掌編/ネオプロトタイプ
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夏休みになった。特に予定がないからといって、毎日君と会えるわけもない。そんな、毎日のように会おうって言ったら、おかしいだろ。莉子は気まぐれに俺に連絡を寄越して、ご飯行こうだとか散歩行こうだとか誘ってくる。どうせ俺は暇つぶしなんだろ、と思ったって、断ることなんて出来ない。だって誰よりも好きだし。好きだ、と胸の中で繰り返すたび、恥ずかしくなって居た堪れなくなる。今年の誕生日に貰った、大事な腕時計に触れる。時計の針を見て、恋わずらいを始めて随分経ってしまったと思う。1人きりの自分の部屋で、ぼんやり窓の向こうを見る。なにしてるかな。本当はシフトとかスケジュールとか全部抑えておきたい。誰となにしてるのか、全部知りたい。そんなことしたらきっと嫌われるし……知ったところで嫉妬でいっぱいになると思う。クソ、どうしたらこの呻きは癒えるのだろう。
(会ってる間は、幸せで忘れられる)
携帯端末を睨みつけて、ため息をひとつ。毎日会いたいなんて言ってねぇ。君に会いたいと、いつだって隠してるから。今日は言ったって、不自然じゃない。別に、自然に誘ってみればいいんだ。そうだよな。
『今なにしてる?』
送って、携帯を机の中央に置いて、腕を組んだ。通知くるように設定してあるんだから、他のことをしていればいいのに。5分くらい経ってから、会えることになれば出かけるのだと気づいて、慌てて支度を始めた。支度を始めた途端に連絡が来てしまって、わたわたとする。「寝てた〜」の字が目に飛び込んできて、会えるのではと期待を膨らませる。
『なんか予定あるのか?』
『特にないかな〜』
『じゃあ散歩でもしに行こう』
外は陽射しが強くて、暑そうだ。こんな中歩くのは嫌だろうか。俺は耐えられるけど、莉子と歩くなら。
『暑いから部屋がいい』
頭が真っ白になる。出かけるつもりだったので。部屋に呼ぶのは。最近ちょっと遠慮してて。莉子の元気がない間は平然と呼んでいたのだけれど、莉子に仲間が増えて友達が増えて。外聞がとても気になってしまうし、なにより自分がどうしようもなくなるのではないかと怖くて。独り占め、2人きり。危ないと思う、いろいろ。
『じゃあ遊びに来たらいい』
気持ちとは裏腹に、チャンスを逃すまいと指は滑っていって。オッケーのスタンプが送られてくる。適当に行くね、と言われて。困る、それは1番困る。部屋片付けないと。おやつとか飲み物とか、あるか。退屈させないように、なんかないか。思考が忙しい。小一時間、昼飯を摂るのも忘れて準備をしていた。
『お昼ご飯食べたから、行ってもいい?』
えっと、どうしよう。えっと。
『俺は昼まだだから、ちょっとだけ待て』
うん、流石に昼飯抜きにすることはねぇ。リビングで手早く昼飯を食べ、もう一度鏡の前に立って深呼吸をした。ふと、自分はバカだなと思う。俺たちは幼馴染なんだから、もう少しリラックスしたっていいだろうに。
『来ていいぞ』
わーい!!とスタンプが送られてきて、胸が詰まるほど嬉しくて。大丈夫かな、俺。形を保ってるか?ピンポーンとインターフォンが鳴り、母親が出てくる前に莉子を迎え入れて、さっさと部屋に案内した。莉子はいつものようにベッドの縁に腰掛けて、あろうことかコテン、と横になった。人の気も知らないで!!
