【Prequel Day】流星群 × 幼馴染
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「はぁ…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「………はぁ。ごちそうさま」
朝日が昇り、朝食を摂っていたメンバー…といっても揃っていたのはデビト、ルカ、パーチェ、アッシュとユエが食堂で邂逅する。
リベルタとダンテはいつもより早く港に出たらしい。
ノヴァに至っては書類の整理を終えてから巡回に行くために早起きしたとか。
フェリチータも既に街に出ている。
相談役はいつもの如く、食堂に姿は現さなかった。
その為ある意味、幼馴染なメンバーとも言える彼らが食堂で顔をそろえて食事をしている。
が。
「え、ユエもういいんですか…?」
「うん、いらない……」
「ちゃんと食べないとお昼まで持たないよー?オレとリストランテで食べなおすー?」
「いい」
「パーチェ、アナタは食べすぎです」
ユエの前に並んでいた食器は、ほぼそのまま手つかずで置き去りにされる。
マーサが作ったスパニッシュオムレツすら一口しかつつかれていなかった。
溜息を残し、席を立った彼女が食堂を出て行く。
直後に顔を見合わせたルカとパーチェは、首をかしげていた。
「ユエ、どうしたんだろ?」
「小食ではなかったと思うんですが……」
平均的に食べ、好き嫌いもそこまで無いはず。
ダイエットを始めるなんて聞いた覚えもないし、何より痩せる必要はないはずだ。
デビトも――彼こそが小食だったが――フォークを止めて、出ていった少女の方向を見つめる。
アッシュも――うさぎさんの――りんごを手掴みで食べながら、あんなユエ見たことないなと思っていた。
「まさかデビトの風邪がうつったんじゃ……!」
「……。」
ルカが即座に、先日まで風邪でダウンしていたデビトの方へと視線を投げた。
反して返すように頬杖つきながらデビトが口をへの字に曲げる。
「ユエは朝から晩までずっと付きっ切りでしたし…!」
反論してやろうかと思ったが…――自分がうつるような行動をしていたので、黙る。
いつもの調子で返すことも出来たのだが、彼女の存在はそんじゃそこらのシニョリーナとは違う。
「なんで元気ないのかな……」
「疲れてんじゃねーのかぁ?こんなアホトリオの相手、毎日してたら疲れない奴いねーだろーが」
「アッシュ、誰と誰と誰がアホトリオですって?」
「ヘタレ従者と大食いメガネと歩くエロリスト以外に誰がいんだぁ?」
「オイ、最後のは聞き捨てならねェなァ?」
突っかかったアッシュに応えてしまったのはデビトだったが、パーチェは言われたことも流しながら“うーん…”と、まだ考えているようだった。
「あ!そーだ!」
考えていた甲斐があったようで、彼がぽん!と手を叩いて、声を発した。
「ンだよパーチェ。デカイ声だして」
「普段から声がでけーんだ。もう少し考えろ、バカメガネ」
「アッシュ、言葉使いが荒すぎます」
「ヘタレ従者のネコ被りに比べたらマシだ」
「なんですって!?」
パーチェの言葉からだんだん脱線していきそうになった所で、彼が続けた。
「ねぇねぇ、みんなでユエが元気になるようなことを考えようよ!」
「元気になるようなこと?」
笑顔のパーチェが提案した言葉に、食堂の者は一旦目をぱちくりさせたのだった。
◇◆◇◆◇
いつも通りの真夏のレガーロ島を、太陽が更に照らしつけるので気温は猛暑を記録していた。
そんな町の裏通りに、ユエはいた。
「…っ……はぁ…ッ」
食堂を出てから、約3時間だった。
肩で息をして、限界。というように壁にもたれかかり……それすらままならなくなり、しゃがみ込んでしまう。
裏通り自体、しかもこの通りは滅多に人が通らない。
こうしていても不審者に扱われたり、大事になることはないだろう。
治まらない動悸と、眩暈がする頭を押さえて、しばらく立ち止まった。
「チッ…」
舌打ちをかましたが虚しく響き渡るだけ。苦しさが止むことはなかった。
「もっと……」
―――強くならないと。
そう思いつつ、日々精神を鍛錬していこうと思っていたが力自体の制御は全くの別物らしい。
体力自体ももたないし、ダメダメだなと自嘲を見せた所で、ついには意識が一瞬持って行かれそうになった。
「くっ……」
