謳ってみた。
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10話。
______________________________________________
こんなの悪夢だわ。
「あー、魔界で風邪もらった。」
体温計がエラー連発。人間界の体温計じゃそもそも測定出来ない。
「お薬作っちゃおうかな。」
魔女は調合が得意。本の分厚さに頭がボーッとする。
「こほっ、ダメだ、横になろ。」
スポーツドリンクをがぶ飲みした後、ベッドに向かった。ブラックは昨日から撮影で居ない。シャイガイとかいうのと10時間鬼ごっこするとかなんとか。死なないの?
「さとくん可哀想…。」
ベッドで横になる。
「おや?名無しさん?」
夜明けと共に戻ってきた。荒い息遣いに咳嗽の症状。
「これは…」
「ブラック…おかえり…」
「ただいまです。風邪ひいちゃいました?」
「うん…。」
「苦しそうですね。」
私の苦しそうなの少し喜んでる気がする。ニヤァと笑って怖い。
「冗談です、オレちゃんそんな趣味はないんで。」
「うつるからあっちに行ってて…」
「オレちゃん悪魔ですよ?」
「(そんなもんに屈する奴じゃないかぁ…)」
「何か食べます?オレちゃんが作りますよ。」
「何でも…軽いもの…」
「これとかどうです?」
キャンプでステーキ焼く動画を見せられた。
「怒るわよ?」
「おいしそーなのに。」
違う。今じゃない。パタパタからかうように飛んでいくブラックを見つめる。
「…名無しさん、名無しさん。」
「…ん。」
目の前にお粥が置かれている。
「食べさせてあげます。」
「ありがとう」
パクっと食べる。
「おいひぃ…熱」
「カカカッ、火傷してません?」
「大丈夫、」
「…ひとりにしちゃいましたね。」
急に真面目になる。思わず目をパチクリさせてしまった。
「そーゆーの気にしてくれるんだぁ?」
「オレちゃんの大切な人なので。」
改めて言われると照れてしまう。
「…。」
急いで薬を飲んで横になる。身体が熱る。
「ご、ちそうさま…。」
「あらら。自分で熱あげちゃいましたねぇ。」
「…もう〜。」
頭から布団かぶってふて寝。
「早く良くなって下さい。いつもの名無しさんが居ないとオレちゃん寂しいです。」
「…うん。」
早く、治そう。
翌日。ケロッとしていた。
「よく効く薬だこと。」
どこから仕入れたのか気になる。シャワーを浴びて着替えるとブラックがソファーに座っていた。
「ありがとう、ブラック。治った!」
「やはり良く効きますね。いつもの名無しさんに戻って良かったです。」
「ブラックどこで寝てたの?」
「オレちゃんまだ寝てません。」
ソファーにずっと座ってたの?
「何かあるんじゃないかと心配だったので。」
早々ひくもんじゃないんでね。
けど…
「治ったみたいでホッとしました。」
心配でずっと看ててくれたの?
「ごめん、私…!」
「何故謝るんです?」
「だって…。」
「オレちゃんのしたいことをしただけです。」
ガシッと手を掴まれベッドに行く。
「今から少し寝るので、付き合って下さい。」
「え?うん…。」
添い寝をする。普段おちゃらけてるけどこの人はこんなに優しいんだ。
「…。」
すぅとお互い寝息をたてる。
夜中。
「全然寝れない…。」
「カカカッ!朝までオレちゃんとフォントナイトします?」
「絶対いや。」
見事に昼夜逆転した。
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11話
______________________________________________
学校にて、ファッション誌を見ながら市井ちゃんが盛り上がる。
「いいなぁ~っ!!」
デート服のコーデ特集。流行りのトレンドが目白押しだ。
「わたしもこんなの着てみたい!」
女子たちが集まりキャッキャと騒ぐ。
「市井ちゃんは何着てもかわいいよなぁ絶対」
「これ名無しさんとか絶対似合う!!あ〜また会いたいなぁ!」
まだ背丈が足りないからこの雑誌のファッションは自分には無理。だけど憧れの名無しさんなら着こなせるはず!
「ブラック、会わせてあげたら?」
「撮れ高なさそーなので遠慮します。」
てか、まだ名無しさんのこと慕ってるんですね。
「でも名無しお姉ちゃんて、どんなかっこーでデートするの?」
「…。」
そういえば。
「したことありませんね。」
ハッと閃いたようにブラックは名無しに連絡をとる。
「…?」
スマホのラインを見る。
明日の13時に二人で出かけましょ。駅集合で。よろしくお願いします。
「二人で?」
こんなお誘い初めてだ。もしかして
「デート…?」
意識したら照れてしまった。ヤバい。初だ。どうしよ、何から用意しよ。
「な、何着ていこ!」
クローゼットをあさる。何着たらいいのか。持ち合わせの衣装を引っ張り出しては試着する。
「スカートがいいよね。どんなのが好きなの…?」
難しい。全然決まらない。目が回る。
「あ、この前買ったニットワンピあったっけ。」
翌日。朝から起きてシャワー、髪の手入れ、ほんの少しメイクをして服を着替える。
「…。」
可愛い下着に付け替える。
「なに考えてんの私…。」
思わず赤くなる。早めに駅前についてしまった。立ってるだけなのに注目を集める。
「…。」
待ち合わせまで30分もある。きっと変じゃないはず。妙にドキドキする。
「お姉さん、あの…」
声のする方へと反応。その男性の背後からヌッとブラックが現れた。
「お待たせしました!」
「ひぃ!失礼しましたぁ!」
男性が逃げ出す。
「随分早いですね。そんなに楽しみだったんですかぁ〜?」
「…それなりに。」
楽しみだった。素直に答えると面食らったかのような顔する。
「ではさっそく行きましょう!」
「(ツアーみたいになってる。)」
どこから出したのか小さい旗を片手にずんずん前に進んでいく。
私の行きつけのショップやら場所を一通り回った。これって買い物デート、かな?
