謳ってみた。
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5話。
______________________________________________
「名無しさん、名無しさん。」
ニコニコ…ニヤニヤした悪魔が寄ってきた。
「なに?良くないこと考えてそうな顔して。」
「どうしてそう思うんです?オレちゃんまだ何もしてませんよ?」
「(何かする気なの…)」
ガチンと手錠がはめられた。
……は?
「なに、これ…?」
「手錠です。そんな事も知らないんですか?」
「違う!何で手錠!?つける意味は!」
「オレちゃん、こーんな企画を思いついちゃいました。」
ペカーっとパソコンを向けてきた。
「夫婦で手錠生活してみた。嫁ちゃんの普段見れない裏側!是非撮影させてもらいます!」
契約もなしに?
「そんな事できるの?」
「出来ます。貴女の契約書にちゃんと記載していますから。」
「ぁ…。」
あれって、そういう事だったの。
「つまり私の動画を撮影する際は契約書なしに事がすすめる訳ね。」
「そのとーりです!!どんな名無しさんも全てオレちゃんの好きなように撮影が出来ます!」
飛んだ契だ。
「なので好きに過ごしちゃって下さい。皆さん魔女の生活とか気になると思います。」
じー。期待の眼差し。
「大した事してないんだけどなぁ。」
洗濯して、買い物して、掃除して、ランニングして、歌ってみた撮って、お昼ごはん食べる。
「……。」
ブラックがはぁ?みたいな顔してる。
「何ですかこれ。」
「え?普通に過ごして…」
「…がっかりです。」
「(こいつ何を勝手に期待して落胆してんの?)」
「オレちゃんの期待は裏切られました。」
「え?私が悪いの?」
身勝手!
「馬鹿らしい〜。お風呂はいろ。」
ガチャン!手錠が派手に音を鳴らす。
「良いですね!歌姫とお風呂!悪くない展開です!」
「えっお風呂、撮るの!?」
「手錠ネタの鉄板ですよ。」
まぁ動画に出来ませんけど。
「…やめとこうかな」
羞恥心極まる。
「おやぁ?先ほどランニングまでしてお風呂に入らないなんて正気ですか?」
「え?」
「汗かいてたじゃないですか。オレちゃん鼻はきく方ですよ。」
「はっ、もしかして私、くさい?!うそお!」
「どれどれ。」
正面から吸い付くようににおいを嗅がれる。
「やめてー!!!」
「いやです。」
「くんくんしないでぇ!」
「…。」
ぺろんと首筋を舐められた。
「…!!」
ゾワゾワする。
「いい!その顔、最高です!カメラちゃん撮って撮って!」
「じー!」
「カメラちゃん!?」
悪趣味!押しても離れない。力強い…!
「これでもまだ入らないなんて言うんですか?」
まだ舐めれる場所は山ほどあるんです。
「オレちゃんからは逃げれませんよ。さっさと諦めちゃって下さい。」
ち、かい。
いつキスしてもおかしくない距離感。これは…
「…!」
悪魔におもちゃにされてる!!
諦めて脱衣所に向かい服を脱いでいく。
「見ないでよね!」
「そう言われても目がついているので無理です。てか、夫婦だから良くないですか?」
「ひゃあぁっ!!」
しっかり胸掴んできた。
「夫婦なのに出来ていない事が多いと思いませんか?」
あんな事やそんな事も。
「オレちゃん、随分と我慢してきましたよ。」
後ろから抱きしめる形をとられた。
「な、何で、私なの…」
「…?」
手が止まった。
「何で、私のこと、そんなに好きなの?」
ずっと探して居たって。
「数字だけで夫婦になれるの?何を思って私と一緒になったの?私の何が欲しいの?」
歌うことしか取り柄がなくて、その歌声で魔界半壊させて同種族全滅させた。一人で色んな時を経験して…孤独だったのに。いつの間にかそばに来て。
「追いつけない…。」
ブラックは名無しにバスローブを羽織らせた。
「少しオレちゃんの昔話を聞いて下さい。」
そう、それはまだ、魔界に落ちて間がない時の出来事です。
動画を撮り始めて色々楽しんでいました。
カメラちゃんがまだ悪魔さんだった頃。妹さんたちが眠るお墓の前に一人の女性がいました。彼女は喪服というにはあまりに綺麗な服を着ていた。
「ガッ!」
悪魔さんが得体の知れない貴女に飛びかかろうとしました
「…。」
鎮魂歌。まさかにふさわしい歌声。禍々しい魔界に唯一ほっと出来る空間。彼女は慰めていた。
「ゆっくりと眠って下さい。心穏やかに。」
お墓を作ってくれた上で鎮魂歌まで。こちらがしようとしていた事を済ませてくれていた。
「ガッ、、っっ…」
悪魔さんは泣いていた。魔界にもまだこころ優しいものがいると。
「ありがとうございます」
「あなたは?」
「名はありません。序列でいうとBです。貴女は?」
「私は名無し。魔女よ。」
「このお墓はあなたが?」
「そう。誰が仕掛けたかは分からないけど、悲惨な事に。」
悪魔さんの家族をみて
「傷口も綺麗に修復した。できる魔法は全て使った。だけど、蘇りは出来なかった。ごめんなさい。」
だからせめて
