あべこべの詩
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どうか、心残りなく逝けますように。
「悪魔は嘘をつくの?」
「いきなりどうしたんです?」
「教えてよ。」
「必要に応じて。人間もそうなのでは?」
「好きよ、ブラック。」
「貴女なんて嫌いですよ。」
「…ありがとう。」
「カカカッ、嫌われているのにお礼とは。貴女の病気は頭まで蝕むんですかァ?」
「ひどい人。林檎むいて。」
「それじゃ食べにくいでしょう、細かくしますよ。」
なんて器用な手先。林檎を向く姿を眺めると「気持ち悪いので見ないで下さい」と言葉が放たれた。この悪魔は視線が冷たく安心する。
「もう、散っちゃうのね。」
2階の窓から半分ほど見える桜。淡い桃色の花びらがひらりと風に乗って舞い落ちていく。午後の暖かく柔らかな日差しと程よい風。この病に犯される身体と弱った心を慰めてくれるこの景色にほんの少し救われた気がした。
「私はもう長くはない。好きも精算しなきゃ。」
おいて行きたくはない。ならいっそのこと嫌われたい。だってそうすれば未練なんてものはないでしょう?貴方はこの気持ち、くんでくれるよね。
「…私もブラックのこと嫌い。」
「おや、お互い様ですね。」
「死んじゃえば良いのに」
「死ねるものなら死んでみたいんですが、なんせオレちゃん悪魔なんで。」
「いつ帰るのよ?」
「帰る?こんな弱っていつ死ぬかわからない名無しさんを目の前にですか?」
「もしかしてそれは心配というやつかしら。」
「人が死ぬ瞬間なんて、滅多に見れませんよ。こんな鬼ヤバな瞬間、見逃すわけ有り得ません。」
「それだけ?」
「はい。」
「この悪魔。」
「悪魔ですが、何か?」
私に心残りはない。好きな人を置いていく事もない。
「…ブラック、嫌い…よ。」
「オレちゃんもですよ。もう逝ってしまうのでしょう?」
良かったじゃないですか。
「もう、痛くないですね。」
痛みで泣くことも怯えることも無くなりました。
「さようなら。」
愛情を込めて、言葉を放つ。
-終-
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