「あら。」
行きつけのカフェ。
「これでコンプリートです。」
「?」
何が?プランが?とりあえず椅子に座る。いつも、モモちゃんと過ごす特等席。
「オレちゃんとは初めてでしょう。」
どこもかしこも。いつもひとりで行きつけの場所へ行ってしまう。
「貴女の事が知りたいんです。」
全部教えて下さい。
「なので今日まわってみました。ふたりの方が楽しいでしょう?」
「…うん。」
ひとりの時より楽しかった。物を選ぶってふたりだとあんなに楽しいんだ。
「長いことひとりだったから。」
「これからはひとりじゃありませんよ。」
ずっと
「何があってもオレちゃんが一緒に居てあげます。」
例え魂だけになっても。
「悪魔の契約って恐ろしいのね。」
「カカカッ、今更ですか?」
テーブルに注文していたパンケーキと紅茶が届く。
「ここの美味しいから。」
パクっと一口食べる。
「“顔”を見ればわかります。」
いつもの…ここに来た時のあの顔を。
「おいひぃ~!甘味は幸せの宝庫よね。」
「オレちゃんも甘い物は好きです。」
至福。おやつも食べたし帰るとしよう。
「あ、そうそう。」
帰り道、ふとブラックが何かを思い出したかのように。
「その格好、とっても似合ってます。」
「…え?」
「まぁ、オレちゃんいつもの名無しさんの方が落ち着きますがね。」
カカカッと笑って歩き出す。照れてしまって歩くのを忘れてしまった。
「どうしたんです?来ないとおいて行っちゃいますよ。」
「あ、待って!」
そっと手を繋いで帰った。この帰り道が一番デートっぽい気がする。
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12話
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明るい色で街は色めき立つ。ハートのバルーンを貰った。
「…これ。」
明日バレンタインか。
「誰にあげよう。」
頭の中でブラックがひょこひょこ出てくる。
「…作ろーかな。」
帰宅。ブラックは居ない。買い込んだチョコを見て照れくさくなる。バレンタインなんか無縁だったから。湯煎して溶かしてあとは。
「メレンゲを絞って焼いて。」
マカロンの完成。
「おいひ…。」
パクっと味見。程よい甘さで上手くできた。これなら大丈夫だ。あとはラッピングするだけ。
「かわいい。明日皆にもあげよ。」
翌日。下校時刻に学校へ行くとさとくんが居た。
「名無しお姉ちゃ…!」
「名無しさぁぁぁん!!」
バンッとさとくんを弾き市井ちゃんが来た。
「どうしてここに?!あ、この前の歌ってみた良くて凄くリピート再生してるの!今日の服かわいい〜!!ひめもそんな服着てみたぁい!」
いつになく語りだしたら止まらない市井ちゃん。久々に会って大興奮中。
「い、市井ちゃ…」
「さとくんあとにして。」
ぐりんと振り返りさとくんを黙らせる。女の子って強い。というか市井ちゃんが強い。
「あっ、わたし名無しさんに渡したいものがあるの。」
紙袋からチョコが。
「市井ちゃん凄い。かわいいチョコね。」
「ママと作ったの。美味しく出来たと思う。」
「じゃあお返しに。」
市井ちゃんとチョコ交換する。
「マジか…。」
めちゃめちゃびっくりして素が出てる。ブラックと契約した時みたいだ。
「本当にー?!こ、これ名無しさんが!どーしよ、勿体なくて食べれなーい!」
キャッキャしてる。かわいい市井ちゃんに戻ったみたい。
「さとくんも。どうぞ。」
「え?おれ?」
さとくん大喜び。
「やったー!!チョコだー!やっと貰えたー!ありがとう、名無しお姉ちゃん!」
初チョコなのかな。
「そういえばブラックは?」
「え。名無しお姉ちゃん一緒じゃないの?」
さとくんと居ると思ってた。
「ありがとう、じゃあまたね。」
「またね~!」
「名無しさん、またね!!チョコありがとう!」
魔界かな?あちらこちらと探してみる。
「どこ行ったのよ。」
「どうしたんです?」
「ブラックが居ないのよ」
「ここに居るでしょ。」
「わっ、いつの間に!」
びっくりして振り返るとブラックが笑いながら居た。
「カカカッ、気づかなかったんですか!マヌケですね!」
「マヌケじゃない!」
ムカつく。けど本人を目の前にしたら少し緊張してきた。そっとチョコを渡す。
「オレちゃんにくれるんですか?」
「そ、う。一番、上手に出来たやつだけ入れたの。」
「それはそれは。」
パカッと開ける。
「おぉー。おいしそーです。」
パクっと食べてる。
「どう?」
「美味しいですよ。オレちゃんの好きな味です。」
あっ。思い出したようにブラックが箱を渡す。
「お土産です。」
「お土産?どこ行ってたの?」
「ヨーロッパです。いい撮影が出来ました。」
「またオシャレな街に…。」
こんな悪魔がお邪魔して申し訳ない。お土産を開けると中にはマロングラッセが入っていた。
「おいしそう。」
今までお土産なんて買ってきたことないのに。もぐもぐと食べる。上品な味。
「ありがとう、ブラック…。」
グイッと引き寄せられたと思ったら唇が重なっていた。
「…。」
長い。思わず息を呑む。少し苦しくなってきた。
「はぁ…!」
思わず離れる。
「あれぇ?もう終わりですか?」
ケロッとしてる。もう一度と言わんばかりに唇が近づく。
「ま、待っ…」
「いやです。」
もう一度重なる唇。長くてねちっこい。いつの間にかブラックの膝に座らされる。
「…ぁっ、う…。」
