darling
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※ こちらの作品は、暴力表現の記載があります。
原作キャラ→夢主への暴力表現ですので、現時点で受け付けできない方は必ずお戻りください。
読んでからの誹謗中傷は受け付けません。
当方の自己満足を公開しておりますので責任も負えません。
以上を踏まえて、お付き合いいただける方のみお進みくださいませ。
ご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
「例えばさ、君がいなくなったところで誰が泣くの?」
飛び出した言葉は、私の胸を突き刺した。刺さったままの言葉のナイフは、そのまま抉られて、傷口から見えない血を溢れ出させる。
頬に残った痛み。こちらは本物。彼の嫉妬心を刺激してしまったせいで、先程喰らった一撃だ。平手打ちだったのでヒリヒリとした鋭い痛みがまだ残っている。
「君ってさ、本当にバカだよね」
「ごめんなさい……」
「何度も何度も言ったのに、どうしてわかってくれないのかな」
ほとほと呆れるよ。本当に。
飛んできた嫌味がこれまた痛い。
床に付いた手も摩擦で傷ついて赤みを帯びている。どちらかといえば、擦ったせいで、頬より手が痛いかもしれない。
目の前で私を冷たく見下ろしている男は、私の疲労も気にせずに嘲笑うだけ。
「ここで殺されたいの?」
「ごめんなさい……」
「あぁ、でも簡単に殺したらつまらないよね。僕、一応これでも君のことアイシテルしさ?」
「もう……やめて……っ」
ただ、怖い。
愛なんて見えない。どこをどうとっても、私は快楽与え、物理的な攻撃を受け止めストレスを発散させる機会だ。人として扱われていない。
たけどそれも、彼がこうして理性を失い怒りに溺れている時だけ。やりすごせばいい。そうしたら、いつもの彼に戻ってくれるから。
あと少し、あと少しだけ耐えればいい。あと、少しだけ……。
「土方さんや、斎藤くんになんて唆されたか知らないけどさ」
「違う、そんなこと……」
「違う?どうしてそんなこと言えるの?」
「痛……ッ」
「言い訳なんて聞きたくないよ。現に君はこうして僕を嫉妬させるようなことをして帰ってきたでしょ?」
「ごめ、ん……な……痛、ァァアッ!」
髪を引かれて、容赦なく重力をかけられた。痛い、声が勝手に叫んでいた。
でも本当に痛いのは物理的な痛みじゃない。彼からの精神的苦痛の方が痛い。何十倍も、何百倍も。故に、彼を思ってか、溢れ出した涙は生理的なものではなかった気がする。
「痛くしてるんだよ。当たり前じゃない」
「もう……やめ、ほんとうに……!ごめんなさい……ッ」
「うるさいなぁ。それ、聞き飽きたよ」
もう一発、もう一発。あと一撃、あと……一撃。
耐えて、耐えて耐えて耐えて。
ボロボロにされた揚句、彼は私を小さな部屋に閉じ込めた。
会社帰り。お風呂もご飯も与えてはもらえない。
事の発端は、残業で遅くなった私を家の近くまで送ってくれた土方部長のその行為。
途中のコンビニに寄った時、たまたま会った斎藤先輩も加わり、家までの道を他愛もなく話しながら歩いていた。三人で。
その場面を運悪く、同棲している彼に見られてしまったのだ。
嫉妬深いことは付き合った頃から知っていた。付き合いも長い。独占欲も強いし、怒るとこれまた厄介だ。
だけど、土方部長とも斎藤先輩とも彼が心配するようなことは何もない。会社の、仕事の最低限の付き合いをしているだけで、嫉妬の対象に入れられるとこちらとしても支障が出てしまう。理解してくれていると思った。彼なら、察してくれると思っていた。
「どうして……」
手をあげられたのは初めてではない。
普段はとても優しい。けれど、稀にあるのだ。彼の情緒不安定な部分というか、歪んだ部分が現れて、私をこうして痛めつける。頻度としては高くないのだけれど、現れると厄介で、つけられた跡も何もかも隠すことが出来なくなる。
もう何度も繰り返して、何度も痛めつけられて、いつまで続けていくのか自問自答を繰り返すのに、逃げだせずにいた。優しい彼のことを思ってしまうと、どうしてもサヨナラに踏み出すことが出来なかった。そのくせに、彼のことが無性に怖くなる。
朝が来れば、元に戻ってくれるだろうか。この扉を開けて、“ごめんね”と謝ってくれるだろうか。それを期待した私がいた。
