22. アイユート

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第12のカードの宿主




「リベルタ……っ!」


「(俺はまだ、ヨシュアと話し足りない……ッ!俺は…俺は……ッ!!)」



踏み出した愚者の放つ言霊が、力を解放する時。
額のスティグマータと共に、辺り一面が彼の光に包まれる。



「ペンスィエーロ・レアリッザーレ…ッ!!!」



言葉の矛先は、ヨシュア。
いや、彼の中にいる正義へ向かう。
アッシュやユエが見つめる中、リベルタは唱えた。



「離れろォォォォォオオオオ!!!」





22. アイユート





もし、この航海を続けもう1度息子に巡り合えるのであれば。
私は、彼にまず謝らなければならない。
孤独にしてしまったことを。
そして君の母親がどれだけ素晴らしい人だったかを伝えることも、そして何より傍にいることすらできなかったことを。


リベルタ……。
私の…大切な息子…。
君をいつまででも思い続けているよ……。



【ヨシュア!】


【オイ、ヨシュア】



そして誇るべき、もう2人の子共たち。


【アッシュ。私の息子になってくれないか?私がいなくなる日に、また涙を流してくれ】


【ヨシュア……】


ユエも。約束してくれるかい?】


【娘になること……?】


【えぇ】


【……うん!】



私は……―――幸せだ。








紡がれた言霊は、正義の力を上回った。
光に包まれたヨシュアと、分離をした正義のタロッコ。


リベルタは肩で息をしながら、よろけて柱に手をついた。
しっかり視界を定めれば元に戻ったヨシュアの姿がある。



「ヨシュア……」



リベルタの功績を見て、ジョーリィが“やはりな…”というように笑う。
ダンテやノヴァ、そしてパーチェたちも起きあがり、リベルタとヨシュアの姿を見つめた。



「よかった……」



フェリチータも、ルカを支えながらリベルタの姿に感動の表情を見せていた。



「さすが……」


「アイツだったのか。本当の息子って」



アッシュとユエもなんとか立ちあがり、2人を見つめる。
ゆっくりしている暇もなく、分離した正義の方が光に包まれていった。



「リベルタ」



彼の名前を呼び、振り返られるきっかけになったのは船長室からタロッコを持ってきてくれたデビトだった。



「必要だろォ?」



手渡されたタロッコの1枚が、正義に反応する。
ラ・ジュスティツィア。
黎明の空に、黄色い光が緩やかに渦巻き天へと還りはじめた。



「これで正義は、元の位置に戻れた」


「あぁ。タロッコも回収できたし、一件落着というところか」



腕を押さえてジョーリィのもとまでやって来たダンテに、彼は葉巻に火をつける。



「不様だな。ヨシュア……」



そう言いつつも、助けられた旧知の仲の彼にジョーリィは口角をゆっくり上げたのだった。



「リベルタ……」


「ヨシュア……」



正義のタロッコがカードに戻っていき、船は大きな光に包まれていた。
そこで、親子は対面を果たす。



「月日は長くかかりましたが……こうして君に出会えた。私はとても嬉しい」


「ヨシュア、思い出したのか……?」


「えぇ、何故でしょう。タロッコから解放されたからでしょうか?……思い出すことができました」



その姿……息子と対面を果たしているヨシュアを見つめているアッシュ。
そしてユエ



「俺だって……」



リベルタにはまだ少し戸惑いがあった。
だが先日、船長室で話をした時のヨシュアとのやりとりを思い出す。
そして……―――微笑みを浮かべてしまうのだった。



「ヨシュアに会えてよかった。こんな形でなきゃ、もっとよかったけど……」


「私は、君に恨まれてもいい立場だ。なのに、今でも……会えてよかったと言ってくれるんですね」


「確かに、小さい頃はスティグマータのせいで施設に入って大変な目に遭ったりもしたけど……でもヨシュアを恨むなんて思わない」



リベルタが困ったような、照れた顔で笑っている。



「だって、俺のこと考えてくれてたんだろ?だからここにいて……」


「……ありがとう。リベルタ」



アッシュとユエが顔を見合わせ、微笑む。



「なぁ、ヨシュア。もう少しだけ俺の家族のこと、教えてくれよ」



そこでヨシュアは、リベルタがそんなことを言うと思ってなかったので、少し目を見開く。
だが、伝えさせてくれるのか……と、感慨深く瞳を伏せた。



「私の妻、そして君の母であるキアラは愛に溢れた女性だった。彼女も君を、とても大切にしていた。君は1人ではなかったんだ」


「そっか……」


「そして今も1人ではない。そうだね?」



ヨシュアが背後でこちらを見守るファミリーに視線を向けた。
フェリチータと、その横でまだ少し苦しそうにしているルカ。
ケガにも負けずに笑っているパーチェ、“まったく…”と言いだしそうなノヴァの微笑み。
ダンテのケガもひどかったが、ジョーリィの横で豪快に笑っている。
デビトも甲板の端で、タロッコを渡してくれたままの位置で、こちらを見ていた。


そして、すぐ後ろにはアッシュとユエ



「あぁ……。俺の傍には頼りになるファミリーや、俺を気にかけてくれる奴がいっぱいいるんだ!」


「ふふ……それは頼もしいね」



ヨシュアもリベルタの背後にいる2人に視線を向けた。



「アッシュ、ユエ……」


「ヨシュア……」


「…」


「今までありがとう…」



アッシュは眉を下げ笑顔を見せたが、ユエは少しだけ俯いた。



「俺、もしかしたらお前はずっとこの船に縛られるんじゃないかって心配してた。だから……」



アッシュがヨシュアに、少しだけ震える声で言う。



「よかったな……」


「……アッシュ。船長室の引き出しの一番奥に、君宛の手紙がある。読んでくれ」



そこまで告げると、今度はヨシュアがユエに向き直る。



「……全てを終えたんだね、ユエ


「……うん」


「とても素敵なモノを手に入れたみたいで、安心しました」



ヨシュアが何を指しているのかは、言わずとも分かった。



「君に家族が出来て本当によかった」


「……うん」


「いつも傍に居てくれる者達を大事にしてください。彼らは必ず、君の力になる」



そうだ。
ユエがどれだけ突っ込んでいったとしても、彼らは誰ひとり、自分の勝手な行動を見ても見捨てたりなんてしなかった。
もちろん怒られたり、衝突はあったが…それは思われてこそのもの。



「アッシュ、ユエ



ぽんっ。とヨシュアが2人の頭に手を乗せた。



「私にとっては、君たちも自慢の息子と娘だ」


「っ…」


「ヨシュア…」


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