「カカカッ、その顔は唆りますねぇ。」
照れて涙目になった。ニタァと笑いながら髪を撫でるブラックはご満悦だ。片手にスマホを取り出し操作してる。
「今調べたんですがバレンタインの贈り物には色んな意味があるみたいですね。」
「そうなの?」
「…へえ。」
ふむふむとひとりで納得してる。
「気になります?」
「うん。」
「ネタバレはつまらないでしょ?…これはあとで。」
「あとで?」
そっと太もも裏に指を這わせ、下着に手をかけられた。
「オレちゃん今日は気分がいいです。」
なので結構頑張っちゃいます。
「ぁっ、やぁ…!」
触られる度、ビクビクと体が反応する。
「まだ触ってるだけですよ?」
「いじわる…悪魔っ。」
くすぐったくて気持ちいい。
「悪魔ですが何か?」
優しい声で頬を撫でられる。パチパチと胸元のボタンを外される。
「やぁ、こ、ここでするの…?」
「オレちゃんは良いですけど。」
ニタニタしてる。
「無理ぃ、あっち行く…。」
そっと寝室に運ばれる。
「…っ。」
気だるげに体を起こす。ふと昨日の会話を思い出した。
「検索…。」
マカロン。あなたは特別な人。
マロングラッセ。永遠の愛。
「こんなのあるんだ…。」
急に恥ずかしくなった。あの悪魔、嬉しくなって盛り上がったなぁ。
「こんな事でも単純に嬉しい時がありますね。」
「じー。」
不思議なのです。
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13話。
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9月5日
「(名無しお姉ちゃんこれで全部?」
段ボールの山。さとくんが段ボールをあさる。
「そうだよぉ。」
明日は旦那の誕生日。悪魔に誕生日あるのか。そっちのほうがびっくりした。
「ホームパーティーにしたんだね!」
「レストランにしようか悩んだんだけど…。私の手作りが好きみたいだし、皆で楽しく過ごしたいなぁって。」
「名無しお姉ちゃん、いつの間にかブラックのこと凄く好きだよね?」
最初とえらい違い。
「そ、そ、そな、そなん事…!!!」
「日本語おかしくなってる!!」
名無しお姉ちゃんって大人っぽいけどブラックのことになるとちょっとテンパる。
「(オレも市井ちゃん前にするとそーなるから気持ちわかるなぁ〜。)」
「あ、市井ちゃん達も呼ぼうね。招待状作ったからさとくん渡してよ。」
「え?!わ、分かった!」
ちょっと緊張する。部屋を飾り付けしていく。
「さとくん有難う。」
「もうクタクタだよー。」
よしよしと頭を撫でる。散々撮りためた動画の編集で魔界の部屋に引きこもらせている。
「差し入れでもしようかな。」
魔界。部屋からはキーボードを叩く音が響いてる。
「名無しさん…。」
ちょっと拗ねてるような。人間界のほうの部屋には来るなと言われ、撮りためた動画を渡されりゃそりゃあちょっとぐらい機嫌も斜め向くかな。
「…。」
チュッと頬にキスしてみた。
「なんです?」
「機嫌悪いかなって。」
ちょろいですね、ちょっとそんな風に見せてみただけなのに。
「そんな事でなおりませんよ?」
面白い。なんてからかいがいのある。
「え?」
明日誕生日だしこの仲で向かえるのは良くない。
「…。」
膝にのってきて唇にキス。
「…これでもダメ?」
あぁ、甘やかしたい。明日を台無しにするぐらい抱き潰したい。
「名無しさんからは初めてですね。」
機嫌なんてそもそも悪くない。編集もとっくに終わっているし部屋にこもるのも嫌いじゃない。なのに、勝手に後ろめたさを感じて機嫌を伺う。なんて滑稽でかわいいんでしょう。
「ひとりにしてごめん。」
ぎゅうっと抱きしめる。
「大好きだから、許して…。」
「許すことと関係あります?それ」
面白おかしく笑う。謎すぎます。でも名無しさんから初めて言われたので、オレちゃん今日も気分が良いです。
「オレちゃん、大好きだけじゃ物足りないんですよ。」
「えぇ…。」
照れ屋の名無しさんには少し難易度高めですかね。
「愛して…る…。」
目をそらし赤くなってる。
「カメラちゃん、撮りました?」
「じっ!」
ハイタッチしてる。
「マジ?」
カメラちゃんいつの間に。
「カカカッ、鬼ヤバな瞬間ゲットです!」
「本当にいい性格してるわね」
「そこも好きでしょ?」
「…。」
図星。むくれてる。
「もう知らない、戻る!」
逆に拗ねた。
「じ〜?じじっ。」
「大丈夫です、名無しさんは時間がたてば落ち着きます。」
「じ〜!」
扱いに慣れている。
翌日。
「…いいかな。」
「なんです?これ。」
目隠し。手をとって誘導する。
「はい。」
目隠しをとるとクラッカーが鳴り響く。
「ブラック、誕生日おめでとう!」
皆の声が響く。
カメラちゃんも生配信中。コメント欄が祝福の色へと染まる。
「ありがとうございます」
わざわざ用意してくれたんですね。
「カカカッ、ほんと、名無しさんは人間くさい人ですね。」
「“そこも好きでしょ”?」
昨日の。
「ええ、勿論。」
「名無しさぁん♡」
「バニラちゃんも来ちゃった…。」
「ご飯がいっぱいです〜!」
騒がしい誕生日だこと。
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14話。
______________________________________________
悪魔と結婚してどれくらい?
