静かな夜
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静かな人と過ごす、静かな夜が好きだった。
頭の中に響く声がうるさくて眠れない夜は、あの人の部屋を訪れた。
「なんだ、また眠れないのか」
あの人は表情をひとつも変えることもなくそれだけを言うと、読んでいた本を閉じ、机の灯りを消し、ベッドに手招きする。私は差し出された腕に頭を擡げる。
眠れない理由を聞くことはなく、ただ黙って傍で眠ることを許してくれた。
真っ暗な部屋に響くのは、二つの小さな息遣いと、寝返りを打つ時の僅かな衣擦れの音だけ。ずっとうるさかった頭の中の声も、あの人のそばでは鳴り止む。
本当に、静かな人だった。
心臓の音、さえも。
あの人の腕の中で、再び睡魔が訪れるのを待っている時間が好きだった。
私が成長しても、頭の中の声が鳴り止むことはなかった。
私が成長しても、変わらずあの人の部屋に通い続けた。
私が成長しても、変わらずあの人は静かなままだった。
静かな人と過ごす、静かな夜が好きだった。
ある日、あの人は帰ってこなくなった。
何日待っても、帰ってこなかった。
あの人は帰ってこないのに、眠れない夜は変わらず訪れる。
だから今日も、あの人の部屋を訪れる。
あの人の部屋では、声が止むから。
静かな人の静かな部屋は、持ち主がいなくなっても変わらず静かだ。
それなのに、いっこうに眠れないのはどうしてなんだろう。
日に日に薄れて行くあの人の匂いに包まれながら思う。
今日も静かな夜には変わりない。
けれど、あの人がいた静かな夜は、もう二度と来ないのだと。
頭の中に響く声がうるさくて眠れない夜は、あの人の部屋を訪れた。
「なんだ、また眠れないのか」
あの人は表情をひとつも変えることもなくそれだけを言うと、読んでいた本を閉じ、机の灯りを消し、ベッドに手招きする。私は差し出された腕に頭を擡げる。
眠れない理由を聞くことはなく、ただ黙って傍で眠ることを許してくれた。
真っ暗な部屋に響くのは、二つの小さな息遣いと、寝返りを打つ時の僅かな衣擦れの音だけ。ずっとうるさかった頭の中の声も、あの人のそばでは鳴り止む。
本当に、静かな人だった。
心臓の音、さえも。
あの人の腕の中で、再び睡魔が訪れるのを待っている時間が好きだった。
私が成長しても、頭の中の声が鳴り止むことはなかった。
私が成長しても、変わらずあの人の部屋に通い続けた。
私が成長しても、変わらずあの人は静かなままだった。
静かな人と過ごす、静かな夜が好きだった。
ある日、あの人は帰ってこなくなった。
何日待っても、帰ってこなかった。
あの人は帰ってこないのに、眠れない夜は変わらず訪れる。
だから今日も、あの人の部屋を訪れる。
あの人の部屋では、声が止むから。
静かな人の静かな部屋は、持ち主がいなくなっても変わらず静かだ。
それなのに、いっこうに眠れないのはどうしてなんだろう。
日に日に薄れて行くあの人の匂いに包まれながら思う。
今日も静かな夜には変わりない。
けれど、あの人がいた静かな夜は、もう二度と来ないのだと。
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