都合のいい解釈
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オレちゃんの話を聞いてくれますか?
「もうやだ。」
それは…。
「靴がぬれちゃう、やだなぁ。」
梅雨時期、バケツをひっくり返したかの様な土砂降り。雨粒が地面につくと勢いをつけて跳ね上がる。その跳ね返りが足元を濡らし彼女のソックスに染み込んでゆく。彼女は眉間にしわを寄せ不快感を露にした。
「最悪、おろし立てなのに。」
だからお迎えに上がりました。傘を差し出し入るように促すも「いや」と一言。足元を見つめ靴が濡れる事を気にしている様子。傘を渡して抱えて飛んで帰宅をしました。
「大人しくして下さい、落ちちゃいますよ?」
窮屈さにひとしきり文句を唱える彼女を制御するには充分な一言でした。家の前に運ぶと次の撮影があったのでそのまま立ち去りました。
「ありがとう。」
遠くから微かに聞こえる声はお礼を述べているようでした。…素直なら可愛いんですよね、素直なら。
翌日、彼女が昨日のお礼にお菓子を作ってきてくれました。
「何が好きかわからなくて、と、特別だから、1人で食べて。誰にも、あげちゃ駄目なんだから」
中身を見るとチョコレートでした。ハイカカオ、苦みが強くどこか品のある味はゆっくりと舌の上で溶けてゆき、この子から頂けた事に対し幸福感が押し寄せてきた。
「有難うございます。」
「…ううん。」
照れたのか何処かに走り去ってしまいました。それは…ツンデレというやつでしょうか?
「カカカッ、現実に居るんですねぇ、貴女みたいな属性が。」
それもまた可愛いです。
ある日の事。名無しさんの誕生日。
「何か欲しいものは?」
「いらない」
物欲のない子ですね。
「本当にいらないから」
……彼女はツンデレ。今はツンの部分。つまり欲しいものを予測してプレゼントすればデレるというわけですね。
「名無しさん。」
「なに?」
「プレゼントです、どうぞ。」
「…なんで分かったの?」
「あれだけお店の前で物欲しそうに眺めていれば気づきますよ。」
「…もうやだ。」
彼女は照れたように顔を伏せ、最後に有難うと言いました。それは彼女なりの喜びと感謝でした。
私の話を聞いてくれる?
「もうやだ。」
それは…。
「靴がぬれちゃう、やだなぁ。」
梅雨時期、バケツをひっくり返したかの様な土砂降り。雨粒が地面につくと勢いをつけて跳ね上がる。その跳ね返りが足元を濡らし、私のソックスに染み込んでゆく。私は眉間にしわを寄せ不快感を露にした。
「最悪、おろし立てなのに。」
親に連絡すれば良かった。なんて思っていると目の前に悪魔が降り立った。彼は私に傘を差し出し入るように促す。私はこの悪魔が好きではない。何故なら纏わりついてくるストーカーなのだ。なので「嫌」と一言放った。足元を見つめ靴が濡れても良いので、すり抜けて帰ろうと思った。が、こんな人外に敵うはずもなく私は抱き上げられてしまった。
「大人しくして下さい、落としますよ?」
嫌だ、触らないで。抵抗を試みるも悪魔の囁きに体が硬直をする。見開いた眼は恐怖心を宿し、この高さからの落下は死を意味した。悪魔は家の前に運ぶと次の撮影があると、そのまま立ち去った。
「ゆるさない。」
私の叫びなど、悪魔の耳に触れているかどうか。素直な言葉で嫌悪を吐き出した。
翌日、昨日のお礼にお菓子を作って行った。
「何が好きかわからなくて、と、特別だから、1人で食べて。誰にも、あげちゃ駄目なんだから」
中身はチョコレート。毒を仕込む。苦みがあるのでハイカカオで誤魔化す。人外とは言え人の形をした生き物を殺すのは気が引ける。思わず声が震えた。
「有難うございます。」
「…ううん。」
嗚呼、駄目だ。怖い。ここに居ては私が疑われてしまうので走り去った。
「カカカッ、現実に居るんですねぇ、貴女みたいな属性が。」
…どうか無事に死にますように。
ある日の事。私の誕生日。
「何か欲しいものは?」
「いらない」
やはり死にはしなかった。
「本当にいらないから」
…こんな悪魔から欲しくない。このオープンな異常者の存在がなくなり、私の穏やかな生活を望むばかりだ。
「名無しさん。」
「なに?」
「プレゼントです、どうぞ。」
「…なんで分かったの?」
「あれだけお店の前で物欲しそうに眺めていれば気づきますよ。」
「…もうやだ。」
やっぱり跡をつけられてた。私は絶望したように顔を伏せ、涙を流す。この悪魔を始末出来ないなら自分で自分の人生を終わらせることを覚悟した。最後に有難うと言った。それは悟らせてくれたせめてもの私なりの嫌味だ。
-終-
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