裏・五月 薔薇には為れぬとお前は言うが
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03
夏の匂いを含んだ爽やかな風が頬を撫でる。静かな波の音に混ざって、遠くから汽笛の音が聞こえた。胸ポケットから煙草を取り出すと、最後の一本。勿体ぶらずに火を着け、思い切り煙を吸い込み、大きく吐き出した。
釣果は芳しくなかった。鍛錬も兼ねているとは言え、こうも奮わないと退屈すぎて張り合いがない。まだ日は高いが、早々に切り上げてどこかに飲みにでも行こうか。そう思った時、依久乃の顔が浮かんだ。しかしアイツのところには昨日行ったばかりだ。思えばここ最近は結構な頻度で会っている。そういえば、オレは一体いつからこんなにあのマンションに足を運ぶようになっただろう。
最初は確か冬の終わり頃。今日のように釣りをしていると、依久乃が通りかかった。見知った顔だったからと深く考えずに声をかけ、ただの思い付きで家に行き、飯を馳走になった。
この時色々あって、一緒に飲もうと買った酒を飲まずに帰った。数日後、それを飲むために、バイト先で適当に見繕った魚を手土産に持って行ったのが二度目。
雨宮と書かれた表札を確認し呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてドアが開き、依久乃が顔を出した。突然の来訪者に驚いたのか、表情に緊張が見られたが、オレの姿を確認すると、少しだけ緩んだように見えた。
「よう、依久乃。元気か?」
「……こんばんは、ランサー。どうしたの?」
「どうしたも何も、また来い、っつったじゃねーか」
「そういえば、そんな事も言った、ような」
「この間の酒、まだあるか?」
「ああ、あるよ。……というか、そのままにしてある」
「じゃあ一緒に飲もうぜ。手土産もある」
持ってきたビニール袋を掲げると、依久乃はチェーンを外してドアを開けてくれた。そのまま手渡すと、おもむろに中身を確認し、驚いた顔でこちらを見上げてきた。
「うわ、鰹だ。もしかして釣れたの?」
「これは違えよ。バイト先でもらってきた」
「なんだ、びっくりした。っていうか、バイトしてるんだ。サーヴァントなのに」
「してるぜ? 自分の飲み代くらい、自分で稼がねえとな」
「なるほど……。まぁ、いいや。ありがと。とりあえず、入って」
そう言って、依久乃はオレを招き入れた。
この間は不甲斐ない姿を晒したからと、その日は料理から洗い物まで全て依久乃がやった。借りを作りっぱなしでは納得が行かないらしく、手伝おうとしたら拒否された。その頑なさに少し心配になったが、手際よく作業をこなす姿は見事だったし、料理もどれも美味く、酒によく合った。
三度目も深い理由はなかった。その日はバイト先にムカつく客が来て口論になった。手を出したらクビになるので必死に堪えたが、ムシャクシャしたものが残り、こんな時は美味い飯と酒だ、そう思った時、真っ先に浮かんだのが依久乃の顔だったというだけ。
「よう、また飯頼むわ」
「頼むわ、って……そんなお店みたいに……。それに今日は、食材がちょっと」
「買いに行けばいいだろ、前みたいに。自分の分は払うし、酒は奢る。荷物持ちもするぜ?」
「まあ……それなら……」
一緒に歩いて近所のスーパーまで向かったが、“一緒に”と言えるギリギリの距離感で隣を歩かれた。流石に警戒されすぎじゃないかと思ったが、心を開いていない訳ではないらしく、スーパーに入れば普通に話しかけてきた。
「あ、今日は豚肉が安い。うーん、ここはベタに生姜焼きか、洋風でピカタなんかもいいなぁ……。ランサーは何か食べたいものある?」
「美味けりゃなんでもいいぜ」
「それが一番困るんだけど」
「んじゃ今回は生姜焼きとやらにして、もうひとつは次食わせてくれ」
何気なく答えたつもりだったが、依久乃は少し怪訝な表情を見せた。
「え、また来るの?」
「なんだ、ダメか?」
「いや、ダメじゃないけど……私なんかと食べるメリットは……」
「そりゃお前、一人よりは、二人で食う方が美味いだろ?」
依久乃はオレの言葉に軽く驚き、嬉しいけど困る、とでも言いたげな表情で「そうだね」と呟いた。少し泣きそうなようにも見えたが、一瞬の事でよくわからなかった。
この頃から、自然と依久乃の家に行く頻度が増えた気がする。週に一、二度、多い時は三度。そして気付けばはや三ヶ月。既にひとつの季節が過ぎ去ろうとしている。はじめの頃は驚いたり呆れたりしていた依久乃も、最近はもう突然の訪問に驚かなくなった。
