19. Sono nella memoria
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「フェノメナキネシス……。なんとも特殊な体質だ」
「…」
「この世には全てに意味がある。そしてユエ……お前がその力を持ち、この世に存在しているのは理由があり、奇跡だ……」
ロベルトがユエへと熱い視線を送る。
目には目で返すように、ユエは睨み上げるようなそれを返すと、彼は笑った。
「お前は、特別だ」
ロベルトが誘うように手を差し出す。
その光景には見覚えがあった。
幼い時、自分を救い出した手を、ユエは忘れない。
「その力をこちら側で利用してみないか……?」
「断る」
「お前は自分の存在の価値をわかっていない…。普通の人間では、その力…炎や稲妻、そして水、風、光…。自然現象を操ることなど不可能だ」
「ストレートに化物だって言えば?」
自嘲するような笑みを見せながら、睨み上げる視線は緩めることをせずに告げた。
キマイラがその視線を遮るように、ロベルトの前を張っている…。
「ならば、化物同士……私の力となれ」
強制を強いられる言葉に、ユエが今度は鼻にかけて笑った。
一度俯き、間を置いてから瞼を閉じる…。
見えたのは、決意を見せた紅色。
「大事な人を守れない力なんていらない」
19. Sono nella memoria
リベルタを庇う形で現れたユエ。
その背後で尻もちをつくように彼女の後ろ姿を見上げるリベルタが、髪から体までびしょ濡れになりながらユエの圧倒的な力に驚いていた。
それは、リベルタだけではない。
結界の中に閉じ込められていたルカ、パーチェ、デビト。
ノヴァを支えるフェリチータ。
そしてダンテ。
唯一、表情を見せずに笑っていたのはジョーリィだけ。
「随分と、力をあげたものだな」
ジョーリィが関心の意を示しながら、ロベルトを囲うようにゆっくり回り込む。
「“守れない力”……か」
ロベルトがユエの言葉を復唱し、真顔で呟く。
「よく言えたものだ……セレナを……―――セナを裏切ったのは君だろう」
「…っ」
反応するようにキマイラがユエに牙を剥く。
眉間の皺を深めて、ユエは一瞬だけ表情を歪めた。
「その君が守るだと?それは、アルカナファミリアをか…?」
「…」
「だとしたら、君は…愚か者だ!!裏切り者だと言われても言い返せるはずもないだろう!!」
どうやらこのロベルトはユエの過去を知っているようだ。
否定をしないのは、肯定の意味。
「セナ、お前の好きなようにしていい。殺せ」
ロベルトが命令を下し、ユエに向かって駆けだすキマイラ。
「私に従えないのであれば、その力は消滅させなければな」
「リベルタ立てる?」
「あ、あぁ……」
ユエが後ろ背でリベルタに尋ねれば、彼女は鎖鎌の柄に両手を添えていた。
――……戦う気だ。
「真後ろにいられても困る。次に火炎放射が来ても守りきれる保証がない」
「…ッ」
できれば隣に並んで戦ってやりたかったが、リベルタの片目は今血まみれで見えていない。
そして、ユエもそれを望んでいないのがわかり、納得はいかないが、ダンテがいる所までリベルタが下がった。
同時に突っ込んできたキマイラ。
「セナ……ッ」
ホルダーから刃を抜いて、飛ぶようにその突撃を交わす。
空中で翼を引っ掛けるように鎖で攻撃を示したが、同時に大蛇の牙が飛んできた。
「!」
見えていたのでそれも避けたが、同時にロベルトの声が聞こえた…。
「ペンシエーロ・レアリッザーレ」
「!?」
「霞め」
「な…っ」
同時に目の前だけがモヤがかかったように見えなくなる。
あの呪文はリベルタのアルカナ能力のものだ。
どうして彼が…。
「ッ!」
霞んだ視界の中で、真正面からキマイラが突っ込んで来た。
避けるにも瞬時の判断だったせいで、完全には避けきれない。
思考をフル回転させている間に、突撃が来た。
が…
「!」
「世話の焼ける小娘が……」
ジョーリィが間髪で錬金術の盾を生みだし、守られる。
一旦引いて、ルカ達が捕えられている結界と、今自分を助けてくれた者の下へと下がった。
「甘く見るな。“アレ”は厄介だ」
「“アレ”?」
「賢者の石」
「……」
ジョーリィがユエに、先程見たロベルトに埋め込まれている“ルビーの石”について告げる。
ただ、ユエの反応は違った。
リベルタやフェリチータのような“存在を知らない”顔は見せず。
はたまた、ルカのように“信じられない”という顔も見せなかった。
どちらかというと、“知っていた”・“やはり”というような、確信を得た表情だった。
それに対してリベルタは、使われた自分の力に驚きを隠せない。
「どうして俺の力を……」
「奴の能力か…っ」
「ダンテ、何か知ってるのか?」
リベルタが目を止血しながら、隣でロベルトを見るダンテに尋ねた。
「奴は自分を“化け物”と称した」