「まだ眠いか?」
「んー?んー」
莉子は目を擦りながら身体を起こした。あくびをして、俺のことをゆるりと見上げる。俺は目を逸らした。身体が固まっている。隣に腰掛けようか悩んで、結局窓際の勉強机の椅子に座る。莉子はずっと俺を目で追っている。かわ、いい。背中をゾクゾクとときめきが這っていく。見つめられるのが嬉しくて、逃げ出してしまいたい。そうでもなかったら、距離がなくなるくらい抱きしめていたい。俺がぐるぐる葛藤している間、部屋はとても静かだった。莉子はそのうちに俺から視線を外して、きょろきょろ部屋を見渡して、やっぱりコロンと寝転がった。そんな無防備でいたら、ダメだ。誰にでもそうなんだろ?絶対ダメ。叱ろうとして舌の根が乾いて。俺の前だから、いいんじゃねぇかと甘えたことを思って。莉子が瞼を閉じたところで、退屈させてると思い当たる。
「最近、なにしてたんだ?」
ようやっと、話を振った。莉子はまばたきをして、んーと声を出した。眠たげで甘ったるい声で、胸が溶かされていく。話を聞かなきゃ。なけなしの理性で意識を引き戻した。
「一昨日は蓮ちゃんとご飯行ってー、昨日は迅に呼び出されて街中散策した」
迅か、そうか。迅に呼び出されて。へぇ。何回もあったやり取りだが、日を追うごとに聞く頻度が増えてる。莉子は迅となにをしてるのかの詳細はほとんど語ってくれない。いつも日々の様子を聞いた時、会ったということだけ伝えてくる。それが不安で仕方なくて、でも訊ねることが出来ない。怖い。所詮俺は、ただの幼馴染だし。ケジメとして俺から告白出来ない以上、待つことしか出来ない。莉子は多分、俺のことが好きなわけじゃない。嫌いでもねぇけど、好きなわけじゃ。だけど、俺以外の誰かを選ばれたら、きっと許すことが出来ない。泣きたくなる、バカすぎて。
「莉子は、」
「うん」
「俺のこと好きか?」
「?急にどしたの」
莉子が不思議そうな顔をして、自分がとんでもない言い間違いをしたことに気づく。迅のことが好きなのかを訊こうと思ったのに。そんなことより、俺が愛されてるか知りたくて口が滑った。言葉にならずに声を漏らした。莉子は俺の様子を見て、ふっと笑った。心臓が止まるかと思う。
「大好きだよ」
心臓がひっくり返って、変に脈を打つ。は?大好き?本当に?マジで言ってんのか?全部、声にならなくて。莉子はあまりにも平然としていて、ちょっとずつ俺は冷静さを取り戻す。あー、うん。これは多分。
「……みんなと同じ好きか?」
「好きは比べようがないよ」
莉子は困ったように、呆れたように首を傾げた。俺だけ特別なわけじゃ、ねぇんだな。他にも大好きな人がたくさんいて、みんなから愛されていたいんだよな。莉子はそういう奴だ。何もかも取りあげて、俺だけのモンに。そんなの、可哀想で仕方ない。そうだよ。莉子が幸せなら、他に欲しいモンなんてねぇ。最初にそう、誓ったはずだから。側にいられるなら、俺のことも大好きならそれでいいだろ。
「拓磨、難しい顔してる」
「…………してねぇ」
嘘だよな、ごめん。どうしても、俺だけの君を想像してしまう。それが顔に出てんだ。メガネを上げて、頬に触れて顔をほぐそうとした。莉子はベッドから離れると、俺の目の前に立って手を重ねるように頬に触れてきた。やめろ、やめてくれ。勘違いするから。莉子は俺の頬を弄んで、しばらくなにも言わなかった。
