わたしをおふろにつれてって
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「なあ、風呂沸いたぞ。今日はちゃんと寝る前に入れよ」
「やだ。入りたくない。もう寝る。疲れた」
まるでミノムシみたいに布団にくるまった依久乃を前に、ランサーは大きくため息をついた。
最近の彼女は連日残業で、家に帰れはするものの夜は遅く、疲れからそのまま倒れるように寝て、起きたらシャワーを浴びてすぐ出勤という生活が続いていた。そして今日は金曜日、仕事の方は一段落したのだが、そのせいで気が抜けてしまい、家に帰るなり服を脱ぎっぱなしにして、下着姿のまま、メイクも落とさずベッドに潜り込んでしまったのだ。
流石に心配になったランサーは、今日はゆっくりさせてやろうと、風呂を沸かして帰りを待っていたのだが。
「依久乃お前、明日出かけるとか言ってなかったか」
床に散らかった服を拾い上げながら、ランサーが尋ねる。
「あ、そうだ。友達と買い物……」
「じゃあ尚更、入らねぇとマズイだろ」
そう返すと、依久乃は黙り込んでしまった。わかってはいるけどやっぱり嫌だ、と表情だけで訴えている。痺れを切らしたランサーは、拾い上げた服を適当に畳んでソファに置き、おもむろにベッドに腰掛け、布団を引っペがそうと手をかけた。しかし、動かない。依久乃が中から掴んでいるのだ。
「ほら、ガキみてぇに駄々捏ねてねぇで、いい加減入れっての」
そう言ってランサーが依久乃の顔を覗き込むと、布団を握りしめたまま、視線を逸らした。そしてしばらく考え込んだあと、おそるおそるランサーを見上げて、「……ランサーが、お風呂場まで運んでくれるなら」と言った。
「ったく、しょうがねぇ奴だな」
ランサーはため息混じりにそう言って、すぐさま立ち上がり、器用に腕を滑り込ませてミノムシを抱き上げた。いきなり持ち上がった身体に驚いた依久乃は、ミノ……もとい布団から手を離してしまった。布団はそのままベッドにばさりと落ち、下着姿が露になる。
「えっ、ちょっ、待って。冗談だってば……! 嫌がるだろうからわざと言ったのに」
「何言ってんだ。お前を風呂場まで運ぶなんて造作もねぇよ。逆に何で嫌がると思ったんだよ」
「それは……」
問われて一瞬考え込もうと俯いた依久乃は、目に入った己のあられもない格好に、急に冷静に、そして恥ずかしくなり、思い切りもがき始めた。
「と、とにかく、下ろして……!」
「ダメだ。このまま連れてく。オレとしちゃベッドに戻られる方が厄介だ」
ランサーはもがく依久乃を動けないようにがっしりと掴み、より密着するように引き寄せる。すると落ちないようにとの防衛本能からか、依久乃は無意識に自分からしがみつくような形になってしまった。
その時、甘い匂いがふわりと鼻を掠めた。ランサーは半ば衝動的に、依久乃のうなじに鼻を埋めて犬のようにくんくんと匂いを嗅いだ。シャンプー由来の花の香りの奥に、それとは確かに違う種類の、濃厚な甘い匂いがする。肉体の分泌物、つまり「依久乃自身」の匂いだ。それは脳の奥の方へと直に届き、動物的本能を揺さぶり、情欲を煽る。
「……ああ、でも、この匂いが消えちまうのはちと惜しいな」
今すぐ首筋に舌を這わせたくなる衝動を堪えながら、ランサーは呟いた。耳に響いた声とかかった息に、依久乃の身体はびくりと震え、一瞬で指の先まで熱くなり、固まってしまった。
ランサーからは表情が見えないが、依久乃は恥ずかしさと驚きと照れでキャパオーバーしてしまっていた。頭の中をあらゆる言葉が駆け巡ったが、少しの間のあと最終的に口から零れたのは「……へんたい」という弱々しい罵倒だけだった。
何気ない発言に面白いくらい動揺した恋人に気を良くしたランサーは「おうおう、変態で結構だ」などと言いながら腕の力を強めた。それに応えるように強められた腕に、愛しさが込み上げる。
「疲れてる時に、そういうの、すごく困る」
「悪い悪い。最近ご無沙汰なもんでな」
思えばこの一週間、ずっと「待て」をされていたようなものだ。むしろ我慢したことを褒めてもらいたいくらいだとランサーは思ったが、あえて口には出さず、代わりにある思いつきを口にした。
「そうだ、オレも一緒に入るわ」
「えっ!?」
「疲れてるんだろ? 身体、洗ってやるよ」
「それって、明日起きられなくなる流れじゃ」
「そりゃお前次第だ」
「そんな理不尽な!」
相手に無理をさせてまで己の欲を満たすほど落ちぶれてはいないが、我慢の褒美としてこれくらいの戯れは許してほしい。だが、これ以上可愛い反応をされると、自分でもどうなるかわからない。そう思いながら、ランサーは依久乃を抱えたまま片手でバスタオルを二枚取り、浴室へと向かった。
