09. 劫火の中に紅
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戦いというものを、知らなかった時は自分が守られているという自覚すらなかった。
レガーロにいる時は。
レガーロを離れて、知らない世界を見て。
汚い世界をみて、どうしても許せなかった時…――それを正す力が欲しいと願った。
セナを助ける力もそうだけど、そこに至るまでに出来ることをしたいと。
そして失う。
力が無かったあたしは……1つの命と引き換えに、今日も生きている。
09. 劫火の中に紅
藤色の少女が針を指の間で扱い、ユエに近付こうとしたその時。
空間は熱気に包まれた。
爆発を起こし、炎を取り巻く少女と倒れ込んだ1人の男…。
背後で見ていたアルトは、翡翠色の瞳を真っ直ぐにユエへと向ける。
「――…来たか」
分かっていた、ともとれるその発言で、今まで動かなかったアルトが壁から背を離し、ユエを見つめた。
一方の一番近くにいた藤色の髪の少女――ツェスィは、ただユエの背を見つめながら構える。
「空気が変わりましたね」
のほほんと淑やかな空気を見せながら、針を持つ手を下ろすことはなかった。
パチッ、パチパチ、と炎が音を立てて燃える空間で、焦りを見せる者は誰もいない。
12人の敵と、対峙をしたユエの目付きが――変わる。
「オーラコンドゥシャン・レターニタ」
紅色の光を、ダンテの傷にあてる。応急処置にすらならないが、止血をする。
完了したのを見届けてから……彼女は静かに鎖鎌に手をかけた。
水色の中心にいた少女が無表情と無言のままユエを見る。
同時に横に来たのが後ろで構えていたファリベルだった。
「リア。空気が変わった。私が行くわ」
リアの横を抜けて、前に出たファリベル。
ラディとイオンは元の位置まで戻り、立ちあがったユエの纏う空気の変化に目を細めた。
「イオン、おねえさん怒ったんじゃない?」
「えー、そうかなー?」
飄々と反省を見せないイオン。
ラディが溜息をついた。
「―――……目的は何だ」
ユエが視線を倒れたダンテに向けたまま、小さく呟いた。
答えたのは水色の瞳の少女……――リア。
「はぁ…。だから侵入者の排除だって言ってるでしょ」
溜息混じりに告げられた言葉。
ユエの表情が険しさを増す。
「言葉の意味を悟れよ、なんであたしがわざわざ侵入者になるようなマネしてるか思い当たる節があるだろ」
それはまるで青いの炎のようだった。
高温で燃える静かな炎のような印象と殺気に、アルトが正面で見つめつつ――武器に触れた。
「タロッコだろ?」
リアが返す。
ユエが鼻にかけて笑った。
「わかってるなら……――」
見開かれた瞳は……――巷で最強を謳った紅色だった。
「返せよ」
もう1度、爆音が響いた。
投げかけられた炎は、扉の入り口付近を襲う。
全員が回避で飛ぶ状態になった時、ユエが踏み切った。
「まったく」
呆れを見せたシノブが踏み切る。
先程の倍の速さを繰り出したユエが真っ先に捕えたのが、イオンだった。
「あーやっぱり怒ってるよねー?」
「轟け…」
「エトワールぅー」
「鳴音」
イオンが銃口をもう1度向けた時、ユエが同時に呟いた言葉。
一点から波紋で広がるように作られた音響の壁により、イオンの弾が弾き返される。
「えーっ?」
「イオンッ!」
イオンが跳ねかえって来た弾に驚きを見せているもつかの間、返された弾が彼目がけて飛んでいく。
リボンの少女・エリカが彼の名前を呼び注意を促したが、彼は到底気にはしていなかった。
このままじゃ……とエリカが自分の武器を手に取った時、イオンの横に1つの影。
「イオン、真剣にやらないとケガするよ」
「あ、シノブくーん~」
「彼女、強いから」
目にも止まらない速さで出てきたシノブが、イオンを連れて軌道から離れた。
真っ直ぐイオンたちの元まで突っ込んでくるユエとの間に入ったのが、シノブと同時に動いたタトゥーの男――ジジ。
「こりゃ、相当な報酬が出るよな?」
「貫け…ッ」
「こんだけ動けばよォッッ!!」
飛ばされた雷を避けて、ジジが鍔の無い剣を振るう。
刃を交えることになったユエは、鎖鎌の刃ではなく、思いっきり引いた鎖でジジの剣の相手をした。
「っと…」
「退け…ッ!」
「暴走したままどこ行く気だよ?」
「…ッ」
「イオンをやった所で、あのオッサンは助からねェんだ。大人しく捕まっとけって」
「お前の報酬のために動くのはまっぴら御免だ…ッ!」
「かわいくねーなぁ」
キーンっ…と音を立てて、刃と鎖が離れ、距離をとる。
次にユエの背後から襲いかかったのは、1度右手を持って行かれたワイヤーだった。
「っ…!」
「僕のワイヤーを切るなんて、いい度胸だね」
革の手袋で操られるワイヤーを避けつつ動けば、今度は前からペティナイフが飛んでくる。
「サクラ、さっさと終わらせてお茶会の続きにしよ?」
「エリカ…」
「なら私も混ぜてくれるかな?」
ワイヤーを扱うサクラとの乱戦に参戦したのは、ペティナイフを扱うリボンの少女エリカ。
同時にまだ手だしはしていないが、対峙を見せるのは鞭を構えたファリベル…。
「早くしないと紅茶がダメになるし…」
「…」
数が多すぎる…とユエが顔をしかめる。
だが、ここで負けるわけにはいかない。
退路を作るために色々考えていたが…―――。
「はぁぁあ!!!」
女性陣3人の相手にユエはもう一度、フェノメナキネシスの力を発動させた…。
「燃えろ…ッ」