04. 霧を纏った幽霊船

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第12のカードの宿主





「ふう……なんとか帰ってこれたか」



不気味な幽霊船の上。
その船の主は、トラから姿を戻しりんごをかじっていた。



「それにしてもこのイチゴ頭、ここまで来てまだ気を失ってやがる」



呆れた、という形で倒れたままのフェリチータを男は見下ろしていた。



「こいつは……弱そうだし。この辺に転がしておいてもいいな。と、追いつかれる前に船を出すか」



舵を取るために、男は船内へと足を向けた……。





04.霧を纏った幽霊船





「戻ったぜ、ヨシュア」



船内へと足を向け、船長室へと向かったトラになる男―――アッシュは、部屋の中で佇んでいた金髪の男に声をかけた。



「おかえり、アッシュ。随分と時間がかかったね」


「あぁ、色々とあってな。もうここには用はない。追いつかれると面倒だし、船も出してきた」



そうしてアッシュが金髪の男……ヨシュアに差し出したのは、アルカナファミリアの館から奪って来たエメラルドの意匠の箱だった。



「それよりヨシュア、この箱で合ってんだろ?箱には鍵がかかってるみてぇだが……」



それはタロッコが入っている箱である……―――。



「確かにこれです。ではアッシュ、箱を燃やしてください」


「燃やすのか……?良いけど……あぁ、錬金術じゃ中のカードは燃えないってことか?」


「そういうことです」



なるほどな、と納得した顔をを見せたアッシュが手を翳し、箱を燃やした……。


中からはタロッコが現れる。



「これでタロッコは元の位置へ戻る。俺の一族が守り伝えたこの船に……」


「その通り。そうだアッシュ。今日という日を機に、タロッコの契約儀式を行ってみたらどうだい?」


「俺が、タロッコと契約を……?」



ヨシュアから告げられた言葉に、アッシュが惑いを見せた。



「契約者はタロッコが選ぶ。資格がある者を大アルカナ自身が選定するということだよ」


「タロッコ自身が……」


「ふふ……さしずめ、君にとっては運だめしみたいなものだね」


「危険はないのか?等価交換が必定だろう」



その通りだった。
人智を超えた力を得るタロッコ。


宿主へと見返りを求めるそれ。


そのおかげで傷つき、そして失った者がある契約者がいることを……彼らは知らなかった。



「タロッコの能力は未知数……。私も危険については把握しきれていない。だが、契約に成功すれば人智を超えた力が手に入る」


「それも含めて運だめし……ね」



アッシュが溜息をついてから、ヨシュアの左手首へと視線を向ける。


そこには……痣が1つ…―――スティグマータだ。



「ヨシュアの左手首の痣……それがタロッコと契約に成功した証、スティグマータなんだろ?」


「そう。正義のタロッコ“ラ・ジュスティツィア”です」


「“ラ・ジュスティツィア”ねぇ……」



ふっと、鼻にかけてアッシュが笑む…。



「錬金術師の性か。そう言われて手を出さずにいることはできねぇよ」



ヨシュアが笑った。


アッシュがタロッコを広げ、そして指先を口に宛がった。



「俺も興味あるな……やってみるか。契約儀式の方法は知ってる。―――タロッコは本来、俺の一族のものだからな……っ」



口へと持って行った指先を噛み、血を滲ます……。



「この俺が、契約できないはずはない……!」



ポタ……と血が流れ、同時に血が沁みたタロッコが1枚反応を示した。



「うぐあぁぁ!!!」



同時にアッシュの左側の首に、銀色の光が現れる。



「く……っ、ヨシュア……こんなイテーなんて、知らなかったぜ……っ」


「アッシュ……」


「しかも熱い……首が……喉が、焼けそうに熱い……」


「その痣は……スティグマータ……!」



光が納まった所……アッシュの左側の首には、スティグマータが浮き上がっていた。



「なに……?ってことは、契約は成功したんだな……?」


「あぁ……」


「それで……俺は……っ、何のタロッコに選ばれたんだ…?」



ヨシュアが、光を放っていた1枚のカードを手に持ち、読み上げた。


彼……―――アッシュが契約をしたカードは……



「これは“魔術師”のカード……イル・バガット」