「私に、できる精一杯をさせてもらった、勝手にごめんなさい。」
「っ、っ、」
ありがとう、ありがとう。悪魔さんはそう言って泣いた。
「こんな魔界、嫌よね。」
魔界に居てもいいのかというぐらい心根の優しい貴女は
「あなた、怪我してる?」
「治してくれますか?」
「ええ、勿論。」
魔女に頼むだなんて。
オレちゃん、天界に居た時もこんな気持ち知らなかったんですが
「貴女は、本当の意味で優しい方なんですね。」
「え?なにそれ」
フッと笑い貴女は去ろうとした
「また、会えますか?」
「また会いたいの?」
「はい、お礼もしたいので。」
「そのへん飛んでたりするから、見かけたらいつでも声かけて。」
「はい。必ず見つけます。」
「うん、必ず見つけて。」
約束を交わした。
それから魔界に堕落。魔王にまで上り詰めていましたが…貴女には会えませんでした。
ある魔女が滅びの歌を歌い魔界を半壊させて同種族を滅ぼしたニュースはすごい盛り上がりを見せました。そのおかげで魔界の統一に半年かかりましたが。ですがおかげで支持率が鬼ヤバな状態に。
オレちゃんは滅びの歌…この段階で貴女が歌ったのだと理解しました。
魔界から魔女の存在が消えた。ひたすらに探しました。
一度しか会ったことのない貴女をオレちゃんは
…忘れられませんでした。
「……。」
「…やっとの思いで出会えました。」
ながい年月をかけ、ようやく巡り会えた。
「オレちゃんのこの気持ちに嘘はありません。」
入念に用意した契約書。
「名無しさんにゾッコンなのです。」
あの一回で、こんなにも…。
「あの人、ブラックだったの…。」
見た目違ったから分からなかった。
「不信がっていたのは知っていましたが、まさか数字の為だけに結婚までしたと思われているなんて、オレちゃんそこまで体張りませんよ?」
「やりかねない。」
「カカカッ!そうきましたか!」
ちゃんとつたえなくては伝わりませんね。
「貴女の事が好きです。オレちゃんのものになって下さい。その思いで少し姑息な手を使ってでも契約書にサインをもらいました。」
貴女がいいんです。
「ブラック…。」
「身もこころも、オレちゃんにくれませんか?ずっと一緒に居てあげますよ。」
ひとりはもう、嫌でしょう?
「…はい。」
「…」
ニィと口角が弓を引く。
「契約成立 」
唇も、体も…。捧げてしまう。
「あっ、ん、」
「もっとです。まだ。」
「やぁっ!」
「嫌でもします。」
「!」
……いつの間にか寝ていた。
ベッドでお互い裸。これは…。
「……。」
抱かれた。
「!」
ムリムリ。はずかしい。
「…お風、」
手錠!まだ外れてなかった。
「初夜に、マニアックなことしたぁ…」
カメラちゃんが居ない?
「さすがに席を外してもらいました。」
うつらうつらしてるブラック。
「カメラちゃんには見せれませんから。」
「…。」
この動画、公開出来ませんね。
「企画倒れですか。ま、オレちゃんとしては名無しさんとより仲良くなれたので結果オーライです!」
バタッと押し倒された。
「な、なに?」
「あんなもので終わるはずないでしょう?オレちゃん悪魔ですよ。」
「ひゃあ!」
「言いましたよね、我慢したって。気をしっかり持ってください。」
「え、ぁっ…もう無理ぃ!」
「魔女はやわですね、大丈夫、オレちゃん優しくするので。」
「に、逃っ」
「逃しません。」
必ず。
______________________________________________
6話。
______________________________________________
最近、悪魔と距離が近づいた。
「私、ちょろいのかな…。」
結婚してどれくらい経ったかな。
「…。夫婦としてすること、しちゃって。」
はずかしい。全部見られた。
朝食の用意を行う。
「朝から照れてどうしたんです?」
「ブラック!」
トーストを口に突っ込む。
「急に出て来ないで!」
「んぐっ。ずっと居ましたよ。」
ふたくちぐらいで食べきった。早っ。
「どこに?」
対面キッチンの下。
「悪意よ、こんなもん。」
驚かせる気ないと隠れないような場所でしょ。
「所で昨日の事考えてました?」
「えっ?」
やばい、赤面しちゃう。
「あ、の…」
「オレちゃんもです!」
おでこにキスされた。
「名無しさんが心を開いてくれた事が一番嬉しいです。」
「…。」
ブラックってこんなかっこよかったっけ?
前がわからなくなるぐらい、クラクラする。
「朝から何してるの?ふたりとも」
「さとくん!」
私の癒し。
「相変わらずさとくんはタイミング悪いですね。」
「じー」
「空気読めないって言いたいのか!」
「カカカッ!自覚あるんですね!」
「さとくん、どうしたの?」
「ブラックと動画撮るんだ〜。名無しお姉ちゃんは?」
「私は出掛けてくる。」
「オレちゃん今日撮影なんですけど」
「一緒に行くなんて一言も言ってない。」
「じゃあ誰と行くんですか?追跡アプリとか入れて良いですか?」
怖い怖い。そんな奴だっけ?
