50. 悪魔の宿主と契約者
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「残念な人たち」
碧い光の元から現れたのは、時空を超えてシャロスの島からやって来たであろう、5人の者。
デルセから発された言葉は、誰もの耳に張り付き、理解させることを苦しませた。
「ユエが手に入ったら、守護団はみんな殺していいんだって…」
50. 悪魔の宿主と契約者
デルセの言葉に反応を見せたのは、ツェスィ。
もちろん、他のメンバーも言葉は聞こえていた。
ジジは蹲り、数え切れないくらいの傷を作り、止まらない血に奥歯を噛み締めた。
「くそ……っ」
「…ッ」
ジジに寄り添いながら、デルセが発した言葉にファリベルも表情を険しくした。
こんなのオカシイ。
話が違うではないか。
「どうゆうつもり……」
「そのままの意味さ」
「お前らは駒なんだって」
リュアルとラルダがファリベルの投げかけに、嘲笑う。
まさかコイツら、本当に気付いていなかったのか…?というように。
「シャロス様に、お前らを本当に殺していいのかは聞いてない。が、正直ユエが手に入れば用済みだろ」
「ふざけんなッ!!!」
叫びをあげたジジの声に、デルセが口角をあげるだけではおさまらず、声をあげて笑いだした。
手元の人形をギュウギュウと抱きしめながら、壊れたように笑いこける少女…。
誰もが笑みを浮かべる。
「残念…残念…守護団…あはははははははははははははッ」
「…ッ」
「救えるわけない……。アルベルティーナが救えるわけない……」
「え…」
「ユエが手に入れば、王女が助かるだなんて思ってるのは……大間違い」
西洋人形の瞳がギョロギョロと動き、不気味さを更に演出させた。
笑い続けるデルセに、エルシアとレミが顔を合わせて、守護団の反応を楽しんでいる。
「ユエが解き放つのは、バレア・フォルド」
「え…―――」
まさか、戦いの中の会話に自分の名前が出てくるとは思っていなかったので、それなりに距離があるところから様子を見ていたユエが目を見開く…。
ユエが……封印を解く―――?
「ユエが封印を解けるのは、アルベルティーナじゃないんだよ」
「ど…どうゆうことよ…」
さすがのアロイスやイオンも驚いている。
悪い予感がしていたんだ。
シャロスに従っていたとしても、姫が甦らなくて…自分達はこのまま生きて行くんだろうと。
彼女にお礼も出来ず、与えられた使命を全うすることも出来ず。
だが、もっと最悪のシナリオが待っているとしたら。
「鼓動の神殿」
リュアルが吐き出した言葉は、この国の廻国がある神殿のことを言っている。
今も、バレア・フォルドがウィル・インゲニオーススによって封じ込められている場所。
2人の最後の戦いが起きた舞台…。
「あそこでウィル・インゲニオーススが発動した錬金術を解けるのは、発動者……つまりウィルから見て三親等までの血縁者」
「…っ」
「実質、今アイツの封印を解けるのはヴァロンだけだ。だが…解けるんだよ、ユエなら」
「…ッ!?」
「アイツが継いだ、フォルドの血なら…」
調査済みのメモを取り出して、暗記をしていないラルダが呟く。
覚えとけよ、というようにリュアルが呆れていたがラルダのメモは正しく綴られていた。
そして告げられた言葉に、ユエはその場で身を凍らせる。
「それに、そのヴァロンって男?死んだ説が高いみたいだからな」
「…っ」
「お前らもよく知ってる男だろ?」
ラルダの言葉に、守護団全員が言葉を詰まらせた。
それは、沈黙の肯定。
「ヴァロン・インゲニオースス」
エルシアが繋げた言葉の先。
レミが隣で守護団の顔色をじっくりと観察する…。
「迷宮都市・オリビオンの王族を守る為に集った13人の守護団」
「…」
「オリビオンが誇る天才錬金術師ウィル・インゲニオーススが生み出した力……“タロッコ”。その力と契約をし、オリビオンの現状を立てなおす為、なにより王族の血を途絶えさせない為…王女・アルベルティーナを守る騎士」
「そのリーダーとされた男……ヴァロン・インゲニオースス」
「知ってるはずよね?だって言うならば、アナタ達をまとめる男だものね」
誰も返事はしなかった。
だが、それは事実。
否めない…事実…―――。
「ヴァロンがいたら、未だ少しマシだったかもね」
「―――…の名を……」
「その男は強いらしいですし、もう少し団結力もマシだったんじゃないですか?」
「出すな……」
「ジジ…ッ」
小さく、ぽつりぽつりと…ジジが顔を伏せたまま、返す…。
「ヴァロンほどの戦いのスペシャリストはいないでしょう?」
「その名を出すなッッ!!!!!」
ジジの声が上がると同時。
呪文は唱えていないのに、城門付近が炎に包まれる。
ファリベルも、ツェスィも、彼の体に負担がかかることに気付いていた。
すぐさま止めようとしたが…。
「ヴァロンがいなくても…ッ」
「ジジくーん…」
「ジィジ…」
「姫は取り戻すッッ!!!!」
ツェスィが駆け寄りジジに止めるように言うが、彼は聞かなかった。
「あら。ヴァロンさんが不在なのは、仲間内でもめたからかしら?」
「!」
レミの言葉が、更に彼の逆鱗に触れる。
「でも、部下にこれだけ嫌われてたら、誰でもいやですわよね。一緒にいるのは」
「…っ」
【お前なんて消えちまえ!!!!!】
【ジジ……】
【消えろッッ!!!二度と俺の前に現れるな!!!】
【…】
【お前が……お前が代わりにいなくなればよかったんだ!!】
【―――】
【ヴァロンなんて消えちまえぇぇぇッッ!!!!】
甦る記憶。
それは今も彼を、ジジを苦しめ続けている……記憶―――。
「はぁぁああああああああッッ!!!」
「ダメジジッ!!」
力を最大限に使おうとし炎を強めたが、どうしてもエルシアとレミが最前線にいる5人には通用しない。
増した火力は、あたりの廃墟を燃えつくしていくだけ。
止めるに止めようがなかった。
「あーあ……」
イオンが驚きつつ、どうしようかなーと思いながら、表情に笑顔がない。
理由は1つ。
「でもージジくんの気持ち、わかるなぁ~」
「イオン…っ」
「おれも怒りたくなってきたぁ~」
「え?」
ジジの炎を見て、遊べるなと思ったデルセがレミの背中に隠れながら、握っていた人形を離す。
意志を持ち、動きだしたそれは炎の中で成長し、こちらに冷たい視線を向けてきた。
「っ…第3のカード、リンペラトリーチェ…ッ!!」
動き始める人形の視線がファリベルを捕える。
イオンがファリベルが使いだした力を見て、フォローに入った。
「レア・ダハマクアノ・ウトン・ホテサ」
「偉大にして絶対なる権力者よ。今、汝と契約せし我に汝の力を…ッ」
ファリベルの右脚―――腿が光を放つ。
女帝の力が解放されようとした寸前。
動きだした人形に力を使ったのは、イオンが先だった。
「“ファリベルちゃんとジジくんが、攻撃される”」