PKMN



「夢みたいだな」

旅の途中で立ち寄ったホテルで、こちらを見て彼がぽつりとそう言った。
言葉にするつもりはなかったようで、言った本人は驚いたように口元を押さえている。

「夢みたいって、何がだい?」
「あー、えっと……」

ばつが悪そうに視線を彷徨わせていた彼だが、すぐに諦めたのか、溜息を一つ
ついて僕の質問に答える。

「こうして、Nと一緒に旅をしていることが……」
「……また、それかい?」

かつてそれぞれの理想と信念をぶつけ合い、一度は別れた僕たちが、人とポケモンの理想郷のような場所で再会を果たしてからしばらくした頃。
再び旅に出ることを決めた僕に、彼は自分も同行したいと申し出てきた。
断る道理もなかったし、彼との旅ならばきっと楽しいものになるだろうと思って快諾したのも、もうかなり前のことのように思うのに。
彼は度々こうして、この旅が成立していることを、現実ではない、夢のようだと噛みしめる。

「仕方ないだろ。ずっと追いかけてたんだから」
「でもパシオでも大体キミと一緒に過ごしていたじゃないか」
「それはそれ」

むす、と膨れて帽子のつばを下げた彼は見た目通りに子供っぽくなる。
世界の命運なんてかけて戦った時が嘘のようだ。
きっと本心から嬉しく、夢のように感じていてくれるのだろう。ただ、僕と共に生きているという、それだけのことを。

「Nと同じ景色を見て、一緒に生きていられるのが嬉しいんだから」
「うん」
「会えて良かったなって思うし……最初はあんなんだったけど、今は仲良くなれて良かったなって思う」
「それは僕もだよ、トウヤ」
「……うん」

彼からの友愛が嬉しくて、自分も同意する旨を告げれば、彼はどこか複雑そうに顔を背ける。
これは彼と過ごす中でよく見る所作だったが、未だに意図がよく分からなかった。
嫌悪の現れではなさそうだと受け止めて、深く訊くことはしていないが。
いつか彼が心の中に抱くものの全てを話してくれる時が来るのだろうか。

「じゃあ、そろそろ寝ようか」
「うん、オヤスミ。また明日ね」
「ああ、また明日」

眠りにつく前、それぞれのベッドの中から声を掛け合って、サヨナラではなく明日のまたねを約束をする時。
彼が細める瞳の奥から感じる慈愛。それを感じた時に僕の胸に広がるこの穏やかさの意味を、いつか知る日が来るのだろうか。



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