「ブラックらしくない。」
「じょーだんです、さとくん真に受けすぎです。」
「本当かな。」
「いってきまぁす。」
「いってらっしゃーい。」
名無しお姉ちゃん、どこいくのかな?
駅前のカフェにて。
「名無しちゃぁん~」
「モモちゃん。」
お待たせしました。
「お久しぶりね。教育実習やってるの?」
「そうなんです、毎日大変で。」
「さとくんのクラスらしいね。」
「名無しちゃん流石ー。」
「さとくんから聞いただけ。」
楽しい。紅茶片手に談笑がすすむ。
「やりがいあるみたいで良かった。」
「名無しちゃんもすごいです。ウチの動画なんかよりすごい再生回数…。見習わなきゃいけないです。」
「数字ってそんな気になるもの?」
「そ、そりゃあヨーチューバーとしてというか、やっぱり結果が数字って形で出てるので、気になりますよ。」
「そうなんだ、」
人気商売だものねー。テレビでいう視聴率みたいなもんか。
「私には分からない世界だわ。」
「旦那さん、ヨーチューバーなのに?」
ぶっと紅茶を吹き出す。
「え、私、言ってない…よ…」
今日、その話しようかと思ってきたんだけども
「ブラックさんから入籍を知らせるハガキが…。」
ペラーンと一枚のハガキを見せつけられる。
「いつの間に!?油断も隙もない!」
「夫婦なんだからそんなカリカリしなくて良いじゃないですか。」
「経緯聞く?」
まぁまぁとなだめるモモちゃん。
「でも…前より柔らかくなりましたね。」
「え?」
以前は…もっと孤独で閉塞的な雰囲気…でした
「ブラックさんが名無しちゃんを変えてくれたんですよ。ウチ嬉しいです!」
私、そんなに変わった?
「…好きになったの、ブラックのこと。」
「名無しちゃん…!」
じ〜んと感動しちゃいます。
「悪魔で陰湿で姑息で騙すの好きでヘラヘラして何考えてるか全く分からない所もあるけど。」
「(ほ、本当に好きなんでしょうか…。)」
2時間ほどお話をしました。名無しちゃんが饒舌、初めて見ました。
「じゃあ、またね。モモちゃん。」
「また!気をつけて下さい!」
「…。」
ケーキ屋さんのチョコケーキ。ブラックの好きそうな…。
「すみません、チョコケーキ2つ、、3つ下さい。」
帰ったら居るのかな。
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7話。
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こんにちは。皆さん。
「こちらの動画は投稿しようか迷ったんですがやはり公開することにしました。あ、歌ったみたと鬼ヤバな動画は下の概要欄をご覧ください。」
さて。
「最近嫁ちゃんがオレちゃんに隠れてコソコソしているみたいなんです。何故コソコソしているのかその裏側を暴いていこうと思います。」
ディスイズ炎ターテインメント。
「オレちゃんに隠し事なんて…。」
いつからそんな悪知恵をつけたのか。
「まぁ、魔女さんは元々悪知恵が働きますからね。名無しさんみたいな素直で悪知恵を働かせて無い方がレアです。」
どんな事をしてくれるんですか?
「オレちゃん楽しみです!」
「じ〜!!」
名無しのマンション前。
「名無しお姉ちゃん!」
「さとくん。こんにちは。ブラックなら出掛けたよ。」
「名無しお姉ちゃんに用事!今日は“あれ”の日でしょ!」
「覚えてたの?ありがとう。」
さとくんは今学校で流行ってるものやモモちゃんの事とか教えてくれる。
「フォトナ最近やってないの?」
「ブラックが割り込んできてバカにしてくるからやる気出ないの。」
「魔界で1位だしね。」
名無しお姉ちゃんとブラックってうまくいってないのかな?
「(大体はブラックが悪いけど…。)」
「今度抜け出して二人でやろうよ。」
「う、うん!」
名無しお姉ちゃん優しいんだけどなぁ、ブラックが意地悪過ぎるんだよなぁ。
けど…。
名無しお姉ちゃんは何だかんだできっとブラックのこと凄く大事に思ってるはず。でないとここには来ないだろうし。
「さとくんも一緒だったなんて。これは…時間の問題ですね。」
口を滑らす可能性大です。
「カメラちゃん、いってらっしゃい」
「じじー。」
中を見て
「じー……。」
ハッとし。
なるほど、そういうことかぁ!!と、納得してカメラちゃんは外に出る。
「…。」
カメラちゃん帰宅。
「おかえりなさいカメラちゃん。どうでした?」
「じー!」
手をバツにしてる。
「撮影が出来なかった?そんなはず…。」
パソコンは砂嵐画面。
「(何をしているんでしょうか?)」
まぁ良いでしょう。
「尻尾は掴んでいます。あとは引きずり出すだけ。なんてことはないです。」
隠し事→追跡→ネタバレ。段取りは完璧です。
「じー…。」
え。…今なんて?
「カカカッ!さぁ見せて下さい!名無しさんの裏側!」
オレちゃんは全て知りたい。どんな事も。
「あともう少し。仕上げて帰ろうかな。」
「名無しお姉ちゃんもう18時だよ?」
「あら。さとくん怒られるね、帰ろうか。」
「ごめん。」
一緒に帰宅。
「じゃあまたねー!」
「今日はありがとう。またね。」
晩ごはんどーしよ。なに作ろ。
「…主婦みたい。」
主婦だけど。
帰宅。灯りがついてる。
「おかえりです。ご飯出来てますよ。」
まぁ、びっくり。
「わざわざ作ってくれたの。」
「毎日作ってもらってるので、たまには。それより…」
今日はどこ行ってたんですか?