さすがにここで倒れるわけにはいかない。
倒れた自分を誰かが見つければ、必ずアルカナファミリアに通報される。
そうなった時、倒れた理由をうまく誤魔化せない気がした。
ジョーリィやダンテあたりが力を貸してくれるのであれば、話は別であるが。
「―――…っ」
思っていても、体は言う事を聞かなかった。
ぐらり…と回った視界。
倒れ込むかと思えば…視界の端に、見覚えのある姿を捕えた気がする……―――。
「ユエ…!」
逞しい腕に支えられて、顔面から地に突っ込むことはなかった。
「無茶をしすぎだ…!」
叱咤する声も聞こえたが、答える力が残って無かった。
ただ一言、きちんと顔を捕えたので彼の名前を呼んだ。
「ダンテ……」
「しっかりしろ!ちょっと待ってろ、館へ……」
抱きかかえられた時、脚に力が微塵も入らなくて、“あー…情けない”なんて思っていた。
それが最後。
心地よい、人が歩くリズムが伝わってくると同時にユエは意識を手放した…――。
◇◆◇◆◇
次に気が付いた時、ユエの視界には見慣れた天井が目に入った。
「(……ここ…)」
首を動かして確認すれば、窓から夕陽が射し込むところであった。
ダンテが運んで戻ってきてくれたようで、自室にいることが分かった。
眠ったことで疲労は多少回復したようで、今は意識もしっかりしていて、頭痛も眩暈もなかった。
「ダンテにお礼言わないと……」
あそこに来たのが幼馴染たちでなくてよかった。
彼らに余計な心配はかけたくないし、弱さも知られたくない。
だが、そう思う事が優しさを踏みにじることに繋がるのも今はもう理解はしていた。
―――とりあえず、もう一眠りしよう。と、ユエは布団に入り込み、ゆっくり目を閉じた……。
◇◆◇◆◇
更に時刻が経ち、もう一度目を覚ました時は空は闇に染まり、時刻は22時前。
あぁ、寝すぎた。と思いながら喉が渇いたのでユエは部屋を抜け出して、食堂に水を飲みに行こうとした時だ。
布団を足でどかそうとした所で、ガンっ!と何かを蹴ってしまった。
「ってェ!」
「え?」
ぶつかったな、と認識する前に声。
顔をあげれば足元に近い所で、幼馴染の1人……――想い人でもある人物が足を組んで座っていることに気付いた。
「な……で、ビト…!?」
なんでここにいるの!?という表情が先に出たようで、蹴られた背中をさすりながらデビトがニヤっと口角をあげた。
「別に用はねェ……くもねェが」
「なにその答え」
「よく寝てるな…?と思ってなァ」
「ちょっと、いつからいたのッ!」
どうしてこうも不法侵入がうまくできるのか。と思いながら起きあがり、彼を軽く睨んだ。
どうせユエの顔が赤面していることも本人は自覚している。
「まァ、そう怒るなって。可愛い顔が台無しだゼ?」
「っ、」
頬を撫ぜられて笑顔が向けられれば、素直でないのでムッとしてしまった。
特に気にする様子もなく、デビトが告げる。
「来いよ、ユエ」
「え?」
「それだけ寝たなら、動けるだろ」
「…?」
スッ…と自然な動きで手を握られて引っ張られれば、どこかへ誘われるようだった。
照れとか、恥ずかしいより、その瞬間に疑問が勝つ。
「デビト?」
「いいから」
手をつないだまま、くしゃくしゃのままのスーツ姿で彼の後へと続いて歩く。
廊下を行き、角を曲がり、階段を下りる。
玄関ホールにある大きな扉をあけて、館の外へと出ると……
「あ、来ましたね」
「遅い」
「やっほー!ユエ!」
「ルカ…アッシュ、パーチェ…」
少しだけ、異様なメンバーがいた。
「なにしてんの……?」
全員共通で言えるのは、ユエにとっては幼馴染。
だが、4人で考えると……どうなんだろう。
「んじゃぁ、ここからはオレの仕事ね」
「?」
デビトに連れてこられたユエが首をかしげたのと同時だった。
背後からタオルのようなもので、目隠しをされた。
「え、ちょっ何ッ!?」
「ハイハイ、大人しくしてろォ」
「ちょ…デビトッ!!」
完全に前が見えなくなったと思えば、今度は軽々と抱えられる感覚。
足が浮き、宙へと離れる感じ。
この力と雰囲気はパーチェの腕だろう。
「パーチェ!近すぎます!もっと離れて下さい!」
「えー、普通だよ?」
「とか言って、狙ってるだろこの大食いメガネッ!」
「アダッ!ちょっとアッシュ蹴らないでぇ!」
ルカとアッシュの声。
耳元ではパーチェの叫び声と、後ろでゲラゲラ笑うデビトの声。
