00. Inizio Nameless
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「ユエ、本当に行くのですね」
「うん……」
レガーロ近郊の珊瑚の停泊域。
不審船がこの春先、一度だけ目撃されていた。
「そうですか……。アッシュには、私から伝えておきます」
「怒るかな……」
「えぇ、きっと」
「………………。」
「でも、アナタが決めた道です。きっと彼もここから温かく見守っていますよ」
「ありがとう、ヨシュア」
それが、4月1日。
未明の出来事。
「いってきますっ!」
「いってらっしゃい……ユエ」
ボロボロの不気味な停泊船から勢いよく飛び出したのは、紅色の瞳が印象的な……少女だった。
「アナタの家族は必ずいます。そして私も、アッシュも……家族であることに変わりありません」
――その事を忘れずに……、今は前だけを見て、進みなさい…。
その小柄な背を見送って、金髪の男は目を閉じた…。
「彼女の行く道に光が照らすことを……」
この不審船は約3ヶ月後、再び確認されることになる。
00. Inizio Nameless
「密輸の現行犯だ」
交易島・レガーロ。
その物語はここで始まり、いずれここで終わるだろう。
彼女はそれを目的とし、12年ぶりにここへ帰還した。
「金品は押収、身柄は拘束する」
そのレガーロの島の広場では、その日、事件が起きていた。
黒いスーツを着た、青い髪の少年が、何十人かの男を相手に刃物を構えている。
「?」
不審船を降り、レガーロに乗り込んだ小柄の少女もまた、その場にたまたま居合わせていた。
奥の広場の光景が見える。
そこに人だかりが出来、囲われるような形で少年と男が対峙ていた。
「……」
周りの者はキャアキャアと騒ぎたて、なるべくそこを離れようとしていたが、少女は黙ってその光景を見つめる。
逃げようとする波を逆らい、更にその中心へと足を進めた。
「ぐっ……」
どうやら相手の男は、言葉はなかったがその非を認めたようで、こちらにダイナマイトのようなものを投げてきた。
大きな音がその場に広がり、それは先程自分が侵入した経路である、港の方まで伝わっただろう。
地響きの後、ついに交戦が始まった。
男達が少年目がけて、ナイフや剣で向かっていく。
「っ…!」
思わず、助けようかと足が出たが、それは取り越し苦労だったようだ。
少年の剣さばきを見て、少女は動きを止めた。
―――強い。
自分が手を貸す必要はないと読んだのだろう。
その戦いをただただ見つめていた。
「手伝うぜ!!」
少年は強い。
だが、その数では劣勢にあることに変わりはなかった。
いつでも手を貸せるようにと構えていたのだが、それが後方からやってきた声に遮られる。
金髪の少年が自分の真横を抜けて、参戦を示した。
金髪の少年を見た男たちが、“ヤバイ”と一瞬顔をしかめる。
「ぐ……」
「その必要は……」
刃と刃を交え、身動きが出来なくなっていた蒼髪の少年が、その形勢を押し返す。
「ないッ!!」
相手の剣を弾き飛ばして、別の男へと向かっていく。
一方の金髪の少年の力も、引け劣らなかった。
「人の好意を……素直に受け取れよなッッ!!」
その剣さばきもまた、――蒼髪の少年とは違うが――馬力が感じられるものであった。
「そうゆうのを、ありがた迷惑と言うんだッ!!」
素早く4人ほどを押し返し、蒼髪の少年がスピードを見せつけ、敵を排除していく。
少女は2人の姿から目を離すことが出来なかった。
「強い……」
背中あわせで合流した2人の少年。
それを取り囲むように、集まる男たち……。
「かわいくねェ」
「お前にかわいいと思われても困る」
さぁ、踏み出すか!と見えた時だ。
ブレーキ音が鳴り響き、その場の交戦に割り込んだのはなんと自動車だった。
「!」
こちらへ突っ込んでくる自動車が、綺麗なスピンを決めて主犯格を乗せ、一瞬のうちに立ち去ってしまった。
「逃がすか!!」
「ッ……」
追おうとした青の少年を止めたのは、背の高い金髪の少年だった。
何故止めた。という風に振り返った彼に、金髪の少年が告げる。
「自動車なら、通れる道は限られてる。裏道を使えば追いつけるだろ」
「……」
「な、なんだよ……」
睨むように金髪の少年を見た彼。
気に喰わないと多少は語っているのがわかる。
が、今はそれどころではない。
「急げ」
「わ、わかってるッ!!」
そのまま2人が抜け行くのを、少女は見つめていた……。
「(おもしろいもん見ちゃった)」
少しだけ心が躍った。
それは彼女だけではなかったようで、その場にいた者が目をぱちくりさせている。
だが、立ち去ってしまった彼らは、やり残したことに気付いていなかった。
「お、追うぞ!!」
「オウッ!!」
その場には、まだ彼らの残党がいたからだ。
「……」
2人の少年を追うために、裏道へ逃げ込もうとする男たち。
力を貸す気は、とうに無くなっていたつもりだったが、一般人が悲鳴や恐怖を見せ始めた。
これは……ほっとけない。
こちらへ向かってくる男たちの前で、少女は道を塞ぐように立った。
「なんだァお前!?」
「さっきの奴の仲間かぁ……?」
「心外だ。一緒にするな」
「だったらそこを退きな、お嬢ちゃん」