「え?…さとくんと“ただただ”遊んでた。」
「……………。へぇ〜〜〜〜〜〜〜。」
な、なに?!意味深…!!すっごいニタリ顔が怖い。
「な、なに?」
「何でもありませよ。気にしないで下さい。」
気にしかならない…。
「じー…。」
「カメラちゃん、どしたの?」
ブラックの気に当てられてへこんだ?
「そこの禍々しいの。ちょっと落ち着いたら?」
「誰のことですかねー?」
「(あんたよ。)」
ごちそうさま。
「可哀想に。カメラちゃん、一緒にお風呂入ろ。」
「あれ〜?新婚なのにいきなり浮気ですか?オレちゃん怒りますよ?」
「八つ当たりか!いい加減になさいよ。」
「オレちゃんには一緒に入ろうなんて言ったことないじゃないですかー。」
「カメラちゃんは少し違うでしょ」
「何が違うんです?いくら見た目が可愛くとも性別はオスですし、名無しさんの知らない部分をオレちゃんは知っています。安心と言い切るには材料が少ないとは思いませんか?」
「今日やけにつっかかってくるのね。」
言ったでしょう。
「貴女はオレちゃんのものです。誰にも渡しませんし触らせません。全部オレちゃんのです。」
これは…。
「(独占欲という…やつ?)」
悪魔らしい。
「(“ただただ”なんてわざわざ強調するなんて…)」
益々暴きたい!!!気になります…!!!ああ、なんて感覚。カメラちゃんも撮影出来ないとなるとオレちゃんの興味本位は最高潮です!!
「(気持ちが乱れますね、なんていい…!)」
ドロドロした気持ちはやはり良いものです。どす黒いものを生み出させる。これが色恋沙汰。混沌としていて美味ですね。
「あ、でもカメラちゃんとのお風呂はダメです。名無しさんの裸はオレちゃんだけ見ていいものなので。」
「じじぃ!?」
「カメラちゃん、ごめん。こんな旦那で。」
翌日。
また出掛けた。
「…昨日のブラック変よね。」
いつも変だけど。
「…よし、出来た。」
こんなもんだろう。
「…動きがなくなりましたね。」
あの建物は用済み。つまり目的を果たした。
「ブラック、おいで」
「…。」
カメラちゃんまで?
「何ですか?」
「はい。」
指輪を見せた。
「指輪…」
ペアリングというやつ。
「この前から、個人の教室通って手作りしたの。」
人間界では結婚した夫婦は指輪をつけるらしい。だから。
「魔界には、結婚指輪はないから…欲しいなんて言うのもはずかしいし、作ってみた…の」
………………。
ブラックが止まってる。
「…カッ、カカカッ!!」
オーバーに笑ってる。
「な、なに?」
「そんな、人間の真似事を…カカカッ!!!」
なんて純粋。
「コソコソしている嫁ちゃんの裏側…それはペアリングを内緒で作っていた。っ…良いですね、人間界の愛情表現!魔界にはないものです!新しい表現としてこれはバズりますっ!」
ケタケタ笑いまくっている。
「動画?」
「カカカッ、実はずっと撮影してました。」
「!?なんで?」
「オレちゃんに隠れてコソコソしているからですよ。普通、気になりません?」
え、じゃあ、作ってたのも…。
「バレてたの?」
「いいえ、ツールの使用も侵入もしていない。カメラちゃんも撮影拒否の為、謎のままでした。さとくんに聞くのもありですがそれではつまらないですし。」
もっと鬼ヤバなのを期待していたのですが
「貴女は予想を裏切る魔女ですね!さすがオレちゃんの嫁ちゃんです!」
「……。」
この悪魔もしや
「妬いてたの?」
…素っ頓狂な顔をした。
「は?今なんと?」
「だって、前から異様なまでに禍々しいし八つ当たりしてるし取っ付きにくくなったり。勝手に色々想像膨らませて、イライラしてるよーに見えたから。」
鬼ヤバな展開を期待。男と遊んでると思ってたんじゃ…。ちがうのかしら。
「…。(その展開を期待していたのも事実。)」
さとくん連れてる時点で違うとは思いましたがね。
「あの混沌とした沼のような気持ち!あれが嫉妬なんですか!」
初めて知りました。
「はぁ…なるほど。」
やはり貴女は素晴らしい。オレちゃんに色々なものを見せてくれる。
「勝手に盛り上がってる…。」
「あ、それ。はめてくれないんですか?」
「私がするの?」
指にはめる。
「…。」
薬指。
「…満足しました?」
「なんか急に余裕出てきたわね。」
さっきの恍惚としたブラックはどこへ。
「いやぁ、改めて見ると名無しさんの行動がいじらしいというか…人間くさいですね。」
「人間界の生活長いのよ。」
しょうがないじゃない。
「人間の真似事だって悪くないと思わない?」
「…。カカカッ!」
案の定、魔界で指輪が流行った。
「バズりました!」
「…えぇ…。」
魔界にペアリングの習慣ができた。
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「名無しさん、名無しさん。」
ニコニコ…ニヤニヤした悪魔が寄ってきた。
「なに?良くないこと考えてそうな顔して。」
「どうしてそう思うんです?オレちゃんまだ何もしてませんよ?」
「(何かする気なの…)」
ガチンと手錠がはめられた。
……は?
