ルピナスの詩
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なんの天罰だ、なんの因果か、分からない。だってこんな目に合わなきゃならないのか理由を振り返っても未だに理解が出来ない。このクラスで、こんな事がおこるなんて。
「……。」
鋭利な何かで裂かれた教科書、椅子に引っ掛けたカーディガンに袖を通すと爪と肉の間に何かが刺さった。チクリと痛み反射的に指を丸め袖口を目の前に持ってきて思わず目を見開いた。
「…なにこれ?」
黒いホッチキスの芯。乱雑に袖口を止められており、塞がれていた。
「…。」
袖から腕を引き抜くと中指からぷつりと針で刺されたかのような出血を確認。ホッチキスの芯が刺さったらしい。
「名無しちゃん、どうしましたか?」
「あ、ううん!なんでもない!」
「名無しちゃん、ドッジボールしよ!」
「うん!」
このクラスに私を嫌っている人がいるのかな。上履きを履き替え、グラウンドに出てさとくん達と遊ぶ。避けられたり陰口言われてる様子もない。皆、いつもと変わらない。
「(…怖い)」
だからこそ恐怖なのだ。見えないものの中に潜む幽霊のような、なんとも言えないゾクリと背筋を凍らすような感覚。皆が嘘をついている?
「名無しちゃん!」
「えっ、あ、ごめん!」
ボール持ったまま固まっちゃった。
「……。」
放課後、ランドセルを背負って一人で帰る。だって誰かと帰るのが怖いもの。
「名無しちゃん。」
「…ブラック?」
「ひとり、ですか?」
「うん、今日はちょっと…」
やられたことがショックすぎて、人間不信気味。気持ちが重たくて足取りまで重い。
「良かったらオレちゃんと帰りませんか?」
「え?……どうしよ。」
「オレちゃんじゃイヤですか?」
「いや、じゃないよ!」
「じゃあ、一緒に帰りましょう!」
あれよあれよと流されるようにブラックと帰宅。送ってもらっちゃった。
「ありがとう、ブラック」
「いえ。では、また。」
ブラックって大人だなぁ。
「おはようございます!」
「おわ、ブラック?」
翌朝。玄関をあけるとブラックが居た。さとくんは?
「先に行っちゃいました。一緒に行きますか?」
「…うん!」
昨日の気持ちが少し軽くなった気がする。他愛のない会話をしてあっという間に学校に到着。
「最近、ブラックと仲良しだね?」
「うん、仲良く、してくれてるの。」
先生に頼まれたプリントをホッチキスで止めながら、市井ちゃんと話をする。あれ?
「これ…」
黒いホッチキスの芯。
「珍しいよね、ブラックがくれたの。」
ふと袖口を思い出した。
-終-
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