19. 奪還
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「来たよ、リア」
オリビオンの城・最上階にほど近い場所の窓から、ウタラが告げた。
真横で真っ直ぐにどこかを見据えていたリアが、彼女の声に瞳を一度伏せた。
「そっちの準備はどーなんだよ」
ウタラが確認するようにツェスィに告げれば、彼女は一度頷いた。
「致死量とまでは行きませんが、毒は盛ってあります。さすがにあれだけ暴れれば、疲れ果ててぐったりしてますけどね…♪」
「へぇ」
「ですが、このまま数時間放置しておけば死に至る可能性ももちろん無くはありませんよ」
ニッコリ笑顔で告げる藤色の髪の少女に、リアが一度視線を投げた。
そこで扉が一度開き、奥から男性組がやってくる。
「準備は万端だぜ、こっちは」
ジジがニッと笑えば、アルトは視線で答え、イオンがはーいと手を上げる。
ラディもしっかり頷けば、幕開けだった。
「行こう」
19. 奪還
「にしても、すごい入り組んでるな…」
なんとか孤島の中に潜入したファミリーは、その入り組んだ道を進み始めていた。
先頭を歩くコズエは、中心に聳えた城を目指しているらしく、急な階段を上へ上へと上り続ける。
もちろん、ユエの行方を求めて後を辿るファミリーも続いた。
最初は商店街のような通りであり、以前は栄えたのであろう道々だったが破壊された外壁、そして割れた窓や血痕が残されており、戦いの生々しさを語っていた。
「…」
その光景を見たフェリチータには、1つの疑問が頭を過っていた。
いや、それは誰もの思考にあったものだろう。
「どうして……」
―――どうして、戦いが起きたのであろう、と。
そこかしこに広がる残骸、そして血痕、壊れた武器、錬成陣の跡。
大きな戦いが、本当にこの場所で起きたことを目の当たりにしてしまう。
「お嬢様」
足を自然と止めていたフェリチータに寄り添い、ルカが彼女の肩を優しく押した。
フェリチータがルカを見上げ、切ない顔をすれば、彼は目を逸らし、ゆっくり頷く。
目を背けてはいけない現実。
自分達の時代ではないとはいえ、この世界で、この場所で多くの命が絶たれたことは間違いない真実だ。
「コズエさん」
「はい…」
フェリチータが呼びかければ、彼女は静かに足を止めて、半面振り返った。
聞いてはいけないのかもしれないけれど。
“止めてほしい”という願いの下、連れてこられたフェリチータ達にはもっと……もっと深く、知る権利があり、そしてその必要があるのではないだろうか。
「どうしてここは……――オリビオンは、没落したんですか…?」
フェリチータの声に、ノヴァもリベルタも、そしてアッシュやパーチェ、デビトも足を止めた。
コズエは表情を一瞬変えて、考え込むような顔をした。
「………」
言うべきなのだろう。
それは分かっている。
だが、どこまで?
線引きが曖昧ではいらぬ誤解を―――さらに――招いてしまうかもしれない。
迷った挙句の決断、コズエは小さく口を開いた。
「ここ……オリビオンには、1つの災厄の種があるんです」
「災厄の種?」
彼女が開いた言葉は、意外なものだった。
だが、ジョーリィからすれば既に知っていた事実の1つ。
「廻国(みこく)……。この世と、異次元を繋ぐパイプの役目を果たすもの」
「異次元とのパイプ……?」
「はい」
ジョーリィはまさかな…と思いつつ、口角をあげるばかりだった。
「オリビオンには遥昔、古代から“異次元には魔物がいる”と言われてきました」
「…」
「その魔物をこの世に召喚させるのが廻国。言わば、異次元とこの世界を繋ぐ扉です」
「扉…ねェ。それが開くと魔物が出てくる…ってとこか?」
「えぇ」
コズエは視線を真上の城の方へ向けて、言葉を一度止めた。
間を置いて、彼女は再び話出す。
「その廻国が、オリビオンに存在します」
「なるほど……?」
「廻国を開こうとした天才と呼ばれる錬金術師。そしてそれを止めようとした偉大な錬金術師…」
来世に、どちらも名を轟かせた者たちだった。
「2人の戦いは、やがてこの孤島すべてを巻きこむ形になりました」
「…」
「この迷宮都市・オリビオンが没落して5年。そして未だに…2人の錬金術師の決着はついていません」
「未だ…?」
ということは、没落したこの地でまだ2人の錬金術師は戦い続けているのだろうか?
続きが更に気になる…というところで、カシャン…と不審な物音を聞き逃さなかったのはデビトだった。
「!」
絶壁になっている上層から小さい小石がころがり落ちてくる。
「どーやら、お出ましだゼ……」
「!」
ホルスターに手をかけたデビト。
同時に上を見上げたノヴァとリベルタがそれぞれ刀とスペランツァに手をかけた。
「っ!」
「来たか」
絶壁から飛び降りる形で12人がファミリーの前に降り立つ。
降臨した彼らが武器を手に、こちらに向かって構えを見せればファミリーも対峙を示した。
「よォ、ホントに時代超えてきたとはな」
ジジが灰色の髪を揺らして笑う。
隣のラディも表情を真剣なものにし、アルカナ・ファミリアを捕えていた。
そして対峙に応えたファミリーの誰もが目を向けたのが……
「探し物はコレ?」
「ユエッッ!!!」
「……はぁ…ぁ……ぅ…っ」
リアが顎で指した先には、アロイスに抱えられたぐったりとし、顔色の悪いユエの姿。
呼吸も短く、苦しそうに喘ぐ姿に憤怒の制御が効かなくなる寸前になった者が何名かいた。
「早く助けてあげな」
リアがしれっと告げれば、アッシュとデビトの目付きが変わる。
パーチェも目の前に置かれたユエの姿に表情を崩した。
「じゃないと、毒で死ぬよ?コイツ」
挑発するように笑いかけた彼女。
コズエがリアの姿を見て、言葉を詰まらせる。
「リア……、みんな……っ!」
だが、今ファミリーの誰もはコズエに構っている暇などない。
アロイスはユエの体を投げ捨てる。倒れ込んだ先でユエは動きを止めた。
監視するようにツェスィが真横に立ち、ユエを見下ろしている。
「―――……やってくれんじゃァねェか…」
「ふざけやがって…」
挑発に乗るな!とノヴァとルカが制止しようかと思ったが、理性が飛んだ彼ら、デビトとアッシュを止めることは不可能だった。
「トラ・コーポ・スコンパリーレ」
「ミラコロ・ディ・ナスチータ」
「デビト!アッシュ!」
待て!とノヴァが声を上げたがもう遅し。
踏み切った2人に続くように、ジョーリィが蒼い炎を繰り出し、自ら錬金術で参戦を示した。
「ジョーリィまで…ッ」
ノヴァがどこか信じられない…と思えたが、ここまでくれば流れに乗るしかなかった。
「ユエは返してもらう」
フェリチータがナイフを構えれば、応えるようにサクラがワイヤーに手をかけた。
「やってみなぁ。お前が強ければできることだよぉ」
リベルタもスペランツァを引き抜いて、姿を消したデビト、そして剣片手に突っ込んでいくアッシュの後を追った。
「…」
「え、アルトが行くの…ッ?」
飛び出してきたリベルタに応じたのはアルト。
ラディがいつもと違う空気を見せたアルトに驚いていたが、乱戦が始まりそれどころではなくなった。