「“魔術師”か。相性は悪くなさそうだ」



首を押さえながら、ようやく痛みから解放され、立ちあがったアッシュが床に転がったカードを見つめる。



「それで他には、どんなタロッコがあるんだ……ヨシュア?」



名前を呼び、顔を彼へと向けた時だった。



「ヨシュア……?」


「これは……」



彼が手にしたのは1枚の、魔術師とはまた別のカード。



「ヨシュア……!?」



ヨシュアの体が、カードを源に光に包まれる。



「グアァァァァァァアア」


「ヨシュア!?」


「ハァ……アッシュ……タロッコの力……」



光から放たれた彼は、白骨化し、危険なオーラを曝け出していた……。



「な、何が起きたんだ……?ヨシュア……何で骸骨に……ッ」


「我が名は……ラ・ジュスティツィア……」


「オイ、ヨシュア!!俺の言葉がわかるか……!?オイ!!」



アッシュが白骨化したヨシュアに近寄ろうとした時、船室の窓ガラスが割れる。


現れたのは、ヨシュアと同じような骸骨の大群であった……。



「オイ、どうなってやがる……」



かしゃん……かしゃん……と不気味な音を立てて、甲板や船室を覆い尽くす骸骨達。


アッシュが焦りを見せた。



「今までこんなことなかった……甲板が骸骨で一杯になるなんて……」



そこで気付く。
甲板には……―――



「まずい、あの女を放置して来たままだ……ッ」



その部屋に、白骨化したヨシュアを残しアッシュは甲板へと駆け抜けた。



「俺が……俺がタロッコと契約したせいなのか……?」


「グァァァアアアア」


「!」



叫び声をあげて、暴れ回るヨシュアにアッシュは1度足を止め、振り返った。



「……っ、待ってろヨシュア!!必ず元に戻すッ!!」



アッシュが甲板へと向かったため、そこに残されたヨシュアは……不気味に微笑み、言葉を漏らした。



「やはり……ルオータ・デラ・フォルトゥナ……運命の輪が必要だ……」





◇◆◇◆◇





同じ頃、甲板に放置されたままのフェリチータは未だに気を失っていた。


群がる骸骨たちが、フェリチータに魔の手を向けようとしている。


不気味な手が振りあげられたその時だ。



「チッ……」



間一髪で戻ってきたアッシュが、フェリチータを抱え、一旦身を引く。


もう既に甲板には骸骨達がいる状態であった。


いつここに奴らが来ても、おかしくない状態。



「オイ、起きろよイチゴ頭」


「……んっ」


「起きろっつってんだろーが」


「…っ!?」



アッシュの声に、視界に光を取り入れて、フェリチータが飛び起きる。



「ここは……っ」


「やっと目が覚めたか、イチゴ頭」


「アナタ……誰……ッ?」


「はぁ?俺?そんなことどうでもいいだろ」


「よ、よくない……っ」


「うるせえ。それよりお前に聞きたいことがある。タロッコのことだ」


「!」



気絶させられ誘拐され、叩き起こされ、挙句に質問だと?
不信感しかなくてフェリチータが眉間にシワを寄せる。



「……ッ」


「もうこの船は出航してる。今からじゃどこへも行けない。俺に従わない限りはな!」


「(島が……もうあんなに小さい……ッ)」



フェリチータが隙を見て、背後を振り返る。


確かにこの船は、霧を纏いながら結構な速度で航海を進めていた。



「は、話すことなんかない」


「なんだ……イチゴ頭の分際で俺に刃向かうつもりか?」


「アナタの目的はなに……?」


「知りたきゃ力でねじ伏せて、この俺に吐かせることだな」



フェリチータがナイフを手に構えると、アッシュも腰から剣を抜いた。



「悪いが、もう1度気を失ってもらうぜ」


「っ!」


「暴れられるのは……本気で面倒だ」



肉弾戦ならまだ勝機も考えられた。


しかし、アッシュが繰り出したのは肉弾戦ではなく……―――



「我、偉大なるウィル・インゲニオーススの力を解き放つ」


「!?」


「ミラコロ・ディ・ナスチータ」



低温の炎が渦巻き、フェリチータを捕えた。



「喰らえ」



構えを取るも何も……本気で向けられたそれに、フェリチータが怯む。


放たれた炎が彼女にあたる直前だった。



「―――っ!!」




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