掌編/ネオプロトタイプ
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毎日莉子に会えなくてつれぇ。
大学生になった。高校の頃と変わらず、勉学に励みながら防衛任務の日々。環境が変わったから、慣れるまでそれなりに忙しくして。気づけば、5月も終わりに差し掛かっている。あっという間に19歳になる俺たちは、大人に向かって熱をあげていく。ギア、上げていきてぇんだが。
(なんであいつら、大学行ってねぇんだ!!)
莉子が怠けてるなんて言わない、絶対。でも俺は怠けてでも莉子に会いたい。会いたくて仕方なくて、本業が身に入らない。なんか、どうやら莉子は毎日のように迅と一緒にいるみたいで。大学ないからボーダー以外暇なんだろうが。ずるくないか、それ。なぁ、ずるい。俺だって莉子と一緒にいたい!!けど、莉子を守っていくためには大学も疎かに出来るわけねぇし。あいつが莉子と会うことは、今更止めはしねぇけど。けど、せめて半分こだろ!!脳内で叫んで、いや莉子はモノなんかじゃないから半分ことか出来ねぇとなにかに言い訳をして。ダメだ、なにも手につかない。
『今日の夜、暇してないか?』
夜に呼び出すなんて。顔に熱が集まる。だって、今日会うなら夜しか空いてない。だから仕方ないだろ。
『暇っちゃ暇』
『会えないか?』
『会う〜』
嬉しそうなわくわくのスタンプが送られてきて、眉間に皺が寄った。莉子がスタンプと同じような顔で返信してるのが浮かぶ。かわいい。ほんとに素直でかわいい。なんもかんもどうでもよくなっちゃう。片想い何年目だっけ。それもどうでもいいか。いつだって新鮮に君にドキドキする。倦怠感なんかどこにもない。結ばれなくたって、今もずっと幸せ。
『どこで会う?』
莉子から返信がきて、少し悩む。行きたいところがねぇ。散歩でもいいけど……。
『少しゆっくり話がしたい』
『じゃあお部屋行く?』
息が詰まって、咳き込んだ。へ、や。俺の部屋だよな。そりゃそうだ。そうなるよな。俺の馬鹿。
『あんま遅くまではダメだぞ』
『えー』
文面じゃお兄ちゃんぶったけど、内心は土下座する勢いで頼み込んでいる。帰せなくなる前に、ちゃんと帰ってくれ。
『じゃあ夕飯食べて、20時くらいに遊びに行く』
20時、あと7時間くらい。頑張ろう、頑張れる。気合い入れて、お昼休憩を終えた。
夕飯は緊張で味がしなかったし、母親にバレて散々冷やかされた。別にやましいことなんてねぇよ。ないったら。逃げるようにリビングを離れて、自分の部屋へ行く。特に片付ける箇所なんてない。ベッドへ大の字に横になって、天井を見つめる。ぼんやり頭を空っぽにして、気持ちを整えた。玄関のチャイムが鳴って、途端に掻き乱される。
「お邪魔します」
返事も出来ずに、莉子の手を引いてそそくさと部屋に引っ込んだ。気持ちが抑えきれずに手を引っ張ってた。莉子がきゅ、と力を込めたから心臓が悲鳴をあげた。好き。好き〜……。莉子はいつも通り、ベッドの縁に腰掛ける。俺を見上げて、ぽんぽんと隣を叩いた。頭が真っ白になって、だらしなく口が開いた。
「と、なり?」
「うん」
「あ……と。その、なにもしねぇじ、しんが」
「なにかしちゃダメなの?」
はぁ〜〜??ダメですけど??え、ダメじゃないのか。ちゃんと意味分かってるのかこいつ。いや、分かってるよな……え??
