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1話。
______________________________________________
魔女。この広い魔界にただ1人、生き残ったもの。
彼女は歌うことを愛した。娯楽の一つとして彼女の名前は魔界で馳せた。だが、ある日、姿を消した。滅びの歌と共に。
魔女達は滅んだ。魔界も半壊し大変な騒ぎとなった。
共に滅んだのだと思われ、いつしか彼女の存在は希薄となった。歌だけ残して。
必ず見つけます。あの日、貴女に…。
「やはり居ませんか。」
「じー?」
「そうです、カメラちゃん。もしかしてと思ってね。」
ですが
「この何千年、その方の痕跡が辿れません。」
まるで、隠しているかのように。
「カカカッ、もしも生きているとしたら?」
「じじー!?」
「これは鬼ヤバです!!!」
__
「今日はだいち達と隣の公園でフォントナイトの約束してるんだーっ!!」
しーん。誰も居ない。
「あれ?居ない。おれ早く来すぎた?」
時計を見ながら
「合ってんじゃん、何だよあいつら!約束も守れないなんて!、、。」
「、、、。」
びっくりした、気配ないから一人かと思ったら人がいた。
「あ〜、俺変なやつだと思われたかも。」
「大丈夫、聞いてないふりしてるから。」
「有難うございま、って聞いてんじゃん!!」
大人?女の人だ。
「ぼく、フォントナイトするの?」
「あ、はい。友達と約束してここまで来たんだけど」
「私、弱いけど一緒にやる?」
「え?お姉さんもフォントナイトするの?!やるやる!」
操作音が鳴り響く。
「(全ッッ然よわくねぇーッッ)」
全敗。
「手加減したつもりなんだけど、ごめん。」
「追い打ち!」
袋からアイスを取り出した。
「まっさか僕みたいな子と遊べるなんて思わなくて、もう一つ買っとけばよかったんだけど」
「?」
パキッと半分に割る。
「ありゃ。」
一つ大きくて一つ小さい。
「お姉ちゃん、下手〜。」
「ははっ、はい。」
大きいのを口に突っ込む。
「んぐっ、良いの?」
「勿論。沢山食べな。」
「(優しい〜)ありがとう!」
まるで夢のような時間だった。気がつけば夕方だった。
「はぁ〜!楽しかった!!協力プレイ出来たからアイテム回収すごかったよ!」
「こちらこそ、楽しかったよ。じゃあね。」
「うん、またね!お姉ちゃん!」
「…またね、かぁ。人と話すのはいつ振りかしら。」
さぁて、帰ろう。
翌日。
「さとし!何で昨日公園に来なかったんだよ!」
「俺たち待ってたのに」
「え?俺行ったよ。そもそも俺が公園についた時にはだいち達居なかったじゃん」
「居たっつーの!たく、なに寝ぼけたこといってんだ」
「寝ぼけてないよ!!信じてよ!」
放課後。
「あーっ!なんだよあいつら、ムカつく!」
「随分と荒れてますね。どうかしました?」
「聞いてよブラック!だいち達が俺を嘘つき呼ばわりするんだ!」
「また何かやらかしたんですか?」
「何で俺がやらかした前提なんだよ!!もういい!ブラックにも教えてやんない!」
「聞いて欲しかったのでは?」
「もう話したくない!」
何で。俺ちゃんと行ったのに。くそっ。
「(だいち達なんてもう知るか。すぐ人の事バカにして。そうだ、あのお姉ちゃんとフォントナイトしよう。)」
あのお姉ちゃん、今日も居るのかな?
「ちょっと出掛けてくる!」
「どこに行くんですか?」
「友達のとこ!」
「…カメラちゃん。」
「じー!」
隣町の公園。
「えーっと。」
キョロキョロ。あたりを見渡す。
そういえば俺、あのお姉ちゃんと偶々会っただけなんだよなぁ。
「そんな毎回会えるなんてわけないか」
「おやまぁ、ぼく。」
はっ!居た。
「お姉ちゃん!今日も会えた!」
「もしかして探してくれたの?」
「そうなんだ!今日も一緒にフォントナイトしたくてさ!」
「そっか、実は私も」
アイスを2つ出し
「今日会えるんじゃないかと思って。」
「え?わぁ、これオレの分?!」
「そうよ。食べたあとゲームしよっか」
「うん!!」
お姉ちゃん、優しい。
「それでだいち達はここにいたって言って俺を嘘つき呼ばわりするんだ!俺だってここに来たけどだいち達は居なかったし。あっちの方が嘘ついてるかも知れないのにさ!」
アイスをヤケ食いする。
「それは、申し訳ない事をしちゃったかなぁ~…。」
え?
