23. ノンワール
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「また逃げられたようですね」
大きな門をくぐった先、真顔で碧い視線がリア達守護団を迎え入れた。
「コヨミ……」
「姉さんが邪魔をしたと聞きました」
門を跨いだ道の中心に立ち、彼ら守護団を待っていたのは、こちら側の人造人間・コヨミ。
彼女はコズエの双子の妹。
そして守護団側についている。
「知ってるなら、お前の姉貴どーにかしろ」
ジジがコヨミを抜き、だるそうにして先を行く。
ラディも姿を少年に戻してジジの背を追っていた。
アルトとイオン、シノブが同じペースで進んでいけば、コヨミが溜息混じりに告げてきた。
「シャロス様がお呼びです。迅速な対応をお願いします」
出てきた名前に、守護団は顔をしかめた。
「なによ、また呼んでるわけ?アタシたちも暇じゃないのよ?」
アロイスが呆れたように告げたが、コヨミは動じることなく続けた。
「今後の行動の仕方について、お伝えしたいことがあるとのことです」
「…」
「今後の行動って…」
「それに、まずシャロス様にユエに逃げられたことをご報告しなければなりませんしね」
真顔で、そして淡々と感情を込めることなく告げたコヨミに、サクラが顔をしかめた。
「僕はいかなぁい」
「サクラ……」
「疲れたしぃ、勝手にやっててぇ」
サクラがそのままスカートを揺らして奥へ消えていくので、彼女は強制的に時代はこえないことになる。
次にエリカとファリベルも顔を見合わせてから、首を振った。
「特に全員必要な招集でもないんでしょう?なら、私もパス」
「私もいいや…」
「あ、ちょっと…」
ラディが一応引き留めようとしたものの、2人もサクラの後に続いて行ったので、どうすることも出来なくなってしまった。
「しょうがないなぁ…もう…」
ラディが“僕が行くよ”と言えば、コズエは100年後に繋がるようなホールを作り始める。
「!」
ラディが引き受けた役目を見守りつつ、出来あがろうとしているホールに足を突っ込んだ者がもう2人。
1人はアルト。
「アルト…」
「…」
そしてもう1人が…
「ツェスィ」
「わたしもご一緒します、ラディ…♪」
アルトとツェスィが付いてきてくれることで、3人となった役目。
コズエは何も問題なさそうに、ホールから3人を100年後の世界に引き飛ばしたのであった…。
シノブとリアは迷ったものの、3人の姿を見送り…零す。
「イヤな予感しかしないのは……僕だけかな」
「……」
偵察に出ているウタラ、そして我関せずというようにどこかへフラっと消えてしまったアロイス。
そして、ここから全てが崩れ始めることも。
まだ何も、予測はつかなかっただろう。
23. ノンワール
コズエの伝承の語りから一夜が明けた。
わかることを伝えてもらい、そして受け入れたファミリーの一同は今後、自分達がどうするべきなのかを考えていた。
だが、出来ることと言っても、事情が事情。
自主的に自分達は何が出来るのだろう?と考えては、ただ時間が過ぎるだけ。
「なんか…すごいことになっちまったな…」
リベルタが小さく零せば、パーチェとルカが不安そうな顔で頷く。
「そうですね……。まず時を超えたという時点で驚き、落ちついて現状を理解する時間がなかったですが」
「まさか、100年前の世界を助ける事になるなんてね」
パーチェは比較的いつも通りの声だったが、どこか俯き加減だ。
「助けるって……どうすればいいんだよ。あの守護団を倒せばいいのか?」
「本当にそんな単純なことで、救われるのでしょうか……」
ルカがリベルタの言葉を続ければ、パーチェも顔をあげ2人を見るしかない。
「この戦い……根本をどうにかしない限り、解決策が見えない気がします」
「それって、ウィル・インゲニオースス達をってことか?」
「いや、どちらかというと、その2人が争う原因……戦争が起きる理由になった“廻国”というものの方です」
ルカの言葉は的を射ている。
廻国というものの正体。
どうすれば解禁されるのか。
そしてどうすれば封印し、この戦いを終わらせられるのか。
「もっと詳しく知る必要がありますね」
ルカが立ち上がり、この100年前の時代について知ろうと書庫を目指そうとする。
ただ見送るだけではなく、リベルタとパーチェも頷き合い、立ちあがった所だった。
ガチャリ、と音をたてて扉の向こうから部屋に戻って来た人物がいる。
その手に多くの書物、文献などを乗せて前が見えないくらいになっている蒼髪の少年だ。
「ノヴァ?」
思わずルカが足を止めて、入って来た人物を確認すればノヴァはテーブルに多くの書物を置いて息を吐きだした。
そこでルカが気付く。
先に動いたのはノヴァだったか、と。
「これは……」
「この国・オリビオンについてのものだ。廻国や戦争、そして錬金術などの歴史などが刻まれているものから最終的には国家の思念や理想についてまでの文献だ」
確かに並べられた本の数々は、全てオリビオンという国についてのものだった。
分厚いものや、うすっぺらいものまで。
まずノヴァが広げたのは、大きな紙だった。
記されているのは古代の書き方であり、印刷などではない手書きの地図。
「国1つ掛かってる戦いを、黙って見過ごすわけにはいかない」
ノヴァの言葉に、リベルタとパーチェが即座に頷く。
ルカも地図を見つめつつ、その記号や方角を懸命に頭にインプットさせた。
「んじゃ、まずは地形からだな」
リベルタもノヴァが用意してくれた地図を身を乗り出して読み、パーチェも顔を覗かせた。
しばらくの間、そうして4人はオリビオンについての基礎知識や地形などを頭に入れる時間が続く。
対してここにいなかったフェリチータ、デビト、アッシュ、ユエ、ジョーリィ。
ユエに関しては、部屋で未だ寝るだけの安静にしている状況を送っていた。
傍に寄り添っていたのは、フェリチータ…。
「ユエ……」
「だいじょうぶだよ。すぐ治るから」
常に不安そうな顔を覗かせる彼女に、ユエが安心させるように微笑みを浮かべた。
フェリチータが自分より痛そうな顔をしているので、心配しすぎと呟いたが、あまり話は聞いてもらえていなかったようだ。