「………拓磨は、私のこと好き?」
好きって言ったら、ずっと俺だけの側にいてくれんのかよ。叶えてくれねぇくせに。知ってて、ずっと知らんぷりしてたんだろ。ずっと好きだったよ、これからも。
「…………好きだよ」
もう隠し通すのは無理だから、素直に白状した。莉子は嬉しそうに柔く微笑んだ。どうでもよくなった。身体の力が抜けていく。莉子の手が俺の前髪に触れて、離れていく。名残惜しくて目で追う。莉子は俺の両手を取って、繋いで揺らした。あぁ、本当にあの頃のまま子供っぽくて。好きだなぁ。
「これからもよろしくね」
今まで通りってことだと悟った。それでも、先ほどよりはよっぽど安心している。君のこと、好きでいてもいいんだな。君も俺のことが、ちゃんと好きなんだな。それだけでも今はいいや。ずっとこのままでもいいや。まだ人生長いもんなぁ。いつまででも待つ。一生捧げて、いつまでも。
(会ってる間は、幸せで忘れられる)
携帯端末を睨みつけて、ため息をひとつ。毎日会いたいなんて言ってねぇ。君に会いたいと、いつだって隠してるから。今日は言ったって、不自然じゃない。別に、自然に誘ってみればいいんだ。そうだよな。
『今なにしてる?』
送って、携帯を机の中央に置いて、腕を組んだ。通知くるように設定してあるんだから、他のことをしていればいいのに。5分くらい経ってから、会えることになれば出かけるのだと気づいて、慌てて支度を始めた。支度を始めた途端に連絡が来てしまって、わたわたとする。「寝てた〜」の字が目に飛び込んできて、会えるのではと期待を膨らませる。
『なんか予定あるのか?』
『特にないかな〜』
『じゃあ散歩でもしに行こう』
外は陽射しが強くて、暑そうだ。こんな中歩くのは嫌だろうか。俺は耐えられるけど、莉子と歩くなら。
『暑いから部屋がいい』
頭が真っ白になる。出かけるつもりだったので。部屋に呼ぶのは。最近ちょっと遠慮してて。莉子の元気がない間は平然と呼んでいたのだけれど、莉子に仲間が増えて友達が増えて。外聞がとても気になってしまうし、なにより自分がどうしようもなくなるのではないかと怖くて。独り占め、2人きり。危ないと思う、いろいろ。
『じゃあ遊びに来たらいい』
気持ちとは裏腹に、チャンスを逃すまいと指は滑っていって。オッケーのスタンプが送られてくる。適当に行くね、と言われて。困る、それは1番困る。部屋片付けないと。おやつとか飲み物とか、あるか。退屈させないように、なんかないか。思考が忙しい。小一時間、昼飯を摂るのも忘れて準備をしていた。
『お昼ご飯食べたから、行ってもいい?』
えっと、どうしよう。えっと。
『俺は昼まだだから、ちょっとだけ待て』
うん、流石に昼飯抜きにすることはねぇ。リビングで手早く昼飯を食べ、もう一度鏡の前に立って深呼吸をした。ふと、自分はバカだなと思う。俺たちは幼馴染なんだから、もう少しリラックスしたっていいだろうに。
『来ていいぞ』
わーい!!とスタンプが送られてきて、胸が詰まるほど嬉しくて。大丈夫かな、俺。形を保ってるか?ピンポーンとインターフォンが鳴り、母親が出てくる前に莉子を迎え入れて、さっさと部屋に案内した。莉子はいつものようにベッドの縁に腰掛けて、あろうことかコテン、と横になった。人の気も知らないで!!