「何でお姉ちゃんが謝るの?お姉ちゃん悪くないよ」
「…。ありがとう。そうとも言い切れないかなって。」
「えー?(変なの、どーゆーことだろ。)」
「ふふ、口のまわり汚しちゃったね。」
ゴシゴシとハンカチで口を拭いてくれた。
「あ、ありがとう。」
ぽーっとする。このお姉ちゃん、綺麗な人だよなぁ。
「(ハッ!俺には市井ちゃんが!片思いだけど!)」
このお姉ちゃんとのフォントナイト楽しいなあ。優しいしアイスもご馳走してくれるし。
「(こんなお姉ちゃんが居たらなぁ…。)」
いつの間にかムカムカが収まってる
「もう帰らないと。お姉ちゃんまたね!」
「…またね。」
「明日も居る!?」
「明日は居ないかな。毎日アイス食べるとお腹壊しちゃうよ。たまに、おいで。」
「アイスなんて食べれなくてもいいからお姉ちゃんとフォントナイトしたいんだもん!」
「おやまぁ、かわいい事言ってくれちゃって。でも駄目、友達を大切に、ね?」
「…うん、わかった!また必ず来るからね!」
「私も楽しみにしてるね。」
あっ、そういえば
「お姉ちゃんの名前、何ていうの?」
「え?」
さて、どうしたもんか。
「名無し。きみは?」
「さとし!名無しお姉ちゃん、じゃあ!」
子供とは無邪気だ。
「そろそろこの町も引き上げ時なんだけど。」
あの子と居るのがつい、楽しくて。
「良くないなぁ、久々だと欲をかいてしまうのね。」
切り時を見誤ると足元を救われる。
「ただいま!」
「おかえりなさい。機嫌がなおったみたいですね。」
「え?俺別に不機嫌じゃなかったけど?」
「ニワトリ並みですねW」
「やかましい!」
数日後。
「ブラック?今日も魔界に行くの?動画は?」
「動画も大事ですが、今日は探しものをしてきます。」
「探しもの?」
「ええ、大事なものです。」
なんだよ、今日はオレの企画で動画撮ろうと思ったのに。
「あっ!!名無しお姉ちゃん!」
バタバタ
「ブラックも居ないし今日はゲームしよ!」
公園。
「あっ!居た!」
「さとくん、久しぶり。」
「やっと会えた!この日を待ってたんだぁ!」
「大げさな。4日前に会ったじゃない。」
オレが名無し姉ちゃんが会うようになってから1ヶ月ぐらいがたった。気付けば凄く仲良くなってて、オレと名無しお姉ちゃんは秘密の友達になったんだ。
「あー、楽しい!昨日のピカキンの動画みた?」
「ピカキン?ヨーチューブだっけ。」
俺の好きなものを名無しお姉ちゃんに教える。
この公園静かだし邪魔も入らないからお姉ちゃんと二人でいつも盛り上がるんだ。
……公園が静か?1ヶ月も?会うたびに?
「…。」
公園ってもっと賑わうものだよね。
「どうかした?さとくん。」
「名無しお姉ちゃん…どうして。」
この公園、誰も来ないの?
「……。」
「名無しお姉…。」
バリーンと砕ける音が響き渡る。
「っ!?」
「っ!!」
「ブラック!?」
「ここに居たんですね。」
ニヤァと笑うこいつは。
「さとくん。」
さとくんをサッと抱える。
「お姉ちゃん…?」
ブラックを避けた?
「何こいつ。さとくんの知り合い?」
「うん、友達なんだ」
「友達って、悪魔よね?」
「はい、悪魔系ヨーチューバーのブラックです。」
「ヨーチューバー?」
そんな人が何でここに。
「勿論、撮影の為です。貴女をずっと探していました。魔界最後の生き残りである魔女。貴女ですよね?名無しさん。」
「えっ!?名無しお姉ちゃんが魔女?」
「、、、。なんのことだか。」
知らんぷり。
「おや、しらを着るつもりですか。これでも、切り通せます?」
あ、戦闘態勢だ。やば、逃げないと。
「何なのよ!」
ザッと走り出す。
「走って逃げるんですね。」
シーン。物静かだ。
「撒いたかな。さとくん大丈夫?」
「う、うん。(ブラックがワクワクしてた。もしかして名無しお姉ちゃん、本当に…)」
「魔女なんて怖いよね。へんな事聞かされてびっくりしたでしょ。」
「え?!大丈夫だよ、俺は名無しお姉ちゃんがなんであっても…。」
ブラックより全ッ然優しいもん!!