空虚な日々の中で、依久乃の存在はちょうどいい潤いだった。飯は美味いし酒も付き合える、やや色気は足りないがそこそこの美人。一見無愛想だが、素直で可愛らしいところもある。特殊な事情を抱えているようだが、元より深入りするつもりはなかったし、普通に接する分には楽しい時間を過ごす事ができた。
だから、アイツの家に行く回数が誰と会う夜よりも多くなったのは、結果としてそうなったと言うだけ。そこに、特別な理由などない。ただ……育ったものは、あったのだと思う。
サーヴァントとして召喚される時、刹那に燃え尽きる命なら、生前よりもずっと純粋に戦いに生きられると喜んだ。仕えるべき主に仕え、たおすべき敵をたおす。栄誉だの嫉妬だの、後悔だの未練だの、惚れた腫れただの、そういうまだるっこしいものは抜きでいられると。
しかし、何の因果か長期の現界が叶ってしまった。この状況に疑問はあるが興味はなかったオレは、一日一日を楽しく過ごす事だけを考えた。しょせんは仮初の生だ。まして自分には、受肉を望むほどの情熱もない。消える時は潔く消えられるように、軛は作らず、誰とも付かず離れずの距離を保ち続けようとした。己の楽しみのために街に溶け込めど、特定の人間に深入りはしない。そうしていれば、誰かの心に残る事などないと、そう思っていた。
その考えの浅はかさに、ここに来て気付かされる。誰かの心に残らない事ばかり考えて、自分の心については考えていなかったのだ。
たかが三ヶ月、されど三ヶ月。オレの中に占める依久乃の存在が、それなりに大きくなっていたらしい。
初めの頃はぎこちなかった依久乃の笑顔は、回数を重ねるごとに少しずつ自然なものになってきた。特にオレが料理を褒めた時のはにかむような微笑みは、固い表情を貼り付けている普段との差も相まって一層可愛らしく見える。
それはオレがアイツの心を解きほぐしていると錯覚するには十分で、その上オレはそれを少なからず喜ばしいと思ってしまっている。だからこそ、アイツが自分のために笑わない事が、ひどくもどかしかった。
『ランサー、まさかアンタあの子の事……』
『そんな訳ねえだろ。アイツとはただの飲み友達だ。それ以上でもそれ以下でもねえよ』
遠坂凛の問いに答えた時、嘘を吐いたつもりはなかった。ただ、「それ以上でもそれ以下でもない」そう口にした時、心の奥には微かな違和感があった。
──ああ、そうだ。認めよう。オレは確かに、雨宮依久乃という女を、憎からず思っている。
だがそれは、恋愛感情と呼べるほどのものではない。ささやかな愛着、あるいは未熟な執着のようなものだ。
アイツに掻き立てられるのは性欲ではなく、どちらかと言えば庇護欲だ。いた事がないからわからないが、まるで妹や娘を見るような感覚とでも言うべきか。とにかく、女としてどうこうしたいという気持ちは不思議なほど起こらず、むしろそんな事はありえないとすら思っている。依久乃は初心だ。おそらく男との関係など一度も経験がないだろう。それに加えあの肌の敏感さは、闇雲に触れれば何かが壊れてしまいそうだ。そんな女を遊びで抱けるほど、オレはろくでなしではない。
もしもの話に意味はない。意味はないが、思考は勝手にそちらに走っていく。
この先、このまま交流を続けて、オレがある日突然いなくなったとき、依久乃はどう思うのか。飯をたかる鬱陶しい男がいなくなって清々するだろうか。それとも、悲しんだり、するのだろうか。
仮に悲しんだところで、きっとアイツは感情を出すのが下手だから、表面上はなんて事ないって顔をしながら過ごすんだろう。だが、どんなに心を殺しても、感情はなくなりはしない。だから、揺れ動くものはある。それを想うと、どうしようもなく胸が掻き乱され、釣竿を握る手に力が入った。
甲高い猫のような鳴き声に、ふと我に返る。海の方に視線をやると、ウミネコが数羽気ままに飛んでいた。穏やかな景色に身体が緩み、ゆっくりと息を吐き出した。相変わらず釣り糸が動く気配はない。長くなった煙草の灰が、落ちかけていた。
(ったく……ままならなねえモンだな)
灰皿代わりの空き缶に灰を落とすと同時に、オレは今後の方針を決めた。
アイツの家に行くのをやめる。はじまりがただの思いつきだったのだ。ならば、終わらせるのもただの思いつきでいい。
オレがいずれ消える事は確かだが、依久乃は今を生きる人間で、これから先にも未来があるのだから。今ここで潔く繋がりを絶ってしまった方が、きっとアイツのためになる。まだ関係は浅いのだ。時間が経てば、お互いがいない日常に慣れて行くだろう。
ああ、しかし。これが第二の生ならば、やりようもあるものを──
