12. 終焉へ導く夜の始まり
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「ひとーつ…」
「お、お嬢…っ」
「よく似合ってるなァ…?バンビーナ…」
「ふたーつ…」
「ありがとう…」
「ふふ、久々のドレスで緊張されているんですか?」
「みーっつ…」
「うん…」
「ドレスって言ったら、何カ月か前のパーティ以来だよね」
「そうか、あれからもうそんなに経つのか…」
「よーっつ…」
「ってことは、ユエが戻ってきて、必然的にそれくらい経つってことだよね?早いなぁ」
「そうだね。ユエも大分ファミリーに馴染んでるみたいだし、本当によかった」
「いつーつ…」
「ユエがファミリーに馴染めたのは、お嬢様のおかげでもあります」
「え?」
「お嬢様が常に彼女を気にかけてくれていたのは、ユエにとって救いだったはずです」
「むーっつ…」
「もう…無茶しなければいいな」
「そうです!もっと言ってやってください!」
「なーんか、ユエってほっといたら目的のためにどこまででも行っちゃいそうだもんなッ!」
「リベルタの意見も一理ある。真っ直ぐ過ぎるというか」
「アイツはアイツで色々考えてるんだよ。話し上手かどうかは、別としてな」
「ななーつ……――」
「さっすがアッシュ!分かってるって感じだねぇ」
「なっ!?わ、私だってユエのことを…」
「そこ、うるさいぞ。挨拶が始まる様だ…」
「……始めよーか…」
12. 終焉へ導く夜の始まり
レガーロから約1日もかかることなく、来ることのできる隣の島。
ここで今日、例のサーカスの主催者、シャロス・フェアのパーティが開かれる。
サーカスの開催日、レガーロの警備と主催に関して協力したということでパーティに呼ばれたアルカナファミリアのメンバーは、招待通り…――彼に応えていた。
ダンテとユエはパーパから課された任務の関係で、どうしても一緒に行動は出来なかったが。
フェリチータはきっちりと正装のドレスで参加し、リベルタもいつものスーツを正して着こなしていた。
ファミリーが集まった会場のステージに、前回島にいたシャロス・フェアが現れる。
ノヴァが声が大きかった自分の身内に静かにするように呼びかければ、同時にシャロスの挨拶が始まった。
「みなさま、本日はお集まりいただき、まことにありがとうございます」
シャロスが現れたことにより、会場に黄色い声が響く。
どうやら巷では人気なようだ。
「すごい歓声だね…」
「この島の色事師だろ?シャロス・フェアって」
「え、そうなの?」
アッシュがしれっと述べれば、フェリチータが目をぱちくりさせた。
まぁ…雰囲気が漂っているのは分かるが、まさか本当にそうだったとは。
貴族で、ルックスもよくてあんな雰囲気じゃ、誰だって近寄りたくなるのだろう…。
「うちにも、似たような女タラシが1人いるじゃねーか」
「あァ?」
「エロリストって呼ばれる奴がよ」
「まぁまぁ、2人ともケンカしないしないっ!」
アッシュが横目で投げかけたものに、デビトが本気でないが“は?”という視線で返していた。
パーチェが止めに入り、ニコニコしていたが、リベルタが首をかしげる。
「アッシュとデビトって仲悪いのか?」
リベルタが思った疑問を近くにいたノヴァに、ひそひそと尋ねた。
ノヴァはアッシュ、パーチェ、デビトの姿を横目で捕えて…“さぁな”と答えた。
実際には察しがついているけれど。
フェリチータが相変わらずのメンバーに笑みを浮かべ、ステージに視線を戻した時だ。
「あ…」
フェリチータが声をあげたので、リベルタやノヴァ、アッシュがステージに視線を戻す。
そこには、あのサーカスの日…踊り子を務めた藤色の髪の人物がいた。
「あ、あの時の踊り子…!」
リベルタが指差せば、シャロスに寄り添うリボンの少女、長い髪を揺らし立っているピンクの髪の少女、そしてブロンドの女性…とはまた距離をおいた位置に、淑やかに立っている踊り子の姿が見えた。
挨拶が進んでいく中、リベルタ達は彼女に視線を向けていた。
すると藤色の髪の少女…――ツェスィも彼らに気付いたようで、にっこりと笑顔を返してくれた。
「なっ…」
途端にリベルタの頬が染まる。アッシュとノヴァが呆れていた。
「オイ、リベルタ」
「お前ってホント成長しねぇよな…」
「う、うるせぇ!」
ガッと言い返すものだから3人が騒ぎ始め、ルカが溜息をついた。
ノヴァも人のことを言えないではないか…と。
対してフェリチータは藤色の髪の少女…ツェスィから視線を逸らせなかった。
心を読みたい訳ではない。
雰囲気というか……独特のオーラというか……。
「(なんだろう……この感じ…)」
挨拶も終盤に取り掛かったようで、黄色い声が激しくなる中、シャロスは続けた。
「本日はどうぞ最後まで、お楽しみください」
そのままワインを片手にステージを去る彼。仕える3人の女性……―――エリカ、サクラ、アロイス。
この時、アルカナファミリアはまだ彼女たちの名前を知らないが、それを語るのももう間もなくであった。
「綺麗なおねーさんっ」
「え?」
挨拶が終わり、会場が立食会と化して賑やかさを増した所でフェリチータは下から呼ばれ、動きを止めた。
視線を辿り、ななめ後ろに俯かせると…――
「はい、どうぞ」
「え…」
花を差し出す、緑の髪の少年がいた…。
「マリーゴールドだよ。綺麗でしょう?」
突如現れた少年に手渡された花を、フェリチータが受け取る。
隣でリベルタ、そして奥からルカがすごい顔でこちらを見つめていた。
「綺麗な花は綺麗なおねえさんにぴったり…」
別の花を口元に添え、少年…――ラディは幼少とは思えない表情で笑んだ。
深く、何かを悟らせるような…。
「あ、ありがとう」
呆気に取られ、お礼をするのを忘れていたので伝えれば今度は幼い笑顔をくれたラディ。
「あ、お前、あの時のピエロだろ!」
そこで思い出したように、リベルタが声をあげた。
へ?とパーチェが少年の顔を覗けば、玉乗りピエロであることが面影から連想ついた。
「あ、本当だ」
「フフフ」
笑顔だけ返したラディが、手をあげて“じゃあ”と挨拶する。
「あ…」
フェリチータが名前くらい…と聞こうと呼びとめたが、ラディは応えることはなかった。
どうやら連れが来ていたようで、ラディはしばらく行った所で誰かと合流する。
ネイビーブルーの髪を縛り、リベルタを同じエメラルドグリーンの綺麗な瞳。
すらっとした凛とした空気の男に、ラディは確かに寄り添った。
彼もこちらが気になったのだろう。
エメラルドの切れ長の視線がこちらに向けられた。