「(日頃どんな扱いを受け取るんだ、この子は。)」
ガシャッーン。
「それで逃げ切れたつもりですか?」
雷?なんか飛んできた。
「ブラック!?!?」
「…。」
シュッと消えていた。あれ?
「(ブラックの攻撃を無効化した?)名無しお姉ちゃん?」
「さっさと立ち去ればよかった。」
「もしかして本当に」
魔女?
「わざわざ追ってくるなんて。しつこいのよ。」
ガシャっとマシンガン片手に手榴弾をお見舞いする。それどこから出したのお姉ちゃん。
「良いですねぇっ!!カメラちゃん、撮って!これは必ずバズります!!」
絶滅したはずの魔女。人間界にて大発見!
「視聴者さんに貴女の存在を伝えるチャンス!!このチャンス、逃しません!!」
ブラックホール。
「っ、魔界…」
「やはりご存知ですか。見ての通り魔界は元に戻しました。」
また半壊させて頂いても構いません。
「盛り上がる演出は大事ですから!」
「…(逃げれそうにないか。)」
「名無しお姉ちゃん?!本当に魔女だったんだ…。」
「せっかく静かに暮らしていたのに。飛んだ迷惑ね。」
「カカカッ、オレちゃん迷惑系ではないんですがねぇ。」
ブンッとほうきを召喚し宙を舞う。
「おーっ!本当にほうきで飛ぶんですね!」
感心してる。
名無しお姉ちゃんなかなか早い。
「その程度じゃオレちゃんからは逃げれませんよ?」
ほうきが斤に変化し相打ちに。
「強っ。」
上級悪魔?いや、それならここまで手こずらない。こいつ、もっとたちが悪い。
「ディスイズ炎ターテインメント!」
斤が砕けた。
「、、ッッッ!」
私が負けた?悪魔なんかに?落ちる…。
ガシッと抱き上げられた。
「こんなにも手応えがないなんて。貴女らしくもない。」
魔女はこんなものじゃないでしょう?
盛大に盛り上がった会場。
「歌姫が帰ってきたぞー」
「歌姫?」
名無しお姉ちゃんのこと?
「やっと見つけましたよ、魔界きっての歌姫。そう、貴女です。名無しさん。」
もう手放しません。
本人気絶してますけどね。
5時間後。
「嫌よ。」
「随分と頑固ですね。オレちゃんに負けたんですから言う事聞いて下さい。」
「そんな約束してないわ!」
なんなの、こいつ。
「そういえばさぁ、何でブラックはあの時、あんな登場のしかたしたの?」
ほら、公園で。なんか鏡が割れるみたいな…。
おや?
「おバカなさとくんにも分かるように説明すると」
「一言余計だよ!」
名無しさんは自分が他の者に見えないように結界を張っていたんです。
「結界?」
「バリアーみたいなものですね。」
なので名無しさんの存在は誰からも見えないし気づかれない。が、何故かさとくんは入れたみたいで、カメラちゃんに尾行をお願いした時、さとくんの存在が公園に入った瞬間に消えたんです。
「因みにだいちくん達は奥の滑り台で集まってゲームしてましたよ。」
「え?!じゃあ、同じ場所に居たけど、バリアーのせいでオレの存在が見えなかったってだけ?!」
「つまりそーゆーことです。」
だからあの時、謝ってたのか…。
「でもどうして結界を?」
「こんな奴に見つかりたくなかったからよ。」
「カカカッ!もしかしてオレちゃんに言ってます?」
でもオレちゃん、数千年かけてやっと出会えました。
「諦めなければ夢は叶うんですねー。」
「あんたの執着にびっくりよ」
ところで
「オレちゃんのチャンネル出演、契約して頂けません?」
「嫌だっつってんでしょ、さっきの生配信だけでもうんざりしたのよ。何でまた。」
「歌ってみた、これでもダメですか?」
「……!」
歌ってみた?ってあの歌ってみた?
「実はオレちゃん、貴女の大ファンなんです!!純粋に貴女の歌声がまた聴きたい!!その為だったら数千年だって惜しくはありません!貴女の為!歌声を聴きたいが為に全力を尽くす所存です!」
珍しい。ブラックが口説いてる。
「…歌えるの?また?」
びっくりしてる。かぶりついた。
「私の歌声の意味を知っていて、聞いているの?」
「飛んでもない魔力を秘めていますよね。あの生配信の時に歌われていたらオレちゃん、消えてきたかもしれません。」
「?!(あのブラックが?)」
名無しお姉ちゃん、そんなに凄いの?
