03. 攫われたお嬢
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「―――……見つけた」
―――アルカナファミリア……館内・襲撃にあった部屋。
「この意匠にエメラルド……。航海日誌にあった通りだ。間違いない」
侵入したのは、たった一人。銀髪の男だった。
部屋の奥に隠してあった装飾された箱を持ち彼は笑う。
「これを持ちかえれば、すべてが元の鞘に収まる」
03.攫われたお嬢
用は済んだ。
さっさと退くか、と部屋の入り口に背を向けた時だ。
大きな音とともに、扉が開け放たれた。
「!」
現れたのは従者の指示を聞かずに乗り込んできた、お嬢様………――
「また客か……。そう簡単にこれは渡してくれねえか」
「アナタ……」
フェリチータが箱を持ち、立ち去ろうとしている男にナイフを構える。
「今すぐ、その箱を置きなさい」
「何が入っているのか。お前は、知ってるのか?」
「……」
「……はっ、いいぜ。かかってこいよ。取り返したいんだろ?」
男が告げた言葉に、フェリチータが唇を噛み締めて、踏み切った。
「やぁっ!」
蹴りを1発浴びせ、男を怯ませる。
なんとか交わした彼だったが、目を細めて…フェリチータを見つめた。
「さっきの警備のやつより、少しはできるみたいだな……」
「っ…」
「今度は俺の番だ……避けてみやがれ!!」
「っ!」
可憐に交わしたフェリチータが、続けてナイフを投げる。
が、男もそう簡単にやられるはずはない。
何せこのアルカナファミリアの館に乗り込んできたのだから。
「馬鹿にしやがって……」
男は、動きを止めて、腰につきさしていた剣を……抜いた。
「おもしろい。そっちがナイフなら、こっちは剣だ」
「ぐ……」
「行くぜ…うらぁ!!」
「(剣の届く範囲内に、入らなければ……っ)」
交わせると思ったのだが、こちらが動くよりも素早く……―――男がフェリチータを射止めた。
「っ!?」
「ハッ……お前、弱いな」
「きゃぁぁ……ッ!!」
ガタンッと、その部屋の本棚に突き飛ばされて背中を打ちつける。
何とか立ち上がり、横腹を押さえながら……もう1度男と対峙した時だ。
「お嬢様!!」
「お嬢ッ!」
部屋の扉を突き破り、参戦してくれたのは自分の仲間……ルカとパーチェ。
「お嬢!大丈夫!?」
パーチェがフェリチータに近寄ろうと、足を踏み出した時だ。
現れた参戦者に、男は一瞬口角をあげて、フェリチータを手繰り寄せる。
「やっ……」
「お嬢様!!」
「っと、お前らはそこから一歩も動くな。動いたらこの女に、俺の剣を突き刺す」
「く……!卑怯な……!」
「ルカ……パーチェ……ッ」
盾に取られてしまったフェリチータに、ルカとパーチェが素直に足を止める。
なんとか抵抗を繰り返したが、男の力にフェリチータが敵うことはなく、押さえつけられてしまう…。
「抵抗は無駄だ」
「お嬢をどうする気だ!」
「こいつ?こいつは……人質だな。俺がこの館を出るまでの」
「放して……ッ」
「大人しくしてろ。イチゴ頭」
暴れるフェリチータのせいで、男の手の中から箱が零れ落ちそうになる。
「っと……」
「その箱は……!」
ルカが、男の手に渡ってしまった箱を見て、顔色を変えた。
「その箱は渡しません!」
「へぇ。警備の奴らとイチゴ頭はわかってなかったみたいだが、お前は知ってるのか……。この箱の中身が何かを」
ルカの反応を見て、男が笑う。
「いたぞー!あの部屋だーっ!」
「!」
廊下の奥から、侵入者ということを聞きつけた棍棒の部下たちの声が聞こえてきた。
さすがに捕まるわけにはいかないと、男が退散の意を見せる……。
「無駄話が過ぎたな。弱い奴ほど群れたがる」
「うぐ……っ」