「結構経っちゃった。」
色んな事があった。どれもいい思い出でスマホの写真を見返すと口元が緩む。
「いい写真ですよね。」
「そ…!」
後ろからヌッと出てきた。
「ブラック居たの?」
「はい。もうぼちぼち出ますけど。」
「どこ行くの?」
「…………色々です。」
「(変な間があったな…。)」
ピューッと出ていった。変に忙しない。
「そーいや」
ここ何日かずっと忙しなく外に出てる。魔界にも入り浸りだし。
「なぁに考えてんだか。」
3日後、ブラックは未だに帰ってきていない。
「ブラック知らない?」
「…知らないよー!」
さとくんに聞いても知らない。モモちゃんに聞いても。探しても居ない。
「どこ行ったのかな。」
ふと顔を上げると多慌てのカメラちゃんが目の前に居た。
「じ〜!じじっ!じじっ!」
「え?ど、カメラちゃん!?」
袖を掴まれて急に魔界へ転送。ここどこ。
「こちらへ!さぁ着替えて下さい!」
「な、」
何が起こったのか。理解が追いつかないし勝手に服は脱がされるし、ある意味恐怖だ。
「…は?」
鏡にうつる自分の姿に呆然とする。漆黒のこのドレスは何だろう。この作りは…
「ウェディングドレス…?」
「じ〜!」
カメラちゃんが頷く。
「じ〜じじっ!」
「“家に居ると思ったら出ていて居場所が分からず探し回った”?」
「じっじっ。」
それであんなに多慌てだったのか。でも、それと私が今このドレスを着ている事にはどんな繋がりがあるというのか。
「魔界初の“結婚式”というものをされるとブラックさんからお伺いしています。」
………は?
「じー。」
世話役かなんか知らないが魔物が答える。
「結婚式するの?」
「じっ」
「今から?」
「じっ」
「うそ…。」
「じっ」
サプライズドッキリ。何もしらない嫁ちゃんに突然結婚式してみた。こんな所だろう。
「これがヨーチューバーに嫁いだ嫁ちゃんの末路ってやつかしら。」
本当にやられた。心の準備が出来てない。髪を結ってもらい化粧も整える。装飾品を身にまとい息を呑む。
「じー!」
ぐるりと撮る。自分でも驚くほど美しい。着飾るというのはこうも艶美な事なのか。ブーケを渡されヴァージンロードを歩く。悪魔から身を守るとかなんかあったような。ここは魔界。飛んだブラックジョークだ。
「(本当に、色々やってくれるわね。)」
歌えるかわりに契約したのにいつの間にか結婚までして、振り回されていた。
「恐ろしい話よ…。」
たった一度した小さな約束。あの約束と共に私を何千年と探して見つけ出した。
「…来ましたね。」
カメラちゃんを隣に一歩一歩進む。
「カメラちゃん」
「じ?」
「…ありがとう。___。」
「…!」
こんな動画映えする話、ほかにある?
「名無しお姉ちゃんおめでとうー!」
「名無しちゃん!おめでとうございます!」
聞き覚えのある声が聞こえる。あの2人知ってたのかな。
「神父は?」
「カカカッ、神父?ここは魔界ですよW」
居るわけないか。正装してるからかブラックが何時もよりカッコいい。会場は満員御礼、中継カメラが飛び交う。
「オレちゃん流の結婚式。どうです?」
「唐突過ぎて思考停止、大掛かりすぎて呆然よ。」
「3日かかりましたよ、ここまで用意するのに。」
3日で済んだのか。呆れてしまう。
「突然ですが、オレちゃんのこと愛してますか?」
「…はい。」
キョトンとしたが答えていく。
「どんな時も一緒に居てくれますか?」
「はい。」
「その命ある限り真心を尽くすことを契りますか?」
「はい。」
「契約成立 。」
誓い、いや、契約の口づけを交わす。
「…。」
さとくん恥ずかしくなって顔を手で隠してる。会場が沸き立つ。
「まぁ最初にしてる契約なんですけどね。」
一生物の、ね。
「これでラストです。」
薬指に指輪をはめる。前のと重ね合わせる。
「人間の真似事が好きなんでしょう?」
そっと手を出してきた。
「オレちゃんにもつけてくれます?」
「…勿論。」
____カメラちゃんありがとう。私、とっても幸せ。
「ディスイズ炎ターテインメント!」
会場の盛り上がりは最高潮。花吹雪が舞う。
「派手よねー。」
ザーッと砂嵐へと切り替わる。パソコンからディスクを取り出しケースへとしまう。
「…随分と懐かしいものですね。」
「じー。」
「ブラック。」
ひょこっと現れる。
「なんです?名無しさん。」
「さとくんの高校祝い何しようか?」
「……。」
「良くないことするつもりでしょ。」
「さとくんが高校受験に受かったことに驚きましたW」
「もー、可哀想なこと言わないの。私が用意する。」
「魔界に二泊三日宿泊とかはどうです?」
「死ぬって。」
「じー!♪」
いつになっても変わらない仲と関係。
-終-
こちらで完結となります。漫画のネーム用に書いた文面の為、読みにくい所も多く大変申し訳ありませんでした。最後まで有難う御座いました。
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こんなの悪夢だわ。
「あー、魔界で風邪もらった。」
体温計がエラー連発。人間界の体温計じゃそもそも測定出来ない。
「お薬作っちゃおうかな。」
魔女は調合が得意。本の分厚さに頭がボーッとする。
「こほっ、ダメだ、横になろ。」
スポーツドリンクをがぶ飲みした後、ベッドに向かった。ブラックは昨日から撮影で居ない。シャイガイとかいうのと10時間鬼ごっこするとかなんとか。死なないの?
