ブルーローズの詩
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さとくんと遊んだあとの事やったかな。
「…。」
「シャー!」
木に登っておりられへんなっとる猫がおった。放おっとこうかと思ったけどなんか人間みたいな事をしたなった。
「しゃーないな。」
助けてみた。
「きみ、危ないよ?」
猫を掴むと後ろからわいが掴まれた。誰や。
「お姉ちゃん、誰や?」
「その前におりようね。」
木からおろされる。
「猫、助けるなんて漫画みたいね。」
「漫画?」
「高いとこ登ると危ないから気をつけてよ?」
「自分、名前は?」
「名無し。きみは?」
「…白戸。」
ニコニコ笑っとるこの人は名無しっていうらしい。猫が暴れて腕から抜け出した。なんやねん、助けたった恩を仇で返すんか。
「白戸くん、それ痛くないの?」
「なんともあらへん。」
引っかき傷ぐらいなんてないわ。
「でも見てる側は痛いので手当しようね。」
抱き上げられてそのまま、名無しの家へ。これやってええんか。
「はい、できたー。」
「大げさやな。」
手当された腕を眺める。こんなもんなんてないのに…人間は繊細やな。
「お家まで送ろうか。」
「ええよ、どうせひとりやし。」
「……。」
なんやねん。
「なんか食べていく?」
「……うまいんやろうな?」
「頑張るね。」
これが人間の生活いうんか。
「…うまいやん。」
「良かった。」
人間は子供にこないに甘いもんなんか。
「……。」
もうちょっと居ってもええよな。
「ここ、泊まる。」
「一宿一飯の恩義は返してよー。」
「子供に求めることちゃうやろ。」
ええ暇つぶし。
「…。」
一緒に寝た。途中、目が覚めて名無しのほっぺたをベチベチ叩く。よし、起きへんな。
「…また、来るからな。」
次は、どう過ごそう。
「名無し…。」
またここに来たいやなんて、わいはどうにかしたんやろうか。
「はぁい、美味しそうでしょー。」
「おー。」
懲りずにまた遊びに来た。おやつの時間や。
「おいし?」
「まだ食べてへん。」
随分仲良くなった。名無しの部屋にある写真立て。何でかいつも倒されてる。
「なんやこれ。」
ホークを口に咥え、写真を見てみた。…恋人?
「……。」
針でも刺さったんかいうぐらいチクチクした痛み。なんやムカつくから写真を半分に引き裂いた。
「座って食べなさぁい。」
「んー。」
男の方は丸めて捨てた。いらんやろ。
「(誰かにとられる…)」
もぐもぐと温かいパンケーキを食べ進める。
「いやや。」
「え?何が?美味しくなかった?」
ホワイトの口の周りを拭きながら名無しが首を傾げる。
「白戸くんはわがままねー。」
「まずいとは言うとらんやろ。」
いつまで拭くねん。
「明日もおいで。余ったからドーナツ作ってあげる。」
「白いやつ、食べたい。」
「はいはい。」
帰り際に残りの写真立ての男の部分は破いて捨てた。倒しとるし気づかへんやろ。
「…。」
翌日、写真立ては触られておらずそのままだった。
「名無しは大事なものとかあるんか」
「どーしたの?」
「聞いとるんや。」
「色々大事かなぁ。」
「わいは?」
トングでドーナツを引き上げ、ちらりとホワイトを見つめる。
「大事。」
「ほんまに?」
「うん、弟みたい。」
ニコッと笑う名無しの言葉に陰りが生まれた。
「………。」
あの写真の男と同じ位置やないんか。
「…恋人は、」
「恋人?そんなもの居ないわよ」
だからこそ君とこういう時間が過ごせるのよ。
「ほい、白いやつ。」
「…。」
ホワイトチョコがかかったドーナツを一口食べる。甘い。口は甘いのに心は苦い。
「今日のは美味しい?」
「昨日のもおいしかったわ…」
「有難う。」
ワシャワシャと頭を撫でてくれる。
「名無しはわいのこと好きやないんや…」
「(メンヘラ女子か)」
温かい牛乳を出しらしくない白戸を慰める。
「好きよ、大好き。何へこたれてるの?」
「その好きはちゃう、わいの好きとは意味がちゃうんや!」
ここ最近の白戸くんは随分とかわいい。好きにこだわり始めるしちょこっと素直だし、甘えただ。
「この年の差は犯罪的よ。」
年の差ってなんやねん。
「…それさえなかったらええんか?」
「第一関門と言った所ではあるわね。」
…それなら。
「もとに戻ればええだけやな。」
…………。
夜。久々に写真立てを見た。破られる。おませさん。こんな元彼の写真なんかどうだっていい。未練がましく残してた思い出に白戸くんが片付けを手伝ってくれただけ。
「…ほんっと、」
見ると辛くなるから伏せていたのに。触っちゃったから思い出しちゃった。今日は白戸くんがお泊りじゃなくて良かった。滲み出る涙を拭い、そろそろこの思い出にけじめをつけなきゃならない。
「人間って泣くほど好きなくせに離れるんやね。」
「……。」
「…そのおかげでこっちにもつけいる隙、できたけど。」
窓辺に座る長髪の男性。神々しいという言葉が似合うこの人にどこか面影を重ねた。
「…白戸…くん?」
あの子はまだ小学生よ。そんな…。
「名無しならわかってくれると思ったわ。」
声は一緒だ。
「わいなら離れへん。せやから迎えに来た。」
気になること全部片付けていくから。
「わいのこと、好きになってくれるか?」
人間と恋をしたくなったんは初めてや。
-終-
1/1ページ