「なに、これ…?」
「手錠です。そんな事も知らないんですか?」
「違う!何で手錠!?つける意味は!」
「オレちゃん、こーんな企画を思いついちゃいました。」
ペカーっとパソコンを向けてきた。
「夫婦で手錠生活してみた。嫁ちゃんの普段見れない裏側!是非撮影させてもらいます!」
契約もなしに?
「そんな事できるの?」
「出来ます。貴女の契約書にちゃんと記載していますから。」
「ぁ…。」
あれって、そういう事だったの。
「つまり私の動画を撮影する際は契約書なしに事がすすめる訳ね。」
「そのとーりです!!どんな名無しさんも全てオレちゃんの好きなように撮影が出来ます!」
飛んだ契だ。
「なので好きに過ごしちゃって下さい。皆さん魔女の生活とか気になると思います。」
じー。期待の眼差し。
「大した事してないんだけどなぁ。」
洗濯して、買い物して、掃除して、ランニングして、歌ってみた撮って、お昼ごはん食べる。
「……。」
ブラックがはぁ?みたいな顔してる。
「何ですかこれ。」
「え?普通に過ごして…」
「…がっかりです。」
「(こいつ何を勝手に期待して落胆してんの?)」
「オレちゃんの期待は裏切られました。」
「え?私が悪いの?」
身勝手!
「馬鹿らしい〜。お風呂はいろ。」
ガチャン!手錠が派手に音を鳴らす。
「良いですね!歌姫とお風呂!悪くない展開です!」
「えっお風呂、撮るの!?」
「手錠ネタの鉄板ですよ。」
まぁ動画に出来ませんけど。
「…やめとこうかな」
羞恥心極まる。
「おやぁ?先ほどランニングまでしてお風呂に入らないなんて正気ですか?」
「え?」
「汗かいてたじゃないですか。オレちゃん鼻はきく方ですよ。」
「はっ、もしかして私、くさい?!うそお!」
「どれどれ。」
正面から吸い付くようににおいを嗅がれる。
「やめてー!!!」
「いやです。」
「くんくんしないでぇ!」
「…。」
ぺろんと首筋を舐められた。
「…!!」
ゾワゾワする。
「いい!その顔、最高です!カメラちゃん撮って撮って!」
「じー!」
「カメラちゃん!?」
悪趣味!押しても離れない。力強い…!
「これでもまだ入らないなんて言うんですか?」
まだ舐めれる場所は山ほどあるんです。
「オレちゃんからは逃げれませんよ。さっさと諦めちゃって下さい。」
ち、かい。
いつキスしてもおかしくない距離感。これは…
「…!」
悪魔におもちゃにされてる!!
諦めて脱衣所に向かい服を脱いでいく。
「見ないでよね!」
「そう言われても目がついているので無理です。てか、夫婦だから良くないですか?」
「ひゃあぁっ!!」
しっかり胸掴んできた。
「夫婦なのに出来ていない事が多いと思いませんか?」
あんな事やそんな事も。
「オレちゃん、随分と我慢してきましたよ。」
後ろから抱きしめる形をとられた。
「な、何で、私なの…」
「…?」
手が止まった。
「何で、私のこと、そんなに好きなの?」
ずっと探して居たって。
「数字だけで夫婦になれるの?何を思って私と一緒になったの?私の何が欲しいの?」
歌うことしか取り柄がなくて、その歌声で魔界半壊させて同種族全滅させた。一人で色んな時を経験して…孤独だったのに。いつの間にかそばに来て。
「追いつけない…。」
ブラックは名無しにバスローブを羽織らせた。
「少しオレちゃんの昔話を聞いて下さい。」
そう、それはまだ、魔界に落ちて間がない時の出来事です。
動画を撮り始めて色々楽しんでいました。
カメラちゃんがまだ悪魔さんだった頃。妹さんたちが眠るお墓の前に一人の女性がいました。彼女は喪服というにはあまりに綺麗な服を着ていた。
「ガッ!」
悪魔さんが得体の知れない貴女に飛びかかろうとしました
「…。」
鎮魂歌。まさかにふさわしい歌声。禍々しい魔界に唯一ほっと出来る空間。彼女は慰めていた。
「ゆっくりと眠って下さい。心穏やかに。」
お墓を作ってくれた上で鎮魂歌まで。こちらがしようとしていた事を済ませてくれていた。
「ガッ、、っっ…」
悪魔さんは泣いていた。魔界にもまだこころ優しいものがいると。
「ありがとうございます」
「あなたは?」
「名はありません。序列でいうとBです。貴女は?」
「私は名無し。魔女よ。」
「このお墓はあなたが?」
「そう。誰が仕掛けたかは分からないけど、悲惨な事に。」
悪魔さんの家族をみて
「傷口も綺麗に修復した。できる魔法は全て使った。だけど、蘇りは出来なかった。ごめんなさい。」
だからせめて
「私に、できる精一杯をさせてもらった、勝手にごめんなさい。」
「っ、っ、」
ありがとう、ありがとう。悪魔さんはそう言って泣いた。
「こんな魔界、嫌よね。」
魔界に居てもいいのかというぐらい心根の優しい貴女は
「あなた、怪我してる?」
「治してくれますか?」
「ええ、勿論。」
魔女に頼むだなんて。
オレちゃん、天界に居た時もこんな気持ち知らなかったんですが