「さとくん可哀想…。」
ベッドで横になる。
「おや?名無しさん?」
夜明けと共に戻ってきた。荒い息遣いに咳嗽の症状。
「これは…」
「ブラック…おかえり…」
「ただいまです。風邪ひいちゃいました?」
「うん…。」
「苦しそうですね。」
私の苦しそうなの少し喜んでる気がする。ニヤァと笑って怖い。
「冗談です、オレちゃんそんな趣味はないんで。」
「うつるからあっちに行ってて…」
「オレちゃん悪魔ですよ?」
「(そんなもんに屈する奴じゃないかぁ…)」
「何か食べます?オレちゃんが作りますよ。」
「何でも…軽いもの…」
「これとかどうです?」
キャンプでステーキ焼く動画を見せられた。
「怒るわよ?」
「おいしそーなのに。」
違う。今じゃない。パタパタからかうように飛んでいくブラックを見つめる。
「…名無しさん、名無しさん。」
「…ん。」
目の前にお粥が置かれている。
「食べさせてあげます。」
「ありがとう」
パクっと食べる。
「おいひぃ…熱」
「カカカッ、火傷してません?」
「大丈夫、」
「…ひとりにしちゃいましたね。」
急に真面目になる。思わず目をパチクリさせてしまった。
「そーゆーの気にしてくれるんだぁ?」
「オレちゃんの大切な人なので。」
改めて言われると照れてしまう。
「…。」
急いで薬を飲んで横になる。身体が熱る。
「ご、ちそうさま…。」
「あらら。自分で熱あげちゃいましたねぇ。」
「…もう〜。」
頭から布団かぶってふて寝。
「早く良くなって下さい。いつもの名無しさんが居ないとオレちゃん寂しいです。」
「…うん。」
早く、治そう。
翌日。ケロッとしていた。
「よく効く薬だこと。」
どこから仕入れたのか気になる。シャワーを浴びて着替えるとブラックがソファーに座っていた。
「ありがとう、ブラック。治った!」
「やはり良く効きますね。いつもの名無しさんに戻って良かったです。」
「ブラックどこで寝てたの?」
「オレちゃんまだ寝てません。」
ソファーにずっと座ってたの?
「何かあるんじゃないかと心配だったので。」
早々ひくもんじゃないんでね。
けど…
「治ったみたいでホッとしました。」
心配でずっと看ててくれたの?
「ごめん、私…!」
「何故謝るんです?」
「だって…。」
「オレちゃんのしたいことをしただけです。」
ガシッと手を掴まれベッドに行く。
「今から少し寝るので、付き合って下さい。」
「え?うん…。」
添い寝をする。普段おちゃらけてるけどこの人はこんなに優しいんだ。
「…。」
すぅとお互い寝息をたてる。
夜中。
「全然寝れない…。」
「カカカッ!朝までオレちゃんとフォントナイトします?」
「絶対いや。」
見事に昼夜逆転した。
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11話
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学校にて、ファッション誌を見ながら市井ちゃんが盛り上がる。
「いいなぁ~っ!!」
デート服のコーデ特集。流行りのトレンドが目白押しだ。
「わたしもこんなの着てみたい!」
女子たちが集まりキャッキャと騒ぐ。
「市井ちゃんは何着てもかわいいよなぁ絶対」
「これ名無しさんとか絶対似合う!!あ〜また会いたいなぁ!」
まだ背丈が足りないからこの雑誌のファッションは自分には無理。だけど憧れの名無しさんなら着こなせるはず!
「ブラック、会わせてあげたら?」
「撮れ高なさそーなので遠慮します。」
てか、まだ名無しさんのこと慕ってるんですね。
「でも名無しお姉ちゃんて、どんなかっこーでデートするの?」
「…。」
そういえば。
「したことありませんね。」
ハッと閃いたようにブラックは名無しに連絡をとる。
「…?」
スマホのラインを見る。
明日の13時に二人で出かけましょ。駅集合で。よろしくお願いします。
「二人で?」
こんなお誘い初めてだ。もしかして
「デート…?」
意識したら照れてしまった。ヤバい。初だ。どうしよ、何から用意しよ。
「な、何着ていこ!」
クローゼットをあさる。何着たらいいのか。持ち合わせの衣装を引っ張り出しては試着する。
「スカートがいいよね。どんなのが好きなの…?」
難しい。全然決まらない。目が回る。
「あ、この前買ったニットワンピあったっけ。」
翌日。朝から起きてシャワー、髪の手入れ、ほんの少しメイクをして服を着替える。
「…。」
可愛い下着に付け替える。
「なに考えてんの私…。」
思わず赤くなる。早めに駅前についてしまった。立ってるだけなのに注目を集める。
「…。」
待ち合わせまで30分もある。きっと変じゃないはず。妙にドキドキする。
「お姉さん、あの…」
声のする方へと反応。その男性の背後からヌッとブラックが現れた。
「お待たせしました!」
「ひぃ!失礼しましたぁ!」
男性が逃げ出す。
「随分早いですね。そんなに楽しみだったんですかぁ〜?」
「…それなりに。」
楽しみだった。素直に答えると面食らったかのような顔する。
「ではさっそく行きましょう!」
「(ツアーみたいになってる。)」
どこから出したのか小さい旗を片手にずんずん前に進んでいく。
私の行きつけのショップやら場所を一通り回った。これって買い物デート、かな?