「凄いなんてものじゃないですよ!!彼女は魔界に音楽というものを広めた唯一の歌姫!!その歌声は賛美なものとし魔力が込められています!その魔力は素晴らしく魔界を半壊させ同種族を絶滅させたほど!!これほど鬼ヤバな話はありません!!」
めちゃめちゃ怖いじゃん!!なに生き生きしてんだ。
「責められるとこじゃないの?何で絶賛するのか…。」
「責める?オレちゃん悪魔ですよ?」
こんな話、ゾクゾクするに決まってるじゃないですか。
「(悪魔だ。)」
「…滅びの歌を歌ったのよ。そしたらまさかあんな事になるなんて。同種族も皆殺し、魔女裁判にかけられて私も処刑かと思ったけど魔界唯一の魔女となった私は免除された。」
仲間を殺して生きているなんて。
誰よりも歌を愛してる。
「私はこの歌声に混ざった魔力を制御出来ない。だから歌うのはやめた。」
「名無しお姉ちゃん。」
そうだ、この人は魔女だけど、優しいんだ。
「好きなことだけど、出来ないんだ。」
それはなんて苦しいんだ。
「それ、オレちゃんがどうにかしてみせます。」
「は?どうって」
「オレちゃんと契約して下さい。貴女の歌声から魔力を抜きます。」
「そんなこと、できるの?」
「はい、オレちゃん悪魔なので。約束は必ず守りますよ。」
人を傷つけず歌える?
「それ本当?」
「オレちゃん嘘は言いません。」
魔女相手に嘘なんてとてもとても
「悪魔と契約。もう一度歌えるなら。」
契約成立
「…これで貴女はオレちゃんのものです。」
もう逃しません。
あの日の出来事を、忘れていませんよ。
契約書は2部あります。後ろに隠していますがね。
「歌えるの。」
「よかったね名無しお姉ちゃん!!オレ、名無しお姉ちゃんの歌、楽しみにしてるから!」
「さとくん。」
さとくんをぎゅうっと抱きしめる。
「有難う。(良い子。)」
「わぁ、苦しいよ、名無しお姉ちゃん!」
「じじー!」
「さぁ、炎ターテインメントの始まりです!!!」
ライブ会場、機材、配信設備。準備オッケーです。
「新しく揃えたかいがありました。さぁ、思う存分歌って下さい!」
新時代の幕開けです。
「…やっと、私」
こんな瞬間を経験できるなんて。
「皆、いくよ。」
__
一曲終るとあたりの歓声は常軌を逸していた。
「!」
受け入れられている?
「…ただいま。」
まだ心残りは沢山あるけど、この瞬間に感謝だ。
「もう一曲!」
「カカカッ、生き生きしましたね。」
魔力が…。
「やはり、」
彼女の歌声で魔力が上がっています。
「オレちゃんの目に狂いはなかったみたいです。」
2曲目にして一億回突破。再生回数も魔力も上々。
「カカカッ!!彼女はもっと伸びます。」
これからが楽しみです。
終わった。
「大成功でしたね!!生配信で666億再生突破!やはり貴女は鬼ヤバスターです!」
「いい意味には聞こえないんだけど。」
「ブラックが言うと胡散臭いから。」
「それな。」
「オレちゃん、素直に褒めてるんですよ?」
「(食えない悪魔ね。だけど)ブラック、有難う」
「?」
思わずポカンとしている。
「何千年ぶりに歌った。あなたのおかげよ。」
ほー。
「お礼を言うのはオレちゃんの方ですよ。」
だって貴女を繋ぎ止めれたんだから。
「この歌声はオレちゃんのチャンネルだけのもの!!カメラちゃんが居るときにのみ歌うことができます!」
「は?!そんなんどこにも」
2部あります。ぺらーと見せる。
「…。」
なんだそれは。
「は?」
「え?」
「はぁ?」
「えぇ?」
更にとぼけてる。
聞いてませんけど?
「聞かれなかったので」
そういう問題なの?
「2部目見せて!」
ぺらーっ。手が止まる。
「婚姻届?」
「ぇっ?!」
さとくんまで覗きに来た。
「はい!貴女だけはどんな事があっても手放せないので、先手を打ちました。」
「(こいつやべぇぇっ。)」
ちょっと待って。
「私たち、夫婦なの?」
「はい。」
はいだと?
「何故私にこだわる!!こんな話聞いてない!」
「聞かれなかったので。」
「詐欺だぁ!」
「人聞きの悪い。同意の上ですよ。名無しさん♡」
あり得ない…。
私こんなんと結婚したの?
