04. Cattura
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アルカナファミリアの館には地下牢がある。
拘束された者はまずここへ連れられ、必要があれば尋問されるのがファミリーの定石だった。
そんな地下牢へ訪れたのは聖杯の小さき隊長であった。
目の前に現れたノヴァの姿に、彼を見上げる捕まった者たち。
ノヴァが視線を向けていたのは、前回の誘拐犯たちのだ。
「聞きたいことがある」
04. Cattura
「いやぁ今日もレガーロは平和だね」
馴染みのリストランテの前。
パーチェは脳内でお花が飛びそうなくらい和んだ表情で立ち尽くしていた。
その横に並ぶのは呆れが顔のルカとフェリチータ。
「こんなに楽で、平和が維持できるなんて願ったり叶ったりだよ」
「パーチェ……」
そんな彼らの前には聖杯のスートにつれていかれる男たち4人組。
既に拘束された後であり、その顔には見るだけで痛いほど青アザができていた。
「平和だね、なんて呑気なこと言ってられません」
ルカが連れていかれる男達を見ながら、その瞳に真剣な色を映す。
フェリチータも眉間に皺を寄せながら、男達の背を送った。
「これで今週に入って何件目…?」
「記憶している通りですと21件目です」
「ファミリー以外の第三者による事件解決……」
フェリチータの問いに、ルカが静かに答える。
恐らくその答えはベストアンサーとは言えないだろう。
きっと聖杯が知っている限りではもっと数が積まれるだろう。
そう。
いま連行されていかれた者も、前回フェリチータがスリを捕まえた時のように、ファミリー以外の人間による事件解決で捕まった犯人たちだ。
「明らかに、こんなのおかしい」
「えぇ、私もそう思います。ファミリー以外の者がこの島でここまで勢力を見せ、一般市民相手に……」
「隠れた正義のヒーローみたいだね」
「パーチェ、もう少し危機感を持ってください……」
相変わらず呑気な幹部長代理はさておき、ここ最近多発する“何者かによる事件解決”。
それ以前に、このレガーロの治安自体が以前より悪くなった気がする。
「前はこんなにスリとか万引きなんて、なかったのに」
「全てがオーガ・ブランコの残党と考えるのは難しいでしょう」
パーチェは空腹もまざって、既にこの話題に飽きていたようで入ろうとしていたリストランテに入店していた。
ルカとフェリチータも思考を活動させたまま、彼の後に続く。
食欲を刺激するいい香りに包まれながら、いつもの席に着いた時に、パーチェが口を開いた。
「でもさぁ、ファミリーとしては助かることだよね?なんか侵害されるようなこともないし、連行してるのは俺らだから、島のみんなも不信感は抱かないよ?」
「そうゆうことを言ってるわけではありません」
ルカが“もう!”と付け足しながら、パーチェにわかるように説明する。
「いいですか、パーチェ。このレガーロ島の自警をしているのはアルカナファミリア。その掟に遵守することを血に誓った我々です」
「え、うん、そうだね」
「ですが、我々が本来守るはずの領土内で、見ず知らずの輩が恐らく私利私欲の目的で動き、犯人とはいえ一般市民を……」
「そうだけど、ファミリー的にはまずいの?それ」
「はぁぁぁ……」
確かにパーチェのそうゆうところは、長所である。
みんなが平和に、みんなに優しく。
だが、それとこれとは違うのだ。
「早く身元を確かめないと、この後もっと事態が悪くなる可能性だってある」
零したフェリチータの表情は、不安そうだった。
ルカとパーチェが黙って見つめる。
「本当に目的も何もなく、私達に協力してくれているならいいけれど……」
フェリチータには、心当たりがあった。
2日ほど前に出逢った、紅色の瞳の少女……―――。
初見でも、彼女は“強い”と実力が伺えた。
アルカナ・デュエロのあとだからこそわかる。
あの子は……とても強い。
「もし、彼女がそうなら……」
どこに行けば逢えるのだろうか。
そして、何故あの時自分に手を貸したのか。
本当の目的は……――
「きっと……」
あの子が関係していると思う……――。
◇◆◇◆◇
その日の夜、食堂に集まった一同にノヴァが告げた。
「食事の前で悪いが話がある」
今日はダンテもきっちり揃っていた――ジョーリィはいつも通りの不在だったが。
「なんだ?改まって」
「冷やかしなら黙っていろ、リベルタ」
「んだよ」
ちぇっと吐き捨てて、彼の次の声を待った。
「ここの所……第三者による不審な事件解決が続いている」
「あぁ」
「そのことか…」
誰もが一度はその被害を目にしていた。
リベルタが、デビトが、ノヴァが。
もちろんフェリチータも。
大アルカナが目の前にいたにも関わらず、その窃盗や誘拐未遂、万引きを解決したのは目に見えない“第三者”。
「今日、先日の子供達を誘拐したオーガ・ブランコの残党に話を聞いてきた」
「!」
「恐らく、奴らを拘束し、ファミリーに差し出した奴と、各地で被害を拡散させる前に動いている人物は同じだと僕は思っている」
「あぁ、俺も同感だ」
ダンテがノヴァの読みに賛成した。
「縄の縛り方、相手への攻撃の仕方。全て同一人物だろう」
さすがは元海賊。
細かい所まで目をつけて観察をしているものだ。
「各セリエからもらっている報告書には、共通の部分も見えた」
「共通?」
「あぁ。まず、金目の目的ではない。拘束された人間が奪ったサイフや金品は全てそこに置いて立ち去る」
「……」
「2つ目は、犯人の口から登場する武器が必ず“鎖”だということ」
「鎖……」
フェリチータの予感は、確信へと変わっていた。
「3つ目は……瞳が紅色」
【来てもいいけど…逃げられちゃうよ?】
―――…フードをしていたので完全な容姿はわからないが、あの子の眼は紅色だった……。
【頑張って追いかけたんだから、自分の手柄にしないと。ね?】
「このままだと、レガーロの警備事態に支障をきたす。今現時点では何もこちらに障害になっていないが、これ以上“一般人”に暴れられても困る」
こくりと一同が頷き、ノヴァがその凛とした視線をあげた。
「手掛かりは少ないが、紅色の瞳の鎖使い。それらしき人物を見かけたら、全力で拘束してくれ」
「オイオイ、それは職権乱用にはなんねェのかァ?」
デビトがめんどくさそうにノヴァへ尋ねる。
確かに、一般人を捕まえている相手もまた一般人。
まして相手は何も罪は犯していない。
「拘束するだけだ。危害は加えるな」
「そんなすぐ捕まるなら、ここまで大事になってないだろぉ」
リベルタが小さく呟いたのを、動物愛護隊長は聞き逃さなかった。
「文句は捕まえてから言え。パーパから指令の許可は出ている」
こうしてアルカナファミリアには新たな命令・“紅色の瞳をした鎖使い”の発見と拘束が出されたわけだが。
「お嬢様?」
目の前の席に座っていたルカが、心配そうにフェリチータの顔を見る。
曇っていた顔をすぐさまあげて、微笑みを見せた彼女。
だが、更にその隣では思案するダンテの姿があった……。
「紅色の……鎖使い……――」