「あら。」
行きつけのカフェ。
「これでコンプリートです。」
「?」
何が?プランが?とりあえず椅子に座る。いつも、モモちゃんと過ごす特等席。
「オレちゃんとは初めてでしょう。」
どこもかしこも。いつもひとりで行きつけの場所へ行ってしまう。
「貴女の事が知りたいんです。」
全部教えて下さい。
「なので今日まわってみました。ふたりの方が楽しいでしょう?」
「…うん。」
ひとりの時より楽しかった。物を選ぶってふたりだとあんなに楽しいんだ。
「長いことひとりだったから。」
「これからはひとりじゃありませんよ。」
ずっと
「何があってもオレちゃんが一緒に居てあげます。」
例え魂だけになっても。
「悪魔の契約って恐ろしいのね。」
「カカカッ、今更ですか?」
テーブルに注文していたパンケーキと紅茶が届く。
「ここの美味しいから。」
パクっと一口食べる。
「“顔”を見ればわかります。」
いつもの…ここに来た時のあの顔を。
「おいひぃ~!甘味は幸せの宝庫よね。」
「オレちゃんも甘い物は好きです。」
至福。おやつも食べたし帰るとしよう。
「あ、そうそう。」
帰り道、ふとブラックが何かを思い出したかのように。
「その格好、とっても似合ってます。」
「…え?」
「まぁ、オレちゃんいつもの名無しさんの方が落ち着きますがね。」
カカカッと笑って歩き出す。照れてしまって歩くのを忘れてしまった。
「どうしたんです?来ないとおいて行っちゃいますよ。」
「あ、待って!」
そっと手を繋いで帰った。この帰り道が一番デートっぽい気がする。
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12話
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明るい色で街は色めき立つ。ハートのバルーンを貰った。
「…これ。」
明日バレンタインか。
「誰にあげよう。」
頭の中でブラックがひょこひょこ出てくる。
「…作ろーかな。」
帰宅。ブラックは居ない。買い込んだチョコを見て照れくさくなる。バレンタインなんか無縁だったから。湯煎して溶かしてあとは。
「メレンゲを絞って焼いて。」
マカロンの完成。
「おいひ…。」
パクっと味見。程よい甘さで上手くできた。これなら大丈夫だ。あとはラッピングするだけ。
「かわいい。明日皆にもあげよ。」
翌日。下校時刻に学校へ行くとさとくんが居た。
「名無しお姉ちゃ…!」
「名無しさぁぁぁん!!」
バンッとさとくんを弾き市井ちゃんが来た。
「どうしてここに?!あ、この前の歌ってみた良くて凄くリピート再生してるの!今日の服かわいい〜!!ひめもそんな服着てみたぁい!」
いつになく語りだしたら止まらない市井ちゃん。久々に会って大興奮中。
「い、市井ちゃ…」
「さとくんあとにして。」
ぐりんと振り返りさとくんを黙らせる。女の子って強い。というか市井ちゃんが強い。
「あっ、わたし名無しさんに渡したいものがあるの。」
紙袋からチョコが。
「市井ちゃん凄い。かわいいチョコね。」
「ママと作ったの。美味しく出来たと思う。」
「じゃあお返しに。」
市井ちゃんとチョコ交換する。
「マジか…。」
めちゃめちゃびっくりして素が出てる。ブラックと契約した時みたいだ。
「本当にー?!こ、これ名無しさんが!どーしよ、勿体なくて食べれなーい!」
キャッキャしてる。かわいい市井ちゃんに戻ったみたい。
「さとくんも。どうぞ。」
「え?おれ?」
さとくん大喜び。
「やったー!!チョコだー!やっと貰えたー!ありがとう、名無しお姉ちゃん!」
初チョコなのかな。
「そういえばブラックは?」
「え。名無しお姉ちゃん一緒じゃないの?」
さとくんと居ると思ってた。
「ありがとう、じゃあまたね。」
「またね~!」
「名無しさん、またね!!チョコありがとう!」
魔界かな?あちらこちらと探してみる。
「どこ行ったのよ。」
「どうしたんです?」
「ブラックが居ないのよ」
「ここに居るでしょ。」
「わっ、いつの間に!」
びっくりして振り返るとブラックが笑いながら居た。
「カカカッ、気づかなかったんですか!マヌケですね!」
「マヌケじゃない!」
ムカつく。けど本人を目の前にしたら少し緊張してきた。そっとチョコを渡す。
「オレちゃんにくれるんですか?」
「そ、う。一番、上手に出来たやつだけ入れたの。」
「それはそれは。」
パカッと開ける。
「おぉー。おいしそーです。」
パクっと食べてる。
「どう?」
「美味しいですよ。オレちゃんの好きな味です。」
あっ。思い出したようにブラックが箱を渡す。
「お土産です。」
「お土産?どこ行ってたの?」
「ヨーロッパです。いい撮影が出来ました。」
「またオシャレな街に…。」
こんな悪魔がお邪魔して申し訳ない。お土産を開けると中にはマロングラッセが入っていた。
「おいしそう。」
今までお土産なんて買ってきたことないのに。もぐもぐと食べる。上品な味。
「ありがとう、ブラック…。」
グイッと引き寄せられたと思ったら唇が重なっていた。
「…。」
長い。思わず息を呑む。少し苦しくなってきた。
「はぁ…!」
思わず離れる。
「あれぇ?もう終わりですか?」
ケロッとしてる。もう一度と言わんばかりに唇が近づく。
「ま、待っ…」
「いやです。」
もう一度重なる唇。長くてねちっこい。いつの間にかブラックの膝に座らされる。
「…ぁっ、う…。」