「やだ。入りたくない。もう寝る。疲れた」
まるでミノムシみたいに布団にくるまった依久乃を前に、ランサーは大きくため息をついた。
最近の彼女は連日残業で、家に帰れはするものの夜は遅く、疲れからそのまま倒れるように寝て、起きたらシャワーを浴びてすぐ出勤という生活が続いていた。そして今日は金曜日、仕事の方は一段落したのだが、そのせいで気が抜けてしまい、家に帰るなり服を脱ぎっぱなしにして、下着姿のまま、メイクも落とさずベッドに潜り込んでしまったのだ。
流石に心配になったランサーは、今日はゆっくりさせてやろうと、風呂を沸かして帰りを待っていたのだが。
「依久乃お前、明日出かけるとか言ってなかったか」
床に散らかった服を拾い上げながら、ランサーが尋ねる。
「あ、そうだ。友達と買い物……」
「じゃあ尚更、入らねぇとマズイだろ」
そう返すと、依久乃は黙り込んでしまった。わかってはいるけどやっぱり嫌だ、と表情だけで訴えている。痺れを切らしたランサーは、拾い上げた服を適当に畳んでソファに置き、おもむろにベッドに腰掛け、布団を引っペがそうと手をかけた。しかし、動かない。依久乃が中から掴んでいるのだ。
「ほら、ガキみてぇに駄々捏ねてねぇで、いい加減入れっての」
そう言ってランサーが依久乃の顔を覗き込むと、布団を握りしめたまま、視線を逸らした。そしてしばらく考え込んだあと、おそるおそるランサーを見上げて、「……ランサーが、お風呂場まで運んでくれるなら」と言った。
「ったく、しょうがねぇ奴だな」
ランサーはため息混じりにそう言って、すぐさま立ち上がり、器用に腕を滑り込ませてミノムシを抱き上げた。いきなり持ち上がった身体に驚いた依久乃は、ミノ……もとい布団から手を離してしまった。布団はそのままベッドにばさりと落ち、下着姿が露になる。
「えっ、ちょっ、待って。冗談だってば……! 嫌がるだろうからわざと言ったのに」
「何言ってんだ。お前を風呂場まで運ぶなんて造作もねぇよ。逆に何で嫌がると思ったんだよ」
「それは……」
問われて一瞬考え込もうと俯いた依久乃は、目に入った己のあられもない格好に、急に冷静に、そして恥ずかしくなり、思い切りもがき始めた。
「と、とにかく、下ろして……!」
「ダメだ。このまま連れてく。オレとしちゃベッドに戻られる方が厄介だ」
ランサーはもがく依久乃を動けないようにがっしりと掴み、より密着するように引き寄せる。すると落ちないようにとの防衛本能からか、依久乃は無意識に自分からしがみつくような形になってしまった。
その時、甘い匂いがふわりと鼻を掠めた。ランサーは半ば衝動的に、依久乃のうなじに鼻を埋めて犬のようにくんくんと匂いを嗅いだ。シャンプー由来の花の香りの奥に、それとは確かに違う種類の、濃厚な甘い匂いがする。肉体の分泌物、つまり「依久乃自身」の匂いだ。それは脳の奥の方へと直に届き、動物的本能を揺さぶり、情欲を煽る。
「……ああ、でも、この匂いが消えちまうのはちと惜しいな」
今すぐ首筋に舌を這わせたくなる衝動を堪えながら、ランサーは呟いた。耳に響いた声とかかった息に、依久乃の身体はびくりと震え、一瞬で指の先まで熱くなり、固まってしまった。
ランサーからは表情が見えないが、依久乃は恥ずかしさと驚きと照れでキャパオーバーしてしまっていた。頭の中をあらゆる言葉が駆け巡ったが、少しの間のあと最終的に口から零れたのは「……へんたい」という弱々しい罵倒だけだった。
何気ない発言に面白いくらい動揺した恋人に気を良くしたランサーは「おうおう、変態で結構だ」などと言いながら腕の力を強めた。それに応えるように強められた腕に、愛しさが込み上げる。
「疲れてる時に、そういうの、すごく困る」
「悪い悪い。最近ご無沙汰なもんでな」
思えばこの一週間、ずっと「待て」をされていたようなものだ。むしろ我慢したことを褒めてもらいたいくらいだとランサーは思ったが、あえて口には出さず、代わりにある思いつきを口にした。
「そうだ、オレも一緒に入るわ」
「えっ!?」
「疲れてるんだろ? 身体、洗ってやるよ」
「それって、明日起きられなくなる流れじゃ」
「そりゃお前次第だ」
「そんな理不尽な!」
相手に無理をさせてまで己の欲を満たすほど落ちぶれてはいないが、我慢の褒美としてこれくらいの戯れは許してほしい。だが、これ以上可愛い反応をされると、自分でもどうなるかわからない。そう思いながら、ランサーは依久乃を抱えたまま片手でバスタオルを二枚取り、浴室へと向かった。
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