「化け物?」
「ということは、少なくとも普通の人間ではないだろう」
ダンテがどうにかして、それを暴こうと動きだす。
リベルタはその目ではどうにも動けないので、その場で立ち尽くした。
「私は今、無敵となった。アルカナファミリアに、私に敵う者はいない!!」
その言葉に、ユエがロベルトの鎖骨に埋め込まれた石を確認し、静かに立ち上がる。
無意識に指先が宛てられた腹部。
それを見たジョーリィが一言、忠告をした。
「やめておけ」
「……」
「命令だ」
真っ直ぐロベルトを見たユエの視線はジョーリィの言葉を聞きたくないというものであった。
「私はお前の力を知らないが、予測はできる」
「予測は予測でしょ。あたしの力を語る妄想。真実じゃない」
ゆっくり立ち上がり、こちらを見ているセナキマイラに視線を移した。
「……」
【ユエっ】
記憶の中のセナが呼んでいる。
その声は、この12年間、ユエの耳に貼りつき、生きる力にしていた…。
同時に縛り上げるものにも。
気を取り直して、ユエは踏み出した。
同時にキマイラが雄叫びをあげて、口を大きく開いた。
「ユエ!!」
左側から、フェリチータの声。
フェリチータは、この雄叫びの後になんの攻撃が来るか…わかっていた。
ユエも覚悟をしたようで、キマイラに向けて一直線に走りだす。
「ユエ!!」
パーチェが無茶だよっ!と、結界の中から見守る。
その間にも、ルカとデビトはここから出れないものかとその光の壁を叩くが何の力もなかった。
「クソッ、どうしてアルカナ能力が効かねェんだ!!」
「これもロベルトの力ということでしょうか……っ」
「タロッコの力を跳ね返す力……?」
「いいや、違う」
3人の会話に口を出したのは葉巻を咥え、最前線で戦うユエを見つめるジョーリィ。
「恐らく…――」
ジョーリィが言葉を止めた時刻。
ついに吐き出された灰燼…。
ユエが空気中の水を使いながら、火力を弱めつつ、キマイラに向けて腕を振り下ろした。
「これで……ッッ」
指先が翳した先に、天井が割れ、天から稲妻が降り注ぐ。
キマイラもそこまで大きい物は予想していなかったようだ。
稲妻を受けて割れた地面は、キマイラの足場を崩した。
悲鳴のような声をあげて、吐きだしていた火炎が――首が上を向いたせいで――天井へ…。
炎を浴びた屋根から、瓦礫の雨が降って来た…。
「ユエ!!」
ユエは真下にいる。
危険を悟ったルカが叫んだが、取り越し苦労。
「“音よ”」
落ちてきた大きな瓦礫の陰で、ユエが小さく呟いた。
その光景に、ロベルトとジョーリィが目を丸くする…。
「“音響の速さと馬力で……!!”」
ユエが翳した手の平から、音波のようなものが流れ、その強さで瓦礫がキマイラ目がけて一直線で飛んでいく…。
「素晴らしい力だ。是非……」
ロベルトが喜々しく笑みを浮かべて、やられたキマイラの安否より、ユエの力の虜になっている…。
「音響まで扱えるとは」
ジョーリィが葉巻を潰して見やったが、逆効果だろうと内心は思っていた。
見せてはいけないのだ。
瓦礫の山に潰れたキマイラ。
空中から舞い戻ったユエが、ホールのど真ん中に着地して、その山を見つめる…。
ガチャリ…と音がして、中から出てきたのは人の姿をした少女だった。
「やってくれたわね…ッユエ!!」
憎しみと怒りをそのアメジストの目に宿し、こちらを睨む少女。
姿自体は完全一致とは言えないが、その目に見間違いはなかった…。
「セナ……」
「この裏切り者!!!」
セナがキマイラの時の馬力のまま、手元にあった鋭利な瓦礫を投げる。
普通に投げられた時は、なにも問題はないが、彼女が発揮したのは獣の馬力。
当たれば刺さるじゃ済まない。
銃並の威力だろう。
今度は振り下ろさずに、真横に腕を切れば瓦礫を相殺する形で稲妻がそれを撃ち落とす…。
「私はアンタを許さない!!」
セナが駆けだすと同時に、ユエは異常を感じ取った。
「フェルッッ!!!」
「!」
視界の端で、確かに捕えていたフェリチータの背後にロベルトの姿…。
確かに奴は真正面にいたはずなのに…気付いた時には消え、そしてフェリチータの背後に現れた。
あの力は…
「(レルミタ……ッ)」
ユエがセナからの攻撃を避けつつ、フェリチータ目がけて駆けだすがもう遅い。
「お嬢様!!」
「バンビーナッ!!」
「お嬢!!」
当の本人は何故呼ばれたのか気付いていなかったらしく、それに振り返る。
そこには不審な笑みを浮かべたロベルト…―――。
「きゃ……っ」
支えていたノヴァは完全に気を失ってしまったようだ。
ロベルトはフェリチータの赤い髪を引っ張り上げると、無理やり立たせ盾にした。
―――ユエがこちらに腕を翳そうとしていたのが、見えたからだ。
「これなら雷も撃てまい」
「ちっ……」
「次はこちらの番だ」
随分楽しませてもらったからな…と、ロベルトが呟いた……。
「ルーナ・ピエーナ・ソンノ」