「貴女は、本当の意味で優しい方なんですね。」
「え?なにそれ」
フッと笑い貴女は去ろうとした
「また、会えますか?」
「また会いたいの?」
「はい、お礼もしたいので。」
「そのへん飛んでたりするから、見かけたらいつでも声かけて。」
「はい。必ず見つけます。」
「うん、必ず見つけて。」
約束を交わした。
それから魔界に堕落。魔王にまで上り詰めていましたが…貴女には会えませんでした。
ある魔女が滅びの歌を歌い魔界を半壊させて同種族を滅ぼしたニュースはすごい盛り上がりを見せました。そのおかげで魔界の統一に半年かかりましたが。ですがおかげで支持率が鬼ヤバな状態に。
オレちゃんは滅びの歌…この段階で貴女が歌ったのだと理解しました。
魔界から魔女の存在が消えた。ひたすらに探しました。
一度しか会ったことのない貴女をオレちゃんは
…忘れられませんでした。
「……。」
「…やっとの思いで出会えました。」
ながい年月をかけ、ようやく巡り会えた。
「オレちゃんのこの気持ちに嘘はありません。」
入念に用意した契約書。
「名無しさんにゾッコンなのです。」
あの一回で、こんなにも…。
「あの人、ブラックだったの…。」
見た目違ったから分からなかった。
「不信がっていたのは知っていましたが、まさか数字の為だけに結婚までしたと思われているなんて、オレちゃんそこまで体張りませんよ?」
「やりかねない。」
「カカカッ!そうきましたか!」
ちゃんとつたえなくては伝わりませんね。
「貴女の事が好きです。オレちゃんのものになって下さい。その思いで少し姑息な手を使ってでも契約書にサインをもらいました。」
貴女がいいんです。
「ブラック…。」
「身もこころも、オレちゃんにくれませんか?ずっと一緒に居てあげますよ。」
ひとりはもう、嫌でしょう?
「…はい。」
「…」
ニィと口角が弓を引く。
「
唇も、体も…。捧げてしまう。
「あっ、ん、」
「もっとです。まだ。」
「やぁっ!」
「嫌でもします。」
「!」
……いつの間にか寝ていた。
ベッドでお互い裸。これは…。
「……。」
抱かれた。
「!」
ムリムリ。はずかしい。
「…お風、」
手錠!まだ外れてなかった。
「初夜に、マニアックなことしたぁ…」
カメラちゃんが居ない?
「さすがに席を外してもらいました。」
うつらうつらしてるブラック。
「カメラちゃんには見せれませんから。」
「…。」
この動画、公開出来ませんね。
「企画倒れですか。ま、オレちゃんとしては名無しさんとより仲良くなれたので結果オーライです!」
バタッと押し倒された。
「な、なに?」
「あんなもので終わるはずないでしょう?オレちゃん悪魔ですよ。」
「ひゃあ!」
「言いましたよね、我慢したって。気をしっかり持ってください。」
「え、ぁっ…もう無理ぃ!」
「魔女はやわですね、大丈夫、オレちゃん優しくするので。」
「に、逃っ」
「逃しません。」
必ず。
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6話。
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最近、悪魔と距離が近づいた。
「私、ちょろいのかな…。」
結婚してどれくらい経ったかな。
「…。夫婦としてすること、しちゃって。」
はずかしい。全部見られた。
朝食の用意を行う。
「朝から照れてどうしたんです?」
「ブラック!」
トーストを口に突っ込む。
「急に出て来ないで!」
「んぐっ。ずっと居ましたよ。」
ふたくちぐらいで食べきった。早っ。
「どこに?」
対面キッチンの下。
「悪意よ、こんなもん。」
驚かせる気ないと隠れないような場所でしょ。
「所で昨日の事考えてました?」
「えっ?」
やばい、赤面しちゃう。
「あ、の…」
「オレちゃんもです!」
おでこにキスされた。
「名無しさんが心を開いてくれた事が一番嬉しいです。」
「…。」
ブラックってこんなかっこよかったっけ?
前がわからなくなるぐらい、クラクラする。
「朝から何してるの?ふたりとも」
「さとくん!」
私の癒し。
「相変わらずさとくんはタイミング悪いですね。」
「じー」
「空気読めないって言いたいのか!」
「カカカッ!自覚あるんですね!」
「さとくん、どうしたの?」
「ブラックと動画撮るんだ〜。名無しお姉ちゃんは?」
「私は出掛けてくる。」
「オレちゃん今日撮影なんですけど」
「一緒に行くなんて一言も言ってない。」
「じゃあ誰と行くんですか?追跡アプリとか入れて良いですか?」
怖い怖い。そんな奴だっけ?
「ブラックらしくない。」
「じょーだんです、さとくん真に受けすぎです。」
「本当かな。」
「いってきまぁす。」
「いってらっしゃーい。」
名無しお姉ちゃん、どこいくのかな?
