【ロビン】sunlight color, forest color
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戦闘シミュレーターでレオニダスに訓練をつけてもらっているマシュの様子を見に来た立香だったが、訓練に夢中な二人を見て、声をかけずに見守ることにした。木陰に腰を下ろしながら普段なら自分に気付かないことなんてないのに、と内心一抹の寂しさを覚える。しかし、レオニダスへの憧れと使命感から必死に頑張る後輩の表情を眺めるうちに、寂しさは誇らしさに変わっていった。
「いやぁ、熱入ってますね」
たまたまシミュレーターの同じフィールドにいたロビンフッドが、フードを外しながら隣に座った。
「マシュは頑張り屋さんだから」
突然現れたサーヴァントに、立香は別段驚いたふうもなく、視線をマシュから外さずに答える。
「マシュの様子見に来たんじゃないですか? 呼んできますか」
「ううん、今いいところだから、そのままで大丈夫。それにロビンが来てくれたから、寂しくないよ」
「……そうっすか」
立香はロビンフッドに心から嬉しそうな笑顔を向けた。訓練を見つめる立香の横顔を前髪越しに眺めていたロビンはその眩しさに思わず視線を逸らした。
匂いや質感などの解像度は、本物に比べれば多少は劣るものの、シミュレーターの再現度は高い。森をふわりと風が吹き抜ける。葉がさざめく音がする。揺れる木漏れ日を反射してきらきらと輝くロビンの髪を見て、立香はふと前から思っていた事を口にした。
「ロビンの髪って、綺麗な色だよね」
「なんですかいきなり」
ロビンの声音は平坦だったが、動揺を隠しきれていなかった。普段は飄々としているが、真っ直ぐな褒め言葉にはとことん弱い元義賊は、居心地悪そうに視線を逸らしたまま、綺麗だと言われた髪の毛先を弄びながらため息をつく。
「この派手な髪色のせいで、生前は身を隠すのが大変だったんですよ」
「確かに森じゃ目立つもんね。でも私は好きだよ。お日様みたいで暖かくて、ロビンに合ってる」
「……そんな柄じゃないんですがねぇ」
ロビンは皮肉げに笑う。表情は相変わらず髪で見えないが、少し耳が少し赤い事に立香は気づいていた。
本人はそうやって否定するが、ロビンフッドの優しさは彼と親しい人物であれば誰もが気付いているだろう。ビリーやジェロニモ、よく食堂で喧嘩しているが、きっとエミヤも。立香はなんやかんやカルデアで楽しくやっているロビンの様子を思い返していた。
森に姿を隠すための緑も、太陽のように暖かな橙色も、彼の性格を表していると思う。緑は優しさを表す色で、橙は暖かさを表す色だ。彼が生前表に出せなくて、今は表に出すまいとしている性根。でもそれを本人に伝えても、多分さっきみたいに居心地悪そうにするだけだろう。素直じゃない男だな、と心の中で呟いた。
「何ニヤついてるんですか」
「ん、別に? なんでもないよ」
そんなつもりはかったのだが、どうやら顔に出ていたらしい。ロビンは少し不機嫌そうで、いつのまにかフードをかぶってしまっていた。
「今はもう、隠さなくていいのに」
カルデアにいるサーヴァントは味方。話に聞く「通常の聖杯戦争」とは違う。だからもう、自らの顔を隠さず騎士として戦う事を選ぶこともできるのだと。
そう伝えるように、立香は、おもむろにロビンのフードを外した。別段嫌がる様子がなかったため、木漏れ日を反射するオレンジの髪にそっと触れるとロビンは少し俯いた。そのままロビンの髪に指を滑らせる。慈しむように、優しく。大人しく髪を撫でられている姿は、まるで子犬のようだった。
「……やめてくださいよ、マスター」
口ではそう言いつつ、本気で拒絶してこない辺り、嫌がっているわけではないようだ。俯いているので顔は見えないが、照れくさいような、少し泣きそうな少しかすれた声音に、愛しさがこみ上げる。
立香がしばらく頭を撫でていると、ロビンがおもむろに立ち上がった。今度は見下ろされる形になり、身長差と体格差を思い知らされ、立香の心臓がはねる。皐月の王は、先ほどとは打って変わって、しっかりとした表情で立香を見据えていた。
「今でも顔を隠したい時、ありますよ」
「そうなの? もう正々堂々戦っていいのに」
「それでも作戦上、罠張ったり待ち伏せしたりはあるでしょ。それに……」
「それに?」
「──こういうこと、する時とかね」
急に視界が暗くなる。それが宝具に覆われたせいだと立香が気付いた時にはもう、唇を奪われていた。ロビンは立香の感触を確かめるように自らの唇を柔らかく押し付けたあと、そっと唇を離した。二人が主従以上の関係になってしばらく経つが、周囲に人がいる場で口付けられたのは初めてだった。至近距離でじっと見つめられ、立香は既にタジタジだった。
「ばかロビン」
「変なこと言うから、仕返しですよ」
「……ほんとのことなのに」
「あんまり言うと、また口塞ぐぞ」
耳元で囁かれ、思わず飛びのく。耳を抑えておそるおそる振り返ると視線がかち合った。ロビンは目を細めてこちらを見つめている。その目つきは、獲物を狙う狩人の目であり、また色を孕んだ男の目でもあった。
「立香」
囁きかけるように名前を呼ばれて、びくりと身体が震える。「……なに」と、震える声で応えると、ロビンが口角を上げてからかうように言った。
「顔真っ赤」
「ロビンがこんなことするからでしょ……! これじゃマシュの前に出られないよ」
「ならここから出なければいいだろ」
