23. 彼方へ 【最終話】
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「アルカナファミリア……。これが、タロッコを制した自警組織」
陽が昇り、朝日に迎えられたヴァスチェロ・ファンタズマ号。
そのマストの上。
1人の少女が姿を見せていた。
「いいものを見せていただきました」
黒髪の碧眼の少女。
表情は無であり、いつもの空気を取り戻すファミリーを見つめる。
「……これは、いただいていきます」
少女が足を踏み出す。
空中であるにも関わらず、彼女はそこに地があるように…落下することもなく立っていた。
その手には……―――4枚の、カード。
「こちら側に、このカードの契約者が出現するのは困りますので」
彼らの戦いを見届けた少女は……そのまま姿を消した。
―――4枚のタロッコと共に。
23. 彼方へ
航路を全速力で進み、その日のシエスタ時にはレガーロ、アルカナファミリアの館に戻って来た一同。
その中には賑やかな、新たなメンバーを加えていた。
無事に帰還した彼らを待っていたのはこの数日間、心配をしつつ、彼らを信じていたモンドとスミレだ。
「よく戻った!我がファミリー!」
「パーパ!」
「ただいま戻りました。パーパ」
リベルタとノヴァがパーパとマンマに駆け寄る。
フェリチータも涙ぐみながら、両親に近付く。
そんな姿を、ユエは幼馴染、そしてジョーリィと共に見守っていた。
フェリチータに抱擁を拒絶されたパーパに至っては、別の意味で涙ぐみながら残りのメンバーに視線を向ける。
そして目に止めたのは、新たな仲間。
「よく来たな、アッシュ」
モンドの執務室に全員が勢揃いし、迎え入れられたのは、孤独であった魔術師。
「話を聞いて、会えるのを楽しみにしていたわ」
スミレがにこやかに告げる。
歓迎ムードを受けて、アッシュは小さな溜息をついた。
「歓迎はありがたいが……――先に言っておく。俺はアルカナファミリアに入るつもりはない」
「な…、オイっアッシュ!?」
さすがに、彼のいきなり切り出した言葉にリベルタとノヴァが声をあげる。
ユエに至っては、部屋の扉に近い壁で背をついて笑っていた。
“アッシュらしいなぁ”とでも言うように。
「タロッコを無断で持って行ったのは悪かった。あと、部下達に危害を加えたのも、悪かった」
「…」
「それだけだ」
アッシュが言い切ったのに対して、モンドが口角をあげる。
ルカとパーチェは、アッシュの断言に顔を見合わせた。
「聞いたかもしれないが、タロッコはヴァスチェロ・ファンタズマに置く方が争いは減ると思う」
だが、そこからアッシュはふっ…と微笑を浮かべ、視線だけを背後のユエに向ける。
「けど、今は一度返してやる」
「アッシュ……」
「コイツが…―――」
そこでユエをきちんと見つめたアッシュが、続けた。
「このじゃじゃ馬が納まる組織を見るのに、いい機会でもあるしな」
「じゃじゃ馬言うな」
「うるせぇひょろチビ」
言い争いを始めるといってもお互いが真顔で簡単に流すような態度に、フェリチータが少し笑ってしまった。
あのユエがアッシュと、こんなやりとりをしているのが新鮮でたまらなかったからだ。
「アッシュ、我々の家族になる気はないのか?」
モンドが確認のように尋ねれば、アッシュはユエから向き直り……少し間を置いて答えた。
「今はな」
アッシュの答えにユエが少しだけ表情を変える。
「そうか……。だが、お前は既にタロッコと契約してるのだろう?」
「あぁ。それがどうした?」
モンドはそれが聞けて、安心した。というように笑う。
「どうもせん。それを持つ限り、我々はアッシュを家族としてみるというだけの話だ」
「タロッコを持っていて家族として扱われても、本当に組織の一員になるかどうかは自分の決めることよ?」
マンマが告げた言葉は、ユエを想ってのものだったのだろう。
直後にスミレは、ユエを見つめて微笑んだ。
それに気付いた少女は“敵わないなぁ”というように眉をさげて、笑みで応える。
「何勝手なこと言ってんだっ!」
「勝手なことではない。アルカナファミリアはそうゆう組織だ」
モンドが言い放った言葉に、ユエの隣いたデビトが鼻で笑った。
「それからもう1つ。お前に言っておく」
「な、なんだよ」
モンドが真剣な表情でアッシュに向き直ったので、彼も構えてしまった。