ていうかあんた人じゃないよね。
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魔女。この広い魔界にただ1人、生き残ったもの。
彼女は歌うことを愛した。娯楽の一つとして彼女の名前は魔界で馳せた。だが、ある日、姿を消した。滅びの歌と共に。
魔女達は滅んだ。魔界も半壊し大変な騒ぎとなった。
共に滅んだのだと思われ、いつしか彼女の存在は希薄となった。歌だけ残して。
必ず見つけます。あの日、貴女に…。
「やはり居ませんか。」
「じー?」
「そうです、カメラちゃん。もしかしてと思ってね。」
ですが
「この何千年、その方の痕跡が辿れません。」
まるで、隠しているかのように。
「カカカッ、もしも生きているとしたら?」
「じじー!?」
「これは鬼ヤバです!!!」
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「今日はだいち達と隣の公園でフォントナイトの約束してるんだーっ!!」
しーん。誰も居ない。
「あれ?居ない。おれ早く来すぎた?」
時計を見ながら
「合ってんじゃん、何だよあいつら!約束も守れないなんて!、、。」
「、、、。」
びっくりした、気配ないから一人かと思ったら人がいた。
「あ〜、俺変なやつだと思われたかも。」
「大丈夫、聞いてないふりしてるから。」
「有難うございま、って聞いてんじゃん!!」
大人?女の人だ。
「ぼく、フォントナイトするの?」
「あ、はい。友達と約束してここまで来たんだけど」
「私、弱いけど一緒にやる?」
「え?お姉さんもフォントナイトするの?!やるやる!」
操作音が鳴り響く。
「(全ッッ然よわくねぇーッッ)」
全敗。
「手加減したつもりなんだけど、ごめん。」
「追い打ち!」
袋からアイスを取り出した。
「まっさか僕みたいな子と遊べるなんて思わなくて、もう一つ買っとけばよかったんだけど」
「?」
パキッと半分に割る。
「ありゃ。」
一つ大きくて一つ小さい。
「お姉ちゃん、下手〜。」
「ははっ、はい。」
大きいのを口に突っ込む。
「んぐっ、良いの?」
「勿論。沢山食べな。」
「(優しい〜)ありがとう!」
まるで夢のような時間だった。気がつけば夕方だった。
「はぁ〜!楽しかった!!協力プレイ出来たからアイテム回収すごかったよ!」
「こちらこそ、楽しかったよ。じゃあね。」
「うん、またね!お姉ちゃん!」
「…またね、かぁ。人と話すのはいつ振りかしら。」
さぁて、帰ろう。
翌日。
「さとし!何で昨日公園に来なかったんだよ!」
「俺たち待ってたのに」
「え?俺行ったよ。そもそも俺が公園についた時にはだいち達居なかったじゃん」
「居たっつーの!たく、なに寝ぼけたこといってんだ」
「寝ぼけてないよ!!信じてよ!」
放課後。
「あーっ!なんだよあいつら、ムカつく!」
「随分と荒れてますね。どうかしました?」
「聞いてよブラック!だいち達が俺を嘘つき呼ばわりするんだ!」
「また何かやらかしたんですか?」
「何で俺がやらかした前提なんだよ!!もういい!ブラックにも教えてやんない!」
「聞いて欲しかったのでは?」
「もう話したくない!」
何で。俺ちゃんと行ったのに。くそっ。
「(だいち達なんてもう知るか。すぐ人の事バカにして。そうだ、あのお姉ちゃんとフォントナイトしよう。)」
あのお姉ちゃん、今日も居るのかな?
「ちょっと出掛けてくる!」
「どこに行くんですか?」
「友達のとこ!」
「…カメラちゃん。」
「じー!」
隣町の公園。
「えーっと。」
キョロキョロ。あたりを見渡す。
そういえば俺、あのお姉ちゃんと偶々会っただけなんだよなぁ。
「そんな毎回会えるなんてわけないか」
「おやまぁ、ぼく。」
はっ!居た。
「お姉ちゃん!今日も会えた!」
「もしかして探してくれたの?」
「そうなんだ!今日も一緒にフォントナイトしたくてさ!」
「そっか、実は私も」
アイスを2つ出し
「今日会えるんじゃないかと思って。」
「え?わぁ、これオレの分?!」
「そうよ。食べたあとゲームしよっか」
「うん!!」
お姉ちゃん、優しい。
「それでだいち達はここにいたって言って俺を嘘つき呼ばわりするんだ!俺だってここに来たけどだいち達は居なかったし。あっちの方が嘘ついてるかも知れないのにさ!」
アイスをヤケ食いする。
「それは、申し訳ない事をしちゃったかなぁ~…。」
え?
