49. 秒速0.1cm
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ユエがいないと知ったフェリチータとノヴァ、コズエは辺りの森を駆け回り、ユエの居場所を捜していた。
リベルタがちょうどアッシュの部屋に着いた頃、フェリチータとノヴァもオリビオンにあがった光を捕える。
「なんだ…っ」
「光…?」
青い光が、一直線に空へと延びる。
あの麓にユエがいるとは、ファミリーの誰もが思わなかっただろう。
そして、あの光が新たな刺客を送り込んできていることにも。
49. 秒速0.1㎝
ジジを先頭にし、アロイス、イオン、ファリベル、ツェスィが城門の入り口へと姿を現した。
碧い光が一直線に空へと伸びて、その光が生まれた個所があのコヨミが生み出した時空のゲートだと気付く。
「コヨミのゲート……ッ!?」
光をあげ、だんだんと落ちついてきた碧。
一番前で構えていたジジが消えゆく光の中から出てきた人物を捕え…動きを止めた。
アロイスやツェスィも、2つの影に瞳を揺らめかす。
「いやぁー、いい時空旅行だったなあ」
「…重い」
現れたのは、2人の男。
見覚えはなかったが、2人目に出てきた男の腕に抱えられていたのは、間違いなくジジ達の仲間だった。
「ラディ…… !」
ジジが目の前に、現れた相棒に目を疑う。
攫われたはずじゃ……と思った所で、この2人が敵であると即座に判断する。
イオンも笑ってはいるものの、確かにラディを捕えた男たちの空気を感じていた。
「ジジくーん、あの人たちさー、あのエルシアとかレミとかいう子たちと同じ空気だよー」
「みたいだな……」
ジジが構えた手を解かないでよかったと思いながら、目の前の男2人を睨む。
ちょうどいい所に出くわしたなと、ファリベルも手の装備を進めた。
目の前、出てきた先にいた守護団の姿を確認すると男2人は口角をあげる。
ツンツンの黒髪の隙間から覗かせる大きな瞳が印象的な男。
もう1人はラディを抱えている、知的なメガネの男だ。
「おうおう、しょっぱなから出てきてくれたな!守護団さんたちよッ」
「ラルダ、調子に乗る前にこの子をどうにかしてくれ。俺の腕が折れそうだ」
「んだよ、リュアル。そんなガキ、どこかに投げとけよ」
「そんなことは出来ない。一応彼はまだ子供だ」
「変なとこまで律儀だな」
目の前で黒髪の男と、メガネの男のやり取りを見ながらジジが唇をかみしめた。
メガネの男に抱えられたラディ。
気を失っているようで、まったく反応がない。
「ラディ…ッ」
「ジジ、早まっちゃダメよ」
「アロイス…っ」
今にも飛び出しそうなジジの真横にきたアロイス。
反対側には、イオンの姿。
背後には支援する、というようにツェスィとファリベル。
そんな5人を見て、目の前に現れた2人の男はラディを地面にゆっくりと起き、こちらに対峙を示した。
「おめーらか?守護団ってのは」
「だったらどうした」
黒髪のラルダと呼ばれた男の問いかけに、ジジがアロイスに抑えられながら答える。
隣の知的なメガネ―――リュアルと呼ばれた男はクイッとメガネをかけ直し、顔を上げた。
「5人……これでほぼ半分か。大したことはなさそうだな」
「なんですって?」
リュアルの言葉に反応を示したのは、ファリベル。
挑発にのるつもりはなかったが、今の言葉は聞き捨てならない。
「それよりもー、ラディくんの身柄をどーして確保してるのー?」
イオンがまったく侮辱されたことを気にしていないように、リュアルに聞き返す。
ファリベルが話が逸れたので黙ってその先を待っていると、黒髪の男が答えた。
「なんでって、俺らがエルシアやレミ、デルセの仲間だからって言えばてっとり早いか?」
「!」
その言葉に、甦るのは先刻の伏線…―――。
【帰らずの狼】
【存在しなかった者】
ジジとイオンが言われた投げかけを思い出して口を閉じ、顔を険しくさせた。
「おめーらがあんまりにも遅いからさぁ…。ちょーっと様子を見に来たんだ」
「…」
「本当にユエを捕える気があるのかどうなのか…さ」
ジジとイオンは、この目の前の2人…―――ラルダとリュアルが、一体なんのことを指しているのかが分かっていた。
だが、2人とも初対面のアロイス、ファリベル、ツェスィは全く話が読めずにいた。
コイツらの狙いがユエということから、彼らが誰の手先であるのかはわかっていたが。
「それはお互いさまだよー。君たちも姫様を起こす気が無いのに、よく言うよねー」
イオンにしては、珍しい反論だった。
ファリベルも驚きつつ、対峙する2人から視線は逸らさない。
「そーゆー人が、自分たちの要望だけを着き通すのはおかしいよー」
「イオンにしてはよく言うじゃねぇか」
「正論だわ」
ジジとアロイスがのっかれば、イオンは満面の笑みで「それほどでも~」なんて喜んでいる。
“そこまで褒めてないわ”と思いつつ、ジジはついに剣を抜き放った。
「なんでもいいが、ラディは返してもらう」
「は?何言ってんだよ。コイツはユエと交換だってエルシア達が伝えたはずだろ」
「目の前に目的があるのに、ちらつかせて褒美を預けられるようじゃ何にもやる気なんて出ねえんだよ」
今すぐ金払え、と手を出す勢いのジジ。
アロイスもいつでも銃を引きぬけるように構えていた。
「アナタたちの目的は何?」
事情を知らないファリベルが尋ねる。
するとリュアルと呼ばれる男が鼻にかけて笑いながら、口を開いた。
「ユエの確保さ」
「…」
先程までアロイスと話していたファリベルが、また“ユエ”という存在か…。と目を細めた。
たかがあの少女の存在のせいで、ラディを傷つけるわけにはいかない。
「そこのタトゥーの男と赤頭には伝えたはずだぜ?」
「えー?おれ赤頭―?」
「コイツはユエと交換だって」
ラルダがラディの腹につま先をあてながら言う。
ツェスィが顔をしかめる。
アロイスもいい気分はしなかった。
「でも待っててやってもで全然連れてこねーしさ、お前ら」
「いい加減、失態連続の守護団の汚名を返上してほしいものだ」
ラルダとリュアルが顔を見合わせて笑う。
冷静に反論したのは、アロイス。
「あらやぁだ、いい男の条件ってのはオンナのワガママに付き合えるものじゃないとダメよ…?」
「そうね。アロイスの言う通りだわ」
ジジよりも前に出たのは、意外にもファリベルだった。
「姫様という目的関係なく、ラディを……私達の仲間を傷つけるのは、筋が違う」
「うちの可愛い天使を傷つけるなんて、許さないわよ」
アロイスも笑ってはいたが、目が本気だった。
この2人は、綻びに気付いている。
背後で針を指と指の間で構えたツェスィも、幾分か前から心にあった事実。