ビオラの詩
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市井ちゃんの後ろから見守る私はきっと今後もこの人とお話する機会がないのかな。
「名無しちゃん、何で隠れるの?」
「だって…。」
ブラックかっこいい。同級生なんかにトキめいたりしない。市井ちゃんの後ろからひょこっと顔を出し眺める。これだけでも毎日楽しい。
「名無しちゃん、もしかしてブラックの事、好きなの?」
「え?」
「そうなんですか?」
真横に立つブラックに肩が跳ね上がる。焦り過ぎて足がもつれそう。市井ちゃんの服を引っ張ると割りと本気で怒られた。
「ちょっと!!」
「市井ちゃん!」
怒った市井ちゃんが離れていく。
「カカカッ、怒らせちゃいましたねーっ!」
仲直り、したいですか?
「ツールを貸しましょうか?そのかわり動画の出演契約を」
「だ、大丈夫!!」
教室を飛びだし、市井ちゃんを追いかける。
「は、話しちゃったあ…!」
どうしよう、声が耳に残る。
「ブラック…。」
いつしか私は受験を終え、制服へと袖を通すようになった。市井ちゃんと同じ髪留めをつけ、教えてもらったリップを塗る。
「……。」
さとくんとはクラスも学校も変わった。会う機会はめっぽう減り、あれだけ好きだと思ったブラックも何時しか薄れてしまった気がした。向こうも同じはず。昔クラスが一緒だったなぁと一瞬だけ過る程度。目立たず可もなく不可もなし。市井ちゃんの後ろに隠れていただけのクラスメイト。淡い色をした存在だ。
「おはよーございます、名無しさん」
「ぁ……。」
色褪せていた思い出に再び色がつく。
「ブラック…?」
「え?ああ、小学生のとき、クラスが一緒だった…。」
さとくんは思い出すのに時間かかってる。
「忘れちゃったんですか?同じクラスメイトだったのに。」
「忘れてないよ!」
ペラペラと思い出話をするこの人は…
「ブラック、名無しちゃんの事見すぎだろ、良くそんなに覚えてるな…。」
「さとくんとは違うんです。」
「私…。」
ブラックと話したことそんなに無い。なのに一つ一つ大事に覚えていてくれてる。
「あ、りがとう…ブラック。」
「オレちゃん、別にお礼を言われるような事してませんよ?」
「私も、大事にする…」
貴方が語ってくれた思い出を。薄れていた淡い感情に濃い色がのる。
「…なら、増やさなきゃですね。」
「え?」
「オレちゃんとの思い出を大事にしてくれるんでしょう?なら、増やしていきましょう。」
この先、何年かけても。
「貴女だけが思っていた、なんて、思わないで下さいね。」
「…あっ、ブラック?」
今のはどういう意味…。
「小学生の時もかわいかったですね。」
「ああ、もう駄目だ通報しよう。」
「純粋に述べただけなんですけど。」
この先、関わればわかっていくのだろうか。
-終-
青春ものやぁ。難しい。
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