「何でお姉ちゃんが謝るの?お姉ちゃん悪くないよ」
「…。ありがとう。そうとも言い切れないかなって。」
「えー?(変なの、どーゆーことだろ。)」
「ふふ、口のまわり汚しちゃったね。」
ゴシゴシとハンカチで口を拭いてくれた。
「あ、ありがとう。」
ぽーっとする。このお姉ちゃん、綺麗な人だよなぁ。
「(ハッ!俺には市井ちゃんが!片思いだけど!)」
このお姉ちゃんとのフォントナイト楽しいなあ。優しいしアイスもご馳走してくれるし。
「(こんなお姉ちゃんが居たらなぁ…。)」
いつの間にかムカムカが収まってる
「もう帰らないと。お姉ちゃんまたね!」
「…またね。」
「明日も居る!?」
「明日は居ないかな。毎日アイス食べるとお腹壊しちゃうよ。たまに、おいで。」
「アイスなんて食べれなくてもいいからお姉ちゃんとフォントナイトしたいんだもん!」
「おやまぁ、かわいい事言ってくれちゃって。でも駄目、友達を大切に、ね?」
「…うん、わかった!また必ず来るからね!」
「私も楽しみにしてるね。」
あっ、そういえば
「お姉ちゃんの名前、何ていうの?」
「え?」
さて、どうしたもんか。
「名無し。きみは?」
「さとし!名無しお姉ちゃん、じゃあ!」
子供とは無邪気だ。
「そろそろこの町も引き上げ時なんだけど。」
あの子と居るのがつい、楽しくて。
「良くないなぁ、久々だと欲をかいてしまうのね。」
切り時を見誤ると足元を救われる。
「ただいま!」
「おかえりなさい。機嫌がなおったみたいですね。」
「え?俺別に不機嫌じゃなかったけど?」
「ニワトリ並みですねW」
「やかましい!」
数日後。
「ブラック?今日も魔界に行くの?動画は?」
「動画も大事ですが、今日は探しものをしてきます。」
「探しもの?」
「ええ、大事なものです。」
なんだよ、今日はオレの企画で動画撮ろうと思ったのに。
「あっ!!名無しお姉ちゃん!」
バタバタ
「ブラックも居ないし今日はゲームしよ!」
公園。
「あっ!居た!」
「さとくん、久しぶり。」
「やっと会えた!この日を待ってたんだぁ!」
「大げさな。4日前に会ったじゃない。」
オレが名無し姉ちゃんが会うようになってから1ヶ月ぐらいがたった。気付けば凄く仲良くなってて、オレと名無しお姉ちゃんは秘密の友達になったんだ。
「あー、楽しい!昨日のピカキンの動画みた?」
「ピカキン?ヨーチューブだっけ。」
俺の好きなものを名無しお姉ちゃんに教える。
この公園静かだし邪魔も入らないからお姉ちゃんと二人でいつも盛り上がるんだ。
……公園が静か?1ヶ月も?会うたびに?
「…。」
公園ってもっと賑わうものだよね。
「どうかした?さとくん。」
「名無しお姉ちゃん…どうして。」
この公園、誰も来ないの?
「……。」
「名無しお姉…。」
バリーンと砕ける音が響き渡る。
「っ!?」
「っ!!」
「ブラック!?」
「ここに居たんですね。」
ニヤァと笑うこいつは。
「さとくん。」
さとくんをサッと抱える。
「お姉ちゃん…?」
ブラックを避けた?
「何こいつ。さとくんの知り合い?」
「うん、友達なんだ」
「友達って、悪魔よね?」
「はい、悪魔系ヨーチューバーのブラックです。」
「ヨーチューバー?」
そんな人が何でここに。
「勿論、撮影の為です。貴女をずっと探していました。魔界最後の生き残りである魔女。貴女ですよね?名無しさん。」
「えっ!?名無しお姉ちゃんが魔女?」
「、、、。なんのことだか。」
知らんぷり。
「おや、しらを着るつもりですか。これでも、切り通せます?」
あ、戦闘態勢だ。やば、逃げないと。
「何なのよ!」
ザッと走り出す。
「走って逃げるんですね。」
シーン。物静かだ。
「撒いたかな。さとくん大丈夫?」
「う、うん。(ブラックがワクワクしてた。もしかして名無しお姉ちゃん、本当に…)」
「魔女なんて怖いよね。へんな事聞かされてびっくりしたでしょ。」
「え?!大丈夫だよ、俺は名無しお姉ちゃんがなんであっても…。」
ブラックより全ッ然優しいもん!!
