少女との出会い


青年は不思議に思い男と同じ方向に目を向けるとそこにはまたしてもこちらに向かって飛んでくるシグルスの大群がいた


『歌族…』


男が呟いた言葉を聞き青年はコイツの仲間か?と思い少女に目を向ける

少女は人間ではなく歌族と呼ばれる亜人であった


『(やっぱり人間にさらわれたのか?だから仲間が助けに…)』


確証もなく相手を悪くは言いたくはないが人間の中には亜人を見せ物や奴隷として扱う為に拐う奴が多い

こいつらもその類いかと模索している間に歌族の民はもう青年達のすぐそばまで来ていた


『早かったな~、よくここが分かったね』


『人間よ セティアを返せ!あの娘はすぐこの場で抹殺せねば!!』


仲間が来たと安堵した瞬間、歌族の一人の女性がとんでもない事を言い放った


抹殺


セティアとは多分少女の事だろう

どうやら彼女達は少女の味方ではないらしい
しかしなぜ彼女達はこんな少女の命を狙うのであろう


仲間ではないのか?


『酷い言いぐさだな~ 君達の仲間だろ?』


『ふざけるな!貴様らのせいだろう!!』


『悪いけど…彼女は渡さないよ~ 彼女は俺らの大事な所有物だ 殺させもしない』


彼女達が怒りをあらわにするのとは対照的に男は楽しげに口を開くだけ


一体なんなのだろう
どうやら誘拐という簡単な問題ではないらしい

しかし彼等の対立する理由はまるで分からない

唯一分かったのは


人間達は彼女の身柄を

歌族の民は彼女の命を


奪う事を目的としているという事だけ

どちらにしても青年は彼等に少女を渡す気にはなれなかった


『なら力ずくで奪うまでだ!!』


歌族の女性がそういい放つと同時に彼女等の一斉攻撃は始まった



『(・・今のうちだな)』



青年はこの瞬間を待っていた

彼等の言動を見る限りここで戦いが起こる事は分かっていた
戦いの最中なら自分達にばかり気を配ってはいられないだろう
青年は騒ぎに紛れての闘争をはかっていた


『(今だっ!)』


歌族の攻撃に一瞬人間達が怯んだ隙に青年は一気に駆け出した

しかし、青年の逃走に気がついた数人の人間達が猛スピードで追いかけてくる

追いかけてくるやつをどうするか


青年はけして非力ではなかった
自分の身を守る術は長い旅で身につけていた
しかし少女を抱えたまま巨鳥に乗った男達を相手に戦うのは気絶している少女の体に負担がかかりすぎる




・・あれを使うしかない




そう思った瞬間突如青年の前に大きな壁が立ちはだかった

いや 壁と思ったのは一瞬で よく見るとそれは沢山の男達の集団であった

いつのまに追い付かれたのだろうと青年は身構えたが

しかしすぐに彼等の他の者達とは明らかに異なった服装

そして彼等の匂いの違いに気がつく
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