「カカカッ、その顔は唆りますねぇ。」
照れて涙目になった。ニタァと笑いながら髪を撫でるブラックはご満悦だ。片手にスマホを取り出し操作してる。
「今調べたんですがバレンタインの贈り物には色んな意味があるみたいですね。」
「そうなの?」
「…へえ。」
ふむふむとひとりで納得してる。
「気になります?」
「うん。」
「ネタバレはつまらないでしょ?…これはあとで。」
「あとで?」
そっと太もも裏に指を這わせ、下着に手をかけられた。
「オレちゃん今日は気分がいいです。」
なので結構頑張っちゃいます。
「ぁっ、やぁ…!」
触られる度、ビクビクと体が反応する。
「まだ触ってるだけですよ?」
「いじわる…悪魔っ。」
くすぐったくて気持ちいい。
「悪魔ですが何か?」
優しい声で頬を撫でられる。パチパチと胸元のボタンを外される。
「やぁ、こ、ここでするの…?」
「オレちゃんは良いですけど。」
ニタニタしてる。
「無理ぃ、あっち行く…。」
そっと寝室に運ばれる。
「…っ。」
気だるげに体を起こす。ふと昨日の会話を思い出した。
「検索…。」
マカロン。あなたは特別な人。
マロングラッセ。永遠の愛。
「こんなのあるんだ…。」
急に恥ずかしくなった。あの悪魔、嬉しくなって盛り上がったなぁ。
「こんな事でも単純に嬉しい時がありますね。」
「じー。」
不思議なのです。
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13話。
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9月5日
「(名無しお姉ちゃんこれで全部?」
段ボールの山。さとくんが段ボールをあさる。
「そうだよぉ。」
明日は旦那の誕生日。悪魔に誕生日あるのか。そっちのほうがびっくりした。
「ホームパーティーにしたんだね!」
「レストランにしようか悩んだんだけど…。私の手作りが好きみたいだし、皆で楽しく過ごしたいなぁって。」
「名無しお姉ちゃん、いつの間にかブラックのこと凄く好きだよね?」
最初とえらい違い。
「そ、そ、そな、そなん事…!!!」
「日本語おかしくなってる!!」
名無しお姉ちゃんって大人っぽいけどブラックのことになるとちょっとテンパる。
「(オレも市井ちゃん前にするとそーなるから気持ちわかるなぁ〜。)」
「あ、市井ちゃん達も呼ぼうね。招待状作ったからさとくん渡してよ。」
「え?!わ、分かった!」
ちょっと緊張する。部屋を飾り付けしていく。
「さとくん有難う。」
「もうクタクタだよー。」
よしよしと頭を撫でる。散々撮りためた動画の編集で魔界の部屋に引きこもらせている。
「差し入れでもしようかな。」
魔界。部屋からはキーボードを叩く音が響いてる。
「名無しさん…。」
ちょっと拗ねてるような。人間界のほうの部屋には来るなと言われ、撮りためた動画を渡されりゃそりゃあちょっとぐらい機嫌も斜め向くかな。
「…。」
チュッと頬にキスしてみた。
「なんです?」
「機嫌悪いかなって。」
ちょろいですね、ちょっとそんな風に見せてみただけなのに。
「そんな事でなおりませんよ?」
面白い。なんてからかいがいのある。
「え?」
明日誕生日だしこの仲で向かえるのは良くない。
「…。」
膝にのってきて唇にキス。
「…これでもダメ?」
あぁ、甘やかしたい。明日を台無しにするぐらい抱き潰したい。
「名無しさんからは初めてですね。」
機嫌なんてそもそも悪くない。編集もとっくに終わっているし部屋にこもるのも嫌いじゃない。なのに、勝手に後ろめたさを感じて機嫌を伺う。なんて滑稽でかわいいんでしょう。
「ひとりにしてごめん。」
ぎゅうっと抱きしめる。
「大好きだから、許して…。」
「許すことと関係あります?それ」
面白おかしく笑う。謎すぎます。でも名無しさんから初めて言われたので、オレちゃん今日も気分が良いです。
「オレちゃん、大好きだけじゃ物足りないんですよ。」
「えぇ…。」
照れ屋の名無しさんには少し難易度高めですかね。
「愛して…る…。」
目をそらし赤くなってる。
「カメラちゃん、撮りました?」
「じっ!」
ハイタッチしてる。
「マジ?」
カメラちゃんいつの間に。
「カカカッ、鬼ヤバな瞬間ゲットです!」
「本当にいい性格してるわね」
「そこも好きでしょ?」
「…。」
図星。むくれてる。
「もう知らない、戻る!」
逆に拗ねた。
「じ〜?じじっ。」
「大丈夫です、名無しさんは時間がたてば落ち着きます。」
「じ〜!」
扱いに慣れている。
翌日。
「…いいかな。」
「なんです?これ。」
目隠し。手をとって誘導する。
「はい。」
目隠しをとるとクラッカーが鳴り響く。
「ブラック、誕生日おめでとう!」
皆の声が響く。
カメラちゃんも生配信中。コメント欄が祝福の色へと染まる。
「ありがとうございます」
わざわざ用意してくれたんですね。
「カカカッ、ほんと、名無しさんは人間くさい人ですね。」
「“そこも好きでしょ”?」
昨日の。
「ええ、勿論。」
「名無しさぁん♡」
「バニラちゃんも来ちゃった…。」
「ご飯がいっぱいです〜!」
騒がしい誕生日だこと。
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14話。
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悪魔と結婚してどれくらい?