視覚が使えないので、聴覚だけを研ぎ澄ましていたが、別に何かされるわけではなさそうだ。
「それじゃあ、行きましょう」
「さっさと行かねぇと終わっちまうぞ」
「だなァ」
「よーし、しゅっぱーつ!」
「…?…???」
パーチェに抱えられたまま、ユエはそのまま彼らの思惑のままに、どこかへ連れて行かれたのだった。
「オーイ、ルカちゃんよォ…。こんなんでヘバるなんて、さっすがヘタレ従者だなァ」
「情けねぇ」
「そこのドSコンビも口減らずで相変わらずですね…っ」
一体どこへ向かっているのだろう…と思いながら、坂道を上っていることは、なんとなく傾斜の具合から分かっていた。
あとはパーチェの歩き方から伝わる振動が、この道が補修されていない道であることを教える。
行き先が分からぬまま、4人が繰り広げるケンカのような会話を聞きながら、ユエは黙っていた。
「ユエ、起きてるー?」
「起きてるよ」
「あ、ならよかった」
「どうせなら寝てても構いませんよ?」
パーチェの声がしたと思ったら、今度は真横からルカの声。
更に少し行ったところで、デビトの声が聞こえる。
「寝てるって、さっき十分すぎるくらい寝ただろォ?」
「うん…」
「まさかお前、1日中寝てたのか?」
「い、1日じゃないけど……まぁ、そんなもんかも…」
ルカとは真逆の位置から聞こえたアッシュの声に答えると彼が“はぁぁ!?”と小さく呟いたのが聞こえる。
きっとなんて時間の使い方をしたんだ、と言いたいのだろう。
「まぁまぁ、ケンカしないでよ。ほら、もう着くからさっ!」
最初に戻り、パーチェの声が真上から降ってきたと思えば、傾斜の感覚が無くなった。
まっすぐな道に出たんだな……と思ったところで、パーチェが息を飲む音が聞こえた。
同じようにルカとアッシュ…そしてデビトも言葉を失うっているように思えた。
「ユエ、下ろすよ」
「……、うん」
パーチェの言葉にゆっくりと地に下ろされて、自分の足が体を支える。
同時に背後に誰かが回り込んだと思えば、タオルが外される準備に取り掛かっていた。
「ユエ、ちゃんと見てろよ」
「アッシュ?」
後ろにいるのはアッシュか。タオルを外してくれている彼の指先を感じる。
隣でルカが笑う声がして、何が見えてくるのか……少しだけ心が跳ねた。
「んじゃ、外すぜ」
アッシュがゆっくり取り払ってくれたタオル。
閉じていた瞳をゆっくりと開いて……視界に光を取り込んだ。
そしてそこに広がっていた景色は……―――
「わあ……っ」
レガーロの港と市場、そして広大な海が見渡せる……この島で1番と言ってもいい好きな場所。
親友と約束を交わし、そしてアッシュをこの前連れてきたあの丘。
連れてこられたのがここだったのか、と思うと同時にいつもとは違う風景。
それは今日、きっとこの日しか見えない……大量の…―――
「流れ星……!」
「真夏の流星群の1つです」
隣に立って、顔を覗きこんでくれたルカが笑う。
「ペルセウスという星座の流星群です。真夏では恒例のものですね」
「ペルセウス……」
告げられた、どこかで読んだ文献の中に記載があった言葉だな、と思いながら耳に入れる名称。
隣で聞いてたデビトが溜息をついた。
「ンな説明より、もっと口説き落とすくらいのセリフ使えよルカちゃんよォ?」
「はいッ!?」
「確かに説明より目でただ楽しみたいよね~」
パーチェもデビトの横で空を見上げて、流星群を見つめる。
アッシュもユエと顔を見合わせて、笑った。
「お前に元気がないから、そこのメガネが提案したんだ」
「え?」
アッシュから告げられたものは、予想もしてなかった事実。
「最近、疲れていたように思えたので……。全員で、ユエを元気にさせられる方法はないか?と考えた答えです」
ルカも続けてくれば、ユエの表情がポカン…と間が抜けた。
「ちょォど、今日から明日にかけて流星群が見られるっつーから来てみたが」
「正解だったね!」
「ここまで綺麗に見えるものだとは思ってなかったがな」
「そうですね……」
空に孤を描き、ゆっくりと回転するように流れる星々。
目に入る景色も、浸透する優しさも……。
自覚してしまえば、ユエは頬を少しだけ赤く染めた。
「…」
「気に入っていただけましたか?」
ルカが答えを求めるように聞いてきたのでユエが小さく唇を噤む。
――……この気持ちをなんて返していいかが、わからない。