その未来 を想像する思考を、煙草と共に、空き缶に押し付けて消す。そして釣り道具を片付け、その日はまっすぐ対岸の閨 に帰った。
夏の匂いを含んだ爽やかな風が頬を撫でる。静かな波の音に混ざって、遠くから汽笛の音が聞こえた。胸ポケットから煙草を取り出すと、最後の一本。勿体ぶらずに火を着け、思い切り煙を吸い込み、大きく吐き出した。
釣果は芳しくなかった。鍛錬も兼ねているとは言え、こうも奮わないと退屈すぎて張り合いがない。まだ日は高いが、早々に切り上げてどこかに飲みにでも行こうか。そう思った時、依久乃の顔が浮かんだ。しかしアイツのところには昨日行ったばかりだ。思えばここ最近は結構な頻度で会っている。そういえば、オレは一体いつからこんなにあのマンションに足を運ぶようになっただろう。
最初は確か冬の終わり頃。今日のように釣りをしていると、依久乃が通りかかった。見知った顔だったからと深く考えずに声をかけ、ただの思い付きで家に行き、飯を馳走になった。
この時色々あって、一緒に飲もうと買った酒を飲まずに帰った。数日後、それを飲むために、バイト先で適当に見繕った魚を手土産に持って行ったのが二度目。
雨宮と書かれた表札を確認し呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてドアが開き、依久乃が顔を出した。突然の来訪者に驚いたのか、表情に緊張が見られたが、オレの姿を確認すると、少しだけ緩んだように見えた。
「よう、依久乃。元気か?」
「……こんばんは、ランサー。どうしたの?」
「どうしたも何も、また来い、っつったじゃねーか」
「そういえば、そんな事も言った、ような」
「この間の酒、まだあるか?」
「ああ、あるよ。……というか、そのままにしてある」
「じゃあ一緒に飲もうぜ。手土産もある」
持ってきたビニール袋を掲げると、依久乃はチェーンを外してドアを開けてくれた。そのまま手渡すと、おもむろに中身を確認し、驚いた顔でこちらを見上げてきた。
「うわ、鰹だ。もしかして釣れたの?」
「これは違えよ。バイト先でもらってきた」
「なんだ、びっくりした。っていうか、バイトしてるんだ。サーヴァントなのに」
「してるぜ? 自分の飲み代くらい、自分で稼がねえとな」
「なるほど……。まぁ、いいや。ありがと。とりあえず、入って」
そう言って、依久乃はオレを招き入れた。
この間は不甲斐ない姿を晒したからと、その日は料理から洗い物まで全て依久乃がやった。借りを作りっぱなしでは納得が行かないらしく、手伝おうとしたら拒否された。その頑なさに少し心配になったが、手際よく作業をこなす姿は見事だったし、料理もどれも美味く、酒によく合った。
三度目も深い理由はなかった。その日はバイト先にムカつく客が来て口論になった。手を出したらクビになるので必死に堪えたが、ムシャクシャしたものが残り、こんな時は美味い飯と酒だ、そう思った時、真っ先に浮かんだのが依久乃の顔だったというだけ。
「よう、また飯頼むわ」
「頼むわ、って……そんなお店みたいに……。それに今日は、食材がちょっと」
「買いに行けばいいだろ、前みたいに。自分の分は払うし、酒は奢る。荷物持ちもするぜ?」
「まあ……それなら……」
一緒に歩いて近所のスーパーまで向かったが、“一緒に”と言えるギリギリの距離感で隣を歩かれた。流石に警戒されすぎじゃないかと思ったが、心を開いていない訳ではないらしく、スーパーに入れば普通に話しかけてきた。
「あ、今日は豚肉が安い。うーん、ここはベタに生姜焼きか、洋風でピカタなんかもいいなぁ……。ランサーは何か食べたいものある?」
「美味けりゃなんでもいいぜ」
「それが一番困るんだけど」
「んじゃ今回は生姜焼きとやらにして、もうひとつは次食わせてくれ」
何気なく答えたつもりだったが、依久乃は少し怪訝な表情を見せた。
「え、また来るの?」
「なんだ、ダメか?」
「いや、ダメじゃないけど……私なんかと食べるメリットは……」
「そりゃお前、一人よりは、二人で食う方が美味いだろ?」
依久乃はオレの言葉に軽く驚き、嬉しいけど困る、とでも言いたげな表情で「そうだね」と呟いた。少し泣きそうなようにも見えたが、一瞬の事でよくわからなかった。
この頃から、自然と依久乃の家に行く頻度が増えた気がする。週に一、二度、多い時は三度。そして気付けばはや三ヶ月。既にひとつの季節が過ぎ去ろうとしている。はじめの頃は驚いたり呆れたりしていた依久乃も、最近はもう突然の訪問に驚かなくなった。
