ホトトギスの詩
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私にはブラックが居る。カメラちゃんも居る。
「おやおや。」
どんがらがっしゃーんと定番の音をたて私は床に這いつくばる。お部屋を片付けようとして椅子から落下。ものまでひっくり返す始末。パソコン片手にブラックが「またか」と言わんばかりにこちらに来てくれた。
「怪我はありませんか?」
「うっぅ…」
「危ないことばかりして。駄目ですよ?」
「お片付け…」
「散らかってますけど。」
片付けようとして散らかしていては本末転倒な話。短い手足では限界のある域に突破したがゆえの転倒とみた。しゃがみ込んでこの子の主張に耳を向ける。色々と説明している。どうやら役に立ちたかったらしい。
「名無しちゃんは居てくれるだけで良いんですよ。貴女が怪我するほうが心配です。」
「だって!」
「さっ、おやつにしましょう。」
脇の下に手を入れられ持ち上げられるとぶらんと下半身が揺れる。宙ぶらりんの状態で運ばれ、おやつを頬張る。
「甘ぁっ!」
「じーっ!」
わきゃわきゃと楽しんでいるこの光景に笑みが溢れる。彼女の成長は早い。このあどけない瞬間も一瞬のものとなるだろう。だからこそ大事に噛み締めるように過ごすのだ。
「ブラック!さとくんとこいくの?」
「はい、名無しちゃんはお留守番をお願いします。」
「またぁ?」
私はここしか知らない。そとにでたことがない。ブラックはずるい。カメラちゃんとふたりだけ楽しそうなことをしている。魔界は沢山出してくれるのに人間界とかいう所には行かせてくれない。いつも「危ないから」っていう。魔界のほうがあぶないよ。人間なんて大したことないもの。
「私も行きたい!」
ガシャガシャとおもちゃ箱を漁るかのようにダンボールからツールをほじくり出す。あった。これでブラックのあとを追える。
「なにここー?」
魔界とは比べものにならない程、穏やかな場所。整備された道に争いの無い静かな住宅地。思わず目が輝く。ブラックはこんな所を危険と呼びこさせなかったのか。ずるい。
「わぁい!」
ひとしきり歩き回る。
「なにこれ?」
掲示板?私のちいさい時の写真だ。
「あらら、見つかっちゃいましたね。」
「ブラック!」
そっと抱き上げるブラック。何だか凄く優しい顔。
「ブラック。あれなに?」
「名無しちゃんがかわいいから、探している人が居るんですよ。」
「なんで?」
「だから言ったでしょう?ここは危ないからって。さぁ、帰りましょう。オレちゃんのおうちに。」
「うん!」
-名無し。突然の行方不明、この子を探しています。情報提供は---。
-終-
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