「俺の目が黒いうちは、娘は嫁にやらん!!いいな!!!」
「………はぁ」
「ぷっ」
溜息をついたアッシュと、堪え切れずに噴き出したユエ。
ユエの反応に、呆れつつ頬を膨らませたフェリチータが彼女に視線を飛ばした。
“笑うな”と言いたいらしい。
口では伝えなかったが、通じるように“ごめんごめん…”と強く心に念じる。
「なんでお前みたいな親馬鹿に、ヨシュアみたいな出来た息子がいたんだ?」
「おお!ヨシュアは“できた息子”というからには、何かしらの美談があるのだろう?聞かせてくれ!」
アッシュの嫌味もサラッと流し、モンドが身を乗り出す勢いで食いついてくる。
堪え切れずに、ついにユエは隠そうとせずにアッシュとモンドのやり取りから目を逸らしてと笑い始めた。
「ユエ…!」
「ごめん…っ、だっておかしくて…!」
フェリチータがぷぅと頬を膨らまし、ユエにもう一度忠告すれば、彼女は半分涙目になりながら笑っている。
何がそんなにオカシイのかが分からなかったが、恐らくヨシュアの父がモンドである。ということを考えた時のギャップが強かったのだろう。
そんな彼の娘がフェリチータであるということも。
「はッ、なんで俺が」
アッシュが鼻にかけてモンドの言葉を流す。
すると、黙っていたノヴァが拳を震わせながら口を挟みだした。
「さっきから黙っていたが……もう限界だ!アッシュ!お前、パーパに対して無礼な口が過ぎるぞ!!」
「ぁあ!?別に俺はアルカナファミリアの一員じゃねェし。礼儀尽くす必要ないだろ!」
「あのリベルタだって、ここまで酷くはなかった!」
「なっ、俺のこと引き合いに出すのやめろよなッ!!」
ノヴァとアッシュが対峙して口論を始めたかと思えば、その中にリベルタが参戦する。
「おーおー。お子様たちは元気があっていいねェ。仲良く外でやってきなァ」
と思いきや、更にそこに口を挟み出したのがデビト。
「はぁ?アッシュってデビトと同じくらいの年なんじゃねェの?」
「ぷ…はははっっ!!」
「一緒にすんな。俺様ほどのセクシャルさはないだろーが。あと、笑うなユエ」
「だって…っ…あははっ!!」
「ふざけんな。こっちの方が一緒にされたくねェよ」
まさか、こんな日が来るなんて思ってなかった。
フェリチータが笑いが止まらない!とお腹を押さえて笑顔を見せるユエの心を感じた。
「どちらにしてもこれ以上、ファミリーに野獣は必要ありませんね」
ルカが制止するように入れば、ノヴァが話を元に戻す。
「それで、お前の歳は?」
「17歳だけど、なんか文句あんのか?」
「お~。お嬢と同い年だ!」
「と…年下ぁ!?」
パーチェが感心しつつ、フェリチータと同い年のアッシュを見つめ、驚きの結果にリベルタがあたふたし始めた。
「はぁ?お前それで年上だったのか?ヒヨコ頭」
「人が感傷に浸ってるところを、持ちネタみたいに使うな!!」
「感傷……そんな繊細なタマかよ」
「んだとー!?」
「うるさい!!この部屋から出て行け2人共!!」
ついには耐えきれなくなったノヴァが、その場で叫ぶ。
フェリチータが3人のやり取りを見つつ、ユエと同じく…笑顔になった。
「やかましさでは、いい勝負だぞ。ノヴァ」
ダンテが豪快に笑えば、ノヴァが“な…っ”と言葉を詰まらせる。
一旦止んだ会話の中に、隙あり。というようにジョーリィが口を挟んだ。
「ところでモンド、仮にアッシュをファミリーの一員にするとしたら、どこに迎えるつもりだ?」
「確かに持ち場を考えなければいかん」
「はっ!!今入るつもりはねぇって言っただろうが。同じ黒集団なら、カラスの群れの方がマシだ」
アッシュの発言に、“相変わらずだな”とユエがアッシュを見つめる。
端で大人しくしていたパーチェが、ユエを巻き込みつつ、幼馴染に告げた。
「口の悪さだと、デビトといい勝負だね。知的なデビトってところかな?」
「ンなことねェだろォ。この程度の口汚ねェ奴なら金貨にゴロゴロしてらァ」
「あ。どうせ決めていただくなら、ユエの所属もそろそろ決めてもらうのはどうでしょう?」
「だから、あたしは永久シエスタ組だって」
「お、いいねェ。俺もそっちに移動するしかねェな」
「え、デビトだけユエと一緒はズルい!オレもオレも!」
「パーチェ!デビト!アナタ達、幹部という立場で何を言っているんですか!」
今度はこちらでガヤガヤ騒ぎ始めたのを見て、アッシュが4人に目を向ける。