15. 100年という時を超えて
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【……なんで見てる】
【だめ?】
【あっち行け】
ねぇ……お願い
【もふもふ……ライオンみたいだね】
【ライオンじゃない、オオカミだ】
【触ってもいい?】
【ダメ】
消えないでほしかった
【……お前、ここ毎日来て、怖くないのか】
【全然。あたしライオンを探してるんだ】
【…】
【それに、船には白いトラがいるし】
死なないでほしかった
【お前、変な奴】
【そうかな】
殺したくなかった
―――……ピチョン…
「―――……、」
肌寒い。
水の音が聞こえる。
両腕も、両脚も重たい。
目が霞む。
そんな中、倒れ込んだ自分の指先にふわふわしたものが触れた気がした。
「……、…っ」
獣毛のような、ふわふわしたそれ。
思わず、口にしてしまった…。
「……ガロ……、」
視界の向こうに、とても濃いそして薄暗い茶色の影が見えた気がする。
あぁ、夢の中にも…出てきたな…――と思いながらユエは再び目を閉じた。
毒の影響が出ている。
動けないことも、守れなかったことも、全て……――。
15. 100年という時を超えて
フェリチータがシノブに襲われて、致命傷は避けられない…と誰もが息を飲んだ時だった。
地面から這い上がってくるような光に、ファミリーがいる一帯が包まれ、敵から守られたようだった。
だがしかし、次の瞬間光は活発に活動をし、がたがたと地面を揺らしながらファミリーにある影響を齎した。
「いってー…」
「何だったんだ、今の揺れは…?」
思わずノヴァとリベルタが顔を見合わせる。
アッシュもきっちりと立ち上がり、デビトとルカ、パーチェは顔をしかめる。
フェリチータも斬られた喉に触れながら、辺りを確認した。
そして、光は衰退し…現れた場所は……―――。
「え…?」
先程いた教会とは打って変わり、曇り空の下。
少し冷たい風が吹き抜ける中、ファミリーは見覚えのない森の中にいた…。
「なんだここ……」
さすがのアッシュも驚いているようだ。
デビトとルカが近くにあった葉を触ってみたが、どれも本物。
そしてそれを見て、ジョーリィが告げる。
「レガーロ近辺の島では見かけない種類のものだな…」
「え!?」
ジョーリィの言葉を聞いて、パーチェが驚愕している。
どうやら、ここはレガーロ近辺ではない可能性があるようだ。
「えぇぇぇええ!?ここレガーロの近くじゃないのォォ!?」
「パーチェ、いきなりデカイ声出すな!」
「お、落ちついてください…」
ルカとデビトがパーチェを宥めるが、ラ・ザーニアラ・ザーニア言い出す彼にアッシュが呆れを見せた。
「とにかく、状況を整理しよう」
ノヴァが溜息をついて、辺りを見回しながら言う。
フェリチータも頷いた。
「僕たちの前には、オリビオンの守護団を名乗る12人の敵がいて、奴らがなんらかの理由を持ってあの場でフェリチータを襲ってきた…」
「てゆうか、ユエの居場所ってどーゆーことだよ!?」
リベルタがノヴァの声を遮って疑問を投げかけた。
だが、その事実はノヴァも知らないこと。
言葉を詰まらせつつ、事情を知っているようだったジョーリィの方へ視線を向けた…。
「説明、してくれるよな?」
ノヴァとリベルタの代わりに言葉を突き出したのは、彼に恐れを見せないアッシュだった。
それに並んだのが、デビトとルカ。
パーチェも騒ぐ声を止めて、彼を見つめる。
「ジョーリィ」
フェリチータも彼を見上げ、切に願った。
「お願い。ユエのこと、教えて」
「…」
彼は黙ったまま、葉巻を潰して見せた。
一拍、間を置いてから、彼は口を開く。
「ヴァスチェロ・ファンタズマからの帰還後、タロッコの枚数が4枚少なかった」
「え?」
「タロッコが4枚少なかった……って、足りなかったってことかよ?」
ノヴァやデビトがアッシュに視線を投げた、彼はキッと睨みで返す。
「俺じゃねぇぞ」
「だろうな。今更4枚だけを盗んだ所で、貴様の宿したタロッコを変えることは出来ない。イル・バガット」
「…」
「ユエはモンドからの指令で、そのアルカナ能力を使い時を遡り、タロッコの行方を追っていた」
それでか。とデビトが納得を示す。
彼女が館にいることが減ったのも、深夜の不審な行動も……それが原因か、と。
「その在処として、ようやく判明したのがシャロス・フェアの館だったのだろう」
「…」
「お嬢様たちが乗り込む前に、ユエとダンテはタロッコの行方と真実を確かめるためにシャロスの館に乗り込んだ。……そこで―――」
「さっきの奴らにやられた…ということか」
ノヴァの言葉に、ルカが俯く。
「やられたって……彼女がそんな簡単に…」
「そんな簡単にかどうかはわからない。だが、ユエとダンテで不利だったのは事実だろう」
ノヴァが言い切った理由がどこから来ているのか、誰もが理解していた。
「タロッコと契約って……」
フェリチータが零した言葉に、誰もが頷く。
ファミリー以外に、どうしてカードの契約者が存在しているのだ……と。
「話を戻せ。今は現状の整理だ」
ジョーリィが釘を刺したので、ノヴァが続けた。
「あぁ……。目的は明確ではないが、奴らは僕たちを襲いかかって来た。そこから光に包まれて……」
「今に至る、か」
アッシュがノヴァの言葉に続け、溜息をついた。
依然とした曇り空の下、ファミリーは森の中で立ち尽くす。
「ユエ…ダンテ……」
フェリチータの呟きにデビトが目を細めた。
極秘だとはいえ……―――。
「とりあえず、移動してみよーぜ?」
リベルタが神妙な顔つきで言えば、パーチェはそれに頷いた。
「そうだね、ここに居ても仕方ないし……。ユエの居場所とか分かればいいんだけどなぁ」
「元いた場所に戻るとしても、ここからは動かなければなりませんからね」
謎だらけで、何もわからぬまま足を進めようとした時だった。
茂みの中から1つの音。
ファミリーは動きを一斉に止める。
「敵か…?」
「うさぎとかじゃねーの?」
リベルタが呑気なことを言いつつも、スペランツァに手をかける。
デビトもホルスターから銃を引き抜き、装填をさせたところで人影が姿を現した。
「み、見つけた……!」