「そんな真っ赤にならなくても」
「いや、なるだろそりゃ……」
混乱して、眩暈がして。莉子が平然としてるから、ちょっとだけ冷静になって。隣に座るだけのことだろ、別に。なんもねぇよ。そっと隣に腰掛ける、拳3個分距離を置いて。距離を空けた分、莉子が詰めてくる。待って。
「逃げた」
「…………お前は俺をどうしたいんだよ」
立ち上がって、反対っ側にまた拳3個分空けて座る。莉子と目を合わせないように、本棚の本を意味もなく数えて。そろーっと莉子を見れば目が合ってしまい、逸らそうと思ったけど莉子が寂しそうにしてるから外せなくなってしまった。
「……なんだ」
「甘えたらダメ?」
「ダメ」
ダメに決まってるだろ、俺がダメになるから。即答してから、甘えてもらえばよかったと後悔する。けど、甘えるってなにする気だよ。こわい、しりたい。多分、溶けて堕ちてダメになるけど。莉子は俺がダメって言ったから、大人しく座っている。ダメダメダメ、俺からいくのはダメだってば。俺がダメって言ったんだから。
「……なんで、急に甘えたいんだ」
「んーと。最近拓磨にくっついてないなぁって」
「……そんなくっついてること、なかったと思うが」
「ちっちゃい頃は、いつもくっついてたよ?」
そこ、カウントされるのか。カウントされるのか……惚れ直した時に、あの頃を取り戻したくなったのを思い出す。今更、取り戻していいのか?形も意味も、変わっちまうだろ。
「……それ、本音じゃねぇだろ。もっと他に理由があんだろうが」
莉子は大きくまばたきをして、顎を少し上げた。大げさな振る舞いが子供っぽくて。どうしたって好きで。だから、ちゃんと話を聞きたかった。今日こそは。
「なんで分かるの?」
「す、きだから」
莉子が嬉しそうにへへーと笑うので、体温がこれでもかと上がる。あぁ、また流される。自分の額に触れて、ため息を吐いて誤魔化す。
「ほら、うやむやにしねぇで言え」
「んと……迅はしてくるから」
「は?」
「拓磨はしてくれないのかなって」
思考が止まって。歯ぎしりを自覚して。カッとなって無理やり抱き寄せそうになった右腕を、左腕で抑えて息を吐いた。整理しよう、莉子は悪気があってこう言ってるんじゃねぇ。それだけは分かってる。莉子が不安そうに俺を見つめてる。それだけで怒りなんて解けて凪いでいく。俺も不安で仕方なくなる。
「迅はしてくれるのか」
莉子はこくりと頷く。
「俺にもして欲しいのか」
また頷いた。
「迅がしてくれるのは最近になって?」
「そう」
……なんとなく分かった。多分、莉子なりに平等に接さなきゃと思ってんだろ。どちらも好きって言うんだから。どちらにも同じだけ愛を渡さなきゃって。そういうことなんだろう。
「……別に無理して俺にも同じようにしなきゃって思わなくても」
「無理じゃないもん。好きだから拓磨にもして欲しい」
莉子と見つめ合う。嘘じゃないと分かる。迅に対する嫉妬も惨めな想いも、必要ないんだと分かる。それでも腕を差し出せないでいる俺に、莉子は擦り寄るように距離を詰めた。待って、ダメ。
「むー」
肩を押し返して離れたら、莉子は不満そうに声をあげた。かわいいとすきだけで埋め尽くされていく。
「本当にダメ」
「なんで?」
「ダメだって」
莉子は俯いて、そっかと諦めた。ダメを破って抱き寄せたら、きっと離せなくなっちまう。俺の形も保てなくなる。それが怖くて、恥ずかしくて。そんなどうでもいいことより、なにより君を傷つけたくない。
「……莉子が嫌いだからとか、そんなんじゃねぇから」
「うん」
「俺が情けねぇだけだからな。気にするなよ」
「気にするー」
大して気にしねぇ感じで、大げさにぶうたれている。思わず笑ってしまって。空気が柔らいで、少し肩の力が抜ける。
「拓磨、すきー」
また身体が強張る。もうちょっと息抜きさせてくれよ。心臓がもたないんだって。莉子は意地悪そうな、でも嬉しそうな笑みを俺に向ける。跪いて、全部奪われたいと思った。そんなこと、出来やしないけど。
「拓磨はー?」
「……好きに決まってるだろ」
出せる限り1番小さな声になった。それでも莉子は笑ってくれた。なぁ、ずーっと好きだから、好きって伝えたらいつまでもそうやって笑ってくれるか?そうしたら、莉子のために好きって繰り返し言える気がする。やっぱダメか、壊れたレコードみたいになるだろうから。
大学生になった。高校の頃と変わらず、勉学に励みながら防衛任務の日々。環境が変わったから、慣れるまでそれなりに忙しくして。気づけば、5月も終わりに差し掛かっている。あっという間に19歳になる俺たちは、大人に向かって熱をあげていく。ギア、上げていきてぇんだが。
(なんであいつら、大学行ってねぇんだ!!)