薄暗闇の中で身体を抱き寄せられ立香は困り果ててしまった。もうじき訓練も終わる。早く平常心に戻ってマシュに会わなければいけないのに。そのためにはここから離れなくてはならない。子犬みたいだ、なんて、油断していた自分の落ち度だ。巧妙な狩人の罠からは、まだ抜け出せそうにない。
「いやぁ、熱入ってますね」
たまたまシミュレーターの同じフィールドにいたロビンフッドが、フードを外しながら隣に座った。
「マシュは頑張り屋さんだから」
突然現れたサーヴァントに、立香は別段驚いたふうもなく、視線をマシュから外さずに答える。
「マシュの様子見に来たんじゃないですか? 呼んできますか」
「ううん、今いいところだから、そのままで大丈夫。それにロビンが来てくれたから、寂しくないよ」
「……そうっすか」
立香はロビンフッドに心から嬉しそうな笑顔を向けた。訓練を見つめる立香の横顔を前髪越しに眺めていたロビンはその眩しさに思わず視線を逸らした。
匂いや質感などの解像度は、本物に比べれば多少は劣るものの、シミュレーターの再現度は高い。森をふわりと風が吹き抜ける。葉がさざめく音がする。揺れる木漏れ日を反射してきらきらと輝くロビンの髪を見て、立香はふと前から思っていた事を口にした。
「ロビンの髪って、綺麗な色だよね」
「なんですかいきなり」
ロビンの声音は平坦だったが、動揺を隠しきれていなかった。普段は飄々としているが、真っ直ぐな褒め言葉にはとことん弱い元義賊は、居心地悪そうに視線を逸らしたまま、綺麗だと言われた髪の毛先を弄びながらため息をつく。
「この派手な髪色のせいで、生前は身を隠すのが大変だったんですよ」
「確かに森じゃ目立つもんね。でも私は好きだよ。お日様みたいで暖かくて、ロビンに合ってる」
「……そんな柄じゃないんですがねぇ」
ロビンは皮肉げに笑う。表情は相変わらず髪で見えないが、少し耳が少し赤い事に立香は気づいていた。
本人はそうやって否定するが、ロビンフッドの優しさは彼と親しい人物であれば誰もが気付いているだろう。ビリーやジェロニモ、よく食堂で喧嘩しているが、きっとエミヤも。立香はなんやかんやカルデアで楽しくやっているロビンの様子を思い返していた。
森に姿を隠すための緑も、太陽のように暖かな橙色も、彼の性格を表していると思う。緑は優しさを表す色で、橙は暖かさを表す色だ。彼が生前表に出せなくて、今は表に出すまいとしている性根。でもそれを本人に伝えても、多分さっきみたいに居心地悪そうにするだけだろう。素直じゃない男だな、と心の中で呟いた。
「何ニヤついてるんですか」
「ん、別に? なんでもないよ」
そんなつもりはかったのだが、どうやら顔に出ていたらしい。ロビンは少し不機嫌そうで、いつのまにかフードをかぶってしまっていた。
「今はもう、隠さなくていいのに」
カルデアにいるサーヴァントは味方。話に聞く「通常の聖杯戦争」とは違う。だからもう、自らの顔を隠さず騎士として戦う事を選ぶこともできるのだと。
そう伝えるように、立香は、おもむろにロビンのフードを外した。別段嫌がる様子がなかったため、木漏れ日を反射するオレンジの髪にそっと触れるとロビンは少し俯いた。そのままロビンの髪に指を滑らせる。慈しむように、優しく。大人しく髪を撫でられている姿は、まるで子犬のようだった。
「……やめてくださいよ、マスター」
口ではそう言いつつ、本気で拒絶してこない辺り、嫌がっているわけではないようだ。俯いているので顔は見えないが、照れくさいような、少し泣きそうな少しかすれた声音に、愛しさがこみ上げる。
立香がしばらく頭を撫でていると、ロビンがおもむろに立ち上がった。今度は見下ろされる形になり、身長差と体格差を思い知らされ、立香の心臓がはねる。皐月の王は、先ほどとは打って変わって、しっかりとした表情で立香を見据えていた。
「今でも顔を隠したい時、ありますよ」
「そうなの? もう正々堂々戦っていいのに」
「それでも作戦上、罠張ったり待ち伏せしたりはあるでしょ。それに……」
「それに?」
「──こういうこと、する時とかね」
急に視界が暗くなる。それが宝具に覆われたせいだと立香が気付いた時にはもう、唇を奪われていた。ロビンは立香の感触を確かめるように自らの唇を柔らかく押し付けたあと、そっと唇を離した。二人が主従以上の関係になってしばらく経つが、周囲に人がいる場で口付けられたのは初めてだった。至近距離でじっと見つめられ、立香は既にタジタジだった。
「ばかロビン」
「変なこと言うから、仕返しですよ」
「……ほんとのことなのに」
「あんまり言うと、また口塞ぐぞ」
耳元で囁かれ、思わず飛びのく。耳を抑えておそるおそる振り返ると視線がかち合った。ロビンは目を細めてこちらを見つめている。その目つきは、獲物を狙う狩人の目であり、また色を孕んだ男の目でもあった。
「立香」
囁きかけるように名前を呼ばれて、びくりと身体が震える。「……なに」と、震える声で応えると、ロビンが口角を上げてからかうように言った。
「顔真っ赤」
「ロビンがこんなことするからでしょ……! これじゃマシュの前に出られないよ」
「ならここから出なければいいだろ」
薄暗闇の中で身体を抱き寄せられ立香は困り果ててしまった。もうじき訓練も終わる。早く平常心に戻ってマシュに会わなければいけないのに。そのためにはここから離れなくてはならない。子犬みたいだ、なんて、油断していた自分の落ち度だ。巧妙な狩人の罠からは、まだ抜け出せそうにない。
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