「ユエ」
ルカが彼女の顔を真剣に見詰めた。
同じく、デビトとアッシュ、そしてパーチェも彼女の顔を優しく見やる…。
「私たちは、いつだって味方ですから」
どくん……と跳ねる、心臓の音が聞こえた。
「悩みがあって、誰にも言えないとしても、私達に寄りかかってください」
「…っ」
「そーそ♪そしたら、オレがティラミスゥのようにユエを包む込むからさ」
「出たな、その口説き文句。うまいこと言ったつもりかァ?」
パーチェの言葉にデビトがケッと鼻で笑いながら返していた。
「!」
そんな2人を見ていた時、ぽんっと頭を撫でられる。
いつの間にか抜かれた身長を誇らしげに、ユエを見下ろすアッシュの姿。
「無理には聞かねぇ。でも……1人じゃないって、俺に教えたのはお前だろ…?」
アッシュの手が、乱暴に髪を撫でているとルカとデビトがそれを簡単に弾き飛ばした。
「アッシュ!ずっと一緒にいたからって、簡単にユエに触らないでくださいっ!」
「ケツの青いガキがなァにいっちょまえに手ェ出してんだ」
「るせーな」
3人が目の前でギャアギャア騒ぎ始めたころ。
少しだけ前を行ったパーチェが空を指差した。
「あ、ほら見て流れ星!いっぱいきた!!」
孤を描き、ゆっくりと進む流星群が活性化していく。尾をひいて落ちていく光の流れは本当に美しい。
パーチェが願い事!と叫んでいる。
「デビト!ルカ!アッシュ!ユエ!願い事しないとだよ!」
「流れ星って、どれも流れ星だろーが」
「アッシュの言う通りですね」
散々に言われつつも、手を合わせて
「ラ・ザーニアを死ぬまでお腹いっぱいたべたぁぁぁあい!!!」
と叫んでいるパーチェを見ていると、ユエも願わずにはいられなかった。
柄でもないが手を合わせて、流れた星のかけらに心から祈りを捧げる。
「え、ユエもするんですか!?」
「マジかよ」
「ロマンチストだなァ」
「パーチェを見てたら、いいなって思ったんだもん」
「でしょでしょー?」
なんて、幸せな時間だろう。
つい何カ月か前は、手に入れることなど予想もできなかったくらいのもの。
そして……優しい言葉の数々。
なにより、温かく自分を迎え入れてくれる存在。
彼らがいれば、ユエはどこへ行っても戻ってこれる気がした。
「で、ユエは何をお願いしたの?」
「ん?ひみつ」
「えぇー?教えてよぉ」
辛い時も、その先に光がある。
どんな時でも、支えてくれるファミリーがいる。
それは、ここにいる4人以外もそうだ。
ジョーリィ。
フェリチータ、リベルタ、ノヴァ、ダンテ。
パーパとマンマ。
空の彼方にいるヨシュア。
海の向こうのセナ。
「(家族……ファミリー……)」
まだ流れ星を探し、孤の中にある星屑を探しまわっているパーチェの声。
呆れているけど、どこか楽しそうなデビトとアッシュ。
優しい笑顔を見せたルカ。
今、ユエは満たされていると本気で思えた。
「あ、ほらまた!!」
「本当ですね」
「さすが流星群だ」
「案外綺麗なもんだな」
結局、今度はルカも混ざって願い事を捧げる。
アッシュとデビトは手を合わせることはなかったが、優しく見守ってくれていた。
「(―――どうか……。どうかずっと……)」
願わずにはいられない、何よりもの想いだった。
流星群 × 幼馴染
「( みんなと一緒にいられますように )」
*
ほのぼのとしてるけど、どこか優しいお話を目指して。
Prequel Dayを書くにあたり、1番最初に思いついたのはこの話でした。
広大な自然現象を見つめて、自分の小ささを思い知りつつ、世界の広さを知る。
その世界で出会えた確立と、深く関わり合った5人の幼馴染のお話。
誰とも糖度が高くないけれど、書いてて優しい気持ちになれました。
これを持ちまして、Prequel Dayは終了です。
お付き合いありがとうございました!
さて。
伏線を随分前から入れてたんですが、気が付きましたでしょうか?笑
その辺は全て、11月開始の最終章で拾われるものです。
ついに最強ヒロインシリーズも第3弾までやってきました。
最終章…企画で集めた12人に暴れていただきましょう。笑
同時に予告編が公開されておりますので、よかったら確認してください。
前日談、お付き合いありがとうございました!
有輝
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