駅前のカフェにて。
「名無しちゃぁん~」
「モモちゃん。」
お待たせしました。
「お久しぶりね。教育実習やってるの?」
「そうなんです、毎日大変で。」
「さとくんのクラスらしいね。」
「名無しちゃん流石ー。」
「さとくんから聞いただけ。」
楽しい。紅茶片手に談笑がすすむ。
「やりがいあるみたいで良かった。」
「名無しちゃんもすごいです。ウチの動画なんかよりすごい再生回数…。見習わなきゃいけないです。」
「数字ってそんな気になるもの?」
「そ、そりゃあヨーチューバーとしてというか、やっぱり結果が数字って形で出てるので、気になりますよ。」
「そうなんだ、」
人気商売だものねー。テレビでいう視聴率みたいなもんか。
「私には分からない世界だわ。」
「旦那さん、ヨーチューバーなのに?」
ぶっと紅茶を吹き出す。
「え、私、言ってない…よ…」
今日、その話しようかと思ってきたんだけども
「ブラックさんから入籍を知らせるハガキが…。」
ペラーンと一枚のハガキを見せつけられる。
「いつの間に!?油断も隙もない!」
「夫婦なんだからそんなカリカリしなくて良いじゃないですか。」
「経緯聞く?」
まぁまぁとなだめるモモちゃん。
「でも…前より柔らかくなりましたね。」
「え?」
以前は…もっと孤独で閉塞的な雰囲気…でした
「ブラックさんが名無しちゃんを変えてくれたんですよ。ウチ嬉しいです!」
私、そんなに変わった?
「…好きになったの、ブラックのこと。」
「名無しちゃん…!」
じ〜んと感動しちゃいます。
「悪魔で陰湿で姑息で騙すの好きでヘラヘラして何考えてるか全く分からない所もあるけど。」
「(ほ、本当に好きなんでしょうか…。)」
2時間ほどお話をしました。名無しちゃんが饒舌、初めて見ました。
「じゃあ、またね。モモちゃん。」
「また!気をつけて下さい!」
「…。」
ケーキ屋さんのチョコケーキ。ブラックの好きそうな…。
「すみません、チョコケーキ2つ、、3つ下さい。」
帰ったら居るのかな。
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7話。
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こんにちは。皆さん。
「こちらの動画は投稿しようか迷ったんですがやはり公開することにしました。あ、歌ったみたと鬼ヤバな動画は下の概要欄をご覧ください。」
さて。
「最近嫁ちゃんがオレちゃんに隠れてコソコソしているみたいなんです。何故コソコソしているのかその裏側を暴いていこうと思います。」
ディスイズ炎ターテインメント。
「オレちゃんに隠し事なんて…。」
いつからそんな悪知恵をつけたのか。
「まぁ、魔女さんは元々悪知恵が働きますからね。名無しさんみたいな素直で悪知恵を働かせて無い方がレアです。」
どんな事をしてくれるんですか?
「オレちゃん楽しみです!」
「じ〜!!」
名無しのマンション前。
「名無しお姉ちゃん!」
「さとくん。こんにちは。ブラックなら出掛けたよ。」
「名無しお姉ちゃんに用事!今日は“あれ”の日でしょ!」
「覚えてたの?ありがとう。」
さとくんは今学校で流行ってるものやモモちゃんの事とか教えてくれる。
「フォトナ最近やってないの?」
「ブラックが割り込んできてバカにしてくるからやる気出ないの。」
「魔界で1位だしね。」
名無しお姉ちゃんとブラックってうまくいってないのかな?
「(大体はブラックが悪いけど…。)」
「今度抜け出して二人でやろうよ。」
「う、うん!」
名無しお姉ちゃん優しいんだけどなぁ、ブラックが意地悪過ぎるんだよなぁ。
けど…。
名無しお姉ちゃんは何だかんだできっとブラックのこと凄く大事に思ってるはず。でないとここには来ないだろうし。
「さとくんも一緒だったなんて。これは…時間の問題ですね。」
口を滑らす可能性大です。
「カメラちゃん、いってらっしゃい」
「じじー。」
中を見て
「じー……。」
ハッとし。
なるほど、そういうことかぁ!!と、納得してカメラちゃんは外に出る。
「…。」
カメラちゃん帰宅。
「おかえりなさいカメラちゃん。どうでした?」
「じー!」
手をバツにしてる。
「撮影が出来なかった?そんなはず…。」
パソコンは砂嵐画面。
「(何をしているんでしょうか?)」
まぁ良いでしょう。
「尻尾は掴んでいます。あとは引きずり出すだけ。なんてことはないです。」
隠し事→追跡→ネタバレ。段取りは完璧です。
「じー…。」
え。…今なんて?
「カカカッ!さぁ見せて下さい!名無しさんの裏側!」
オレちゃんは全て知りたい。どんな事も。
「あともう少し。仕上げて帰ろうかな。」
「名無しお姉ちゃんもう18時だよ?」
「あら。さとくん怒られるね、帰ろうか。」
「ごめん。」
一緒に帰宅。
「じゃあまたねー!」
「今日はありがとう。またね。」
晩ごはんどーしよ。なに作ろ。
「…主婦みたい。」
主婦だけど。
帰宅。灯りがついてる。
「おかえりです。ご飯出来てますよ。」
まぁ、びっくり。
「わざわざ作ってくれたの。」
「毎日作ってもらってるので、たまには。それより…」
今日はどこ行ってたんですか?