男達が剣を舌舐めずりして笑う。
少女は、その腰のホルダーから鎖鎌を引き抜いた。
「へぇ……」
「おもしろいッ!!」
「やっちまえ!!」
掛かってくる男たち。
だが、少女は恐れなかった。
右の男の剣を鎖で投げ飛ばし、鎌の柄を逆手に持ち、相手に打撃を喰らわせる。
剣とは違う戦い方に、男達は迷いを見せた。
そしてスピードは先程の蒼髪の少年と同等の速さ。
「ひぃぃぃ」
あっという間にその場にいた十数名の男を屈しさせれば、その場から歓声があがった。
「すげーよ!おじょーちゃん!」
倒れた男たちを見下ろし、そして周りを見やる。
逃げようとしていた人々は、誰ひとりケガを負うことなく、その場で感動を示していた。
「(目立ち過ぎた……)」
少し照れくささを感じながら、歓声に応えることなく彼女は裏道へ消えた。
別に歓声が欲しくてやったわけではない。
あの2人の真っ直ぐな……守り抜く姿勢を見つめていたら、多少は力になってやりたいと思っただけ。
見返りが欲しくてやったわけではなかった。
だけど、胸に落ちた温かい気持ち。
それと、気恥ずかしさ。
あの船にいたころでは、なかなか味わえないような……――。
足を止めて感情に入り浸っていた所、もう1度爆音が響く。
「(……どうせなら、)」
最後まで見届けて見たい。
そう思った少女は、1本、また1本と奥の道を抜け、音を頼りに事件の最終地点までやってきた。
「きゃぁぁあ!!」
「!」
同時に女の人の悲鳴。
先程の爆音は、あの自動車が破壊された音らしく、表通りに出た瞬間、こっぱみじんに破壊された自動車の影があった。
主犯格は人ごみの中へ逃げたようだ。
「……っ」
「退けぇぇ!!」
人ごみをかき分け、進んでいく男。
密かに追うように、少女もそれを追いかける。
どこまで行くのか……と思った時だ。
男の前に、帽子を被った者が現れた。
「!」
笑みを浮かべ、ナイフを構えるその姿―――
「ルカ……」
少女には見覚えがあった。
「ぐ……」
ナイフを見せつけられては、男は進めない。
辺りを確認するが、自分が黒スーツの集団に囲まれていることに気付いたようだ。
「うぐ…ッ」
そして意を決したように集団の中の1つ、赤髪の女の子を筆頭としたグループへ拳を向けて行く。
「(女の子もいるんだ……)」
さぁ…どう出る?と思ったが、彼女は部下に頼らずに、脚に装備していたナイフを構えた。
「やぁぁ!!!」
正面衝突。
そう考えられたが……―――
「!」
横から影。
あのスピードは……先程の青の少年だ。
「ぐあ!!」
「―――…」
「ま、参りました……っ」
瞬殺。というように、逃げ回った男の服を切り落とし、事件は解決…。
少年は鞘にその刃……ニホン刀を納めた。
「一件落着だな」
これまた聞き覚えのある声が聞こえる。
「ダンテのおっさんまで……」
少女は、赤髪の女の子の下へ並んだスキンヘッドの大男を見つめた。
「ダンテ、さっきの車……あれどうするの?」
響く歓声の中、燃え上がる車の処理が行われている。
まるで全員集合という形で、少女と大男の前に金髪の少、そしてメガネの男が現れた。
「(パーチェ……)」
メガネの男を見て、“デカくなってる……”と感心してしまったのは、置いといて。
「死ぬとこだったぜ! やることが派手すぎんだよ」
「そりゃハゲだけに……。だーんてな!!」
集まっていきなり発せられたギャグに、その場にいた赤髪の子はもちろん、金髪と蒼髪の少年は呆れ顔。
「ダンテ……」
正面からそれを聞いていた、少女も顔をしかめ、目を瞬きさせてしまった。
「んじゃ、行こうぜ」
手をぱちん、と叩いた金髪の少年を合図に、その黒集団がこちらへ向かってやってくる。
そして自分とその集団の間に、もう2人……同じスーツを着た者たちが現れた。
1人は先程の帽子の男。
もう1人は……―――
「!」
隻眼の……男―――
「なんなんだ……アイツら」
「ものすごかったな……」
どこからか、一般人の声が聞こえてくる。
「アンタら、ここへは初めてかい?」
「え?」
「この、交易島レガーロに来たのは、初めてなのかって聞いてんだよ!」
それは、声をあげた若者2人に、この島のおばさんの声。
少女は、その声にも耳を澄ませた。
「う……うん」
「あぁ……」
「なら、教えてやる! 耳の穴、かっぽじって聞いときな!」
黒の集団が、達成感を見せた笑顔で、少女……―――ユエの横を通り過ぎて行く。
「あの連中こそ、レガーロ島を守る自警組織」
その黒の背は、誰もが頼もしかった。
「アルカナ・ファミリアさっ!!」
自然と、笑顔がこぼれた。
「変わってない……」
その後ろ姿と、ユエは対峙を示す。
「デビト……」
この時の彼女は、想像もしなかっただろう。
自分の目的を終えたからといって、この組織に戻ることを。
そして賑やかな家族ができることを。
名もないユエ戦いは、今日この日……レガーロに帰還した日から始まった。
*
エピソード0.
No NAME本編の2カ月くらい前の設定。
アニメ第1話は私とアルカナとの運命の出会いです。笑
そして、このアニメ第1話の冒頭が1番すきです。
ということで、書かせていただきました。
ヨシュアの冒頭が、何を語るのか。笑
今後にご期待ください。
有輝