スカビオサの詩
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「こんな人生いやだ。」
開口一番に開かれる台詞は在り来りだが重みを含んでいた。何を嘆こう、この不幸な運命により私の人生は波乱と最悪がつきまとっているのだ。住んだ家は焼けるし、ひったくりに合うし、強盗には巻き込まれるし、川には落ちる。命あるのが奇跡、とでも言うのだろうがこんな事が毎度毎度、身に降りかかるのならば、いっそ死んだほうがマシだ。人様の言う普通の生活なるものが私からは縁遠い。
「前世で何したの、私。」
「カカカッ!踏んだり蹴ったりですねぇっ!」
おまけに悪魔までついた始末。目から涙流すほどの大笑いをかましている。人の不幸がそんなに可笑しいか、可笑しいから笑ってるんだった。ビルの屋上で缶コーヒー片手にくたびれている私とは大きく異なり元気溌剌とした悪魔。この悪魔との関係性を説明するならば恋人となる。そう、私は今、恋人に自身の身にふりかかった不幸を爆笑されているのだ。恐ろしく外道な存在だと改めて理解する。
「気の悪いやつね!」
「名無しさんおもしろすぎですよ。」
「おもしろかない。」
「ご機嫌ナナメですねぇ…。」
やれやれと呆れた雰囲気を醸しているが、これは呆れられる所なのだろうか。他の人なら激怒すると思うのだが。なんなら私は寛大に受け止めているのでは。
「そう、へそ曲げないでください」
そんな目にあっている名無しさんもかわいいです。こう、甘やかしたくなります。
「本当かしら。」
「勿論です」
文字通りちゃんと甘やかしてもらった。嬉しい。抱きつくと抱き返してくれて、膝枕までしてくれる。ちょっと嫌なこと忘れそう。
「!、これは。」
神は存在したのか、いや、あっちのほうではない。幸福なるものを酔狂とする方だ。弱い人間が崇め称える側のやつ。私もその中の一人。ことはトントン拍子に進み、親の遺産を手に入れ人並みの幸せなる環境へと転身を遂げた。
「最近、すこぶる幸せだわぁ。」
不幸とは縁遠くなったと思う。久々にブラックが姿を見せた。動画撮影から戻ってきたみたいだ。
「何ですか?これ。」
「色々あって人並みの幸せを手に入れたの。」
「悪いことは何も起きていないんですか?」
「そうなの!本当、恵まれたのよ。」
「恵まれた、?」
不幸な貴女が好きなのに何勝手に幸せになってるんですか。
-終-
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