「え?…さとくんと“ただただ”遊んでた。」
「……………。へぇ〜〜〜〜〜〜〜。」
な、なに?!意味深…!!すっごいニタリ顔が怖い。
「な、なに?」
「何でもありませよ。気にしないで下さい。」
気にしかならない…。
「じー…。」
「カメラちゃん、どしたの?」
ブラックの気に当てられてへこんだ?
「そこの禍々しいの。ちょっと落ち着いたら?」
「誰のことですかねー?」
「(あんたよ。)」
ごちそうさま。
「可哀想に。カメラちゃん、一緒にお風呂入ろ。」
「あれ〜?新婚なのにいきなり浮気ですか?オレちゃん怒りますよ?」
「八つ当たりか!いい加減になさいよ。」
「オレちゃんには一緒に入ろうなんて言ったことないじゃないですかー。」
「カメラちゃんは少し違うでしょ」
「何が違うんです?いくら見た目が可愛くとも性別はオスですし、名無しさんの知らない部分をオレちゃんは知っています。安心と言い切るには材料が少ないとは思いませんか?」
「今日やけにつっかかってくるのね。」
言ったでしょう。
「貴女はオレちゃんのものです。誰にも渡しませんし触らせません。全部オレちゃんのです。」
これは…。
「(独占欲という…やつ?)」
悪魔らしい。
「(“ただただ”なんてわざわざ強調するなんて…)」
益々暴きたい!!!気になります…!!!ああ、なんて感覚。カメラちゃんも撮影出来ないとなるとオレちゃんの興味本位は最高潮です!!
「(気持ちが乱れますね、なんていい…!)」
ドロドロした気持ちはやはり良いものです。どす黒いものを生み出させる。これが色恋沙汰。混沌としていて美味ですね。
「あ、でもカメラちゃんとのお風呂はダメです。名無しさんの裸はオレちゃんだけ見ていいものなので。」
「じじぃ!?」
「カメラちゃん、ごめん。こんな旦那で。」
翌日。
また出掛けた。
「…昨日のブラック変よね。」
いつも変だけど。
「…よし、出来た。」
こんなもんだろう。
「…動きがなくなりましたね。」
あの建物は用済み。つまり目的を果たした。
「ブラック、おいで」
「…。」
カメラちゃんまで?
「何ですか?」
「はい。」
指輪を見せた。
「指輪…」
ペアリングというやつ。
「この前から、個人の教室通って手作りしたの。」
人間界では結婚した夫婦は指輪をつけるらしい。だから。
「魔界には、結婚指輪はないから…欲しいなんて言うのもはずかしいし、作ってみた…の」
………………。
ブラックが止まってる。
「…カッ、カカカッ!!」
オーバーに笑ってる。
「な、なに?」
「そんな、人間の真似事を…カカカッ!!!」
なんて純粋。
「コソコソしている嫁ちゃんの裏側…それはペアリングを内緒で作っていた。っ…良いですね、人間界の愛情表現!魔界にはないものです!新しい表現としてこれはバズりますっ!」
ケタケタ笑いまくっている。
「動画?」
「カカカッ、実はずっと撮影してました。」
「!?なんで?」
「オレちゃんに隠れてコソコソしているからですよ。普通、気になりません?」
え、じゃあ、作ってたのも…。
「バレてたの?」
「いいえ、ツールの使用も侵入もしていない。カメラちゃんも撮影拒否の為、謎のままでした。さとくんに聞くのもありですがそれではつまらないですし。」
もっと鬼ヤバなのを期待していたのですが
「貴女は予想を裏切る魔女ですね!さすがオレちゃんの嫁ちゃんです!」
「……。」
この悪魔もしや
「妬いてたの?」
…素っ頓狂な顔をした。
「は?今なんと?」
「だって、前から異様なまでに禍々しいし八つ当たりしてるし取っ付きにくくなったり。勝手に色々想像膨らませて、イライラしてるよーに見えたから。」
鬼ヤバな展開を期待。男と遊んでると思ってたんじゃ…。ちがうのかしら。
「…。(その展開を期待していたのも事実。)」
さとくん連れてる時点で違うとは思いましたがね。
「あの混沌とした沼のような気持ち!あれが嫉妬なんですか!」
初めて知りました。
「はぁ…なるほど。」
やはり貴女は素晴らしい。オレちゃんに色々なものを見せてくれる。
「勝手に盛り上がってる…。」
「あ、それ。はめてくれないんですか?」
「私がするの?」
指にはめる。
「…。」
薬指。
「…満足しました?」
「なんか急に余裕出てきたわね。」
さっきの恍惚としたブラックはどこへ。
「いやぁ、改めて見ると名無しさんの行動がいじらしいというか…人間くさいですね。」
「人間界の生活長いのよ。」
しょうがないじゃない。
「人間の真似事だって悪くないと思わない?」
「…。カカカッ!」
案の定、魔界で指輪が流行った。
「バズりました!」
「…えぇ…。」
魔界にペアリングの習慣ができた。