アイビーの詩
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「名無しさんの大切な人は誰ですか?」
甘い声にのせられ、ふと友人の名を口にした。数日後に気付くとスマホのニュース速報に友人が飛び降り自殺をした記事が飛び込んできた。
「名無しさんの大切な人は誰ですか?」
「職場の上司かな。お世話になってるし。」
友人の死を引きずりながら答えた。数日後、上司は一家心中をした。もう居なくなった彼のデスクにアザミの花束が飾られていた。誰が飾ったかは定かではない。
「名無しさんの大切な人は誰ですか?」
何度目の問いだろう。
「ご両親、ですよね。」
数日後、私は喪主をした。両親は仲良く世を去った。私の側を離れない悪魔は私を支えようと奮闘していた。
「名無しさんの大切な人は誰ですか?」
学生時代の恩師の名を口にする。数日後、持病なんか持っていたことすら初耳なのだが、持病の悪化により急に容態が悪化し亡くなったと連絡があった。
「名無しさんの大切な人は誰ですか?」
「ブラック。」
希薄な関係しかないスマホの登録者を眺め、そっと答えた。
「もう、ブラックしか居ないよ。」
「カカカッ。」
いつも通りの笑い声。窓の外には赤い満月の光が差し込み、彼の髪をより炎のように紅く照らしていた。その姿は人の形をしているのにも関わらず、まるで悪魔そのものだ。
「その言葉が聞きたかったのです。」
貴女の大切な人は一人で充分でしょう?
他になんていりませんよ。
「居なくなって清々しましたね。」
この結果にいたく満足した悪魔は笑う。
「最初にオレちゃんの名前を上げていれば…。」
-終-
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