17. 在りし日 君を想いて

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第12のカードの宿主




時と場所、そしてメンバーも変わり、ユエとノヴァと離れた幼馴染組。


ルカがユエに手を出してしまった直後。



「ルカちゃん……」


「………はい」


「おい、ルカ」


「………はい」


「そんなに落ち込まなくてもいいんじゃない?」


「お前、自分で叩いたくせに、後々そーやって後悔するならやるなよなァ」


「……だって…だって……」



ずーん…と絵で表せそうなくらい、ルカに暗いオーラが纏わりつく。



「いくら…ユエが間違っているといっても、彼女は女性です……。してしまったことはもうどうにもなりませんけど…けど…けどっ…!」



ぶわぁっ!と涙を流しながら、その場に四つん這いになり項垂れる彼に、パーチェとデビトが顔を見合わせる。



「いつもみなさんに言っていた“ユエは女性なんです!”発言を…自分で忘れて…うぅ…もう会わす顔がありません…。あんな…あんな顔されて……」


「ダメだね、これは」


「だなァ。行こうぜ」


「あ、ちょっと待って下さい!置いていかないでくださいよっ!」



もうほおっておけ、と2人はルカをそのまま歩き出す。


急いでルカが立ち上がり、2人を追いかけた所で……彼は、不審な視線を感じ取った。



「!」



それは、間違えなく背後からで。


振り返ると…



「―――……」



黒い髪…流れるような細く繊細な、腰まであるそれ。


そして印象的な碧い瞳が…こちらを捕えていた。


すらっとした…その女性は、自分達と似た黒い服を着ていた…。


無表情という顔でこちらを見つめる碧に、ルカが足を止める。



「……」


「おい、ルカ!本当置いてくぞ」


「ルカちゃーん」



デビトとパーチェが、早く来いと促したので一瞬視線を外した。



「デビト!パーチェ!ちょっと!」



ルカが思わず、彼女の正体を確認しようと2人に声をかけ、視線を元に戻したが…



「!?」



そこに…碧い瞳の少女の姿は、もうなかった。





17. 在りし日 君を想いて





「なんだァ、ルカ?」


「どうかしたの?」


「い、今……」



ルカが少女が消えた方向を見つめ、声を漏らしたが…少女の姿はもうないので、何も言えず。



「…げ、幻覚でしょうか…」


「なんかいたの?」


「え、えぇ…。髪の長い…碧い眼の女性が…」


「はぁ?」



パーチェとデビトもルカの視線を追ったが、2人にはただの廊下にしか見えなかった。



「何もないよ?」


「ルカ、ついにユエを殴ったのが原因でイカレタか」


「殴ってません!それにイカレテません!!」



ルカが瞬時にデビトに掴みかかる勢いで言い返したが、後者に関しては言い返せなかった。



「幽霊船だって言うからね~、この船。ルカちゃん、幽霊みちゃったんじゃない?」


「ぱ、パーチェ…冗談はやめてください」


「だァが、ルカの頭がイカレテなかったとしてェ?消える存在っつったら、ユーレイくらいだよなァ?」


「…………」



否めなかった。



「ま、とりあえず襲われなかっただけいいんじゃァね?」


「そーだよ、本当に幽霊だったら大変だしさ」


「…そ、そうです……よね…」



2人がわざわざ戻ってきてくれた道をもう一度進んでいくので、ルカは仕方なく振り返り、何もないことをもう一度確認してから2人を追った。


その時だ。
ふとユエやノヴァたちと同じ異変を感じ取る。


聞きとった音は…数日間、夜になると耳に障るものだった。



「夜になりやがったか…」


「…来るよ」



デビトとパーチェが構えを取る。


ルカも1番後方で、ナイフを構えた。


カシャン…カシャン…と音を立てて、3人の前には大量の骸骨…。


そして、大群の1番後方には……―――。



「運命の輪…ッ」


「出たな…モノクル野郎」


「親玉登場ってね…」



骸骨となったヨシュアの姿。


ここで仕留める、と3人が目を細め…同時に踵を蹴った。



「トラコーポ・スコンパリーレ」


「ラルモニア…デッラ・ルーチェ!!」



ルカの錬金術が誰よりも先に骸骨へと突っ込んでいく。


デビトはその間に姿を消し、パーチェは拳を振るい続けた。



「おりゃぁぁぁ!!」



頭がフッ飛び、倒れ行く骸骨や骨が折れて、立ち上がれなくなる骸骨まで。


パーチェにより無残に破壊されていく骸骨の中に、銃声も響き渡る。


数は確実に減らしているが、どこからともなく湧いてくる奴らに、3人は手こずった。


そして…動きだしたのは…―――。



「ハァァァァァァアアアア」


「!」


「「パーチェ!!」」



骸骨を素手で仕留めていたパーチェの元に、骸骨と化したヨシュアが剣を一直線に向けてきたのだ。


彼の武器は素手と力。


剣をそのまま向けられてしまえば、ケガをするのは目に見えている。



「しまった…ッ!」



パーチェがかわそうとしたが、気付いた時にはもう遅かった。


顔を背け、なんとか体がもてば…と考えた時だ。


風の素早さで、誰かが前に出た。


同時に金属がぶつかり合う音が響く。



「―――……え…っ?」



目を開けて、そこにいたのは…



「ノヴァ…!」



ノヴァが全力で、ヨシュアの攻撃を止めていた。



「ぐっ…なんて力だ…ッ」



キーンッと音を響かせ、ノヴァがヨシュアと間合いをとる。


ルカとデビトがパーチェが無事だったことに安堵し、同時にもう1人…現れた人物にも目を向けた。



ユエ…!」



ルカより後ろから、骸骨たちに雷を浴びせ、屈服させていく彼女。


まだ頬は赤く腫れていたが、罪悪感に捕らわれている暇はない。



「ヨシュア!!!」



ユエが背後から叫べば、声に反応するようにヨシュアが動きを少しだけ…止めた。



「―――……ユエ………っ…、…?」



動きがとまったことに、ノヴァがまた前へと駆けだす。


デビトも銃を乱射しつつ、ヨシュアを抑え込む方法を考えていた。


それはパーチェやルカも同じで…。



「ヨシュア…目を覚まして…ッ」



ユエが願ったことで、通じればと思ったがそう簡単にいくはずがない。


ヨシュアは再び暴れ始めた。



「ガァァァッァァァアアアアアッ」


「ッ!」



今度はルカへ向けて剣を翳す彼に、ノヴァが追う。


デビトも片手は骸骨へ、もう一方はヨシュアへ狙いを定めた。


もちろん、ルカ自身もナイフをヨシュアへ投げつけるが…。



「ルカッ」



簡単に弾き返されてしまい、ルカが顔をしかめた。


ノヴァが間に合わない…と踏んだと同時にルカも錬金術を構えようとしたが…



「“鳴轟”」



呟かれた言葉は、ユエのもの。


ルカの前に、ある一点から音響が成され空気を振動させるように強い力でヨシュアが押し戻された。



ユエ…っ」



ルカが思わず…自分が手をあげてしまったユエの顔を見つめる。


隣に並んだ小柄な少女は…状況を整理しているようだった。



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