眠ることも出来ない。いつ、扉一枚蹴りやぶって彼がまた手をあげてくるのかわからない。最近落ち着いてきたと思って油断していた。あの時、私が先輩や部長に断りを入れればよかったんだ。
“彼氏が嫌がるので”って。
それが言えない私が悪い。私がいけない。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
口で転がしていた言葉が木霊した。同時にスマートフォンのバイブが鳴る。何度も、何度も。
届くラインの着信を見て、また身震いが止まらなくなる。
“許さないよ、一生”
“許さない”
“なんなら僕が殺してあげる”
“アイシテル”
夜が明けた。
閉めることすら出来なかったカーテンの隙間から朝陽が射しこむ。
体を抱きかかえて眠っていた私は、膝から顔をあげて光を見つめていた。
体中が痛い。きっと鏡で見なくても酷い顔をしているのはわかっている。どうしてこうなってしまったんだろう。また溢れ出した涙を止める術さえ知らぬまま、真横の扉から施錠が解除される音を聞き届けた。
「……総……司…、」
彼が、入ってくると思った。
だけど、いくら待っても扉が開く気配はない。
痛む体をようやく奮い立たせて、ドアノブに手をかけた。
いつも通りの殺風景の私たちの部屋。そこにないのは彼の姿だけ。
あぁ、仕事に行ったんだろうな。私を置いて。玄関に靴がないもの。サイドにある靴棚の上に飾られた、付き合い始めた頃の写真だけが幸せそうに微笑んでいた。
「……なに……してんだろう」
微笑む彼と、誰が見ても幸せボケしている私。
あぁ、私こんな顔できたんだっけ。今はもう怯えるだけで彼にこんな顔を向けることすらできない。
「すっかり……変わり、果てちゃって……なんか……」
こんなはずじゃなかった。
こんなことになるはずじゃなかった。
今、全ての扉のドアに鍵はかかっていない。なんだかそれだけのことが自由に思えた。
光の向こうから手招きする。“おいで”と。
あぁ、誰に助けを求めよう。
彼を愛しているのは間違いない。それでも、こんなに胸が張り裂けて、痛くてどうしようもないことを何度も繰り返して、その先にあるものは何だろう。何もないはず。何も、残されないはず。
避けられない終わり、全てが落ちる。
何も持たずに駈け出した。背後で硝子が割れる音がした。振り返ることもしなかった。
もう耐えられない。笑って終わりにすることが出来るのは、もう随分と前に過ぎ去ってしまった。
ねぇ。
ねぇ。
ねぇ、愛していたんだよ。
ねぇ、ねぇ、ねぇ。
愛しているのに。
こんな終わり方、あるんだね。
darling
随分と前から、僕は変わってしまっていた。
狂った愛情、歪んだ愛情というのは、まさにこのことだろう。
傷付けすぎた代償に、僕は全てを失った。いつかこうなることはわかっていたのに、目の前に落ちてコナゴナになっていた写真立てを見つめたら、どうにも言葉は出て来なかった。
喉につっかえて、どうしても声にならない。
それでいて、どこか安心する。もう、彼女をこの手で傷つけることはないんだと。
「そう……君は、これでいいんだよ……」
愛している。
今でも変わらない。
だけど、こうもうまくいかないなんて、僕はやっぱり狂っている。
愛しいからこそ傷付ける、そんな理不尽が通用するわけもなく。
残された硝子の破片を呑み込んだように、心臓がチクチクと鈍い痛みを持って、いつまでも消えてくれることはなかった。
***
書いた後に、どうしてこの曲をチョイスしちゃったんだろう…と苦悩しました(笑)
聞いている分には納得できる曲なんですが、これを小説にするというのが難しかった。しかも短編でというのが…。
これ聞いてるだけで、細かく緻密なプロット立てれば長編かけると確信しました。
ただ、見ての通りDVの表現があり、切なくて救いようがないので読んでて重くなりそうですね。
これはR15に指定しようと思い、鍵をかけるか迷いました。
また誹謗中傷がきても困るので。と思ったのですが注意事項記載のみにしておきます。
故に、こちらの内容についての誹謗中傷はお断りをさせてください。よろしくお願いします。
総司クラスタの方、気分を害されたら本当にごめんなさい。書きたかったんです……。
こちらも内容が内容なので、トップの更新履歴には記載しません。
重たい、そして切なくて苦しいdarling。最後までお付き合いありがとうございました。
2014.05.06 有輝