莉子が怠けてるなんて言わない、絶対。でも俺は怠けてでも莉子に会いたい。会いたくて仕方なくて、本業が身に入らない。なんか、どうやら莉子は毎日のように迅と一緒にいるみたいで。大学ないからボーダー以外暇なんだろうが。ずるくないか、それ。なぁ、ずるい。俺だって莉子と一緒にいたい!!けど、莉子を守っていくためには大学も疎かに出来るわけねぇし。あいつが莉子と会うことは、今更止めはしねぇけど。けど、せめて半分こだろ!!脳内で叫んで、いや莉子はモノなんかじゃないから半分ことか出来ねぇとなにかに言い訳をして。ダメだ、なにも手につかない。
『今日の夜、暇してないか?』
夜に呼び出すなんて。顔に熱が集まる。だって、今日会うなら夜しか空いてない。だから仕方ないだろ。
『暇っちゃ暇』
『会えないか?』
『会う〜』
嬉しそうなわくわくのスタンプが送られてきて、眉間に皺が寄った。莉子がスタンプと同じような顔で返信してるのが浮かぶ。かわいい。ほんとに素直でかわいい。なんもかんもどうでもよくなっちゃう。片想い何年目だっけ。それもどうでもいいか。いつだって新鮮に君にドキドキする。倦怠感なんかどこにもない。結ばれなくたって、今もずっと幸せ。
『どこで会う?』
莉子から返信がきて、少し悩む。行きたいところがねぇ。散歩でもいいけど……。
『少しゆっくり話がしたい』
『じゃあお部屋行く?』
息が詰まって、咳き込んだ。へ、や。俺の部屋だよな。そりゃそうだ。そうなるよな。俺の馬鹿。
『あんま遅くまではダメだぞ』
『えー』
文面じゃお兄ちゃんぶったけど、内心は土下座する勢いで頼み込んでいる。帰せなくなる前に、ちゃんと帰ってくれ。
『じゃあ夕飯食べて、20時くらいに遊びに行く』
20時、あと7時間くらい。頑張ろう、頑張れる。気合い入れて、お昼休憩を終えた。
夕飯は緊張で味がしなかったし、母親にバレて散々冷やかされた。別にやましいことなんてねぇよ。ないったら。逃げるようにリビングを離れて、自分の部屋へ行く。特に片付ける箇所なんてない。ベッドへ大の字に横になって、天井を見つめる。ぼんやり頭を空っぽにして、気持ちを整えた。玄関のチャイムが鳴って、途端に掻き乱される。
「お邪魔します」
返事も出来ずに、莉子の手を引いてそそくさと部屋に引っ込んだ。気持ちが抑えきれずに手を引っ張ってた。莉子がきゅ、と力を込めたから心臓が悲鳴をあげた。好き。好き〜……。莉子はいつも通り、ベッドの縁に腰掛ける。俺を見上げて、ぽんぽんと隣を叩いた。頭が真っ白になって、だらしなく口が開いた。
「と、なり?」
「うん」
「あ……と。その、なにもしねぇじ、しんが」
「なにかしちゃダメなの?」
はぁ〜〜??ダメですけど??え、ダメじゃないのか。ちゃんと意味分かってるのかこいつ。いや、分かってるよな……え??
