんだか、1人で勝手に莉子に話しかけてるみたいで、それだけで胸の炉心がじんわり熱い。コンビニで会計して、スマホを取り出して。このまま、適当にふらふらしてて会えたら、ちゃんと小指の糸が繋がってるって、勝手に納得もできるだろうけど。そんなもの、莉子は信じないのは知ってるから、当たり前のように連絡。迅との間には、必要のないやり取り。心の中で舌打ち。売店の前で待ってる、と。
「たくま」
「……お前、しゃべるなって言ったのに、あちこちでしゃべってきただろ」
莉子は唇を尖らせて、こくんと頷いた。まったく、もう。約束破っても、可愛いのってずるくないか。俺はせっかく、心配で忠告したってのに。
「のど飴、買ってきた。舐めるか?」
コクコクと頷く。桃味ののど飴を俺の手のひらに出して。……あー、と口開けさせて、放り込んだ。あんまりに無防備で、指先が麻痺したみたいに本数を認識しない。ぐっと握り込んで、広げて。心音に耳澄ませて、バレないよう深呼吸して。莉子は、鼻唄を歌って飴を舐めている。
「…………帰るか」
莉子は頷いて、軽く俺の腰に身体寄せてなにか確かめて、勝手に歩き出す。帰り道が一緒。それだけは、俺の独占領域。なにも出来やしないけど、この時間がないと俺は俺を見失うかもしれない。そんなわけないでしょ、って莉子か呆れて笑うのまで見えてる。でも、それでも縋らせてくれよ。
