56. 破壊の音を
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「シャロス側の守護者……」
目の前に現れた2人の男。
ジョーリィが読んでいた筋は正しかったことがこの場で証明される。
それを、オリビオンの守護団は把握しているのだろうか。
「で、ユエを渡してもらおうか」
デビトとルカが対峙しているラルダとリュアルの顔を鋭く見つめた。
相手も本気のようだ。
だが居場所を知っても知らなくても、ユエを簡単に譲り渡す気はない。
それは剣と拳を構えたアッシュとパーチェも同じことだった。
「なーんだよ、やる気満々じゃねぇか」
「そのようだな」
戦う姿勢を崩さない4人に、ラルダとリュアルも気合いを入れ直して構える。
壊れることを黙って見ている程、弱くない。
黙って見ていられる程、強くもないんだ。
56. 破壊の音を
「ラルモニア・デッラ・ルーチェ!」
ルカが放つ力。
負けじとデビトも踝を輝かせて、アッシュが剣を振りかざすと同時に姿を消した。
「そーいや、こいつらも異能者か」
「そうだったな」
守護団も、アルカナファミリアも。
どちらもタロッコの力を宿している。
戦いが乱戦になることは目に見えていた。
「だが、勝てない」
リュアルが言い切った。
ラルダと2人、特にどちらが誰を倒すなどは決めていないようで、彼らは近くに居た順番で攻撃を開始した。
ラルダが再びアッシュと剣を交えるので、ルカがカバーし、リュアルに体当たりをしたのがパーチェ。
姿を見えなくし、行方をくらませたデビトは静かに銃口を真っ直ぐ構える。
「トラ・コーポ・スコンパリーレ」
放つ紫の光。
引き金をリュアルに向けて、引いた。
同じくして片手はラルダを狙い動いたが、片方に違和感が…。
「―――…、」
撃った弾の軌道が…ズレた気がした。
なんだこの感覚は。
ズレた軌道を描いたのは、リュアルの方だけ。
ラルダを狙った弾はきっちりと彼の行動を妨げる。
同時にアッシュを捕えそうになることも多々あったが。
「あんのヤロ…ッ」
「あっぶねーな!」
ラルダが反論しながら姿の見えないデビトをきょろきょろと探していた。
アッシュが弾を避けつつ、先程のことを反省してねーな!?と苛立ちを感じながら、いったん引いてみた。
ラルダと距離が生まれ、デビトが彼を狙いやすくなる。
もう一度ラルダに向けて弾を何十発か放ち、踊るようにしてラルダがそれを避けた。
だが、やはり片方……パーチェが相手にしているリュアルは―――。
「デビトォ……!?」
軌道がずれて、デビトの弾が当たらないことに違和感を覚えたパーチェ。
自然と声をあげて彼を呼んでしまったが、リュアルには弾がズレる理由がよく分かっているので口角をあげるだけ。
「(なんでだ……っ)」
「デビト……」
ルカもナイフと錬金術を駆使して後方からフォローするものの、デビトと同じ違和感を感じていた。
「っ…!」
リュアルに向けて放つナイフが、僅かに狙った位置からずれる。
これは…―――。
異変に気付き始めた彼ら。
リュアルは確実に笑みを浮かべて、パーチェを攻撃し続けた。
「来い」
パーチェが声を上げながら、リュアルに殴りかかる。
蹴りや拳がいいところまで及ぶが、僅かにリュアルに当たることがない。
それは傍から見れば、リュアルが交わしているようにも見えるのだが…―――。
「なに…っ?」
僅かに届きそうになった拳。
でも、当たらない。
だがパーチェの指先はその時―――彼のトリックに触れていた。
「…―――っ?」
どこか違和感。
ただ交わされているだけじゃない。
これは―――彼は、何かある。
「…っ」
「きちんと動け」
「な…ッ」
同じメガネをかけた者同士の戦い。
リュアルがパーチェと同じように体術だけで応戦する。
パーチェの違和感を感じて隙を見せたその一瞬で、リュアルは彼を全力で蹴り飛ばした。
「パーチェ!」
ルカがやばい…!と彼の前に錬金術の結界を出現させた。
それを見たリュアルが、目を細める。
「錬金術師か」
「…っ」
「オリビオンの人間と比べたら、どちらが上だろうな」
攻め込むように、今度はルカの方へと向かってくるリュアル。
デビトも――リュアルの方が手強いと考え――彼に向けて銃を放ち続けたが、弾丸が1発も当たることはなかった。
「一体どーなってやがる……ッ」
デビトが1度アルカナ能力を解いて姿を見せる。
ラルダと一対一で剣同士で刃を交えていたアッシュは、デビトやルカたちの声を聞いて笑い続けるラルダに眉間にシワを寄せた。
「何がおかしいんだ」
「いや、全部でしょ」
「は?」
「当たるわけねーんだよ、あんな攻撃がリュアル相手に」
「…」
「俺達は悪魔と契約してんだぜ?」
吐き出された重要なキーワード。
誰もが“悪魔?”と首をかしげそうな投げかけだったが、アッシュの中では1つの線が繋がる。
いつか、ライオンを追いかけている時のユエが調べていたこと…―――。
“ロベルト”
“悪魔と人間の契約”
「―――…なるほどな」
つまり、こいつらは異能者だ。
その強さを持つからこそ、あのシャロスが手元に置いているのか。と納得が出来た。
「俺らもお前らアルカナファミリアや守護団と同じように、ただの人間じゃねぇ」
「…」
「厄介な相手なんだよ、俺らも」
自画自賛かよ!!とアッシュが剣を振りかざした。
ラルダには攻撃が当たる。
ということは、“軌道がズレる”、“攻撃が当たらない”というのはリュアルの能力。
コイツはまた別で何かを持っている、と理解する。
たしかに厄介だ。
再び一旦距離を取ろうとした時のこと。
「―――ッ!」
背後から風を切る音。
風が鋭利に裂かれる音。
振り向くと同時に気配のない人形がアッシュに襲いかかった。
「女…ッ」
「殺していいんだよぉ…」
アッシュに斬りかかったのは、あの西洋人形。
真っ直ぐいった先にいる少女デルセの姿が確認できた。
「あははは」