「(日頃どんな扱いを受け取るんだ、この子は。)」
ガシャッーン。
「それで逃げ切れたつもりですか?」
雷?なんか飛んできた。
「ブラック!?!?」
「…。」
シュッと消えていた。あれ?
「(ブラックの攻撃を無効化した?)名無しお姉ちゃん?」
「さっさと立ち去ればよかった。」
「もしかして本当に」
魔女?
「わざわざ追ってくるなんて。しつこいのよ。」
ガシャっとマシンガン片手に手榴弾をお見舞いする。それどこから出したのお姉ちゃん。
「良いですねぇっ!!カメラちゃん、撮って!これは必ずバズります!!」
絶滅したはずの魔女。人間界にて大発見!
「視聴者さんに貴女の存在を伝えるチャンス!!このチャンス、逃しません!!」
ブラックホール。
「っ、魔界…」
「やはりご存知ですか。見ての通り魔界は元に戻しました。」
また半壊させて頂いても構いません。
「盛り上がる演出は大事ですから!」
「…(逃げれそうにないか。)」
「名無しお姉ちゃん?!本当に魔女だったんだ…。」
「せっかく静かに暮らしていたのに。飛んだ迷惑ね。」
「カカカッ、オレちゃん迷惑系ではないんですがねぇ。」
ブンッとほうきを召喚し宙を舞う。
「おーっ!本当にほうきで飛ぶんですね!」
感心してる。
名無しお姉ちゃんなかなか早い。
「その程度じゃオレちゃんからは逃げれませんよ?」
ほうきが斤に変化し相打ちに。
「強っ。」
上級悪魔?いや、それならここまで手こずらない。こいつ、もっとたちが悪い。
「ディスイズ炎ターテインメント!」
斤が砕けた。
「、、ッッッ!」
私が負けた?悪魔なんかに?落ちる…。
ガシッと抱き上げられた。
「こんなにも手応えがないなんて。貴女らしくもない。」
魔女はこんなものじゃないでしょう?
盛大に盛り上がった会場。
「歌姫が帰ってきたぞー」
「歌姫?」
名無しお姉ちゃんのこと?
「やっと見つけましたよ、魔界きっての歌姫。そう、貴女です。名無しさん。」
もう手放しません。
本人気絶してますけどね。
5時間後。
「嫌よ。」
「随分と頑固ですね。オレちゃんに負けたんですから言う事聞いて下さい。」
「そんな約束してないわ!」
なんなの、こいつ。
「そういえばさぁ、何でブラックはあの時、あんな登場のしかたしたの?」
ほら、公園で。なんか鏡が割れるみたいな…。
おや?
「おバカなさとくんにも分かるように説明すると」
「一言余計だよ!」
名無しさんは自分が他の者に見えないように結界を張っていたんです。
「結界?」
「バリアーみたいなものですね。」
なので名無しさんの存在は誰からも見えないし気づかれない。が、何故かさとくんは入れたみたいで、カメラちゃんに尾行をお願いした時、さとくんの存在が公園に入った瞬間に消えたんです。
「因みにだいちくん達は奥の滑り台で集まってゲームしてましたよ。」
「え?!じゃあ、同じ場所に居たけど、バリアーのせいでオレの存在が見えなかったってだけ?!」
「つまりそーゆーことです。」
だからあの時、謝ってたのか…。
「でもどうして結界を?」
「こんな奴に見つかりたくなかったからよ。」
「カカカッ!もしかしてオレちゃんに言ってます?」
でもオレちゃん、数千年かけてやっと出会えました。
「諦めなければ夢は叶うんですねー。」
「あんたの執着にびっくりよ」
ところで
「オレちゃんのチャンネル出演、契約して頂けません?」
「嫌だっつってんでしょ、さっきの生配信だけでもうんざりしたのよ。何でまた。」
「歌ってみた、これでもダメですか?」
「……!」
歌ってみた?ってあの歌ってみた?
「実はオレちゃん、貴女の大ファンなんです!!純粋に貴女の歌声がまた聴きたい!!その為だったら数千年だって惜しくはありません!貴女の為!歌声を聴きたいが為に全力を尽くす所存です!」
珍しい。ブラックが口説いてる。
「…歌えるの?また?」
びっくりしてる。かぶりついた。
「私の歌声の意味を知っていて、聞いているの?」
「飛んでもない魔力を秘めていますよね。あの生配信の時に歌われていたらオレちゃん、消えてきたかもしれません。」
「?!(あのブラックが?)」
名無しお姉ちゃん、そんなに凄いの?
