11. 斑ぎの真実
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ユエが守護団に捕えられて間もなく、レガーロでは翌日に迫った隣島でのパーティのために、出航する者たちが準備を始めていた。
アルカナファミリアを代表として行くメンバーは、もちろん大アルカナたち。
その中にいつもの如く葉巻を加え、その様子を見つめる者だけの人物がいた。
ジョーリィだ。
「ジョーリィは行かないの?」
傍らで彼を下から見上げながらエルモが声をかける。
少年の頭に手をおいて、相談役はふっ…と笑みを見せた。
―――ジョーリィには、気になることが残されていた。
先日、物置部屋と化したあの場所でのユエとのやりとり。
引き受けたある調べ物のことだった。
11. 斑ぎの真実
“存在はしているが、その正体を無とする者”
タロッコを4枚だけ奪い、そして姿を消した者。
その人物の手に落ちたタロッコの意味も気になったが、ジョーリィはユエとの約束を守ってた。
タロッコと関係深い…錬金術師、ウィル・インゲニオーススの造り出したホムンクルス。
その2体のホムンクルスは――時空を操る。
好きな時代へ行くことも、好きな空間へ行くことも出来るといわれたホムンクルス。
タロッコと幽霊船・ヴァスチェロファンタズマとホムンクルスの正体…。
出来るだけ多くの書物を読み漁り、――彼はその結論を叩きだしていた。
「ジョーリィ、この書類は…?」
窓辺にいたエルモが、ジョーリィの元まで戻ると、山積みにされていた書類に目を向けた。
彼がここずっと調べていたそのホムンクルスの件だった。
どう流すか考えていた時だ。
彼の扉のドアがノックされた。
「俺だ、ジョーリィ」
「――モンドか……」
数回響いた音の後に、ドアノブが回る。
煙っぽいこの部屋にモンドが顔をしかめつつ、ジョーリィの方を向いた。
「何か掴めたか?」
「あぁ…」
モンドにポンっと投げるように書類を手渡した。
いつかの…自分の娘としている女が、このトップに言い切った夜のように書類に目を通す彼。
………しばらくしてから、モンドは溜息をついた。
「これが本当なら…」
「かなり厄介だな」
エルモは2人の会話に、静かに首をかしげた。
ここにいても、つまらないだろう。
ジョーリィがエルモの名を呼んだかと思えば、彼に言い聞かせるように呟いた。
「エルモ。今日は外で遊んできていい」
「え…ほんと?」
「あぁ。だが、約束の時間には戻れよ」
「はーい」
彼は賢い。
エルモは自分がここにいてはいけないのだな、と悟ったようで素直に部屋を出て行った。
ジョーリィが葉巻を潰して、モンドを真っ直ぐに見る…。
「説明してもらおうか」
モンドが適当にその辺のソファーに腰かけて言う。
ジョーリィはサングラスを外して、溜息をつきながら口を割った。
「盗まれたタロッコと関係深い人物の中に、ユエの力では追う事が出来ない能力を持つモノがいる」
「それが――」
「ウィル・インゲニオーススが造り出したホムンクルスだ」
「…」
「今からおよそ100年前の時代だな」
トプン…と試験管の中に液体が音を立てて滴る。
部屋は静寂に包まれた。
「数としてはとても少なかったが、同じ文献の中にその時代のことが記されていた」
「100年前の世界か」
「タロッコが生まれた時代には、“廻国(みこく)”という異次元があるという迷信があったようだ」
「廻国…?」
「目に見える確かなものは何もないが、どうやらこの世とは違う次元には“化物”が存在し…その次元とのパイプを成すのが“廻国”と呼ばれるものらしい」
「…」
その迷信に、どれだけの民が翻弄されたのだろうか。
今であれば“バカげている”と言えるかもしれない。
そう思うのは、伝承でしか知らないからかもしれない。
当時の人間としてはとても大きな問題だったのかと思えば…―――。
「タロッコは廻国とも関係があるようだな…」
「もし、ホムンクルスが時と時空を超え、レガーロからタロッコを4枚盗んだとしたら、その廻国と関係があるかもしれない…ということか?ジョーリィ」
「憶測だがな…」
姿を消し、タロッコを持ち去れる者…――。
「シャロス・フェアとの関係は…?」
「さぁな…」
モンドが尋ねた言葉に、ジョーリィは首を振った。
「そこは何とも言えない」
「……引き続き、調べてくれ」
「お嬢様達はそのままバカげたパーティに行かせるつもりか…?」
「そのつもりだ。ユエとダンテから連絡が無ければ止めるつもりはない」
「…」
この時、ジョーリィの胸に1つ…胸騒ぎが落ちた。
――…イヤな予感がする…。
「(なんだ……。この胸騒ぎは…――)」
モンドがガタン…とイスから立ち上がり、溜息をついた。
「状況はわかった。報告ご苦労」
相談役執務室を立ち去るモンド。
ジョーリィはモンドが立ち去り、間もなくして部屋を出ていくことにした。
――もう1度、文献を読み漁ることとしよう…。
さすがに全てではないが…ユエの力も、ダンテの強さも知っている。
そう簡単にやられるわけないと…―――この時は踏んでいた。
最大の危険を感じたのは、この数時間後…――フェリチータたちがレガーロを出航した後だった。