同時に、フェリチータを運びやすいように腹部を思い切り殴り、気を失わせた。
「お嬢様!!」
「動くなって言っただろ?俺がこの箱を持ちかえるまで、イチゴ頭は預かるぜ」
「お前の目的は、一体なんだ!?」
パーチェが、フェリチータを抱きかかえ、背をむけつつある男に尋ねる。
「あぁ?この箱を持ちかえることだ」
「その箱に何が入っているのか……知っているのですか?」
「知ってるも何もタロッコ……だろ?」
「!」
男が箱の中身を知っている事にも驚いたが、更に続けられた言葉にもルカは驚いた。
「タロッコはもともと俺のモノだ。返してもらうぜ」
「えぇ!?どうゆうこと!?」
何とか現状を立てなおそうと、ルカがそっと手を構え、錬金術を繰り出そうとしたが……―――
「ばれてんだよ!!錬金術師が小賢しいッ!!」
「うわぁッッ!!」
男が“させるか……”とルカとパーチェに向けてこちらも錬金術を繰り出した。
「呆けてんなよ、帽子!もう1つ喰らいやがれ!!」
「ぐぅっ!!」
「危ない、ルカッ!!」
「じゃあな!」
パーチェが傷を負ったルカを庇う間に、男はその部屋のガラスを割り……外へと逃げ出した。
「しまった、お嬢!!」
パーチェが窓の外へと、男の行方を確認しようと視線を向ける。
「ルカ!あの男がふわっと飛んで、着地した!」
「ここは3階ですよ!?逃がすわけにはいきません!!」
「親分ッ!」
部屋にやってきた棍棒の部下達が、2人の様子に何かがおかしいことを察する。
ど、どうしよう!? とわたわたしている棍棒の部下を抜いて、1人の少女が飛び出した。
「な……っ」
「え……―――」
迷いなく割れた窓から、先程男がやってのけたように、空へと飛んだのは……
「ユエ!?」
「ちょ、ユエッッ!!」
追跡には、ここからが一番の最短距離だッ!!とでも言うように、空中へ飛び出し、地を目指す。
「ユエ……」
「パーチェ、棍棒のみなさん!あなた達は館内の門をすべて封じてください!」
「ルカは?」
飛んだユエの方向を見つつ、ルカも静かに……そして怒りをあらわにしながら、告げた。
「私は…――私は、お嬢様を追いますッ!!」
「わかった!!急いで門を封鎖しろ!!」
「はいっ!!」
棍棒のメンバーが急いで部屋を飛び出し、門がある各箇所へと足を赴けた……。
「お嬢様……っ」
ルカも部屋をと飛びだし、逃げられた男の行方を追い、1階の庭の方向へと向かった……。
◇◆◇◆◇
「広い屋敷だな……。ここはどこだ?」
侵入した男がフェリチータを抱えたまま、館の1階をうろうろとしていた。
きょろきょろと出口を探してはみるものの、見つからない。
溜息混じりに“めんどくせえな”と吐き出すと同時に、背後で声。
「見つけたゼ、侵入者」
「っ!」
振り返れば、いたのは隻眼の男・デビト……―――
「追っ手か?面倒だな」
フェリチータを支えていない方の手で、デビトへと攻撃を繰り出した。
「喰らいなッ!!」
「ハ……ッ」
「!?」
だが、攻撃は彼にあたることはなかった。
姿が消え、辺りに一瞬だけ紫の光が広がる……。
「なんだと……」
「バンビーナを抱いてくには、まだケツが青いんじゃねェのかテメーはよォ!?」
「チッ……」
現れた背後で、デビトが構えた銃口が男を捕えていた。
撃たれると思ったが、更に追って来たパーチェにより、制止の言葉が飛んだ。
「デビトっ!撃っちゃダメ!お嬢に当たっちゃう!」
「当てねーよ!チッ……めんどくせえな」
「……」
パーチェとデビトがやり取りをしている間にも、銀髪の男は庭へと駆けだした。
「んなら、パーチェは逆側に回れ!!」
「了解!」
挟み撃ちにしようと試みたが、男の逃げる速度も速く、追いかけっこが再び始まった。