「凄いなんてものじゃないですよ!!彼女は魔界に音楽というものを広めた唯一の歌姫!!その歌声は賛美なものとし魔力が込められています!その魔力は素晴らしく魔界を半壊させ同種族を絶滅させたほど!!これほど鬼ヤバな話はありません!!」
めちゃめちゃ怖いじゃん!!なに生き生きしてんだ。
「責められるとこじゃないの?何で絶賛するのか…。」
「責める?オレちゃん悪魔ですよ?」
こんな話、ゾクゾクするに決まってるじゃないですか。
「(悪魔だ。)」
「…滅びの歌を歌ったのよ。そしたらまさかあんな事になるなんて。同種族も皆殺し、魔女裁判にかけられて私も処刑かと思ったけど魔界唯一の魔女となった私は免除された。」
仲間を殺して生きているなんて。
誰よりも歌を愛してる。
「私はこの歌声に混ざった魔力を制御出来ない。だから歌うのはやめた。」
「名無しお姉ちゃん。」
そうだ、この人は魔女だけど、優しいんだ。
「好きなことだけど、出来ないんだ。」
それはなんて苦しいんだ。
「それ、オレちゃんがどうにかしてみせます。」
「は?どうって」
「オレちゃんと契約して下さい。貴女の歌声から魔力を抜きます。」
「そんなこと、できるの?」
「はい、オレちゃん悪魔なので。約束は必ず守りますよ。」
人を傷つけず歌える?
「それ本当?」
「オレちゃん嘘は言いません。」
魔女相手に嘘なんてとてもとても
「悪魔と契約。もう一度歌えるなら。」
「…これで貴女はオレちゃんのものです。」
もう逃しません。
あの日の出来事を、忘れていませんよ。
契約書は2部あります。後ろに隠していますがね。
「歌えるの。」
「よかったね名無しお姉ちゃん!!オレ、名無しお姉ちゃんの歌、楽しみにしてるから!」
「さとくん。」
さとくんをぎゅうっと抱きしめる。
「有難う。(良い子。)」
「わぁ、苦しいよ、名無しお姉ちゃん!」
「じじー!」
「さぁ、炎ターテインメントの始まりです!!!」
ライブ会場、機材、配信設備。準備オッケーです。
「新しく揃えたかいがありました。さぁ、思う存分歌って下さい!」
新時代の幕開けです。
「…やっと、私」
こんな瞬間を経験できるなんて。
「皆、いくよ。」
__
一曲終るとあたりの歓声は常軌を逸していた。
「!」
受け入れられている?
「…ただいま。」
まだ心残りは沢山あるけど、この瞬間に感謝だ。
「もう一曲!」
「カカカッ、生き生きしましたね。」
魔力が…。
「やはり、」
彼女の歌声で魔力が上がっています。
「オレちゃんの目に狂いはなかったみたいです。」
2曲目にして一億回突破。再生回数も魔力も上々。
「カカカッ!!彼女はもっと伸びます。」
これからが楽しみです。
終わった。
「大成功でしたね!!生配信で666億再生突破!やはり貴女は鬼ヤバスターです!」
「いい意味には聞こえないんだけど。」
「ブラックが言うと胡散臭いから。」
「それな。」
「オレちゃん、素直に褒めてるんですよ?」
「(食えない悪魔ね。だけど)ブラック、有難う」
「?」
思わずポカンとしている。
「何千年ぶりに歌った。あなたのおかげよ。」
ほー。
「お礼を言うのはオレちゃんの方ですよ。」
だって貴女を繋ぎ止めれたんだから。
「この歌声はオレちゃんのチャンネルだけのもの!!カメラちゃんが居るときにのみ歌うことができます!」
「は?!そんなんどこにも」
2部あります。ぺらーと見せる。
「…。」
なんだそれは。
「は?」
「え?」
「はぁ?」
「えぇ?」
更にとぼけてる。
聞いてませんけど?
「聞かれなかったので」
そういう問題なの?
「2部目見せて!」
ぺらーっ。手が止まる。
「婚姻届?」
「ぇっ?!」
さとくんまで覗きに来た。
「はい!貴女だけはどんな事があっても手放せないので、先手を打ちました。」
「(こいつやべぇぇっ。)」
ちょっと待って。
「私たち、夫婦なの?」
「はい。」
はいだと?
「何故私にこだわる!!こんな話聞いてない!」
「聞かれなかったので。」
「詐欺だぁ!」
「人聞きの悪い。同意の上ですよ。名無しさん♡」
あり得ない…。
私こんなんと結婚したの?
ていうかあんた人じゃないよね。
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