「まだ眠いか?」
「んー?んー」
莉子は目を擦りながら身体を起こした。あくびをして、俺のことをゆるりと見上げる。俺は目を逸らした。身体が固まっている。隣に腰掛けようか悩んで、結局窓際の勉強机の椅子に座る。莉子はずっと俺を目で追っている。かわ、いい。背中をゾクゾクとときめきが這っていく。見つめられるのが嬉しくて、逃げ出してしまいたい。そうでもなかったら、距離がなくなるくらい抱きしめていたい。俺がぐるぐる葛藤している間、部屋はとても静かだった。莉子はそのうちに俺から視線を外して、きょろきょろ部屋を見渡して、やっぱりコロンと寝転がった。そんな無防備でいたら、ダメだ。誰にでもそうなんだろ?絶対ダメ。叱ろうとして舌の根が乾いて。俺の前だから、いいんじゃねぇかと甘えたことを思って。莉子が瞼を閉じたところで、退屈させてると思い当たる。
「最近、なにしてたんだ?」
ようやっと、話を振った。莉子はまばたきをして、んーと声を出した。眠たげで甘ったるい声で、胸が溶かされていく。話を聞かなきゃ。なけなしの理性で意識を引き戻した。
「一昨日は蓮ちゃんとご飯行ってー、昨日は迅に呼び出されて街中散策した」
迅か、そうか。迅に呼び出されて。へぇ。何回もあったやり取りだが、日を追うごとに聞く頻度が増えてる。莉子は迅となにをしてるのかの詳細はほとんど語ってくれない。いつも日々の様子を聞いた時、会ったということだけ伝えてくる。それが不安で仕方なくて、でも訊ねることが出来ない。怖い。所詮俺は、ただの幼馴染だし。ケジメとして俺から告白出来ない以上、待つことしか出来ない。莉子は多分、俺のことが好きなわけじゃない。嫌いでもねぇけど、好きなわけじゃ。だけど、俺以外の誰かを選ばれたら、きっと許すことが出来ない。泣きたくなる、バカすぎて。
「莉子は、」
「うん」
「俺のこと好きか?」
「?急にどしたの」
莉子が不思議そうな顔をして、自分がとんでもない言い間違いをしたことに気づく。迅のことが好きなのかを訊こうと思ったのに。そんなことより、俺が愛されてるか知りたくて口が滑った。言葉にならずに声を漏らした。莉子は俺の様子を見て、ふっと笑った。心臓が止まるかと思う。
「大好きだよ」
心臓がひっくり返って、変に脈を打つ。は?大好き?本当に?マジで言ってんのか?全部、声にならなくて。莉子はあまりにも平然としていて、ちょっとずつ俺は冷静さを取り戻す。あー、うん。これは多分。
「……みんなと同じ好きか?」
「好きは比べようがないよ」
莉子は困ったように、呆れたように首を傾げた。俺だけ特別なわけじゃ、ねぇんだな。他にも大好きな人がたくさんいて、みんなから愛されていたいんだよな。莉子はそういう奴だ。何もかも取りあげて、俺だけのモンに。そんなの、可哀想で仕方ない。そうだよ。莉子が幸せなら、他に欲しいモンなんてねぇ。最初にそう、誓ったはずだから。側にいられるなら、俺のことも大好きならそれでいいだろ。
「拓磨、難しい顔してる」
「…………してねぇ」
嘘だよな、ごめん。どうしても、俺だけの君を想像してしまう。それが顔に出てんだ。メガネを上げて、頬に触れて顔をほぐそうとした。莉子はベッドから離れると、俺の目の前に立って手を重ねるように頬に触れてきた。やめろ、やめてくれ。勘違いするから。莉子は俺の頬を弄んで、しばらくなにも言わなかった。
「………拓磨は、私のこと好き?」
好きって言ったら、ずっと俺だけの側にいてくれんのかよ。叶えてくれねぇくせに。知ってて、ずっと知らんぷりしてたんだろ。ずっと好きだったよ、これからも。
「…………好きだよ」
もう隠し通すのは無理だから、素直に白状した。莉子は嬉しそうに柔く微笑んだ。どうでもよくなった。身体の力が抜けていく。莉子の手が俺の前髪に触れて、離れていく。名残惜しくて目で追う。莉子は俺の両手を取って、繋いで揺らした。あぁ、本当にあの頃のまま子供っぽくて。好きだなぁ。
「これからもよろしくね」
今まで通りってことだと悟った。それでも、先ほどよりはよっぽど安心している。君のこと、好きでいてもいいんだな。君も俺のことが、ちゃんと好きなんだな。それだけでも今はいいや。ずっとこのままでもいいや。まだ人生長いもんなぁ。いつまででも待つ。一生捧げて、いつまでも。