「そんな真っ赤にならなくても」
「いや、なるだろそりゃ……」
混乱して、眩暈がして。莉子が平然としてるから、ちょっとだけ冷静になって。隣に座るだけのことだろ、別に。なんもねぇよ。そっと隣に腰掛ける、拳3個分距離を置いて。距離を空けた分、莉子が詰めてくる。待って。
「逃げた」
「…………お前は俺をどうしたいんだよ」
立ち上がって、反対っ側にまた拳3個分空けて座る。莉子と目を合わせないように、本棚の本を意味もなく数えて。そろーっと莉子を見れば目が合ってしまい、逸らそうと思ったけど莉子が寂しそうにしてるから外せなくなってしまった。
「……なんだ」
「甘えたらダメ?」
「ダメ」
ダメに決まってるだろ、俺がダメになるから。即答してから、甘えてもらえばよかったと後悔する。けど、甘えるってなにする気だよ。こわい、しりたい。多分、溶けて堕ちてダメになるけど。莉子は俺がダメって言ったから、大人しく座っている。ダメダメダメ、俺からいくのはダメだってば。俺がダメって言ったんだから。
「……なんで、急に甘えたいんだ」
「んーと。最近拓磨にくっついてないなぁって」
「……そんなくっついてること、なかったと思うが」
「ちっちゃい頃は、いつもくっついてたよ?」
そこ、カウントされるのか。カウントされるのか……惚れ直した時に、あの頃を取り戻したくなったのを思い出す。今更、取り戻していいのか?形も意味も、変わっちまうだろ。
「……それ、本音じゃねぇだろ。もっと他に理由があんだろうが」
莉子は大きくまばたきをして、顎を少し上げた。大げさな振る舞いが子供っぽくて。どうしたって好きで。だから、ちゃんと話を聞きたかった。今日こそは。
「なんで分かるの?」
「す、きだから」
莉子が嬉しそうにへへーと笑うので、体温がこれでもかと上がる。あぁ、また流される。自分の額に触れて、ため息を吐いて誤魔化す。
「ほら、うやむやにしねぇで言え」
「んと……迅はしてくるから」
「は?」
「拓磨はしてくれないのかなって」
思考が止まって。歯ぎしりを自覚して。カッとなって無理やり抱き寄せそうになった右腕を、左腕で抑えて息を吐いた。整理しよう、莉子は悪気があってこう言ってるんじゃねぇ。それだけは分かってる。莉子が不安そうに俺を見つめてる。それだけで怒りなんて解けて凪いでいく。俺も不安で仕方なくなる。
「迅はしてくれるのか」
莉子はこくりと頷く。
「俺にもして欲しいのか」
また頷いた。
「迅がしてくれるのは最近になって?」
「そう」
……なんとなく分かった。多分、莉子なりに平等に接さなきゃと思ってんだろ。どちらも好きって言うんだから。どちらにも同じだけ愛を渡さなきゃって。そういうことなんだろう。
「……別に無理して俺にも同じようにしなきゃって思わなくても」
「無理じゃないもん。好きだから拓磨にもして欲しい」
莉子と見つめ合う。嘘じゃないと分かる。迅に対する嫉妬も惨めな想いも、必要ないんだと分かる。それでも腕を差し出せないでいる俺に、莉子は擦り寄るように距離を詰めた。待って、ダメ。
「むー」
肩を押し返して離れたら、莉子は不満そうに声をあげた。かわいいとすきだけで埋め尽くされていく。
「本当にダメ」
「なんで?」
「ダメだって」
莉子は俯いて、そっかと諦めた。ダメを破って抱き寄せたら、きっと離せなくなっちまう。俺の形も保てなくなる。それが怖くて、恥ずかしくて。そんなどうでもいいことより、なにより君を傷つけたくない。
「……莉子が嫌いだからとか、そんなんじゃねぇから」
「うん」
「俺が情けねぇだけだからな。気にするなよ」
「気にするー」
大して気にしねぇ感じで、大げさにぶうたれている。思わず笑ってしまって。空気が柔らいで、少し肩の力が抜ける。
「拓磨、すきー」
また身体が強張る。もうちょっと息抜きさせてくれよ。心臓がもたないんだって。莉子は意地悪そうな、でも嬉しそうな笑みを俺に向ける。跪いて、全部奪われたいと思った。そんなこと、出来やしないけど。
「拓磨はー?」
「……好きに決まってるだろ」
出せる限り1番小さな声になった。それでも莉子は笑ってくれた。なぁ、ずーっと好きだから、好きって伝えたらいつまでもそうやって笑ってくれるか?そうしたら、莉子のために好きって繰り返し言える気がする。やっぱダメか、壊れたレコードみたいになるだろうから。