空虚な日々の中で、依久乃の存在はちょうどいい潤いだった。飯は美味いし酒も付き合える、やや色気は足りないがそこそこの美人。一見無愛想だが、素直で可愛らしいところもある。特殊な事情を抱えているようだが、元より深入りするつもりはなかったし、普通に接する分には楽しい時間を過ごす事ができた。
だから、アイツの家に行く回数が誰と会う夜よりも多くなったのは、結果としてそうなったと言うだけ。そこに、特別な理由などない。ただ……育ったものは、あったのだと思う。
サーヴァントとして召喚される時、刹那に燃え尽きる命なら、生前よりもずっと純粋に戦いに生きられると喜んだ。仕えるべき主に仕え、たおすべき敵をたおす。栄誉だの嫉妬だの、後悔だの未練だの、惚れた腫れただの、そういうまだるっこしいものは抜きでいられると。
しかし、何の因果か長期の現界が叶ってしまった。この状況に疑問はあるが興味はなかったオレは、一日一日を楽しく過ごす事だけを考えた。しょせんは仮初の生だ。まして自分には、受肉を望むほどの情熱もない。消える時は潔く消えられるように、軛は作らず、誰とも付かず離れずの距離を保ち続けようとした。己の楽しみのために街に溶け込めど、特定の人間に深入りはしない。そうしていれば、誰かの心に残る事などないと、そう思っていた。
その考えの浅はかさに、ここに来て気付かされる。誰かの心に残らない事ばかり考えて、自分の心については考えていなかったのだ。
たかが三ヶ月、されど三ヶ月。オレの中に占める依久乃の存在が、それなりに大きくなっていたらしい。
初めの頃はぎこちなかった依久乃の笑顔は、回数を重ねるごとに少しずつ自然なものになってきた。特にオレが料理を褒めた時のはにかむような微笑みは、固い表情を貼り付けている普段との差も相まって一層可愛らしく見える。
それはオレがアイツの心を解きほぐしていると錯覚するには十分で、その上オレはそれを少なからず喜ばしいと思ってしまっている。だからこそ、アイツが自分のために笑わない事が、ひどくもどかしかった。
『ランサー、まさかアンタあの子の事……』
『そんな訳ねえだろ。アイツとはただの飲み友達だ。それ以上でもそれ以下でもねえよ』
遠坂凛の問いに答えた時、嘘を吐いたつもりはなかった。ただ、「それ以上でもそれ以下でもない」そう口にした時、心の奥には微かな違和感があった。
──ああ、そうだ。認めよう。オレは確かに、雨宮依久乃という女を、憎からず思っている。
だがそれは、恋愛感情と呼べるほどのものではない。ささやかな愛着、あるいは未熟な執着のようなものだ。
アイツに掻き立てられるのは性欲ではなく、どちらかと言えば庇護欲だ。いた事がないからわからないが、まるで妹や娘を見るような感覚とでも言うべきか。とにかく、女としてどうこうしたいという気持ちは不思議なほど起こらず、むしろそんな事はありえないとすら思っている。依久乃は初心だ。おそらく男との関係など一度も経験がないだろう。それに加えあの肌の敏感さは、闇雲に触れれば何かが壊れてしまいそうだ。そんな女を遊びで抱けるほど、オレはろくでなしではない。
もしもの話に意味はない。意味はないが、思考は勝手にそちらに走っていく。
この先、このまま交流を続けて、オレがある日突然いなくなったとき、依久乃はどう思うのか。飯をたかる鬱陶しい男がいなくなって清々するだろうか。それとも、悲しんだり、するのだろうか。
仮に悲しんだところで、きっとアイツは感情を出すのが下手だから、表面上はなんて事ないって顔をしながら過ごすんだろう。だが、どんなに心を殺しても、感情はなくなりはしない。だから、揺れ動くものはある。それを想うと、どうしようもなく胸が掻き乱され、釣竿を握る手に力が入った。
甲高い猫のような鳴き声に、ふと我に返る。海の方に視線をやると、ウミネコが数羽気ままに飛んでいた。穏やかな景色に身体が緩み、ゆっくりと息を吐き出した。相変わらず釣り糸が動く気配はない。長くなった煙草の灰が、落ちかけていた。
(ったく……ままならなねえモンだな)
灰皿代わりの空き缶に灰を落とすと同時に、オレは今後の方針を決めた。
アイツの家に行くのをやめる。はじまりがただの思いつきだったのだ。ならば、終わらせるのもただの思いつきでいい。
オレがいずれ消える事は確かだが、依久乃は今を生きる人間で、これから先にも未来があるのだから。今ここで潔く繋がりを絶ってしまった方が、きっとアイツのためになる。まだ関係は浅いのだ。時間が経てば、お互いがいない日常に慣れて行くだろう。
ああ、しかし。これが第二の生ならば、やりようもあるものを──
その