「結構経っちゃった。」
色んな事があった。どれもいい思い出でスマホの写真を見返すと口元が緩む。
「いい写真ですよね。」
「そ…!」
後ろからヌッと出てきた。
「ブラック居たの?」
「はい。もうぼちぼち出ますけど。」
「どこ行くの?」
「…………色々です。」
「(変な間があったな…。)」
ピューッと出ていった。変に忙しない。
「そーいや」
ここ何日かずっと忙しなく外に出てる。魔界にも入り浸りだし。
「なぁに考えてんだか。」
3日後、ブラックは未だに帰ってきていない。
「ブラック知らない?」
「…知らないよー!」
さとくんに聞いても知らない。モモちゃんに聞いても。探しても居ない。
「どこ行ったのかな。」
ふと顔を上げると多慌てのカメラちゃんが目の前に居た。
「じ〜!じじっ!じじっ!」
「え?ど、カメラちゃん!?」
袖を掴まれて急に魔界へ転送。ここどこ。
「こちらへ!さぁ着替えて下さい!」
「な、」
何が起こったのか。理解が追いつかないし勝手に服は脱がされるし、ある意味恐怖だ。
「…は?」
鏡にうつる自分の姿に呆然とする。漆黒のこのドレスは何だろう。この作りは…
「ウェディングドレス…?」
「じ〜!」
カメラちゃんが頷く。
「じ〜じじっ!」
「“家に居ると思ったら出ていて居場所が分からず探し回った”?」
「じっじっ。」
それであんなに多慌てだったのか。でも、それと私が今このドレスを着ている事にはどんな繋がりがあるというのか。
「魔界初の“結婚式”というものをされるとブラックさんからお伺いしています。」
………は?
「じー。」
世話役かなんか知らないが魔物が答える。
「結婚式するの?」
「じっ」
「今から?」
「じっ」
「うそ…。」
「じっ」
サプライズドッキリ。何もしらない嫁ちゃんに突然結婚式してみた。こんな所だろう。
「これがヨーチューバーに嫁いだ嫁ちゃんの末路ってやつかしら。」
本当にやられた。心の準備が出来てない。髪を結ってもらい化粧も整える。装飾品を身にまとい息を呑む。
「じー!」
ぐるりと撮る。自分でも驚くほど美しい。着飾るというのはこうも艶美な事なのか。ブーケを渡されヴァージンロードを歩く。悪魔から身を守るとかなんかあったような。ここは魔界。飛んだブラックジョークだ。
「(本当に、色々やってくれるわね。)」
歌えるかわりに契約したのにいつの間にか結婚までして、振り回されていた。
「恐ろしい話よ…。」
たった一度した小さな約束。あの約束と共に私を何千年と探して見つけ出した。
「…来ましたね。」
カメラちゃんを隣に一歩一歩進む。
「カメラちゃん」
「じ?」
「…ありがとう。___。」
「…!」
こんな動画映えする話、ほかにある?
「名無しお姉ちゃんおめでとうー!」
「名無しちゃん!おめでとうございます!」
聞き覚えのある声が聞こえる。あの2人知ってたのかな。
「神父は?」
「カカカッ、神父?ここは魔界ですよW」
居るわけないか。正装してるからかブラックが何時もよりカッコいい。会場は満員御礼、中継カメラが飛び交う。
「オレちゃん流の結婚式。どうです?」
「唐突過ぎて思考停止、大掛かりすぎて呆然よ。」
「3日かかりましたよ、ここまで用意するのに。」
3日で済んだのか。呆れてしまう。
「突然ですが、オレちゃんのこと愛してますか?」
「…はい。」
キョトンとしたが答えていく。
「どんな時も一緒に居てくれますか?」
「はい。」
「その命ある限り真心を尽くすことを契りますか?」
「はい。」
「
誓い、いや、契約の口づけを交わす。
「…。」
さとくん恥ずかしくなって顔を手で隠してる。会場が沸き立つ。
「まぁ最初にしてる契約なんですけどね。」
一生物の、ね。
「これでラストです。」
薬指に指輪をはめる。前のと重ね合わせる。
「人間の真似事が好きなんでしょう?」
そっと手を出してきた。
「オレちゃんにもつけてくれます?」
「…勿論。」
____カメラちゃんありがとう。私、とっても幸せ。
「ディスイズ炎ターテインメント!」
会場の盛り上がりは最高潮。花吹雪が舞う。
「派手よねー。」
ザーッと砂嵐へと切り替わる。パソコンからディスクを取り出しケースへとしまう。
「…随分と懐かしいものですね。」
「じー。」
「ブラック。」
ひょこっと現れる。
「なんです?名無しさん。」
「さとくんの高校祝い何しようか?」
「……。」
「良くないことするつもりでしょ。」
「さとくんが高校受験に受かったことに驚きましたW」
「もー、可哀想なこと言わないの。私が用意する。」
「魔界に二泊三日宿泊とかはどうです?」
「死ぬって。」
「じー!♪」
いつになっても変わらない仲と関係。
-終-
こちらで完結となります。漫画のネーム用に書いた文面の為、読みにくい所も多く大変申し訳ありませんでした。最後まで有難う御座いました。
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